近藤良平に直撃!コンドルズ 埼玉公
演 2018 新作『18TICKET』で挑む新展
開とは?

トレードマークである学ラン姿で踊り、ユーモアや笑いを織り交ぜて贈る自由奔放なステージ。近藤良平率いるコンドルズは創立20年を経て疾走し続ける。彼らの多彩な活動の中でも2006年から始まった彩の国さいたま芸術劇場での公演は好評を博し今年(2018年)で12回目を迎える。きたる6月2日(土)、3日(日)に行われる埼玉公演 2018新作『18TICKET』を控える近藤に単独取材インタビューを行い、公演への抱負や埼玉公演でのエピソードをうかがった。
コンドルズ埼玉公演2014『ひまわり』(Photo HARU)
埼玉では「作品」を創る おもしろい要素がいっぱいのクリエイション
── コンドルズは1996年創設です。それから10年を経た2006年から彩の国さいたま芸術劇場での公演が始まり、ほぼ毎年初夏に行われてきました。しかも毎回新作ですね。
彩の国さいたま芸術劇場プロデューサーの佐藤まいみさんのおかげです。まいみさんは以前いらっしゃった神奈川芸術文化財団の頃から僕らを起用してくれました。当時僕らは20代~30代前半で、公演を打つ場合、ほぼ自主公演なんですよ。ヨーロッパで長く過ごされたまいみさんが、ダンスの作品としての価値を話してくださったことをよく覚えています。海外のカンパニーが日本に来る時も作品を背負ってくるというか、作品を見せにきますよね。埼玉での新作発表は半ば契約みたいなものです。自主公演でがんばって踊るのとは違って「作品」を創らなければいけない。最初の頃はヒヤヒヤものでしたが、回を重ねると毎年新しいことをやっているのに「作品」が溜まっていく感じがするんです。
── コンドルズの自主公演とは何が違うのでしょうか?
彩の国さいたま芸術劇場には大きな稽古場があって、クリエイションする時に舞台面とほぼ同じように空間を使うことができます。すると発想が違ってきます。一人で普通に踊る場合だと、そんなに空間は必要ないんですね。でもそこを少し広げると空間の遊びが生まれ「空間ごっこ」がダンスの要素になってきます。空間があったらスーッと移動できるんです(立ち上がって横に数メートル動く)。これだけで5メートルくらい移動したりする。ここの稽古場は広いので、あちらこちらで同時多発的に動いたりもできるし、僕的にはおもしろい要素がいっぱいです。
コンドルズ埼玉公演2015『ストロベリーフィールズ』(Photo HARU)
── 毎回タイトルにひねりがあります。初回の『勝利への脱出』(2006年)はサッカーのW杯の時だったのでかけていましたし、改修工事の前には『ロングバケーション』(2011年)、2012年はシドニー・ルメット監督の映画「十二人の怒れる男」にかけて『十二年の怒れる男』、2016年は埼玉での10回目の公演を祝して『LOVE ME TenDER』でした。
こじつけだよね(笑)。『アポロ13』(2013年)もそう。あと2015年は15(イチゴ)いうことで『ストロベリーフィールズ』。昨年(2017年)の『17's MAP』は尾崎豊の「十七歳の地図」にかけています。『ひまわり』(2014年)だけは違うけれど、それ以外は全部こじつけです。もちろんそこからイメージは飛躍しますけれど。
── 定例公演となりましたが埼玉の皆さんに親しまれているという実感はありますか?
飲み屋に行くと知っている人が多くなりましたね(笑)。ハンドルズ(埼玉県内の障害のある人が出演するダンスグループ)にも関わっていたりしますし、埼玉との縁は深くなっているので、地元の方も見に来てくれるようになりました。
​今年の新作のテーマは「チケット」
── 12回目となる2018年の埼玉公演のタイトルは『18TICKET』です。
最初は『一か八か』でいこうかと(笑)。『18TICKET』にしたのは、18というのは広がりがあるから。ドキドキするし、青春18切符のようにも見えるし。青春を使いたいというのもあります。それにチケットというのは、入る・入らないの境目じゃないですか。あると中に入れる特別感があってワクワクするものだよね。ちょっと先のこと、これから起こることを言う気がするし、ファンタジックなので気に入っています。
── 「青春」という言葉が出ましたが、学ラン姿でおなじみのコンドルズの舞台を語るに際してキーワードの一つかと思います。今回はどのようになりそうですか?
青春を扱うと思うけれど、どのような方向性に行くかはまだこれからです。メンバー一人一人にタイトルについて聞いたら皆違うことを言うと思う。チケットと言えば日本的にはやはり鉄道になるでしょうが、旅について聞いたとしても、裏山に行くのも旅だし、パキスタンに行くのも旅だし、悪いことだけど無賃乗車するのが旅だったかもしれないし(笑)。いろいろなシチュエーションが考えられますね。
── 観客もチケットを手にし、ワクワクするような期待感を持って劇場にいきます。コンドルズの舞台には皆さんと客席が一体となる共犯・共振関係があるよう思います。
それも上手く使えたらいいですね。いま創っている最中だから立派なことは言えないんだけれど、客席にチケットがいっぱい降ってきて、当たりが1つだけあったりすると皆凄い必死になって探すんだろうなとか考えています(笑)。
── 『18TICKET』で新しく挑んでみたいことはありますか?
以前の埼玉公演では舞台機構にこだわっていました。奈落を使うとか、奥行きを使うとか。今回は、やるかやらないか別にして、巨大なピタゴラスイッチみたいなのができそうかなと考えたりしています。チケットを入れたらゴーみたいな(笑)。
コンドルズ埼玉公演2016『LOVE ME TenDER』(Photo HARU)
おもしろいものを創ってダンスの可能性を広げたい
── メンバーに関して、石渕聡さん、オクダサトシさん、勝山康晴さん、鎌倉道彦さんといったベテランが健在ですし、近年若手もどんどん加わって、世代の幅が広がっています。
若いメンバーからエネルギーをもらうし、自分たちもギリギリ(体力・気力を)保っているので、負けたとは思っていないし負けたくない。たぶん若手も先輩を見て緊張することはないはずです。若い人たちにはエネルギーはあるんですけれど、こちらからすると真面目な部分も多いんです。でも、われわれの悪ふざけ具合とかを見ているうちに彼らもだんだんネジが外れていく。石渕さんとかオクダさんは不真面目とは言わないけれど少しネジが壊れています​(笑)。彼らとまともな若者たちが出会うのをお客さんが目撃し、それが舞台に作用します。コンドルズって、いい意味で男性集団、男子の集まりなんですね。セクハラもパワハラも起こりませんし。年齢に関係なくクリエイティブに物を創っていくことに向かう場なので豊かな気がします。
── コンドルズの舞台にはコントや人形劇が入ったりしますが、いつもダンスの場面が心に響きます。近藤さんのソロも印象深いですし、大勢のメンバーが一斉に踊る場面も魅力的です。世代の広がりも含めダンスの魅せ方の引き出しも広がってきているのではないかと思いますが、どのように考えられていますか?
空間を使って動ける人には動いてほしいんですよね。舞台の端から端まで。逆に、そんなに動いてほしいとか思わないけど味を出してほしい人もいる(笑)。そういう使い分けがいっぱいあると思う。そこは自分たちの特徴ですし、出していくべきだと思うんですね。ルールじゃないけれど「群舞」と呼んでいるものは全員で踊る必要があるんです。それは踊るということに対する純粋な姿勢みたいなものです。たとえ芝居のシーンがあろうが、人形劇があろうが、踊るシーンが必ずある。そこが大事だと思います。
── 最後にあらためて『18TICKET』への意気込みをお聞かせください。
今回は0歳児から入場可になっています(6月2日(土)14:00の回限定)。いろいろな場所で提唱しているのですが、それを埼玉でできるのがうれしくて。0歳児だけじゃなくて未就学児童を含めた子供たちに見てもらいたいし、子育てされている方にも見ていただきたいですね。お子さん連れで来たいという要望も聞くんです。そのための受け皿を用意しようと思っていますが子供向けの作品を創るつもりはありません。コンドルズの新作公演として自信を持って創ることを間違いなく証明したいし、やっていきたい。今に始まったことではないですけれど新作ということに溺れることなく、おもしろいものを創ってダンスの可能性を広げたい。埼玉でしか見ることのできないことを今回もやりたいです。
コンドルズ埼玉公演2017『17's MAP』(Photo HARU)
​取材・文・撮影=高橋森彦

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