LUNA SEA 熱狂だけではたどりつけな
い多幸感に包まれたフィナーレ、『L
UV』ツアー最終日レポート

LUNA SEA The Anniversary 2018 The LUV -World left behind- FINAL

2018.5.29 日本武道館
終演後、外は綺麗な朧月夜だった。
ほのかに霞んで見える月が、外に出てきた観客たちをやわらかな光で迎える。この夜のLUNA SEAには、そんなやさしい夜がぴったりだった。
バンド結成29周年とツアーファイナルを合わせたもったLUNA SEAの『LUNA SEA The Anniversary 2018 The LUV-World left behind-FINAL』日本武道館公演。まだ誰も見たことがない新しい景色を求め、挑んだLUNA SEAの最新アルバム『LUV』。全国各地をツアーで周りながら、その欠片をつかんできた彼らがツアー最終日、この武道館でいよいよその“全貌”を露わにする。
2000年、一度は終幕という形で崩れてしまったLUNA SEA。あれから時間はかかったけれども、やっとメンバーたちは各々が抱えてきた傷や涙や悔しさ、怒りやせつなさ、痛みや苦しみ、胸に抱えるもやもやした暗闇、そのすべてを受け止め、許して、抱きしめることができた。『LUV』が明るく自由に開けた作風になっていった背景には、そんな彼らの気持ちの変化があったに違いない。もう、過去の姿にとらわれなくていい。ここからは、目の前にいるいまのLUNA SEAと向き合えっていけばいいんだという喜び。その未来はどんな風になっていくんだろうとワクワクするような胸の高鳴り。『LUV』には、いつしか自然とそんなポジティブなエネルギーが満ち溢れていったのだろう。そんなことが、この日のライブから伝わってきた。
武道館で観た新しいLUNA SEAの姿。それは、痛みや悲しみ、この世にあるすべてのネガティブなものを力強く受け止め、それらをポジティブな力や笑顔、愉しさ、やさしい気持ちへと変換していくためにエネルギーを放っていく姿だった。そうして公演中、さらには終演後も含め、オーディエンスを至福の気分で満たしていく。自分を受け入れたいまだからこそ届けられる愛、“LUV”がそこにはあった。1年前、同じ場所で彼らが『LUNA SEA The Anniversary 2017』公演を行なったとき、最後に演奏した「MOTHER」が、いつもの神がかった崇高なプレイから、人間的な温もりややさしさを内包し、慈愛に満ちたパフォーマンスに変わっていたのは、まさにその前兆だったのだ。
このようなことを踏まえて、当日のライブを振り返ってみよう。セットリストや主な演出は、全国ツアーをそのまま踏襲したものになっていたので、ここでは今回のツアーのキモとなった部分を中心に触れていきたいと思う。
LUNA SEA / RYUICHI 2018.5.29 日本武道館 
武道館の客席は、この日も1年前と同じ360度解放スタイル。筆者は今回初めて、ステージ上手の真横からLUNA SEAのライブを観ることになった。幕開けはこのツアーでおなじみの「Hold You Down」。INORAN(Gt)がリフを弾きだすとRYUICHI(Vo)が冒頭から手拍子を求める。J(Ba)のカウンターメロディーが大地を蹴り上げ、SUGIZO(Gt)のフレーズで大気圏まで飛び出したあと、真矢(Dr)が軽やかなドラミングで空中飛行を後押し。そうして、目の前に広がる視界はLED画面を通して、眩しい光のプリズムに覆われていくというなんとも美しい連携プレイで、オープニングからすでに解放感たっぷりの景色を武道館に作り出すのが今回のツアーのLUNA SEA。衝撃だったのは、ステージ真横で聴いてもPAのサウンドシステムが素晴らしかったこと。また、横の席からはステージ上が丸見えなので、プレイする5人の他に、SUGIZOがギターとバイオリンを持ち替えるたびに床に置いたエフェクターボードを素早くチェンジするスタッフがいたり、真矢を支えるための楽器テックが3人スタンバイしていることなども観てとれたのも面白かった。
LUNA SEA / SUGIZO 2018.5.29 日本武道館
INORANがセンターに立ち「TONIGHT」のリフを弾きだすと歓声が響き、音玉が勢いよく爆発。そのあと、すぐに上手の1階席の観客の目の前までやってきたINORANは、一人ひとりをすごい目力で見つめ、微笑み、ウィンクをして、ときには自ら客席に近寄ってハイタッチも交わしていく。曲が終わると、すでにものすごい熱狂を作り出していた客席に向かって、真矢が後方スタンド席目指してスティックを放り投げる。その間Jは意識的に2階席など遠方にいる観客を視線でとらえ、次々と指差していく。間近で見れば見るほど、各々の歌、演奏力はどの瞬間を切り取っても常にトップクラス。離れていても、5人が視線やタイミングを合わせて、バンドをグルーヴさせていくテクニックもいちいちすごい。それぞれがプレイ中に放つオーラも、貫禄がある。その上で、いまでも彼らが観客との距離を少しでも縮めようとファンへのアピールを怠ることなくやっていることに、感動を覚えた。
そうしてライブ序盤。このツアーでその日のライブの良し悪しを左右すると同時に、ライブごとにその臨界点の景色を更新し続けていった楽曲、「Limit」をアクトする場面がやっってきた。真矢のカウントで、目には見えない暗闇が場内を包み込み、ステージには緊張感が張り詰める。バンドアンサンブルはその暗闇を突破しようと、冒頭から勢いよく疾走。RYUICHIはハンドマイクを握りしめ、前方へ深く体を折り曲げて、曲の中へどんどん入リ込む。ブレスも音程も一瞬たりとも気の抜けない状態をキープしたまま、2番の後半には床にひざまずき、高音をエモーショナルに歌い上げ、まとわりつく暗闇を受け止めていく。その歌が、聴く者すべての心を激しく揺さぶる。そこからJとINORANのコーラスに背中を後押され、「Brand New days」で輝きを求めて暗闇から這い上がり、「誓い文」でミラーボールが作リ出す光のシャワーを浴びると、なんともいえない至福感に包まれる。闇があるから光がある。ここは、そんな『LUV』の世界観、その醍醐味をきっちりライブで表現していくツアーの重要なブロックだった。
LUNA SEA / INORAN 2018.5.29 日本武道館
そうして、このあとのMCでRYUICHIは「ずっとロックを追いかけてもう30年になろうとしてるけど。自分たちの思うロックって、ヤバそうな匂いがしていたり、ヒリヒリしていたり暴力的だったりしたんだけど、それだけじゃないってことが、みんなと会って、支えてもらって分かったんだよね。ロックって人の気持ちを一つにするじゃない? こうやって違う場所から集まったみんなを一つにするんだから。しかも、俺たちを中心に。それがいいなと思って」と、観客たちにいま自分たちが感じている気持ちを素直な言葉で語りかけた。
ライブは中盤のバラードブロックへ突入。繊細な揺らぎと透明感を持った名曲「gravity」のあとに、このツアーで「Limit」とともに中盤でハイライトを作っていった「闇火」のアクトが始まった。INORANがアコギ、SUGIZOがバイオリンを奏でる静かなパートからステージに炎が立ち上ると、RYUICHIは声を震わせ床にひざまずき、赤いライトに照らされながら絶叫し始め、バンドサウンドも激しく闇の中へとダイブ。圧倒的密度の負のエネルギーが静と動に分散しながらドラマチックに鳴り響いていくと、観客たちはつま先から頭のてっぺんまでその音に飲み込まれていった。そこからオーディエンスを救い出していったのが次にプレイした「I for You」。このツアーではSUGIZOがバイオリン、INORANがアコギでSUGIZOのフレーズを弾くなか、RYUICHIが歌う3人編成のスタイルでこの曲をプレイ。アコースティックなアレンジで、観客一人ひとりの心にそっと光を降らせていった。
LUNA SEA / J 2018.5.29 日本武道館
このあと、ライブはLUNA SEAのライブではおなじみのリズム隊のソロへ。今回のツアーはこちらもエレクトリック仕様。真矢に至っては、アルバムで異彩を放っていたEDM「Ride the beat,Ride the dream」をフィーチャーし、LEDに“HEY”などの文字を入れながら客席を煽り、これまでとは違うフロアライクな景色を作っていった。そこから突入していった後半戦は、「STORM」から歴代アンセムを惜しげもなく次々と畳み掛ける。
ここで武道館丸ごと熱狂空間にしていったところで、本編ラストを新アルバムの「BLACK AND BLUE」で締めると、そこには、それまでの“熱狂”だけで走りきるエンディングではたどりつけない、地球上すべてがピースフルな多幸感に包まれていくようなフィナーレが待ち受けていた。手を左右に振りながら“ラララ”と歌うオーディエンスたちは笑顔いっぱい。武道館は、溢れるほどのまばゆい光に包まれて本編は終了した。
幸せに満ち溢れた空間。この日、アンコールの代わりに響いたのは、LUNA SEAの誕生を祝うバースデーソングだった。ファンの愛のこもったプレゼントに誘われて、再びステージに戻ってきたメンバーたち。「音楽って、やっぱり“愛”に満ちてるよね」とRYUICHIが笑顔を浮かべ、今度はLUNA SEAが観客にアルバムのバラード「So Sad」を歌い、愛を届けると場内にはひときわ熱い拍手喝采が広がった。
LUNA SEA / 真矢 2018.5.29 日本武道館
この後は、本ツアーで毎回メンバー紹介の場面で“主役”的な役目をもったトリを担当してきた真矢が、この日も見せる。まずはINORANがJに耳打ちをして、ドラム台から真矢が降りてくると、執事のように汗拭きタオルを手渡し、後ろに一歩下がって2人で頭を下げるという小芝居を披露(笑)。続けて真矢はマイクを片手に舞台中央に立ち、いつも後ろから見ていて「ずっとやりたかったんだよねー」といってSUGIZOとINORANがやってるようにお尻をフリフリ(笑)。続けて、キメ顔で風と照明に煽られながらギターを弾くSUGIZOのポーズを真似して観客を笑わせた。そうして、最後は再びテッパン曲を連続して披露。最後に「WISH」を演奏すると、LEDに“LUNA SEA”の文字が浮かび上がるというこのツアーから始まった演出で、みんなにLUNA SEA愛を刻み込み、この公演は終わりを告げた。
ライブ中、30周年を迎える来年は「もう1回ツアーをやりたい! アジアとか行きたいところがいっぱいある」と話したRYUICHIは、その前に近々に迫った『LUNATIC FEST.2018』について「今世紀最高のフェスにしたい」とファンの前で力強く宣言。新しいLUNA SEAを確認するためにも、次はルナフェスに行くしかないだろう。
取材・文=東條祥恵
写真提供=(株)LUNA SEA
LUNA SEA 2018.5.29 日本武道館

>>【インタビュー】Jが語るLUNA SEAの現在と未来、『LUV』ツアーファイナル日本武道館、そして『LUNATIC FEST.2018』へ
>>【ライブレポート】LUNA SEAが新しいモンスターになった夜 2017.5.29 日本武道館ライブレポート

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