檀れい「宝塚と服飾の道とで進路を悩
んだことがあったんです」 ファッシ
ョンの世界で女たちの対決を描いた舞
台『仮縫』インタビュー

2018年5月6日から、東京・明治座にて有吉佐和子原作の舞台『仮縫』が上演される。ファッションの世界を舞台に女たちの静かな対決を描いた本作が初めて舞台化されるにあたり、デザイナーの卵である主人公・清家隆子役の檀れいに今の心境を聞いた。折しもインタビュー当日は宝塚音楽学校の入学式。その話題から檀が宝塚に入学したときの思い出話も飛び出した。
ーー上演に当たり『仮縫』の原作を読んだ時、どのような感想を抱かれましたか?
本当におもしろくて1~2日くらいで全部読んでしまいました。読めば読むほどどんどん物語に引き込まれていく強い力を持った作品だなと感じました。これが舞台化されるとどうなっていくんだろう、という楽しみしかなかったですね。
ーー檀さんが演じる「清家隆子」という女性はどのような人物で、檀さんはそれをどう演じていこうと考えていらっしゃいますか?
隆子​という女性はとても前向きで積極的。真っ直ぐ夢に向かって進んで行く姿が魅力的な女性です。オートクチュールの店「パルファン」に初めて足を踏み入れる冒頭では、新しい世界に飛び込んでいく不安もありながら、期待に胸を膨らませている心情と、「もっとうまくなりたい」「もっと仕事ができるようになりたい」という夢を抱く一方で、大人の世界に触れていくにつれその夢が「野心」に変わっていく心情を丁寧に演じていきたいと思っています。
ーー隆子が新しい世界に飛びこむ、という姿はちょうど新入学、新入社を迎えた今の時期のフレッシャーズにも重なるように思います。檀さんであればそれが宝塚音楽学校の入学になるのでしょうが、当時のことを覚えていらっしゃいますか?
私は宝塚をいろいろ調べた上で入った訳ではないんです。予備知識もなく、ただ、舞台に立ちたい、勉強したいという想いで飛び込んだので、右も左もわからないことだらけでした。そういう点は純粋に夢だけを見ていた隆子​に重なりますね。ただ、隆子​みたいな積極性が当時の私にはなかったので、いろいろ大変でした。とにかく引っ込み思案だったので(笑)。
でも、夢を持って宝塚に入った自分、入ってからもがいている自分、それでも目的に向かって真っすぐ進もうとする自分……そのすべてが今回隆子​を演じる上での「材料」のいち部分として役だっていますね。そこに隆子​のキャラクターをプラスしてより役の奥行きを広げているところです。
檀れい
ーー共演する高橋惠子さんとは舞台『細雪』から非常に仲がよいそうですね。今回は子弟関係からやがて対立していく関係になっていくそうですが、高橋さんとの関係性含め、稽古場で心がけていることがあれば教えてください。
惠子さんへの信頼は変わらずあり気心も知れた関係ですが、だからこそ、「甘え」を出すのは絶対やめようと常に心がけていますね。今持てる力を出し切り、「礼儀」としてきちんとお芝居をしていきたいと思っています。一役者としていい芝居をしてぶつかり合い、そしていい千秋楽を迎えて最後にハグしたいです(笑)。
ーー今回、古谷一行さん、山本陽子さん、葛山信吾さんとも久しぶりの共演ですね。
はい。陽子さんと葛山さんは舞台でご一緒しました。一行さんとはTVドラマで共演したのですが、そのとき、二人だけで激しい台詞の応酬をする大変なシーンを撮っていたんです。カットがかかるたびに「やったー!」と達成感からハグし合っていたのが印象に残っています(笑)。みなさんいい意味で、芝居でぶつかり合いながら作品を作ろうとされる方々ですので、『仮縫』でもいい緊張感を持って、いい芝居をしたいと思っています。お互い演じる事で生まれる化学変化によってぐっと芝居の密度が濃くなっていきますしね。
ーーところで、檀さんご自身は本作で描かれるオートクチュールの服や服飾の世界についてどのような印象・興味を持っていらっしゃいますか?
実は私、宝塚音楽学校を受験しましたが、進路を考えていた当時、服飾デザインの方に行こうかと悩んでいたんです。パリコレなどファッションに興味を持っていましたし、子どもの頃からよくミシンを使って洋服を作ったりもしていたんです。先日の『仮縫』舞台衣裳の公開最終審査でグランプリに輝いた方が「賞金でロックミシンを買いたい」とおっしゃっていた気持ちがすごく良く分かります。プロ仕様のロックミシンはかなり高価ですから。
ーーそんな進路希望をお持ちだったんですか! そこで結局宝塚を選んだ決め手は何だったのですか?
自分が本当にやりたいのは何なのか、を内観したときに「あ、私はやっぱり芝居がしたいんだ」と気が付いたんです。すでに服飾の学校の資料もたくさん取り寄せていましたが、やはり歌ったり踊ったりしたい、観に来て下さったお客様がよろこんでくれるエンターテインメントの世界に行きたい、という想いがいちばん強いと自覚したんです。
ーー服飾の道を一度は考えたとなれば、お仕事で着る衣裳について、つい作る側の目線でも見てしまいそうですね。
そうですね。役で着る服は胸元の開きや袖口の作り方など、どこで切り替えたらよりよく自分が見えるのか、やはり考えて見てしまいます。今回の衣裳についても、「檀れい」としての見え方だけでなく「隆子​が着る服」としての見え方の両方を考えなければと思っています。
ーー徐々に初日が近づいてきていますが、改めて檀さんから見た本作の見どころを教えてください。
明治座の花道をファッションショーのランウェイにするのは初めての試みだと思います。女性のお客様が多いと思いますので、物語として楽しむだけではなく、ステージ上で展開するファッションを目からも楽しんでいただきたいです。
また、舞台本編が終わってからちょっとしたお楽しみがあるようですよ。私もまだ全貌を知らないので、興味津々なのですが、芝居が終わった! その後で、もう一回幕が上がることになりそうです。お客様としても得した気分になるかもしれませんね。見どころは?と聞かれても困るくらい見どころ満載の舞台なので、いろいろな角度から何度も楽しんでいただきたいですね。

檀れい

取材・文=こむらさき  撮影=岩間辰徳

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