【インタビュー】sads、清春が語った
「sadsにとっての流れに一区切りつけ
たい」

sadsが6月1日から7本の対バンシリーズ<The reproduction 7th anniversary「EVIL 77」VS 7 days>、7月6日から7本の全国ワンマンツアー<The reproduction 7th anniversary「FALLING」>を開催する。
2017年4月の<ザ グレートロックンロール関ヶ原2017「氣志團万博 vs VAMPARK FEST」>にて新ベーシストのYUTAROを初御披露目。同年10月に開催されたVAMPS主宰<HALLOWEEN PARTY 2017>では「sadsは7月7日にデビューしてるんです。今のメンバーで再始動して7周年。2018年はsadsを動かそうと。7年ぶりのフルアルバムをリリースします」と宣言していたsadsが、いよいよ2018年7月、現ラインナップでの再結成7周年を迎える。
BARKSは5月下旬、対バン・シリーズ<EVIL 77>、ワンマンツアー<FALLING>、そしてニューアルバムを含めたsadsの今後について話を訊くべく、都内某レコーディングスタジオにて清春と接触した。そこで明かされたのは、「sadsにとっての流れに一区切りつけたい」という衝撃的なもの。しかし、現在制作中のアルバムにはsadsの現在形がしっかりと刻み込まれ、このインタビューにて7公演のツアーを計4本行うことも新たにアナウンスされている。
果たして前述の発言の真意とは。ライターの増田勇一氏が清春にじっくりと話を訊いた10000字オーバーのロングインタビューをお届けしたい。
   ◆   ◆   ◆
■今改めてsadsとしてアルバムを作るのであれば

■新しいものを提示し、残しておきたい
──sadsの動向が突如、慌ただしくなってきました。今夜はこうしてスタジオにお邪魔しているわけですけど、この場所では何が行なわれているんですか?
清春:今はここでsadsのフル・アルバムを作ってます。現時点での予定ではまず7月から始まるツアーで会場限定盤をリリースします。一般流通させるのかはまだ未定です。要は7月のツアーがリリースツアーになる感じです。
──予定では、という言葉が気になります。
清春:いや、間に合いそうですね。ソロよりも作業が淡々としてて速いですから。今回はメンバーにも曲を作ってみてもらって、その曲達に僕が歌メロをつけたのを聴いた感じで選曲していきました。YUTAROが入ったこともあり、曲調がゴリゴリ一本槍ではなくなってきましたかね。各自5曲ずつ出してもらったアイデアを全部聴いて、僕がメロを作りやすそうなものを選んだとも言えます。で、当初はそれを各メンバーに戻して練り込んでいくという流れになるのかなと思ってたんだけど、幅が広くてまとまらないだろうから三代(堅)さんに締めてもらうって形になっていってますね。その結果、作業進行が速やかで助かっています。
──原曲のアイデアを持ち込んだ人がそれぞれまとめていくのではなく、三代さんのもとにそれを集約させることで効率も上がっている、ということですね?
清春:うん。メンバー間でバックボーン的な相違があったりとかはするんですよ。かたや飛び飛びではあるけど7年間もsadsに参加してくれてるK-A-Z君とGO君がいて、そこへ去年からYUTAROが加わって。彼は彼で昔から僕を知ってるという視点もありつつね。各自デモのクオリティもだいぶ違っていて、K-A-Z君の場合はもう普通に出しても良い状態で来るんですけど、GO君の場合はシンプルな打ち込みの状態、YUTAROの場合はギターがほぼ入ってない状態、みたいな。選曲した段階で三代さんに渡すんだけど、今作は結構思いっきり切り貼りしてもらって、そこから更にまた僕がメロディとコーラスパートを変えて、足してとか。だからメンバーは今日の段階で自分の原曲が一体どうなってるかわからない状態。コード進行のみしか残ってないようなものもあるし、例えばBメロをざっくり削除しちゃったものもある。そういう感じでとにかく作業進行は速いですね。じっくり録音というよりは、必要なところだけを録って構築する感じ。ある意味普通に現代的なレコーディングのあり方というかさ。オールドスクールなやり方ではありませんね今回。“いいトラックを作る”という考え方で進行してる感じです。
──なるほど。しかも『THE 7 DEADLY SINS』(2010年7月発売)以降のsadsにおいて軸になってきたK-A-ZさんとGOさんのコンビとは違った視点を持ったYUTAROさんの存在には興味深いものがあります。なにしろ彼はsadsを最初から知っているわけで。
清春:初期sadsについては、だけどね。当時は (彼のいたゼリ→と)イベントも一緒に出てましたよね。ただまあ、K-A-Z君たちが入ってからのsadsについて彼はほとんど知らなくて、実際ここに入ることになってから聴き始めたんだけど、その時点では「あれ、今こんな感じなんすか」みたいな感じだった。で、まあ僕としてはそこで「仲良くご自由にやってください」みたいな(笑)。実際はそこで双方、年齢的なものも含めて全ての感覚の違いは結構大きいんで、音楽的な辻褄合わせみたいなものが必要になり。そこで三代さんが活躍してくれてる、というのがあります。なのでヘヴィな要素は当然あるんだけど、そればかりにはならないですね。ある意味いわゆるニューメタル的でもあれば初期のTHIRTY SECONDS TO MARS……とまではいかないか(笑)。と思えば、普通にK-A-Z君が得意な鳴きの要素とかも当然あるし。色々考えてこれまでのsadsとはちょっと変えたかったかな。YUTAROが加わったというのもあるにはあるけど、要はまあ僕自身、こうして今改めてsadsとしてアルバムを作るんであれば、新しいものを提示し、残しておきたいというのがあったから。なにしろもう『Lesson 2』(2010年12月発売)からだいぶ時間も経ってますからね。僕のなかのsads的には何年か前に出した「May I Stay」の存在も大きかったです。広がっていく感じね。
──あの曲がある意味、当時と現在との架け橋になったというか。
清春:うん。ただ、さっきニューメタルという言葉を使ったけども、三代さんとかそういうものを普段ほとんど聴いてもなければ興味もないわけですよね、趣味的には真逆だろうから。まあなんとなくYouTube観たら”ああ、なるほど”という感じでの認識だったりして。だから本来のそういうものとはまたちょっと違うものになっていきますよね。YUTAROもメタルとか知らないだろうし。
──メタルの人が作らないメタル。客観的にそれを見たときのカッコ良さだけが反映されたものというか。三代さんが関わることによって、K-A-Zさんがイニシアチヴを握って作った場合とは違った形になり得ているわけですね?
清春:うん。三代さんは僕の活動に伴う場では、ステージから降りてアレンジ専門に回ったようなところがあって。そこでまとめ役に徹するという意識が強いはずで。もちろん三代さんがこれまで関わってきてくれたソロの作品に比べればずっと激しくてゴリゴリなんだけど、そこでちゃんと抜き差しをしよう、というのが今回のコンセプト。出すところは出して、音を抜くところは完全に抜いてしまう。メンバーは自分の持ってきた曲がどうなってるのか、仕上がり聴いてどんな顔をするか楽しみだったりもするんですけど(笑)。
──その様子を想像すると、こちらまで楽しみになってきます。
清春:これまでより自由度高いです。もちろん僕が作ってきた曲もありますよ。
■ある種の過渡期に来てる部分はあると思う

■一旦、ここで立ち止まるべきかな、と
──楽しみにしています。で、そのアルバムの完成を待たずして、6月1日には<The reproduction 7th anniversary「EVIL 77」VS 7 days>と銘打たれた対バン・シリーズのライヴが始まるわけです。しかもこれが、あり得ない顔合わせによるものばかりで。
清春:あ、YUTAROの助言が大きいですね。最初、「フェスとか対バンとかってどうなんですか?」みたいに言ってきて。「(共演者は)僕が集めますけど」とか強気な感じで。SUPER BEAVERとかa flood of circleはYUTARO繋がりですね。ミオヤマザキも彼の知り合いを通じてコンタクトをとって。LOUDNESSは僕からオファーしたんですけど、先日のライヴにうかがった時に改めて高崎(晃)さんにお願いをして聞いて頂けました。HER NAME IN BLOODも僕からダイキにラインして。BiSHは(楠瀬)卓哉(ソロ作品やツアーに参加しているドラマー)を通じてお願いしました。彼がちょっと前にバックで演奏してたりもして、先方の事務所の方がちょっと僕のこと好きみたいで(笑)。東京ゲゲゲイはYouTubeでたまたま知って、絶対一緒にやりたいと思ったんです。この人たちと何か一緒に、と。
──すごいですね、それ。
清春:岡崎体育ってひと?が一瞬ファンクラブのVIP待遇の件で騒ぎになったことがあったじゃないですか。誰かがリツイートしたその話題が僕のツイッターのタイムラインに入ってて。で、僕はよく知らなかったからそんな人気あるのか、ってYouTubeで見てみたんですけど、その画面の横にオススメで東京ゲゲゲイが出てきたんですよ。「何これ? 知らない!」と思って。普通におもしろ映像なのかなと思いながら見てみたら、度肝を抜かれまして……しばらくポカンとしましたね。それでほとんどの映像を見漁って。で、うちの映像を手掛けてる小田切監督の奥様がコンテンポラリー・ダンサーなんですね。小田切と話してる時に「なんで清春さん、東京ゲゲゲイなんか知ってるの?」という話にもなったらしく。僕はその時点ではミュージックビデオに出てもらいたいなあと思ってたんだけど、そこで話してるなかで、ライブを一緒にやったほうが面白いかも、ということになったんです。それで正式にうちのマネージャーのからオファーさせてもらい。完全なる超ラヴコールですね、久しぶりの(笑)。誰かからオファーを受けることはたまにあっても僕から「出て欲しい」とか言うことって滅多にないから。
──どちらにしてもすごい顔ぶれが揃いました。しかしそもそもYUTAROさんから「対バンとかどうですか?」と持ち掛けられた際、清春さん自身にもsadsをもっと広くアピールしたいという気持ちはあったわけですよね?
清春 : 彼が言うわけですよ。僕がまだ会ったことのない誰かについて「あいつ絶対、清春さんのこと好きですから」とか(笑)。「いやお前無理矢理そう言わせてんじゃないの?」と思ったりもしますけど(笑)。まあそういうのもありながら、なるべく楽しくやろうとは思ってて。いわゆるフェス系というか、フェスによく出てるバンドばかりに声掛けるのもアホらしいと思ったし、そこでLOUDNESSという偉大な存在は絶対必要だと思ったんですよね。結果、アイドルもいれば、キワモノ視されてるような人たちもいて。まあでもこの対バン・シリーズはYUTAROのアイデアであることは確かです。あいつ結構提案型なんですよね。
──sadsを観たことがない人たちの目にどう映ることになるのかが楽しみです。
清春:ですかね。BISHとの日なんてほとんどうちのファンいないすよ(笑)。すごい勢いですもんね、今。
──確かに。そうした賑やかな6月の先に、<The reproduction 7th anniversary「FALLING」>というこれまた全7公演のツアーが控えているわけですけど。
清春:実はまだ発表してないんですけど7月のツアーはあくまでその<FALLING>の”CHAPTER 1”で。つまり”CHAPTER 2”も”CHAPTER 3”もあるってことなんです、それぞれ7本ずつ。だから対バンのを含めて、7本のシリーズを4回やることを予定していて。”CHAPTER 2”と”CHAPTER 3”には、当然ですけど”CHAPTER 1”とは違ったテーマもあって、とにかく”7”が続いていくことになります。
──普通、そうした7づくしは縁起のいいものですけど、<FALLING>というツアー・タイトルが意味するのは”堕落”だし、清春さん自身、去年あたりから「来年はsadsをやるけど、そこでもう終わりかもしれません」的な発言をしていたりもしていて、なんだか不穏な空気を感じさせられます。
清春:わからないですね。どうなるかも。経験で言うと実際にやってみてからでないと先のことはわからないというのがあるので。今回は2010年の7月7日にデビューして、『7』っていうアルバムで再結成したsadsが7年を経え、更に通算7枚目のフルアルバムだったりとか。要するに、満7年を過ぎたところで一旦ちょっと考えようかな、という時期に来たんだと思う。僕が今年で50歳になるというのもあったりとか、来年が僕にとってはデビュー25周年だったりというのもあるんだけど。そこでこれからどう生きていくべきかって考えた時に、このハード過ぎる音を得意としているバンドの中での歌唱を続けていくことが年齢的に容易でなくなってはきたんだよね。まあ正直なところ、時折爆音の中にいて燃えきれてない自分が出てきてしまってる。多分、自分が思う近年の自分の良さみたいなものを抑えて、昔からの激しい部分を思い出しながらやってることを自覚してるからだとも思う。今も突進することも嫌いじゃないし得意なことではあるんだけどね。自分の肉体面とか、メンバーの人生にどこまで自分が関われるのかとか、または付き合って貰うのかとか、そういうことをいろいろ考えてしまうような場面がライブで何度かありまして。もちろん最後に加わったYUTAROも含めてそれぞれみんな自立してるんですけど、やっぱりsadsというバンドに彼らを迎えて僕と関わってくれたことにより、各々がそれまでの音楽人生とは違うステージに立ったはずだと思うんですね。それこそK-A-Z君やGO君とは黒夢の復活から一緒なので、そろそろ丸10年を迎えようとしてるわけじゃないですか。そこで、ある種の過渡期に来てる部分はあると思う。もちろんまだまだお互いやりたいと思ってるのは間違いないんだけど、一旦、ここで立ち止まるべきかな、と。ソロで追求していきたい音楽があるなかで、一年に何回か夏にはsads、という形でやっていると、やっぱりなんか他の活動も含めてすべてが短く終わってしまうですよ。夏にsadsをやって、秋にソロを作って年明けに作品を出して……という周期で動いていると、どちらも中途半端なところで終わってしまう。そこでちょっと、この7年の後はペースを変えたいなというのがある。解散するとかそういうことではないんだけどね。毎年、夏が来るたびにやってたようなことを来年はやめてみようと。僕はそういった意味合いを<FALLING>というツアー・タイトルに込めたつもりだったんで、それを見てもらえればすべて伝わるだろうと思ってたんですよ。ところが意外とファンのみんなもただただツアーに期待してくれちゃっているのかなと(笑)。そこで、これは増田さんに話を聞いてもらったほうがいいだろう、と思ったわけなんです(笑)。
──恐縮です(笑)。しかし実際、この言葉は不穏ですよ。堕ちていく、と言っているわけですから。
清春:もうモロじゃん、と思うんですけどね。
──”falling in love”だと思われてしまったのかもしれません。
清春:ああ、”falling down”のほうなんですけどね、実際は。
■いろいろ考える時期なんだろうなとは思います

■50歳、25周年、というのを迎えるにあたって
──清春さんに対して、”器用にいろんなことを同時進行させている人”というイメージを持っている人も少なくないと思うんです。しかし実はすべてをちょっとずつやりたいわけではなく、どれも徹底的にやりたい。その後に控えているソロ活動のことを考えながらsadsをやったり、その逆だったりというような動き方を、本当はしたくないんだろうなと思うんです。
清春:うん。やっぱり”次”があるといろんなことを考えなくちゃならないですから。何かひとつやることが、次にやろうとしてる何かに向けての布石になっちゃってたりとか。なんか、そうやって続けていくことで一個一個の輪がちっちゃくなってきてしまったように感じたんですよね。たとえば黒夢を復活させてた何年間かというのはほとんどソロもやってなかったわけですけど、結局そういう時期も何年かで一度終わって、またソロになって、sadsがまた動き始めて、という流れがあって。僕は一個しかやれないわけではないし、それができることは立証済みなんですけどね。たとえばイメージとして、今の自分はバンドもやってるわけだから「あ、sadsの清春さんですよね?」って言われてもべつに当然のことだし全然構わないんですね。黒夢は実際のところ今は動いてないけど、終わらせたわけでもないから「黒夢の清春さん」と呼ばれることにも抵抗はない。ただ、そこにちょっとした違和感をおぼえることはあるんです。確かに止めてはいないけどやってないな、みたいな。
──そういったことについて心苦しく感じている、というわけではないんですよね?
清春:それはない。ただ、いろんなバンドが復活してるなかで、たとえばバンドとしての大きな動きがあって、それが止まってる数ヵ月の間は各々はソロで動いて、みたいな活動展開をしてる人たちも近年は増えてきてる。そういう活動のあり方について、何が正解で何がそうじゃないというのはもうないんだ思うんです。というか、おそらく答えはないんだと思う。だけど僕としては、ここでちょっとしたリセットを求めたいというか。元々はね、東條(雅人:元FOOL’S MATE誌編集長/2009年に他界)さんへのレクイエムというか追悼の気持ちから動き始めたのがあったし、今年はまた9月28日(東條氏の命日)に岡山にも行くんですよ。ここまで再度バンドも頑張ってきたけど一旦整理する時期に来ました、ということを告げに行くためにね。この何年間か岡山に行ってなかったのは、毎年行き続けるのもちょっとトゥ・マッチかなと思い始めたからだったんですが、自分が50歳になる年でもあるし、今のsadsが満7年を経たタイミングでもあるし、そこでふたたび岡山に行って、そこをひとつの区切りにしようかな、と思います。
──終止符ではなく、ひとつの大きな到達点を迎えたというか。
清春:うん。たとえばVAMPSみたいに徹底的にそれに専念した活動を何年もやれていたわけではないので、sadsにとっての答えというのは非常に見えにくいところがあるんですけどね。なんならsadsをいまのペースのまま続けることもそんなにも難しく思ってるわけではないけど。今こうして1人でやってることがあるなかで、でも、もしsadsをやるならsadsだけでもいいような状況にホントはならなきゃいけないんだけどさ、何故かそうなれないこの気持ちはいったい何なんだろうと。
──複数のことをすべて良好なバランスでやるというのは、同じ期間で区切るとか、そういうことではないはずですしね。誤解を招く言い方かもしれませんが、sadsの活動が成立するのは、清春さん個人の活動基盤が揺るぎないものとしてあるからこそだと思うんです。そういう意味では現在のオフィシャルサイトのあり方も象徴的だなと感じます。今、sadsだけのサイトというのはないわけですから。
清春:僕個人のオフィシャルサイトのなかに含まれてますからね。
──結果、それがいちばんわかりやすい。すべてここに含まれているんだな、ということが一目でわかるわけで。
清春:そうですね。ただ、同時にちょっと……全部僕がメインになっちゃうのはどうなのかな、と最近では思っちゃうところもあるかな。僕が誰かのプロジェクトに参加しますとか、そういうのだったらいいんですよ。たとえばSUGIZO君の作品で歌わせてもらったとか、誰かのトリビュート・アルバムに参加したりとか。そこで自分が何のシンガーとして呼ばれてるのかはわからないし、それを敢えて確かめようとも思わないわけですけど、たとえYOSHIKIさんのフェスにもソロで出たりしたじゃないですか。実際、たいがいお誘い受ける際には「どの形態で出てもらっても構わない」みたいに言われるんです。ただそこで「どれでもいい」と言ってもらえるのは嬉しくもある半面、「ああ、なるほど」という部分もありますね。
──すべてについて「これじゃないと困ります」と言われたいわけですよね、要するに。
清春:うん、言ってしまえば。もちろん「どれでもいい」というのはいい意味で言ってもらえてるわけですから、そこについて全く嫌な気持ちを抱えてるわけなど無いんですけどね。なんと言うのか、自分はバンドだけに専念してる人にはもう戻れないんですよ。ソロでもうちょっとやりたいこともあるし。もちろんソロ・ツアーもやる。本来そのツアーにしても半年ぐらいかけてゆっくり回るような形でもいいはずなんだけど、その先にバンドでの動きが控えてるとなれば、限られた時間のなかで集中的にやらざるを得なくなる。そうしていくと結果的に年間を通じてやるべきことが増えてきて、それは観に来てくれる人たちには喜んでもらえるはずだけど、同時にファンのみんなにとっても負担になり兼ねない。そこで僕はある時、マネージャーに話をしたんです。今はまだギリギリのところでクリアできてるけど、このままの実働量が続くと僕自身が持たなくなるかもだね、と。精神力の部分でも、体力の部分でもね。もちろん死ぬまで永遠にチャレンジをしていきたいし、たとえば今、Huluで『デヴィッド・ボウイ 最後の5年間』という映像が上がってるんですけど、やっぱりその5年間におけるボウイというのは”遺す”ということに対する壮絶な衝動と、死ぬまで新しいことに挑み続けたいという意欲に突き動かされてるんですね。今、時代がこれまでとは違うじゃないですか。10年前とも違うし、僕がデビューした1990年代前半とも違う。やっぱ明らかに今回の対バンにしてもそうですけど、ものすごく多種多様で、今までだったら「絶対ないでしょ?」って言われてたことが普通にある時代になってきていて。この対バンに限った話じゃなく、世のフェスとかでも当時ではあり得ないことが普通に起きてる。ロック・フェスなんだけどアイドルも出るし、ロック然とした人たちのほうが意外と少なくなってしまった。
──ルールが壊れて、逆に、壊れていることがルールになってきつつある気がします。
清春:うん。実際はロックでもないんだけどロックっぽいもの、というのがたくさん実在しててね、もはやそれを普通に認めざるを得なくってきてる。そんななかで、自分って何なんだろうな、みたいなことを改めて考えさせられたりとか。そこでsadsのことに限定して言えば、やっぱりYUTAROが入ってきたことは大きいですよね。僕の見え方、僕が自覚できてない僕の見え方っていうのを、あいつは冷静に見てるし、知ってるので。もちろん自分のことはわかってるつもりだけど、自分のことだからこそ見えない部分というのはあるわけです。そこで彼は、何かを強引に押し付けてくるわけじゃなく「それって僕はこう思ってたんですけど?」みたいなことを言ってきたり、そこで改めて気付かされたことがあったり。だからまあ、いろいろ考える時期なんだろうなとは思います。50歳、25周年、というのを迎えるにあたってね。そこでまずsadsにとっての流れに一区切りつけたいな、というのがあった。
■それは実際、僕の愛なんです

■sadsに対しての
──ここで読者に誤解して欲しくないのは、sadsが今年をもって確実に終わる、という意味ではないということ。ただ、これで終わっても悔いが残らないくらい今年はsadsをやりきるつもりがある。そして来年以降にそれをどうしていくかは、その結果が決めることになるし、仮にしばらく動かなかったとしてもそれは終焉と直結するわけではないということ。
清春:これは活動休止とかそういうのではなくて。僕が存在してる以上、僕らは自由自在なんです。やりたい時にやればいい。ただ、自分なら自由自在にやれると思って実際そうしてきたし、今もできるにはできるんですけど、さすがに僕も……いつまでも超人ではないんで(笑)。あとさ、実は僕は器用じゃない。いや、他の人たちからすれば器用なのかもしれないけど、実はそれほどでもないんですよ。
──おそらく器用ではあると思うんです。で、やろうと思えばできてしまう。だけどそこに負担がないわけではない、ということだと思うんですよ。
清春:そうですね。軽々とやってのけてるわけじゃないというか。あの人にまかせておけば大丈夫、清春さんなら大丈夫、とまわりから思われてる部分は確実にあるんだけど、結果的に大丈夫だったとしても負担がないわけではないから。
──とてもよくわかります。「増田さんにまかせておけばなんとか記事は間に合う」と思われていることの多い僕としては。
清春:ははは! いや、増田さんだったら大丈夫です。アーティストが喋ってればそれを本にしてくれる(笑)。あ、実際に自分のこれまでの人生の本も出したいなと思ってるんです。50歳になるという節目でもあるし。本当は僕、大変な1年を生きてるんだと思うんですよ。社会での立場とか、大事な人との距離感とか、この年齢なりの健康状態とか、自分の親父の場合はこうだったけど、その年齢になった時の自分はどうかとか、いろいろと考えてみるとね。そういうことを本当に考えるべき年齢なんだろうなって思わされたりとか。そんな中、sadsはsadsとして頑張ってきたんですけど、一旦は『FALLING』というアルバムとツアーを遺して……。そこには「また次にsadsが来るまで待ってます!」と言ってくれるファンもいるかもしれないけども、僕はそこで期待させたくないので、もうないかもしれないし、それはわからないよ、と言っておきたい。他の人たちが言うところの先の約束がある活動休止とかではないんで。仮に僕がまだ30歳とかであれば、いろいろやりたいだろうし、全部やっちゃうんだろうけど、もうそろそろ3つあったことが2つになり、最終的にはそれがひとつになっていく、というのが正解のひとつなのかな、と。もちろんやるかもしれないですけどね。
──それぞれの場でやりたいことはまだまだあるはずだと思うんです。すべてを全うしたい気持ちがある。だからこそ次にいつ、何をやるかは約束せずにおきたいというか。
清春:もちろんsadsでやりたいことというのもあったんです。ただ、最後のチャレンジだと思いながらsadsを動かし始めてから、こうしてすでに丸7年以上が過ぎているわけで。しかも僕にはsadsしかないわけではないから、それは常にソロの自分の音楽に対してのカウンターのような感じのあり方になってしまう。全部の形態が同じように成長していければいいんだろうけど……。たとえばsadsの曲のなかにもソロでのライヴに持ってこられるものとそうじゃないものがある。ソロに持ってこられないものだけsadsでやっていけばいいということになると、それもなんかちょっと違う気がするしね。まあ、すべてが自分なんだと言ってしまえばそうなのかもしれないけど、sadsをやっていくんだったら本来ならばsadsとしての成長というのがないといけないと思う。今作ってるアルバムについても、たとえば激しすぎるsadsが好きな人たちが聴いたら「えっ?」となるだろうと思うんです。だけどそういうものになるのは、僕がまだsadsに未来を残してるからだと思う。つまり「これでもう最後なんだから徹底的にゴリゴリやればいいじゃん」ということにはなっていないわけ。言ってしまえば、今回のアルバムはここ何年かのsadsの作品のなかでも僕自身のカラーが最も強いと思うんですね。たとえば過去、黒夢が復活作を出した時に、「これ黒夢じゃない、清春のソロじゃん」という人たちがいたのかもしれない。ただ、それは僕がソロをやっていなかったとしても復活時までの時間の経過で、いま黒夢が新作を作ればこうなっていただろう、という想定のもとに作ったものだったわけです。それと同じことが今回のsadsのアルバムについては言える。色としては僕と三代さんの色が強いんだと思う。それをどう見られるか、というところなんですよね、問題は。だけど、それは実際僕の愛なんです、sadsに対しての。
──ここでひとつ確認なんですが、アルバムも『FALLING』というタイトルになるんですね?
清春:そうなる予定です。今回の話を通じて、そのタイトルの意味をわかってもらえるといいんですけどね。だから今のsadsを一回でも多く観ておきたい人たちは、今回の対バン・シリーズから観に来ても早くは無いはずです。なんなら『FALLING』が出る前のsadsのライブはこの対バン・シリーズが最後ということになる。これから発表されることになる夏以降のライヴでも、そんなにもいろんなところに足を延ばすことは考えていないしさ。
取材・文◎増田勇一
■<The reproduction 7th anniversary「EVIL 77」VS 7 days>

6月01日(金) 恵比寿LIQUIDROOM w/東京ゲゲゲイ

6月09日(土) 渋谷CLUB QUATTRO w/SUPER BEAVER

6月10日(日) 渋谷CLUB QUATTRO w/a flood of circle

6月12日(火) 横浜BayHall w/LOUDNESS

6月15日(金) 恵比寿LIQUIDROOM w/BiSH

6月23日(土) 新宿BLAZE w/HER NAME IN BLOOD

7月09日(月) 代官山UNIT w/ミオヤマザキ

■<The reproduction 7th anniversary「FALLING」>

【chapter 1】

7月06日(金) 赤坂BLITZ

7月21日(土) 梅田CLUB QUATTRO

7月22日(日) 梅田CLUB QUATTRO

7月28日(土) 名古屋BOTTOMLINE

8月03日(金) HEAVEN'S ROCK さいたま

8月17日(金) 高崎club FLEEZ

8月23日(木) 柏PALOOZA
■<The reproduction 7th anniversary「FALLING」-EVERLASTING TRUTHS->

9月29日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM

関連リンク

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着