(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

【映画コラム】素晴らしき“お子様ラ
ンチ映画”の集大成『レディ・プレイ
ヤー1』

 近未来のVR(仮想現実)内で繰り広げられるトレジャー・ハンティングの冒険を描いたスティーブン・スピルバーグ監督の最新作『レディ・プレイヤー1』が公開された。
 2045年、街は荒廃し、若者たちは、想像したことが現実となり、アバターを通して何者にでも変身できるバーチャルな世界「オアシス」に熱中していた。そんな中、オアシスの開発者ハリデー(マーク・ライランス)が死去。オアシス内に隠したゴールデンエッグを見付けた者に、法外な財産とオアシスの権利を与えるという遺言が配信され、争奪戦が始まる。
 スピルバーグの映画を見て育った原作者アーネスト・クラインが書いた小説を、スピルバーグ自身が映画化するという奇跡の合体が実現。それ故、見る者をドキドキワクワクさせる面白さに満ち、温かくて、ユーモアもある、“素晴らしきお子様ランチ映画”を作り続けてきたスピルバーグの集大成とも言えるものになった。
 本作は、仮想現実の世界での現実逃避を、めくるめく映像で魅力的に見せながら、同時にその功罪を描き、最後は現実をしっかり生きることこそ尊いと説く。そこには矛盾があるのだが、これは、スピルバーグの映画の特徴の一つである、最新テクノロジーを駆使した映像で失われたものへのノスタルジーを描く、あるいは現代社会に対する警鐘を鳴らす、というスタンスが抱える二律背反故に、常に生じる問題だ。そこが彼の映画の魅力でもあり、弱点でもある。
 また映像的にも、初期の『激突!』(71)や『ジョーズ』(75)から一貫している、カメラアングルなどで工夫を凝らしながら、いかに見る者を驚かせるかに腐心する、いたずらっ子のような視点は本作でも健在だ。つまり本作は、突然発生したものではなく、あくまでも過去のスピルバーグ作品の延長線上に存在するものなのである。
 さて、ハリデーが思い入れる1980年代のポップカルチャーネタと、スピルバーグ自身の旧作映画(『シャイニング』、『素晴らしき哉、人生!』、『市民ケーン』…)への思いが共存している点が本作の見どころの一つだが、ある意味、見る者の映画やサブカルに関する知識量が問われるところもある。知っていればいるほど「あっ、あれが出ている。これも出ている」と楽しめ、見終わった後で、元ネタについて知っている誰かと話し合いたくなるからだ。
 日本の観客にとっては、『AKIRA』の金田正太郎の赤いバイク、伊福部昭メロディーをバックにしたメカゴジラ対ガンダム、そして三船敏郎などが登場するのがうれしいところ。
 また「ジャンプ」(ヴァン・ヘイレン)、「テイク・オン・ミー」(a-ha)、「ユー・メイク・マイ・ドリームス」(ホール&オーツ)といった80年代を彩った挿入曲に加えて、いつものジョン・ウィリアムズではなく、80年代を席巻した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのアラン・シルベストリが担当した音楽も聴きどころだ。(田中雄二)

エンタメOVO

新着