【インタビュー】ET-KING、聴く人そ
れぞれにそっと寄り添ってくれる快心
作『LIFE』

前作から約2年、1月末にリーダーいときんが病気でこの世を去るという悲しい出来事がありながらも、新作『LIFE』を完成させたET-KING。いときんも全曲に参加し、六人が音楽に注ぎこんだ温かいまなざしは、良いことも悪いことも全てひっくるめた聴く人それぞれの“LIFE”にそっと寄り添ってくれる。彼らの歩みは結成20周年となる2018年、そしてその先へとさらに続いていく。メンバーの中からKLUTCH(ヴォーカル)とコシバKEN(MC)に話を聞いた。
■みなさんも横を見たら家族がいたり好きな人がいたりすると思うし

■そんなもんやでっていうことを伝えていける一枚になったらいい
――今回リリースのアルバムも自身のスタジオでの制作されたんですよね。
コシバKEN:そうです。パッとフレーズやメロディ思いついたらすぐにブース入ってレコーディングして、聴いて、すぐやり直したりとか、瞬発力で出来るのでホントにいいですよ。
KLUTCH:自分らのペースで出来るし、それこそ日常生活の中でレコーディングが出来たので、みんなリラックスしながら歌えてよかったです。
――今回の『LIFE』は、TENNさん亡き後に制作した『Ideologie』に続く新作となりますが。
コシバKEN:前回が自分達のスタジオが出来て一発目だったんです。原点回帰というか、自分達のあり方とTENNの思いも引き継いで、僕達がずっと聴き続けてきたアナログヒップホップをいときんのフルプロデュースで作った。次どうしようってなった時に、たくさんの人が知ってくれているET-KINGをもう一回やってみるのもいいんかなあって話になったんです。
▲『LIFE』初回限定盤(CD+DVD)
▲『LIFE』通常盤(CD)


――久しぶりにNAOKI-Tさんのフルプロデュースのもと制作されたのも、それが理由の一つというわけですか。
コシバKEN:「NAOKI-Tともう一回アルバムを作ってみたい」っていう言葉がメンバーそれぞれから出てきて、NAOKIさんに思いを伝えたら「ぜひ一緒にやりたい」って言ってくれて、始まったのが大方一年前ぐらいです。そこからはNAOKIさんに大阪来てもらって制作に取りかかりました。
――アルバムについてNAOKIさんと具体的にアイディアを交わしたようなことはありました?
コシバKEN:今回は曲数を多くしないで、ターゲットをぐっと絞った一枚にしたくて、それをNAOKIさんに話したら「その方がいいと思うよ」って言ってくれたんです。四つ打ち系のものが多かったですけど、しっかり言葉が入ってくるBPMにしてくれているし、聴く音にバリエーションがあったので、言葉を当てていって、それがどんなアレンジされて返ってくるのかもむちゃくちゃ楽しみでしたね。
――曲の内容についてもNAOKIさんとお互い話し合ったようなことがあったり?
コシバKEN:最初は漠然とNAOKIさんとやるんだったらラヴソングが出来たらいいかなと思ったんですけど、やっていく中でNAOKIさんが、「ET-KINGって自分の今思ってることを書くグループでしょ。お前が好きだってストレートに言うのもいいけど、大事なもんがもっと増えたんじゃない? 結婚して家族が増えて、自分達でスタジオ作って、これから世の中に何を伝えていきたい?」っていうことを言ってくれて。
▲コシバKEN


――アルバムの全体像もそこから広がっていったと。
コシバKEN:例えば「こっちこい」とかはホントにNAOKIさんがいなかったら出来てなかった曲。こういう曲を書いてもいいんやって思ったし、結局書き進めていくにつれて、子供だけじゃなくて学校でも友達でもそうだと思うんですけど、自分の周りの大事な人に届ける広い意味のラブソングになったかなと思う。「メッセージ」にしても、「カントリーをイメージしたらどない?」って言われて、僕らが歌うと重くなるような言葉でも、最後はみんなで叫べるような、それこそライヴでしっかり出来るようなトラックにしてくれたのにはニヤッとしましたね。
KLUTCH:「新恋愛」も今回新しくOSAKA ROOTSのバンド・ヴァージョンで出来たんですけど、元々のヴァージョンもNAOKIさんにプロデュースしてもらっていて。もう歌い慣れている曲なんですけど、最初にレコーディングした時から9年ぐらい経った今の僕らの声で歌い直して、しかもライヴ感を出そうっていうんで、ほぼほぼ一発録りでやりました。その辺も聴いてもらえればうれしいですね。
――そのNAOKIさんのフルプロデュースと併せて、本作は1月末に病気で亡くなったリーダーのいときんさんが全曲に参加した最後のアルバムともなったわけで、メンバーとしては複雑な思いもあろうかと思います。
コシバKEN:結果的にこういう形になりましたけど、もちろん作っている中でこれが最後だとも思っていなくて。今まで基本、リーダーがモノづくりの真ん中にいたので、彼に「任せるわ」って言われた一言は思いのほか重くて、その分やらなければとも思ったですね。
KLUTCH:作り始めた時はいときんの病気のこともわかっていなかった。自分たちらしいアルバムを作ろうって始めた中でいときんの病気がわかって、天国に行っちゃたんですけど、つらいこと乗り越えたのを強く前に出すのは自分たちらしくない。ホント等身大、無理せず自分らの日常生活の中に流れてる音楽といいますか、自分たちの普段使ってる言葉だったり思いを詰めこんで、成長した部分もあるんですけど、変わらない部分も残しつつ、いいのが出来ました。
――いときんさんとのやりとり含め、実際レコーディングはどのように進めていったんですか?
コシバKEN:いときんがずっとやってきてくれたことを一番そばで見て言われてきた中で、とにかく彼が大事にしてたのは、自分の生き様がちゃんとらしく出てるかどうか。「この言葉こっちの方がらしいかなあ」とか「こっちの方が伝わるんじゃない?」とか「こっちの方が韻固いんちゃう?」とかその都度(メンバー同士で)言いながら進めましたね。
KLUTCH:制作中は闘病生活を送っていたんで、残りのメンバー中心に曲作りをしていく中で、やっぱりいときんがリーダーらしい核心を突く一言、アドバイスをくれて。「なんかいいね」って曲は「日常生活の中に転がってるちっさな幸せ見つけてそれ集めたら素敵な人生になるんじゃない?」ってテーマをくれたんです。
▲KLUTCH


――些細で当たり前のように思える日常が、実は当たり前じゃない、ありがたいことなんだって感じられる曲ですよね。
コシバKEN:「なんかいいね」はいときんがちょうど病気がわかったくらいに作った曲で。一番しんどかったのは本人と家族やと思うんですけど、そんな中で、ちょっとしたことでもそれが重なったら幸せって言えるんちゃうかってテーマを出してくれた時には、「止まっとったらあかんなあ」と思って、そっからもう一段ギアが上がったというか、メンバーがスイッチ入れ直す曲になったかな。
――“なんかいいねをなんべんでも”っていうサビは、いときんさんの切実な思いを代弁してるだろうし、そこにリスナーも響きあうだろうなって。
コシバKEN:僕らが震災で被災された方の前で歌わせてもらう機会もあったし、いときんも「しんどいの俺らだけじゃないぞ。もっと悲しんではる人たくさんおんねんぞ」っていうのをよく言っていたんで、そんな人達の横に寄り添わせてもらえるふうになれたらいいんかなって。その中でも、日常は悲しいことばっかりじゃないんで、楽しいことを僕らが提供できたらちょっとだけ上向けるかもしれないし、このアルバムは僕ら自身も励ましてもらってるアルバムかもしれないですね。
――それが音楽の力ですよね。救われるのは聴く人ばかりではないっていう。
KLUTCH:そうですね。いときんがずっと目の前の人を大事にしろって言っていたんで、僕らも目の前の人に向けて歌を書いた。聴いてもらう人にも目の前の人のこと思って聴いてもらえたらありがたいです。
コシバKEN:ホンマに毎日繰り返しに思えていても、毎日々々絶対繰り返しじゃないと思うし、一人ぼっちやなあとか私だけとか思っている人いると思うんですけど、そうじゃない。僕らもそう思っている時期があったけど、横を見たらメンバーがいるし、きっとみなさんも横を見たら家族がいたり好きな人がいたりすると思うし、そんなもんやでっていうことを伝えていける一枚になったらいいと思います。
■“LIFE”って言葉には命とか生活とか人生とか、いろんな意味がある

■みなさんの中の“LIFE”に置きかえてもらえるような一枚になったかな
――ET-KINGの音楽がリスナーに寄り添うものであることはこれからも変わらないですよね?
KLUTCH:目の前の人に届けるっていうのが実は一番難しかったりするんですけど、そこにダイレクトにメッセージが伝えれたら、いろんな人に伝わるのかなあって改めて感じました。
コシバKEN:ジャケットも僕らの事務所のガレージですし、ホントに僕らの日常を詰めこんだ一枚。僕らもこうやって歌をやらせてもらっていますけど、ホンマみなさんとなんも変わらないと思うんですよ。“LIFE”って言葉にも命とか生活とか人生とか、いろんな意味があると思うので、みなさんの中の“LIFE”に置きかえてもらえればいいし、置きかえてもらえるような一枚になったかな。
――長く聴き続けてきたファンはグループと一緒に歳を重ねている分、自分の歩みと重ねる部分も多いでしょうね。
コシバKEN:そうなったらメチャクチャ光栄ですね。「KLUTCH―!」って言っていた姉ちゃんが子供抱いて握手会に来たりね(笑)。娘さんが聴いてくれて「友達連れてきました」って言ってくれたりもするんで。長くやってきた意味がそこにあるのかな。
▲『LIFE』初回限定盤(CD+DVD)
▲『LIFE』通常盤(CD)


――それは活動を続けてきたグループだからこそなしえるものでもあるわけで。
KLUTCH:嬉しいですね、そういうのは。僕らも歳とっていくたびに考え方も徐々に変わっていきますよね。このアルバムもそうなんですけど、今の自分が表現できる言葉なりメッセージなりメロディをダイレクトに詰めこんでいるので、来年になったらまた違う表現方法になっているかもしれないですし、その辺も楽しいと思う。それを友達に手紙書くような感じで、同じ目線で伝えられたらうれしいです。
――『LIFE』についてさらに一言もらえれば。
コシバKEN:このインタビューを読んだ人にはホンマに一回聴いて欲しいです。7曲なんで、通勤通学ん時にちょうどいいぐらいの尺になっているし、これを聴き終わった後に今日一日頑張って行こうっていうふうになると思うんで。初回限定盤の特典DVDには、イトキンが入った六人では最後となった去年のツアーの映像が3曲入っていますし、僕らの人となりも見てもらえればいいかなと。
――そして来年には、グループ結成20周年が控えていますね。
コシバKEN:20周年なんで、感謝を届けられる大きなことをしたい。中々出来ないでしょ、20周年やりたくても。「ありがとうございます」ってちゃんと言いにいかないとバチ当たるなあ(笑)。なんで、たくさんの人に会いに行って直接ありがとうを言わせてもらって、楽しんでもらえる何かを考えています。
――記念の年を前に、今どんな気持ちで音楽に向かってますか?
KLUTCH:20代、30代半ばまでは訳もわかってなかったっていうか、とりあえずがむしゃらに音楽やってたんですけど、それ越えたぐらいからいろいろ余裕も出来てきて、自分のことというよりも周りの人への感謝の気持ちが強くなってきた。やっぱりこうやって音楽を続けられるのも周りの人の支えがあってのことなんで、そういう人たちにも元気になってもらえる音楽を作っていきたいなあっていう気持ちが強くなってきましたね、特にここ何年かは。
コシバKEN:一曲目の「ど真ん中」のKLUTCHのヴァースで、“遊びで始めたこの音楽が人を支える力になっているなら”ってあるんですけど、それを聴いた時に、そんな風に考えられるようになったな、たしかにと思って。そう考えられたのは、ホンマ、それこそTENNが亡くなってから。自分の考え方が変わるタイミングが、大事なものを失った時っていうのは残念ですけど、よりメンバー、会社を含め絆が深まったのは事実ですし、やっぱり仲間と家族と助け合い、分かち合いながらやっていくっていうことがありがたいなって感じられたんで。
KLUTCH:僕らも辛いこと乗り越えて、そんな状況の中でしか歌えない歌もあると思うし、いろんな人が元気づけてくれて、応援してくれたんで、今度は逆に元気ない人とか弱ってる人がいたら背中を押してあげれるような歌をどんどん作っていきたいですね。
コシバKEN:ただ、普段ハッピ着て歌っているのに、湿っぽく聴いて欲しくない。そこは俺らなりのライヴでずっとここまでやってきたんで、そこを体現していく新しいET-KING、でも変わらないET-KINGを出せていけたらいいなっていうのが20周年、21周年、22周年への目標です。
――その20周年、21周年……に向けて、まずは6月、7月にツアーで福岡、名古屋、東京、大阪をまわるんですよね。
コシバKEN:形としては目の前の人達に一生懸命歌うっていうことに変わりはないんですけど、先日、台湾でライヴをやらせてもらって、言葉が通じなくてもお客さんワーッてなってくれたんで、僕らが思ってるET-KINGを残しながら新しいことやってくっていうのもアリなんかなあって。一生懸命歌ったらなんか伝わっていくものがあると思ったし。
――ツアーラストの7月14日(土)の大阪・服部緑地には芝生のファミリー席も用意されるそうで。子供連れのファンもうれしいかと。
コシバKEN:そうなんすよ。ついこの前も、途中で子供が走り回っていて、「コラァ!歌う言うてるやろ。ちゃんと聴け」って(笑)。僕らはタイミングタイミングで結構野外のライヴをやってきて、外の方がやっぱ映えるんで、それこそ旅行がてら遠くの方からでも地元大阪でのET-KINGを観てもらえたら。あとは天気だけ。
KLUTCH:(コシバKENを指して)雨男なんで。
コシバKEN:まあでも伝説のライヴって意外と雨多いっすから(笑)。
――はは。ともかく、地元のノリと他とは自ずと違ってくるでしょうね。
KLUTCH:大阪は特にそうですね。親心的なところもあるんですかね。いいライヴパフォーマンスをしたらそれだけリアクションもらえるし、ちょっとスベるところがあったら厳しい声が飛んだり。
コシバKEN:ツッコミが早くて「今スベったじゃん」って無視できないぐらいの声量で言ってくるんで。そういう部分も観てもらいながら愛してもらえると嬉しいかなと。
――ちなみにその一週間前には東京代官山・UNITの公演が予定されてます。
コシバKEN:いや、ホンマ。代官山っすからね。ハッピ着て大丈夫かなあと。
KLUTCH:すぐ気が張るんで、東京に来ると。
コシバKEN:今日も六本木に行って、絶対普段は買えないパリパリしたサラダを買いましたから。東京にビビりまくって寄せて行きましたからね。
――そういうところでも東京に慣れつつ(笑)。
コシバKEN:そうですね……いや、19年やってる言うてんねん(笑)。
取材・文●一ノ木 裕之
リリース情報


『LIFE』

初回限定盤(CD+DVD)

XQMX-91002

¥3,240(税込)

通常盤(CD)

XQMX-1005

¥2,700(税込)

CD

01,ど真ん中

02.こっちこい

03.wonder for life

04.なんかいいね

05.新恋愛 played by OSAKA ROOTS

06.春の雨(interlude)

07.メッセージ

初回限定版 特典DVD(DISC02)

「えびす巡業~出稼ぎ篇~

大阪公演 アンコール映像
ライブ・イベント情報


<東名阪福ツアー>

2018年6月22日(金)開場18:15/開演19:00

【福岡】DRUM LOGOS

2018年7月1日(日)開場16:15/開演17:00

【名古屋】 Electric Lady Land

2018年7月7日(土)開場16:15/開演17:00

【東京】代官山 UNIT

2018年7月14日(土)開場15:00/開演16:00

【大阪】服部緑地野外音楽堂

★一般発売 4月28日(土)10:00~ ※ 大阪公演のみ、5月12日(土)10:00~
関連リンク


◆ET-KING ホームページ
◆インタビュー(1)へ戻る

関連画像&映像

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着