空想委員会・三浦による『栃フェス』
"セルフ" クイックレポートが到着

『DON’ T STOP MUSIC FES.』 空想委員会 2018.5.20 栃木文化会館
『栃フェス』皆勤賞の空想委員会。第一回から出演し続け、年を重ねる毎にイベントに呼ばれる側から主催側の気持ちに変わってきている、と述べる彼ら。ライブ会場が栃木市総合体育館から栃木文化会館に変わった今年、彼らは例年とは違ったアプローチで会場に詰めかけたオーディエンスを包み込んだ。
転換中、「休憩中にサウンドチェックさせていただきます、空想委員会です」とゆるい挨拶をしつつ、「ワーカーズアンセム」、「切illing Me Softly」で会場を暖める。演奏開始時刻前に一旦ステージから退場した彼らは、会場BGMが落ちると無音で入場。SEを鳴らさない演出に戸惑ったようにも見えた観客たちだったが、すぐさま登場したメンバーを拍手で迎え入れた。単なる出演者と観客という垣根を超えて、「このイベントを良いものにしたい」という気持ちが混ざり合ったとき、早くもこのフェスを行う意味が生まれたように感じた。
空想委員会
ボーカル・三浦が深々と一礼。一曲目に演奏されたのはなんと「罪と罰」。空想委員会の最新アルバム「デフォルメの青写真」の中の一番最後の曲であり、この直球のバラードを持ってきたところに彼らのイベントに対する気合いを感じた。静かなドラムのリズムから少しずつ楽器が重なり、だんだんと大きな音のうねりになっていき、その上に乗る歌詞にも徐々に力がこもる。歌詞の最後の部分「助けて」というフレーズは音楽そのものに助けを求める、ボーカル三浦の叫びにも聞こえた。
激しい演奏で三浦のメガネが吹き飛ぶ一幕もありながら、そのまま二曲目へとなだれ込む。続けて演奏されたのは「マフラー少女」。空想委員会の楽曲の中でも最も古いこの曲だが、このイベントで歌われるとまた違って聞こえるのがとても不思議だった。イベントのタイトル通り、「音楽を鳴らし続けたからこそ今の自分たちがここにいるんだ」という思いがこもっているようにも聞こえた。ギターの佐々木とベースの岡田が客席との距離を縮めようと演奏で歩み寄る。三浦が内に抱えた闇が影ならば、佐々木と岡田の二人の温かみが空想委員会の光だ。一曲目で会場に広がった暗闇を二人が演奏で照らすような印象。このバランスが空想委員会と言えるのかもしれない。
空想委員会
徐々に光が射し始めた会場へ向けて演奏された3曲目は「劇的夏革命」。一気に真夏の直射日光を浴びるような錯覚に陥る。客席からは青空は見えないものの、この会場に訪れた誰もが今日の天気を喜んだはずだ。それくらい素晴らしい青空。それぞれが抱く青空への想いにアクセスするかように、空想委員会は夏へ向かう景色を歌う。ここまでの「演奏する側」と「聞く側」という構図をぶち壊し、手拍子したり一緒に歌ったりという楽しみ方を提示する。一緒になって音を奏でられるのがライブの醍醐味。楽器はいらない。自分の声と手拍子でも音楽ができるのだということを改めて感じる。この曲をよく知っているか、初めて聞くかは全く関係ない。音楽と夏を心から楽しもうという気持ちは誰にとっても共通のようだった。
ここで初めてのMC。このイベントに参加できることへの喜びだけでなく、イベントのために他県から栃木に訪れた人への感謝を述べる。年々強くなる主催側の気持ちが溢れ出ているようだった。そうして、イベントがこれからもずっと続いていくようにと願いを込めて最後に歌われたのは「エール」。空想委員会が去年一年かけて行ったツアーで生まれ育てられてきたこの曲を、主催のMAGIC OF LiFE、関わっているたくさんのスタッフ、そして客席の一人一人に向かって歌い上げる。三浦が曲に込めた想いとこのイベントが掲げるテーマが完全に一致しているように感じる。
空想委員会
音楽は生活必需品ではない。しかし、音楽が鳴り続けることで救われるものはたしかに存在する。それを改めて気付かせるイベント。きっと音楽に救われる人がいる限り、音楽に救う力があると信じる人がいる限り、『DON’ T STOP MUSIC FES.』は続いていくだろう。そんなイベントの一員として演奏できたことを誇るかのように、退場していく空想委員会のメンバーの顔は充実感に満ち満ちていた。
主催バンドのことをよく知っていて、イベントをやる意味も一番近くで感じているからこそできる演奏。今年も空想委員会は空想委員会なりに「音楽を鳴らし続ける」ことを体現するライブをしたのだった。

文=三浦隆一(空想委員会) 撮影=祖父江孝人、橋本里美
空想委員会

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