JUNNAが見せた二律背反と17歳の本音
「ココニイルコト」の凄みとその歌

『JUNNA ROCK YOU TOUR 2018 ~I’ m Here~』2018.04.28(SAT)@Zepp DiverCity(Tokyo)
TVアニメ『マクロスΔ』に登場する戦術音楽ユニット“ワルキューレ”の中で、美雲・ギンヌメールの歌を担当し、圧倒的な歌声を世界に向けて発信した新世代の歌姫、JUNNA。彼女の2ndライブツアーが4月15日から5月5日にかけて行われた。全公演SOLD OUTになったこのツアー、筆者は4月28日に開催されたZepp DiverCityTOKYOでの公演に足を運んだ。
会場内はまさに立錐の余地もないほどの超満員。ステージの上下に張り出された花道が立体感を出している。客電が落ちると怒号のような歓声が響き渡る。正直ここまでの圧倒的期待値を観客が持っているとは思わなかった。ステージを隠すように張られた紗幕に映像が映し出される。JUNNAのシルエットが演者を呼び入れていく演出一つ一つにボルテージが上がっていく中、遂に歌姫が登場する。
「Steppin’ Out」で登場したJUNNAは開幕からそのパワフルな歌声を全力で披露していき、間髪入れずワルキューレの代表曲の一つである「いけないボーダーライン」をステージ狭しと駆け回りながら歌い上げる。
まだどこか幼気なティーンの表情とはうってかわっての圧倒的な声量と歌声。ただ低音というだけでは収まらない、どこか心を突き動かされるようなそのボイスに観客も全力の声援で応える。踊り、叫びながらステージに釘付けになっていく様子は圧巻だ。
「いままで見たことのない人の多さです! 1年半前にもワルキューレでここに立たせてもらいましたが、まさかソロでこんなに人が来てくれるなんて!」
そうMCで語ったJUNNA、先程までの大人びたアーティストっぷりとはまるで別の人格のようにまだどこか慣れていない初々しいトークでフロアと語らっていく。スイッチが入る、というのはアーティストからよく聞く言葉だが、彼女ほど天性のスイッチングができるアーティストは稀有なのではないか。
ロックナンバー「大人は判ってくれない」から「LOVE! THUNDER GLOW」「僕らの戦場」とワルキューレ楽曲を連続で披露していく。ライブを見ていて思ったのは、ワルキューレ楽曲とJUNNAのソロ曲ではだいぶ印象が違うということ。
JUNNAが歌を担当した『マクロスΔ』の美雲・ギンヌメールはどこかミステリアスで謎も多いキャラクターだった、決め台詞は「歌は神秘」。まさにJUNNAの歌は美雲というキャラを表現するのにピッタリだった。しかしJUNNAのソロ楽曲は「大人は判ってくれない」もこの後歌われた「火遊び」「Vai!Ya! Vai!」もどこか大人になれない女の子の姿を歌っている気がする。大人に憧れて、同時に大人になりたくないような、そんな楽曲を今のJUNNAが歌うからこそ、心がざわつくような印象を受けるのかもしれない。大人の美雲と少女のJUNNA、二律背反するような2つの存在。
だが今回のライブではワルキューレ楽曲を歌っていてもその印象は“JUNNAの歌”だった。美雲が歌うワルキューレではなく、JUNNAはすべての楽曲を自分の中で消化し、歌いこなしていた。大人と少女のボーダーライン上で今の自分を表現するその姿は型にはまらない“本物のアーティスト”にだった気がする。
「ヤバイね! まだ5曲だよ? みんな平気?」。喜びを隠さず笑いながらMCをこなし、「GIRAFFE BLUES」「火遊び」「ソラノスミカ」と連続披露。最新にして1stシングルとなった「Here」では勢いだけではない深みある表現力を見せつけてくる。
どこかエキゾチックな旋律を持つこの楽曲を聴きながら、どこか筆者は中森明菜の影を見たような気がする。圧倒的な歌声で芸能界を席巻した明菜も16歳でデビューしている。JUNNAがアニソン界の中森明菜になる可能性があると思ってしまう、それくらいに訴えかけるもののある歌唱だった。
MCを挟んで「ワルキューレは裏切らない」「破滅の純情」でフロアを瀑上げした後に歌われた「Vai! Ya! Vai!」では恒例のコール・アンド・レスポンス。観客を先導しつつも楽しそうにJUNNAはステージ狭しと飛び回る。
本編最後となった「Catch Me」ではダンサブルなサウンドで現状を切り開き、未来に向かう気持ちを歌い上げる。確かにJUNNAには未来しか無いのだ。スタートラインを切ったばかりの彼女の未来はどこまでも未知数で、無限の可能性がある。確かにそこは先の見えない暗闇かもしれないが、JUNNAには“歌”という光がある。それは唯一にして最強の武器なのだろう。
アンコールでは「ワルキューレのイベントでは普段歌えないから」と「涙目爆発音」をキュートに踊りながら披露。振り幅の大きさも観客からしたら嬉しいポイントだ。
「私がワルキューレのオーディションを受けたのが三年前でした、あっという間だよね」そう語るJUNNA。「私がここにいられるのは、私の歌を求めてくれているからだなぁと思います、会いに来てくれて嬉しいけど、本当に私でいいのかなって思うこともあります」
それは恐ろしいほど素直な17歳の少女のコメントだった。圧倒的な歌声で一躍この世界に舞い降りた彼女の芯を垣間見た気がする。「オーディションでは「いけないボーダーライン」と、もう一曲が自由曲だったんですけど、その時に歌った曲を歌います」そう言ってアコギの弾き語りで歌い上げたのは、RCサクセションの「スローバラード」。
この曲をマクロスのオーディションで披露するというのも凄い話だが、飾る部分もなく、訥々と歌と、観客と、自分と向き合ったこの一曲が心に突き刺さるように今も残っている。
ライブの最後は自らの持ち歌「Shooting Star」。最後に思いっきり盛り上げて……ではなく、どこか火照る身体を夜風に晒しながら冷ます帰り道のような心地よさでライブを締めるエンドを選ぶ感覚は只者ではない。憧れているアーティストがSuperflyというのも納得なのだが、銀河から舞い降りた新世代のこの歌姫は、今までの誰よりも地に足をつけ、僕らと同じ目線で見果てぬ所を目指していくのかもしれない。
たしかに荒削りなところもあるが、だからこそ、早く次のライブが見たいと思わせる素晴らしい内容だった。7月には2ndシングル「紅く、絶望の花。」をリリースすることも発表したJUNNAのこれからは、きっと想像以上に“ヤバい”。
レポート・文=加東岳史

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