【ライブレポート】Silex「観客の心
にたっぷりの栄養を」

2016年にギタリストのMASHAを中心に結成されたSilexは、ドラマティックな楽曲に加えカナダ出身の強力なシンガーによる歌唱力と演奏力の高さで定評を得ているメロディック・メタルバンドだ。2017年11月に1stアルバムをリリースして以降も勢力的にツアーを行い、春ツアーの集大成となるツアーファイナルにて初のワンマン公演(2018年5月12日@Shibuya Ruido K2)を行った。
アルバムのレコ発時と同会場にて行われたワンマン公演は、リリース半年の間にずいぶんと女性客も増えた印象だ。場内BGMにイギリスのメロディアスハードロックバンド:SHYが流れるところも彼ららしい。ほぼ定刻にオープニングSE、アルバム冒頭の「A Thousand Miles」でメンバーがステージに登場すると「Arise」からいよいよ本編がスタートとなった。
メンバーの気合いが力み過ぎてしまったのか、全体的なリズムの不安定さを感じたのも束の間、安定を取り戻しての「Cancion de Amor」はオーディエンスとの一体感も抜群となった。アップテンポながらいわゆる疾走チューンとは違う魅力と、ステージ上でメンバーが飛び跳ねるアクションもお馴染みの人気曲で、すっかりバンドの代表曲となっている。
「今夜の気分はどう?」とピート(Vo)の第一声から「The Medusa」と紹介された初披露の新曲も聴く側を瞬時に引き込む。ジャーマン・メタル調にピートの広域ハイトーンがどこまでも高く、キーボードもフィーチュアされたhibiki(B)作曲による作品だ。
「One Evening in Paradise」から壮大なSEで続くキラーチューンの「Everlasting Symphony」では、キーボードが小さく聴こえてしまった事が非常に惜しい。Silexの魅力のひとつには、ファミリーでありサポートメンバーとしてライブには欠かせないYOSISI(Key)の存在も大きいからだ。キーボーディストの中でも、きちんと音色が考え作られている上、ステージ上でのパフォーマンスも独特なキャラの持ち主である。せっかくの音色が埋もれてしまったのは少々残念だが、総じてMASHA(G)の音色とビブラートは実に心地良く、hibikiのベースはいつもよりアルバムに近い音に感じることができた。
続く「Metal Nation」では、YOSISIがショルキーでステージフロントへ登場すると、その派手なパフォーマンスに場内は待ってましたの歓迎ぶりとなった。ライブにはかかせないこの楽曲も、毎回ハイライト場面と言えるものだ。エンディングのギターソロ部分ではMASHAへのピンスポットからしっとりと「Cry For The Moon」へ。
結成3年目にして初のワンマン公演の実現に、Yosuke(Dr)は「今、楽しくて仕方ない」と語り、「魂を削って楽曲を作り、命を削ってライブをしている」と語るhibikiとソロコーナーを披露した。ドラムソロを叩きながらザ・ビートルズ「Yesterday」を歌うという、先日他界したMr.BIGのパット・トーピー(Dr)追悼を思わせる場面もサプライズだったが、hibikiと二人で奏でるインストでは、フュージョンやR&Bの引き出しも持つリズム隊だからこその見せ場となった。アルバム収録のインスト曲「Forevermore」も、この流れからの素晴らしい出来映えに会場はグイグイと引き込まれていった。
最近のライブでは、日替りで1曲のみ動画撮影曲を決め、ファンにSNSなどで拡散してもらう試みをしているSilexだが、ピートが"撮影OK"の札を手に掲げた本日の撮影許可は、新曲のバラード「Somewhere In Between」であった。一斉に場内が撮影に入る場面も何とも圧巻で、「みんな楽しいでしょう?」とピートも嬉しそうだ。「Cry For You」を挟んで再びの新曲「Call of The Northern Wind」は、東京では初披露となったいかにもSilexらしい畳み掛ける楽曲であった。
楽曲クオリティが非常に高いバンドだが、緩急自在なMASHAのギター、ベースhibiki、キーボードYOSISIのユニゾンがバンドの最大の魅力に思う。看板シンガー:ピートの金属的なハイトーンヴォイスも、安定感と洗練されたYosukeのドラムも全員が主役のバンドだと改めて感じさせられた。そしてサウンド/ルックス/ステージングにも色気と艶感が感じられるところが女性客の増員にもなっているのかもしれない。本編ラストの「Standing On The Grave of Yesterday」まで凄まじい勢いと一体感で駆け抜けると、アルバム全曲と新曲をも披露してくれたメンバーへ拍手とアンコールが鳴り止まない。
「もしアンコールを頂けなかったとしても、皆さんに披露したい曲がありました」と、MASHAが他界したギタリスト、ジーノ・ロートへの想いを語った。彼はジーノに憧れ、ジーノのようになりたい思いでギターをずっと練習していたという。彼の訃報を聞いてからの悲しみの中で、自分に何ができるのかを考え「Wind from the East」と題されたインスト曲を作ったという。そして以前ジーノが日本在住だった頃に愛用していたハットを遺族より譲り受けた事、トリビュート曲を今日はメンバーが一緒にプレイしてくれることを伝え、ジーノ愛用ハットをかぶり、ピートとのツインギターで美しく優しいインスト曲を披露した。
オーラスには、エンディングにプロコルハムの「青い影」を引用したシングル収録の「Cry In The Starlight」で最高潮な瞬間へ、今のSilexの全てで観客の心にたっぷりの栄養を補給してくれた。海外向けのアルバム配信や、リリックビデオ公開のアナウンスもあり、今後も益々の活躍が期待されるSilexは夏ツアーやイベント出演も続々と決まっている。
文:Sweeet Rock / Aki

写真:Misa Sohma 、Kosuke Eikura
<Silex ~ Arise With The Wind ~>

2018.5.12 Shibuya Ruido K2

SE -A Thousand Miles-

1.Arise

2.Cancion de Amor

3.The Medusa(初披露 新曲)

4.One Evening in Paradise

5.Everlasting Symphony

6.Metal Nation

~Guitar Solo~

7.Cry For The Moon

~Drum Solo、Bass Solo~

8.Forevermore(Inst)

9.Somewhere In Between

10.Never Say Goodbye (初披露 新曲)

11.Cry For You

12.Call of The Northern Wind (新曲)

13.Standing On The Grave of Yesterday

~Encore~

14.Wind from The East(Inst)(Zeno Tribute)

15.Cry In The Starlight

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