go!go!vanillas “らしさ”と“新し
い風”を感じさせる新作「SUMMER BR
EEZE / スタンドバイミー」に漲るバ
ンドの自信

go!go!vanillasが初の両A面シングル「SUMMER BREEZE / スタンドバイミー」をリリースする。収録曲は、ポピュラリティ溢れるメロディ展開が印象的な「SUMMER BREEZE」、音の隙間を効かせたアンサンブルとシャッフルビートのノリが心地よい「スタンドバイミー」、そして柳沢 進太郎(Gt)が作詞作曲・メインボーカルを務める「Penetration」という3曲。これまでのバニラズらしさを踏襲しつつもどこか新しい風が感じられるようなラインナップになっている。そこで今回は、5月まで行われていた対バンツアーのこと、新曲の制作に関すること、牧 達弥(Vo/Gt)の作詞におけるこだわりなど、メンバー4人に幅広く質問。どの話題においても、“今の自分たちに自信があるんだ”という彼ら自身の手応えが常に真ん中にあったのが印象的だった。
――ツアーお疲れ様でした。対バンツアー自体、結構久々でしたよね。
牧:そうですね。今回呼んだアーティストは、何かしらの形でライブを観たことがあったり、既に面識があったりして人となりを知ってる人たちだったんですけど、“何でこうなれたのか”がライブを観ていたらすごく分かったからそれが嬉しかったです。僕らが自分たちのやり方を模索してきたのと同じように、自分らの音楽をどう表現していって、お客さんにどう伝えていくかということをみんなそれぞれ考えながらやってるんだなと。
ジェットセイヤ(Dr):今回のツアーでは全バンドと打ち上げをしたんですよ。そこで見えてくる顔もあったから、“だからこういう音楽をやってるんだ”とか“この人だからああいう音を出すのか”みたいなものをいつもよりも感じられましたね。
長谷川プリティ敬祐(Ba):元々知ってるバンドたちとの対バンだったから、2バンドのグルーヴみたいなものが最初からできてたんですけど、そういう空気感って会場にも絶対伝わるんですよ。その上でライブをやることによって、さらに高まっていったから、ハッとするような部分もたくさんあって。
進太郎:僕的に、昨今の対バンってバーサスじゃないというか、“かかってこいや”って感じじゃなくなっちゃってきてたなと思っていたんですよ。だけど今回は、そういう“やるかやられるか”みたいな状態があった上で和気藹藹としてた、みたいな、その間みたいな感覚でやれて。最初のフレデリックとフレンズが3本ずつだったんですけど、もうその時点で“これ、1バンドずつ増やしていかん?”“このままみんなで一緒に行ったらもう最高なんじゃねえかな”っていうテンションになっちゃうぐらい楽しかったですね。
牧:何か、バンドって音楽だけじゃないんだなっていうのをすごく感じたというか。
セイヤ:うんうん。
牧:お客さんもそうですけど、全部含めて魅力じゃないですか。それが本当にみんな違ってて。みんな違うから人を惹きつける力を持ったんだな、そうやってここまで来れたんだろうなっていうのはやっぱり感じましたね。
go!go!vanillas/牧 達弥(Vo,Gt) 撮影=大塚秀美
俺が“来いよ”なんて言わなくても来てほしいけど、それは俺の理想なだけ。そう言った方が来やすいなら、自分から伝えた方がいいなって思ったんです。
――今回リリースするシングルのリード2曲、「SUMMER BREEZE」と「スタンドバイミー」はツアーでも演奏してましたけど、バニラズらしさを踏襲しつつも今までにない方向に進んだ印象があって。制作の段階で今までと違うポイントがあったのかなと思ったんですけど。
牧:この2曲は同時進行で作っていって。今までは僕がある程度形にしてからメンバーみんなに聴かせるみたいな感じだったんですけど、今回は最初っからみんなで集まって、途中段階から共有していきました。そこが大きな違いかな。『FOOLs』まで作ってきて、DTMを使って自分の中で完結するレベルには曲を作れるようになった時に、こう、孤独ではないですけど、そういうものを感じたんですね。それで“自分の曲だとしても弾くのはメンバーであるわけだし……”っていうのを考えた時に、それなら最初の段階から僕だけじゃない音を入れてみたいなっていうふうに思って。
――そういうふうに制作してみていかがでしたか?
セイヤ:単純に楽しかったですね。
進太郎:何か合宿みたいな感じでやろうよっていう話になったんですよ。それで初日に牧さんの家に行って、パソコンと向き合ってみんなでやっていって、“じゃあ固まったからスタジオ行こうや”って外に出て……みたいな、今までと結構違う感じのやり方だったんですけど。そうやって実際に音を鳴らしてみたら、頭の中で描いてたものやパソコン上でやっていたものとの違いがどんどん出てきたりして。だから作り方としては理にかなってたというか、僕はすごくやりやすかったですね。まあ結局、牧さんの家には泊まらなかったんですけど(笑)。
プリティ:着替えとか持ってきたのにね(笑)。
セイヤ:そうそう。ドラムに関しては今までの曲の応用編っていう感じで。分かりやすく言うと、「スタンドバイミー」は自分の中では「ニューエイジ」と「オリエント」のミックスなんですよ。「SUMMER BREEZE」は8ビートなので「アクロス( ザ ユニバーシティ)」辺りの爽快な曲の進化形っていうイメージですね。
進太郎:でも今回は最初っから一緒に作ってたから、メロディラインが如実に現れてる状態も聴いていたじゃないですか。それを大切にしたいなっていう共通認識がみんなの中であって、意図的にシンプルにしたんですよね。だから「SUMMER BREEZE」も「スタンドバイミー」も今までの曲と比べたら全員あんまり弾いていないです。
プリティ:メロディ然りコード進行然り、グッとくる肝っていうか、いいなっていうポイントが最初っから共有されてる状態でのスタートだったので、演奏的にも洗練されてるんじゃないかなと思います。
go!go!vanillas/長谷川プリティ敬祐(Ba) 撮影=大塚秀美
ライブでも“よっしゃ新曲やるぞ!”っていう感じじゃなかった。曲に対する自信がものすごく強くあったので、そういうものも伝わったんじゃないかな。
――2曲とも、ライブでは新曲とは思えないほど盛り上がってましたね。
プリティ:何か“よっしゃ新曲やるぞ!”っていう感じじゃなかったというか。曲に対する自信がものすごく強くあったので、そういうものも伝わってたんじゃないかなって思いますね。
セイヤ:そうね、ノりやすいし。「SUMMER BREEZE」を初めてやったのは沖縄のワンマンだったんですけど、それがすごかったんすよ。スッゲー盛り上がった記憶があって。
進太郎:あー、僕は逆に全然記憶にないですね……(笑)。初めて(新曲を)やる時って基本はめちゃくちゃ緊張するんですけど、この2曲は緊張してなかったから逆に憶えてなくて。気づいたらライブでメインになってたなあっていう印象です。
――歌詞も変わりましたよね。「スタンドバイミー」のサビには<僕についてきて>っていうフレーズもありますし、全体的に、聴き手を引っ張っていくようなテンションというか。
牧:まさにそうですね。前にインタビューしてもらった時、“一緒にバカやってこうぜ”“それをやってもいいんだぜ”っていう環境づくりをして、一緒くたになってカルチャーを作っていきたい、みたいな話をしたじゃないですか? 実際それを考えながらライブもやって、ワンマンツアーではお客さんたちみんな自由に楽しんでくれてたんですよ。で、そのあと冬フェスに出た時、初めて観に来た人とかは“あ、こういう感じでノるんだ”っていうふうに周りを見てノッてる人もいるんだなっていうことが分かって。
――確かに、ハメを外していいんだといきなり言われても、そのやり方自体を知らなくて戸惑ってしまう人もいるかもしれません。
牧:何事もそうですけど、誰かが挙手しないと物事って進まないじゃないですか。特にフェスは俺らのことを知らない人もいるから、ひとつ背中を押すために先陣を切るというか、“じゃあ俺がまとめるから”ってまとめ役として挙手した方がより心を動かしやすくなるのかな?っていうところで。別に俺が“来いよ”なんて言わなくても来てほしいけど、それは俺の理想なだけであって。そう言った方が来やすいなら、その人が心を解放しやすくなるんだったら、自分から伝えていった方がいいなって思ったんです。今回はそういう部分を歌詞の中に入れ込もうっていう意識はかなりありました。
go!go!vanillas 撮影=大塚秀美
――なるほど。牧さんの書く歌詞って、どこか違和感のあるような言葉が混ざってることがあるじゃないですか。今回で言うと、例えば「SUMMER BREEZE」だと“阿吽の呼吸”、「スタンドバイミー」だと“一握りの正義”が何だか引っかかったんですけど。
牧:あ~。それは俺の癖ですね。
――というと?
牧:歌詞の作り方の変遷から来てると思うんですけど……最初は洋楽がすごく好きだったから、洋楽みたいなメロディに合うように音を重視してたんですよ。だから本当に心から出た言葉なのかっていうとそうじゃなかったんですけど。そこでまず“これだったら唄ってて何も面白くねえな”っていうところに行きつくんですね。それで、お客さんもどんどん増えてきて、期待されるようになってきたからには“自分の思うことを伝えたい”“それが一番伝えられるのは歌の中だ”とも思ったので、日本語をしっかりと歌詞にしようっていうふうに考え出して。で、おじいちゃんおばあちゃんや子どもにも口ずさんでもらいたいから、分からない言葉をなるべく使わないようにしようと思って、今はできるだけ口語にしたいっていうのがあるんですけど。そういうことを志して書いていって。
――でも“阿吽の呼吸”って普段喋ってる時にあんまり言わないような……。
セイヤ:他の曲でも“あまたいる若者達”とか、変な日本語いっぱいあるよね(「ハイテンション」より)。“たくさんいる”って言えばいいのに。
プリティ:確かに。
牧:“阿吽の呼吸”とかは昔の癖がちょっと残ってるんですよ。例えばここだったら“一緒に力を合わせて”“一つになって”みたいな言葉も使えるじゃないですか、普通だったら。でもそれはヤダって思うの。どこかで比喩してたりとかドキッとさせるような、“え、何?”って思えるようなものは残していたいっていう気持ちがあって。“阿吽の呼吸”ってみんな知ってる言葉だから普遍性はあるけど、でも、なかなか歌詞の中では出てこない言葉じゃないですか。そういうのをここでぶち込みたかったんだろうなって思いますね。
セイヤ:語感なのかなと思ってた。
牧:うーん……どっちかって言うと、“上手いこと言ってるだろ?”っていうのをサラッとさせたい感じ?(笑) でも同じ世代のアーティストやバンドがいっぱいいるなかで、例えば演奏やライブで“あのバンド強えな”って思うことはあっても、歌詞に関して“負けた”って思ったことは昔から1回もないんですよ。“俺は他とは違うぜ”“これ、お前の頭から出てこないだろ”っていう感じで書いてたりするから、この部分はそういうのを出す場所っていう感じですかね。
go!go!vanillas/ジェットセイヤ(Dr) 撮影=大塚秀美
前にカラオケで「ヒンキーディンキー」を唄ってみたら“うわ、きっつ!”って。よくあの速さで唄えるなあと思ってから普段のビートを考えるようになりました(笑)。
――失礼な言い方になっちゃうんですけど、“普段天然なところがあるのにこんな歌詞が出てくるなんて”みたいなこと、よく言われません?
牧:あ~、それすごい言われるんですよね。
セイヤ:メンバーでもそれは思いますよ。
進太郎:普段言わないようなことが突如歌詞で出てくるから“あれ?”ってなる。
牧:俺も不思議ですもん、何でこんなん出てくるんだろう?って。歌詞って書きだすまでどう転ぶかあんまり分からないんですよ。でも、そういう言葉の使い方っていうのは、何か変な時にパァン!って来るんですよね。で、昔は“出ない出ない……”ってなることもあったんですけど、最近は結構パァン!って出てくるし、そしたら“あ、この文はもう大丈夫だ”みたいな感じでいけるんです。
――めちゃくちゃ不思議ですね。3曲目の「Penetration」は柳沢さんが作詞作曲を担当しています。これ、以前リリースした「12:25」「ストレンジャー」と合わせて三部作なのかなと思って。
進太郎:それはめっちゃ意識しましたね。三部作で言うと、この曲が「ストレンジャー」と「12:25」の間にあたるので、その2曲をミックスさせたような曲調にしてて。牧さんが「ヒンキーディンキーパーティークルー」「おはようカルチャー」「平成ペイン」で三部作を作ったっていうのをずっと言ってて、それを聞いた時に俺もやりてえなって思ったんですよ。曲の作り方にしても歌詞にしても、やっぱり一番近くにいる一番の見本なんだなと。だからちょっとずつパクッていこうっていうスタンスではいますね(笑)。
――歌詞は曲が進むにつれて感情的になっていく構成で。これは主人公の心情の変化を反映したようなイメージですか?
進太郎:そうですね。イントロから1番終わりにかけてはマイナー調が強く出ているので、分かりやすい詩みたいなものにしたいなと思って。だけど書いていくうちにだんだん僕もこいつになっていくというか、“こう言いてえ!”って思うようになっていくんですよ。それで最後はこういう汗っぽい感じになったんじゃないかなと。
go!go!vanillas/柳沢 進太郎(Gt) 撮影=大塚秀美
スタジオワークで険悪なムードになることはゼロになりましたね。言葉のキャッチボールをうまーくできるような環境になっていってると思います。
――柳沢さんもそうですけど、バニラズはもう4人全員が曲を書く、そして唄うっていうことが通常営業になってきてるじゃないですか。それによって例えば演奏の仕方とか制作時のコミュニケーションで変わったことってありました?
セイヤ:実は前にカラオケに行って「ヒンキーディンキー(パーティークルー)」を唄ってみたんですよ。そしたら“うわ、きっつ!”って思って。ライブだとやっぱりテンション上がってテンポが速くなっちゃうんですけど、いや、よくあの速さで唄えるなあと思って(笑)。
牧:ははは!
セイヤ:そこから普段のビートを考えるようになりました。俺も唄いながら叩こうって。
牧:やっぱり曲を作ったり自分で唄ったりすると、今までに使ったことのない思考回路を使うことになるじゃないですか。そうなると、曲に対しての視点が自分のパートだけをやってた頃と変わってくるし、それが結局バンドに還元されていくんですよね。そもそもメンバーに“曲を書いてみたほうがいいよ”って言った第一の理由もそれだったんですけど。
――最初に合宿みたいに制作したっていう話になった時、クスクス笑いが聞こえてくるぐらいのテンションだったのがすごくよかったなあと思って。バンド内の風通しがいいんでしょうね。
進太郎:確かに、スタジオワークで険悪なムードになることはゼロになりましたね。“あ、なるほどね。それね”みたいな感じで言葉のキャッチボールをうまーくできるような環境になっていってるなあとは思います。
――秋からまた対バンツアーが始まりますけど、引き続き、他のバンドと一緒にやりたいという気持ちがあったんですかね?
牧:ワンマンをやりたくもなりましたけどね。でも次の対バンはまた全然違う意味合いで。『ナイトピクニックツアー』では既にムーブメントを作っているようなバンドと対バンしていったんですけど、次のツアーはこれからそういうものを作っていく人たちっていうイメージですね。初めて対バンするバンドも結構多いんですけど、その相手に対して僕らは“カッケーだろ”っていうところを見せていきたいし、逆に、自分たちにないようなものを刺激としてもらいたい。それに、新しいムーブメントを作っていけるようなバンドを呼んでいる分、お客さんもこのツアーをめちゃめちゃ楽しめたら、互いにとってかなりいい作用がありそうだなっていう感じもしてます。
――それはワクワクしますね。前半戦には東京・大阪での野音ワンマンもありますが。
牧:野外だと環境も含めて楽しめるし、外気の音も含めて音楽に反映させたいなって思うので、それも含めて楽しめるような見せ方をしていきたいですね。
進太郎:瞑想の時間、作りますか?(笑)
牧:無音になる時間は欲しいよね。余韻というか、曲が終わってからすぐに次に行かなくてもいいかなとか思うし。そういう感じで、本当に自由に楽しんでもらえればなあと思います。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=大塚秀美
go!go!vanillas 撮影=大塚秀美

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