LAMP IN TERREN 一時活動休止直前ワ
ンマン"MARCH"で明示した、今の姿と
未来への覚悟

LAMP IN TERREN ONE MAN TOUR 2018 「MARCH」 2018.4.21 LIQUIDROOM ebisu
東名阪福をまわったツアー『LAMP IN TERREN ONE MAN TOUR 2018 「MARCH」』。松本大(Vo/Gt)の声帯ポリープ治療に専念するため、このツアーを終えたあと一時的に活動休止すること、今年に入ってから渋谷Star loungeで行っていた定期公演『SEARCH』をしばらく延期することが発表されたのは、今年2月末の出来事。つまり、ツアーファイナルのLIQUIDROOM公演は休止前最後のライブだった。以前同会場をソールドアウトできずメンバーが悔しさを語っていたこともあったが、この日のフロアは超満員。そうでなくとも「今までの自分を余すことなく共有して次に行きたい」と語る彼らならば、フロアの人数に関係なく、目の前のオーディエンス一人ひとりへ自分たちのありのままをまっすぐ伝えるライブをしたことだろう。しかしだからこそ、確信を持てている時にしっかり結果が伴ってきているという事実もまた、今のテレンにとって大事なことだと思う。
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
定番の白いシャツの上に赤のネクタイを締めていたのは気持ちを引き締めるためだろうか。定刻を過ぎた頃、松本が一人で登場。上手に配置されたキーボードの前に座り、鍵盤を弾きながら「花と詩人」を唄い始めた。仄暗いステージの上で松本にだけスポットライトが当たっているような状態。大屋真太郎(Gt)、川口大喜(Dr)、中原健仁(Ba)と、松本と立ち位置の近いメンバーから順に姿を現し、音を重ねるほどに光の範囲がふんわりと広がっていくような、ドラマティックな幕開けだ。「涙星群の夜」で一気に明転したあと、そのまま「ランデヴー」へ。疾走感溢れる、というよりかは、一歩一歩地面をグッと踏みしめているかのようなサウンド。松本の声はやはり本調子とはいえないが、裏返るのを恐れずに声を張っていて、なかなか頼もしい。ユーモアを交えながら機材トラブルを乗り越えた場面からも、バンドの前向きな空気感は伝わってきた。
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
4曲目に披露された新曲「Dreams」以降は、「reverie」「at (liberty)」とシリアスな曲が続いていく。曲によってはイントロやアウトロを延ばしたり、インターリュード的なセクションを加えながらの演奏になっており、それにより、サウンドの熱量がさらに増していた。特に、リリース以降ライブで演奏される機会の多かった「innocence」で大屋・中原・川口の3人が音源とは異なるアレンジを施してアンサンブルを前に転がしていたこと、「pellucid」で松本が言葉の一つひとつをはっきり発音するように唄っていたことは印象に残っている。松本は後のMCで「自分は松本大としてステージに立つのを心のどこかで怖がっていた」「だからこそ思ったことを何のフィルターも通さずに放っていこうと決めた」という話をしていたが、それが如実に表れていたのがこのブロックだったのではないだろうか。
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
松本が選曲した「pellucid」と川口が選曲した「オフコース」を終えたあとは、今回のツアーで恒例になっていたオーディエンスからのリクエストに応えるコーナーへ。手を挙げた人の中からメンバーが一人を選び、その人が聴きたい曲を演奏するという形式だったのだが、そのやりとり中、フロアから上がった声がかなり多かったことに驚いたし、単純に「あれ、こんなによく笑う人たちだったっけ?」とも思った。いわゆる歌モノバンドの場合、踊れる音楽をガンガン鳴らすバンドに比べてお客さんが比較的大人しいケースが多く、これまでのライブを観た限りテレンに関しても例外ではなかったから。だが、この日はかなり序盤の段階から、フロアからの手拍子、歌声、その他リアクションの音量がかなり大きかった。それはおそらく、不調の松本を支えたいという気持ちがオーディエンス一人ひとりを駆り立てていたからだろうし、年月をかけて、互いが徐々に心を曝していったからこそ今こういう関係性が成り立っているのだとも思う。因みに、ファンが聴きたい曲ということは、ライブではご無沙汰の曲が選ばれる可能性も当然高くなるが、この日リクエストされたのは『PORTAL HEART』(インディーズ期のミニアルバム)収録の「雨中のきらめき」。ステージ上で「ちょっと不安そうな顔してるけど」「久しぶりにやるな~と思って」「松本くん歌詞大丈夫?」なんてやりとりをしながら、誰からともなく楽器を鳴らし始め、それが曲になり、自然と演奏が始まっていく感じが何だか微笑ましかった。
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
そうして「いろいろ話すこと考えてきたんですけど、ここまで唄ってきて気が変わりました。歌で聴いてください」と松本が吠えるようにロングトーンを響かせた「緑閃光」から終盤ブロックへ。「multiverse」では中原の合図に合わせて大きなシンガロングが起こり、みんな一緒にカウントアップして「ワンダーランド」のスタートだ。その躍動感を引き連れた「地球儀」では、オーディエンスのジャンプで大きく揺れるフロアに松本が突入していく場面も。サビのフレーズをオーディエンスに託した「キャラバン」では、フロアからの歌声が大屋・中原・川口によるコーラスを凌ぐほどの勢いになっていた。ツアータイトルの「MARCH」は、来てくれた人とともにライブをやっているんだというここ最近のバンドの意識と、「吹奏楽部の幽霊部員だった頃、マーチングバンドの練習風景を見ているのが好きだった」という松本の学生時代の思い出とが重なり、思い浮かんだ言葉だったとのこと。一つのフォーメーションを形作りながら、同じテンポで一緒に歩いていくスタイルは、確かに今の彼らにピッタリかもしれない。<魔法の様な唄を唄って/目映い今日を色付けていく>という歌詞どおりの光景を前に、「楽しんでる? 俺らもとんでも楽しいです!」(松本)とメンバー4人も思いっきり笑顔になる。
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
本編ラストに演奏されたのは、前日にMVが公開されたばかりだった新曲「New Clothes」だった。悩んで足掻いて苦しんでそれでも唄う松本の葛藤、そうして視界をこじ開けていくんだというバンドの覚悟を唄ったこの曲は、まるでこの日一日の流れを5分間に凝縮したかのような濃密さ。最新曲がこのような内容になり、また活動休止前最後のワンマンがこのような内容になったということは、彼ら自身がこのバンドのちょっとややこしい性格を肯定できたということだろう。その孤独をバンドとしてどのように鳴らすのか。それを曝すことによって同じような何かを抱えた聴き手とより密な関係を築いていけるかどうか。その辺りに今後の鍵はありそう。松本がオーディエンスに対して言っていた「大丈夫、もう一人じゃないよ」という言葉は、そのままテレン自身に跳ね返ってくるもののように思える。
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
ライブ中発表された通り、復活の日は8月19日、日比谷野外大音楽堂にて。「今日から活動休止じゃないです。僕らにとっては今日が始まりです」というその言葉が導く先に何が待つのかは、これからの彼らに懸かっている。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=木村篤史
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史
LAMP IN TERREN 撮影=木村篤史

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