愛希れいか「私にしかできない『エリ
ザベート』を精一杯務めたい」宝塚退
団前最後の公演に意気込み

2018年8月24日(金)より10月1日(月)まで兵庫・宝塚大劇場にて、10月19日(金)より11月18日(日)まで東京宝塚劇場にて、宝塚歌劇月組によるミュージカル『エリザベート―愛と死の輪舞(ロンド)―』が上演される。本作の制作発表会が5月8日(火)、都内にて行われた。
『エリザベート』とは、19世紀半ばのオーストリアを舞台に、自由を求めたオーストリー=ハンガリー帝国皇妃エリザベートと、彼女を愛してしまった黄泉の帝王トートを描いた物語。脚本・歌詞をミヒャエル・クンツェが、音楽をシルヴェスター・リーヴァイが手がけた本作は、1996年の初演以来、上演回数は1000回を超え、観客動員数240万人を記録している大人気ミュージカルだ。今回の月組公演は宝塚歌劇において記念すべき10回目の上演となり、トップスター珠城りょうがトート役を、そしてこの公演を最後に退団が決まっている愛希れいかがエリザベート役に挑む。潤色・演出は小池修一郎が務める。
愛希れいか
珠城りょう
制作発表会の前半では、愛希と珠城による歌のパフォーマンスが披露される。愛希は純白の豪華なドレス姿で、後ろ姿からゆっくりと振り返りつつ「私だけに」を熱唱。その力強く神々しい姿はまさに皇妃エリザベートそのもの。会場中に凛とした美声を響かせていた。
愛希れいか
愛希れいか
その後、暗闇から“死”、黄泉の帝王トート役の珠城が姿を現し「最後のダンス」をささやくように歌い出す。その後燃えさかる炎のような熱い歌声と大きな動きで会場の温度を一気に上げた珠城の姿は、その場の空気を支配するかのようだった。
珠城りょう
珠城りょう
二人のパフォーマンスの後、会見が催され、壇上には珠城、愛希、小池と宝塚歌劇団の小川友次理事長、特別協賛・三井住友カードの久保健代表取締役社長が姿を現し、本公演についてそれぞれが抱く想いを語った。
小川は「エリザベートの没後120年という記念の年に本作の上演を迎えることを嬉しく思う」とコメントしつつ、「この公演を最後に愛希が宝塚を卒業する、(愛希にとって)集大成の作品でもあります」と力を込めた。
久保はトート役を演じる珠城について「元気で快活で一本気な好青年のイメージが強い珠城さんが、トートの冷徹で怪しく、不健康そうという真逆のキャラクターをどのように演じられるのか。またトートはエリザベートに対する想い、心の葛藤が肝になっている役。死ねばいいのにと言いながら命を救ってみたり『どっちやねん!』と思いたくなるトートを珠城さんがどのように演じられるのかも楽しみです」ユニークな表現で期待を寄せる久保の言葉に小池たちがたまらず噴き出す。さらに愛希については「歌も踊りもすごい愛希さんは、特に踊りの時の指先から爪先まで美しいイメージがあるのに、今回このドレスのせいで爪先が見えない」と語る久保に会場から笑いが沸き起こっていた。
小池修一郎
小池は「常に宝塚歌劇団のその時代の新しいスターたちが歴史を築き、紡ぎ、リレーのように繋いできました。10代目のトートである珠城と、9代目のエリザベートである愛希が前の代の人々がやってきた事を単になぞるのではなく、先人が苦労したであろう道を歩み、その上に自分なりの役の像を築く……そこに新鮮味が生まれると思うんです。時に革新的なアプローチをする場合もあればオーソドックスな役作りをする時もあるんです。月組はおもしろくてユニークな組です。固まっていないところが魅力だと思います。それがこの作品でどのように皆が一つになっていき、変化を遂げるか、そして役に命を吹き込むのかを楽しみにしています」と想いを言葉にした。
今回のトートの髪色は3色使いだそうです。
またトート役を演じる珠城について、小池は「“死”とは本人が死んでいる訳ではなく、死のエネルギーを表現するもの。時に世界を滅ぼす力を持つほどのエネルギッシュな“死”を演じてくれることを楽しみにしています」と期待を寄せ、愛希については「宝塚のエリザベートとは(最初にエリザベートを演じた)花總まりさんが築いたはかなげな美貌の皇后というあり方と、大鳥れいさんや瀬奈じゅんさんのような力強い女性を描くエリザベート像があると思います。今回愛希れいかは両方の接点を表現できるのでは」と新しいエリザベート像の誕生を待ちわびているような言葉をかけていた。
愛希れいか
珠城はトート役での出演が決定した時、「正直驚きました」と笑う。「実は私は“死”を演じるのは2回目で、前回は『ロミオとジュリエット』の“死”の役でした。そのときも小池先生に演出していただき、自分の中で節目となるとき、また挑戦となるような役を先生から与えていただきました。自分にないものに挑めることは役者冥利に尽きますし、意欲が湧いてきます。たくさんの先輩方が繋いできたエリザベートの息吹を感じつつ、尊敬の念を抱き、でも今の自分、今の月組にしかできないエリザベートを届けたいと思います」と語る。珠城は愛希のことにも触れ、「彼女とは学年が一つ違いということもあり、いい意味でお互い全身全霊で心をぶつけ合って舞台を作ってきました。彼女と物語を作るのは今回が最後ですが、先日の公演でも仲間が去っていったように、出会いがあれば別れもある、それが宝塚。一瞬一瞬を全力で生徒自身が務め、お客様と共に過ごしていくからこそ、その一瞬一瞬がより美しく輝くのではないかと思っています。私自身、最高の作品をお届けできるように、自分も悩み葛藤しつつ、でもしっかり前を向いてすばらしい作品を作っていきたいと思います」と胸を張った。
愛希れいか
愛希は「この作品に出演できますこと、エリザベート役を演じられることを幸せに思いますのと同時に、とても身の引き締まる思いでございます」と挨拶。自身の退団にも触れ「今まで見守ってくださったすべての皆様に感謝を込めて、私にしかできないエリザベート役を精一杯務めたいと思います」と力を込めた。「私は小池先生に育てていただき、たくさんの挑戦をさせていただきました。そして公演のたびに充実感を得ることができました。その先生と珠城さん率いる月組とでこの作品を作っていきたいです」と溢れんばかりの想いを言葉にしていた。
質疑応答では、珠城と愛希に対して「集大成を迎えた今、感じる互いの魅力について」という質問がされる。これに珠城は「愛希はかなり早くにトップ娘役に就任したので、近くでずっと見守ってきました。彼女の舞台に対する姿勢や妥協しない精神は常々感じていましたし、すごく努力の人。だからこそ今、大輪の花を咲かせられるようになったと思います。舞台へのストイックさは、学年が一つ上の私から見ても尊敬できるところです」、一方、愛希は「(初めてコンビを組んだ際)同じ質問をされた時は(珠城の魅力を)『包容力』とお答えした気がするんですが、宝塚音楽学校の時からそこは全く変わっていません。懐の深さ、大きさ、座長として舞台に誠実に向き合う姿は今も変わらないです。また組子の皆さんと楽しそうにしている、その柔らかい人柄も変わらないのでそれこそが珠城さんの魅力だと思います」と回答。そして二人は顔を見合わせ、信頼の眼差しを交わしていた。
愛希れいか、珠城りょう
取材・文・撮影=こむらさき

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