三宅弘城とみのすけに聞く~ ナイロ
ン100℃の25周年記念公演第2弾『睾丸
』は硬派な群像劇

旗揚げから四半世紀という記念すべき年を迎えたナイロン100℃の、2018年の劇団本公演第2弾は待望の新作『睾丸』だ。主宰で作、演出を手がけるケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)によれば、“1968年と2018年を結ぶ半世紀のきっかり中間地点。バブル経済が弾け、浮かれた日々を突然封じられた1993年の日本。「男なら我慢せい! 金玉がついてるなら耐え抜かんか!」厳格な父親の叱咤を浴びながら育った男が、かつての盟友に会ってたいそう幻滅するお話”(チラシコメントより)であり、“劇団の未来を問う新作公演”にもなるという。とはいえ新作公演であるがゆえ、幕が開くまでは果たしてどのような舞台になるのかは誰にもわからない。そんな中で、作品の方向性を予測するための重要なヒントになるはずなのが宣伝ヴィジュアルだ。その撮影が行われた直後に、三宅弘城とみのすけを独占直撃! 『睾丸』が一体どんな作品になりそうか、KERAから託されたさらなるヒントも含めて、語ってもらった。
――25周年記念公演第2弾の『睾丸』について、三宅さんとみのすけさんとしては現在、どんな舞台になると予想されていますか。具体的なことはまだ見えてこない部分もあろうかとは思いますが。
みのすけ 硬派な感じになるみたいなんですよね。タイトルは『睾丸』ですが、ふざけたほうの睾丸ではなくて。
三宅 ふざけてない睾丸もあるの?(笑)
みのすけ いや、つまりコメディ的なものではない、というか。
――タイトルから受ける印象だと、勝手にコメディ路線かと思っていました。
みのすけ そうとも取れますよね。でもそちらのイメージではないらしく。KERAさんからもらったヒントによると、ナイロンでは今までやったことのないような社会派、硬派な芝居になるらしいんですよ。
三宅 以前、『フローズン・ビーチ』(1998年初演)という作品で出演者がすべて女子だけという公演があった時、KERAさんに「男だけの舞台もやりましょうよ」っていう話をしてて、それで『ノーアート・ノーライフ』(2001年初演)をやることになったんですね。でもあの時は僕らの資質もあって、女々しい男たちの話になったんですよね。なので今回もどうなるのかはわかりませんけど、KERAさんからのヒントからは、今までのものよりはかなり男っぽい作品を意識しているようなので、そこは僕らも頑張ろうと思います。
三宅弘城
みのすけ 少なからず、攻撃的なものにはなるんじゃないでしょうか。静かなものになるか、派手なものになるかはわからないとはいえ、攻撃性に向かう姿勢がどうやらKERAさんの中にありそうなので、そこも面白そう。もしかしたら、すごく不条理なものになる可能性もまだありますけど。学生運動が激しい頃の時代を生きていた人間の話みたいですから。
三宅 だけど、学生運動って、今の若い人たちにわかるのかな。
みのすけ ピンと来ないかもしれないね。
――昔は、日常にも少しはその匂いが残っていましたけど。
三宅 大学の構内にも、普通に立て看板があったしね。
みのすけ ライブとかイベントにもそういう名残みたいなものがあったけど、今はさすがに。
みのすけ
――なさそうですよね。映画や小説など、その時代を描く作品で目にするくらいで。KERAさんがそういう時代をモチーフに選んだということに関しては、おふたりはどう思われましたか。
三宅 意外でした。比較的、寓話とか、架空的な世界が描かれることが多かったりするので。まあ、これも最終的にどういう作品になるかは、まだわからないですけど、楽しみです。
みのすけ 昔、学生運動をやってた人の話ということで、その時代のことが会話にちょっと出てくるだけとか、全然関係ない物語になる可能性もありますからね(笑)。だけど、題材としては確かに珍しいと思います、KERAさんがそういうものを選んだというのは。
三宅 そこに客演で赤堀(雅秋)さんが出るっていうのがいいじゃないですか。
みのすけ ピッタリだよね!(笑) 坂井真紀さんにしても、まさにその時代を描いた映画に出てたりしていたし。
三宅 僕、実は赤堀さんとご一緒するのは今回が初めてなんですよ。
三宅弘城、みのすけ
――それも、ちょっと意外ですよね。
三宅 映像で、同じ作品に出ていたってことも恐らくないんです。もちろん、赤堀さんが役者として出られている作品であったり、作・演出されているものを観たりはしていますけど。
みのすけ KERA・MAPやシアターコクーンでの作品などでKERAさんの作品には出られているのに、僕らはその作品には出ていなかったりするから、KERA作品では一度も共演したことがありません。僕自身は昔、THE SHAMPOO HATの公演に出させてもらったことがあるので(『雨が来る』(2002年))、一応そこではご一緒しているんですけどね。
――赤堀さんは、学生運動の話に似合いそうですね。
みのすけ そうそう(笑)。
三宅 赤堀さんって、ちょっとそういう危うさがまた魅力的なんですよね。
みのすけ ナイロンにはいないタイプの役者さんだよね。
三宅 ああ、そうだと思います。作品の男っぽさという要素は今回のメンバーの中では、赤堀さんがだいぶ担ってくれるんじゃないでしょうか。
三宅弘城
――そして、坂井さんはもうナイロン100℃の舞台ではお馴染みというか、準劇団員のようなイメージすらあるというか。
三宅 それだけに、すでに安心感がものすごくある。
みのすけ 赤堀さんも坂井さんも、KERAさんの新作につきあった経験がある人たちだから、その点からも参加していただけてとてもありがたいです。そういう意味では、今回のゲストの中では根本宗子さんとイキウメの安井順平さんは未経験だから、稽古が始まったらもしかしたら驚くかもしれない(笑)。それにしても今回のキャストは、メンツとしても本当に楽しみですよ。劇団員の中でも、ずいぶん長いこと一緒に芝居してない人間が多いですしね。
みのすけ
――前作『百年の秘密』に出ていた方とは、また違う劇団員の顔ぶれが揃いますし。
みのすけ そうなんです。きっと同じ劇団公演といっても、まったく雰囲気が違ってくると思います。『百年~』にも『睾丸』にも両方出るのは僕と、廣川三憲さん、長田奈麻、菊池明明だけですから。この間、松永玲子には「『睾丸』なのに、なんで私が出ない? 私こそ出るべきなのに!」と言われましたよ(笑)。
三宅 ハハハ!
みのすけ 確かに、松永なら学生運動をやっていても似合いそうだけどね。
――では、お客様に向けてお誘いのメッセージを、それぞれいただけますか。
三宅 口に出しにくいタイトルではございますが、でも今はインターネットでチケットが買える時代ですからね。口に出さなくても買えますよね? では躊躇せず“K・O・U・G・A・N”と、キーボードを打っていただいて(笑)。とにかく今回は、今までのナイロンにはなかったような作品になる匂いが感じられる新作ですので。ありきたりではありますけど、観たことがある人も、初めての人も、勇気を出して観に来てください!
みのすけ 25周年第1弾の『百年の秘密』は比較的オーソドックスな作品で、普遍的な、大人な世界だったので、第2弾の『睾丸』はおそらくそれに反発するような作品になるんじゃないかと思います。KERAさんっていつも、前の公演との真逆に向かうことが多いので、たぶん攻撃的な作品にはなるんじゃないかな。もしかしたらモラルに反するものになるのか、もしくはとても不条理的なものにもなるかもしれません。僕としては、攻撃していく、挑戦していく側のKERAさんの作品が好きなので、今回はより楽しみなんです。『百年の秘密』を観た人には、それとはまるで違う魅力に満ちたナイロンの作品を観ていただけますし、観ていない人ももちろん楽しんでいただける舞台になるはずですので、ぜひ劇場にいらしていただきたいと思います。
三宅弘城、みのすけ
取材・文=田中里津子  写真撮影=山本れお

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