【来日記念インタビュー】クレイドル
・オブ・フィルス、「日本のファンに
は、最高のおもてなしをするよ」

英ブラック・メタル・バンド:クレイドル・オブ・フィルスが、<LOUD PARK 17>以来、早くも日本に帰ってくる。ヴォーカリストでありリーダーでもあるダニ・フィルスに話を聞いてみた。
──2017年にリリースとなった最新アルバム『クリプトリアナ~腐蝕への誘惑』の反響はいかがでしたか?クレイドル・オブ・フィルス史上の最高傑作という声も高かった作品ですが。
ダニ:そうだね。このアルバムについても、その前の『ハンマー・オブ・ザ・ウィッチズ』(2015年)についても、プレスやファンからの反応はとても好意的だったよ。
──すでに『クリプトリアナ~腐蝕への誘惑』は12枚目のアルバムになりますが、25年という長い年月に渡りハイ・クオリティのアルバムをリリースし続けてこられた秘訣は何なのでしょう。
ダニ:俺たちは過去に何度もラインナップ・チェンジを経験してきて、そのことから非常に強力な労働倫理がバンド内に行き渡っているんだ。おかげで最高レべルのクオリティ・コントロールができているんだよ。それに加えて、俺たちは歴史やオカルト映画などが好きでね、こういったものは非常にリッチなインスピレーションを与えてくれるのさ。さらに25年に渡ってとても優秀なアーティスト/プロデューサー/ディレクター/レコード会社とともに仕事をやってこられたというのも大きい。彼らのおかげで、バンドのサウンドが常に新鮮で生き生きとしたものになっているのは間違いないよ。
──あなたたちはデビュー以来2~3年のペースでアルバムをリリースし続けていますね。
ダニ:自然にそうなっている。俺たちはクリエイティヴなバンドだから、2年というのは十分な長さなんだ。もうすでにニュークリア・ブラストからは3作目となる次のアルバムのことを考えているよ。これは今のラインナップになってからも3作目となるアルバムだね。具体的な曲作りも、ツアーが一段落するこの夏の数か月で始めようと思っているよ。
──昨年の<ラウドパーク>でのオーディエンスの反応はいかがでしたか?ヨーロッパのフェスとは違いますか?
ダニ:反応は最高にポジティブで、メンバー全員とても出演を楽しんだよ。<ラウドパーク>は日本のフェスティバルだけれど、見て当然のことを除けばヨーロッパとの違いは一切感じなかったな。ホスピタリティも素晴らしかったし、オーディエンスの反応にも圧倒された。だからこそこんなにもすぐに日本に戻るわけなのだけどね(笑)。
──今回の来日公演では、どんなセットリストが期待できますか?
ダニ:俺たちの日本のファンには、最高のおもてなしをするよ。約束する。
──12枚ものアルバムがあると、セットリストを決めるのは一苦労ですよね?
ダニ:確かに大変なときもある。俺たちはだいたい話し合ったあと、その後いくつかの要素に応じて最終決定をしていくんだ。フェスで演奏するのか、ニュー・アルバムをサポートするツアーなのか、とか。ずっと演奏していないとか、過去に1度も演奏をしたことがない、なんていう理由で演奏されるワイルドカード的な曲もある。まあこれはだいたいファンのリクエストに応えてやるものだけど。
──クレイドル・オブ・フィルスは、1990年代初めに、おそらく世界で初めてEmperorとツアーをしましたよね?Ihsahnからは、このツアー中に火吹きの実験に失敗して顔を火傷したという話を聞いたことがあるのですが、このツアーでの何か興味深いエピソードはありますか?
ダニ:それ覚えてるよ。彼が火を吹いているときに風向きが変わって、顔が燃えてしまったんだ。とりあえず重症でなくて幸いだったけれど、彼が火傷をしてヒリヒリする部分まわりをコープス・ペイントしていたのを覚えているよ。リヴァプールでプレイしたときは、Anathemaのダレン・ホワイトの家に泊まったのだけど、あの夜は面白かった。俺たちみんなベロベロに酔っぱらって、ピアノを弾いて歌を歌って食べ物を投げ合ったり、あのときEmperorでドラムを叩いていたボード・ファウストをテディ・ベアに埋もれさせたり、一晩中いたずらしたな。それに信じられないことに、クレイドル・オブ・フィルスとEmeprorの2バンドがプレイするというのに、エディンバラのショーには3人しかお客さんが来なかったんだ。
──クレイドル・オブ・フィルスは音楽的にはどのようなバンドから受けたのですか?
ダニ:バンドを始めたころは、俺たちのルーツはいろいろなスタイルのバンドのミックスだったよ。当時のイギリスのドゥーム・シーン、Paradise Lost、My Dying Bride、Anathemaであるとか、Destruction、VenomKreator、Sabbat、Slayer、Razor、Celtic Frost、Possessedといったクラシックなスラッシュ、それからあの頃急激に成長していたCarcassMorbid Angel、Dismember、EntombedBolt Throwerなどのデス・メタル。Iron Maiden、Priest、Mercyful Fate/King DiamondThin Lizzyのようなクラシック・メタルからももちろん影響を受けた。あとは、ダークウェイヴやハードコア、サウンドトラック、オーケストラ音楽などを魔女の釜にぶちこめば、できあがり。クレイドルのサウンドは、恐ろしい変異みたいにしてでき上がったんだ。
──好きなボーカリストは誰ですか?Sabbatのマーティンからの影響が大きいように思えるのですが。そのSabbatに大きな影響を与えたHellについてはどうでしょう。
ダニ:パッと思いつくところだと、ディアマンダ・ギャラ、ブルース・ディッキンソン、ダンジグ、グレッグ・グラフィン、キング・ダイアモンド、ロブ・ハルフォード、チャック・シュルディナー、カンガあたりかな。そしてもちろんSabbatのマーティンもね。Hellも大好きだよ。ただ、アンディ・スニープがJudas Priestに加入してしまったので、彼らが今までみたいに活動できるかはわからないけれど。俺はアンディともロブ(ハルフォード)とも交流があるから、できれば近いうちにジューダス・プリーストのサポートをやらせてくれないかと期待しているんだ。とても良い組み合わせになると思うのだけど。
──お気に入りのメタル・アルバムを3枚挙げるとすれば何になりますか?
ダニ:Mercyful Fateの『Don't Break the Oath』。キング・ダイアモンドは、俺にとって大好きなアイコン的なフロント・マンなんだ。そして運命のいたずらというか、このアルバムは、俺が初めて手にしたメタルのアルバムの中の1枚だ。実を言うと、俺はこのアルバムが好きすぎて、ここで歌っているのは本物の幽霊だと信じていたほどさ。イギリスの田舎で嵐の夜、灯りを消してベッドルームの窓辺で煙草を吸いながら聴いたものだよ。みんな、というか特にMetallicaは、これの前の『Melissa』を絶賛するけれど、俺はこっちのレコードの方があらゆる点で優れていると思うんだ。異常に不気味な音質、複雑で恐ろしいメロディ、ブロッケン山で良からぬことを企んでいる魔女を思わせるキングのファルセット。いつも言うように、「ブロッケンでないものを直そうとするな」ということさ。(訳注:壊れていないなら直そうとするな、という言い回しのbrokenとブロッケンをかけたシャレ。)それからEmperorの『In The Nightside Eclipse』。史上最高のブラック・メタルのアルバムだ。巨大で雰囲気があって、大混乱の向こう側に聴こえるクワイヤやキーボードは、この世のものとは思えない。このアルバムでのEmperorは、地獄の渦巻くはらわたから解放された暴れ回るヴァンパイアの嵐みたいなものだ。埋もれがちな音質なんてどうでもいいんだ。これも音楽にオーガニックな月明かりの幻影、禿山で吼えるチェルナボーグのような薄暗いディズニー・カラーみたいな美しい混乱を与えているのだからね。3枚目はSlayerの『Reign in Blood』。これは間違いなく決定的に最高のクオリティを持ったアルバムだ。28分間のサタニック・テラー、そしてブルータリティ。心臓麻痺を引き起こす致死量注射は、オープニングの「Angel of Death」からラストのタイトル曲まで止まりはしない。不思議なことに、1986年のクリスマスに母親が俺にこれを買ってくれたんだ。アメリカからプレオーダーでね。だけど俺がこれをかけるたびに、ボリュームを落とせと怒鳴られたものだ。そんな彼女も今ではすっかりこのバンドのファンだけれど。
──では最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。
ダニ:まず最初に、長年にわたってクレイドル・オブ・フィルスをサポートしてくれてどうもありがとう。日本にはあまり行けていないにもかかわらずだ。本当に感謝しているよ。それから、俺たちのニュー・アルバム『クリプトリアナ~腐蝕への誘惑』を楽しんで、俺たちが巨大怪獣のようにまもなく日本を侵略するさいには、ぜひ見に来てくれ。
取材・文:川嶋未来 / SIGH

写真:Artūrs Bērziņš

クレイドル・オブ・フィルス『クリプト
リアナ~腐蝕への誘惑』

2017年9月2日 発売

【通販限定直筆サイン付きCD+サインカード】WRDZZ-611 ¥3,500+税

【CD】GQCS-90427 / ¥2,500+税

1. エクスクイジット・トーメントス・アウェイト

2. ハートブレイク・アンド・セアンス

3. エイキングリー・ビューティフル

4. ウェスター・ヴェスパタイン

5. ザ・セダクティヴネス・オブ・ディケイ

6. ヴェンジフル・スピリット

7. ユー・ウィル・ノウ・ザ・ライオン・バイ・ヒズ・クロウ

8. デス・アンド・ザ・メイデン

9. ザ・ナイト・アット・カタファルク・マナー

10. アリソン・ヘル
【メンバー】

ダニ・フィルス(ヴォーカル)

リチャード・ショウ(ギター)

マレク “アショク” シュメルダ(ギター)

マーティン “マルテュス” スカロウプカ(ドラムス/キーボード/オーケストレーション)

ダニエル・ファース(ベース)

リンゼイ・スクールクラフト(女性ヴォイス)

<CRYPTORIANA WORLD TOUR 2018 in Japan>

2018年5月1日(火)開場18:00 / 開演 19:00 東京:恵比寿 LIQUIDROOM

2018年5月2日(水)開場18:00 / 開演 19:00 大阪:梅田 CLUB QUATTRO

2018年5月3日(木・祝)開場18:00 / 開演 19:00 愛知:名古屋 CLUB QUATTRO

[問]クリエイティブマン:03-3499-6669

https://www.creativeman.co.jp/event/cof2018/

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