「アニソン・ゲーム音楽作り20年の軌跡~上松範康の仕事術~」書影(発売:主婦の友社)

「アニソン・ゲーム音楽作り20年の軌跡~上松範康の仕事術~」書影(発売:主婦の友社)

【前Qの「いいアニメを見に行こう」
】第3回 上松範康さんの本を読む、
そして「リズと青い鳥」「レディプレ

「アニソン・ゲーム音楽作り20年の軌跡~上松範康の仕事術~」書影(発売:主婦の友社) 今回は本の紹介。取り上げるのは長年の友人である音楽評論家・冨田明宏さんが聞き書きを手がけた「アニソン・ゲーム音楽作り20年の軌跡~上松範康の仕事術~」です。
 水樹奈々さんの「ETERNAL BLAZE」「深愛」をはじめ、数々の名曲で現代のアニソンシーンを牽引してきたコンポーザーであり、「うたの☆プリンスさまっ♪」「戦姫絶唱シンフォギア」といった大ヒットシリーズの原作者・プロデューサーとしても活躍する上松範康さんのクリエイティブの秘密に、その生い立ちから現在までの人生を辿りながら迫った1冊。
 そんな本だからして当然、上松さんのパーソナリティであったり、音楽、アニソンに絡んだ話題が多いんですが、それだけだったら別にこのコラムで取り上げはしないわけですよ。アニメのコラムっすからね。編集さんに怒られちゃう。ではどうして書くのかというと、この本、「うたの☆プリンスさまっ♪」「戦姫絶唱シンフォギア」の企画誕生からブレイクまでの流れにけっこう紙幅が割かれてるんですよね。
 たとえば「うたの☆プリンスさまっ♪」といえば企画の発端は乙女ゲーム、「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE1000%」のタイトルでアニメ化されてからも、ファン層は女性ファンが中心。しかし本書の発言を引用すれば、アニメ化で人気が加速したのは「男性ユーザーたちからの支持もあったからだと思っています」とのこと。では、男性ファンの支持はアニメのどんなところからもたらされたのか。上松さんの分析では、それは恋愛ものでありながら豪快なギャグ要素が盛り込まれていたことで、その要素のインスピレーション源は「ミスター味っ子」(もちろん、アニメ版)だという。意外な点と点のつながりが、本書の中から見えてくる。これが楽しい。
 で、そうした話からもう少し俯瞰して、現代のアニメというものを考えるうえでも、とても興味深い証言が多いわけです。今やライブと連動した形のアニメ企画が、怒涛の勢いで展開されているわけじゃないですか。そうしたプロジェクトの背景に、いかなる思想があり、目標があり、未来に向けた展望があるのか。第一線で活躍し続けている当事者の口からオンタイムで語られる証言なわけですね、本書は。
 つうわけで、アニメを取り巻く時代のうねりを考えるうえで、参照する価値のある1冊ですよ。
 さて、このコラムは半分ワタクシの日記のようなもの。以下は余談的に、別の話題についてちょっとだけ触れます。
 今週末から公開の「リズと青い鳥」、空恐ろしいほどの緊張感が全編に漲(みなぎ)る傑作ですよ。画面も素晴らしいし、山田尚子監督の前作「映画 聲の形」に続いて、音響面もこだわり抜かれています。こういう作品は劇場で見なきゃいけません。ぜひ足を運ばれたし。「響け!ユーフォニアム」のスピンオフですが、内容的にこの1本で完結しているので、未見の人でも大丈夫。シリーズのファンはファンで楽しめるポイントがちゃんと用意されてもいますが(やっぱ久美子と麗奈の「友情」は至高……)。
 そんな「リズと青い鳥」もですが、最近は試写で拝見した映画に大当たりが続いてうれしい限り。「レディ・プレイヤー1」もサイコーでしたわ。アニメじゃないけど、アニメ好きにオススメしたい。オタクだったら……と書くと最近は差し障りがあるかな。80年代のアニメ・マンガ・ゲーム・映画・音楽といったポップ・カルチャーや、その源流にあたるもの、80年代ポップ・カルチャーから派生した表現が大好きな人たちであれば、たまらないものがあるはず。ワタクシ、観ている途中、何度も感極まってしまいました。ガンダムとか、ガンダムとかな!

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着