アーバンギャルド 撮影・ゆうゆっこ

アーバンギャルド 撮影・ゆうゆっこ

「アーバンギャルドを”青春”にして
くれてありがとう」10周年の“KEKKO
N SHIKI”中野サンプラザライブレポ
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4月8日、東京・中野サンプラザホールにて開催された”10周年記念公演アーバンギャルドのディストピア 2018「KEKKON SHIKI」”のもようをレポートします。

4月8日、東京・中野サンプラザホールにて”10周年記念公演アーバンギャルドのディストピア 2018「KEKKON SHIKI」”が開催された。
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今年でインディーズデビュー10周年を迎えるアーバンギャルドの「KEKKON SHIKI」の会場は”サブカルの聖地”・中野、”アイドルの聖地”・中野サンプラザホール。この日ばかりは”さよならサブカルチャーの聖地”、”病めるアイドルの聖地”になるのだろうか……?
会場にはセーラー服からウェディングドレス風まで様々な装いのアーバンギャルとアーバンギャルソン(※ファンの総称)で溢れ、開演前には浜崎容子(Vo)による注意事項がアナウンスされ、「アナタはどんな人生をひとりで歩んできましたか? これからはひとりじゃありません。病める時も、健やかなる時もアーバンギャルドは一緒です。アーバンギャルドの『KEKKON SHIKI』、間もなく開演です」と締められた。
程なくして客席の照明が消えステージの幕が上がる。中央には真っ赤な階段、その両脇に設置された金網の中には数多の机と椅子が打ち棄てられている。まるで、誰かの青春みたいに。
電子音の『結婚行進曲』をバックに最初にステージに現れたのは松永天馬(Vo)、聖書を片手に「本日は、我々、そして貴方のKEKKON SHIKIにご来場いただき、誠にありがとう、いや、おめでとうございます」と挨拶。松永の呼び込みにより、おおくぼけい(Key)、瀬々信(G)が登場し、誓いの言葉を述べていく。
そして最後に赤く染まったウェディングドレスを纏った浜崎へ「バンドと末永く共に歩むことを誓いますか?」と松永が問いかける。スクリーンには”血痕式”と映し出され、「誓いません! ……なんて嘘です」と浜崎。巨大な”血の丸”がステージに登場し、「10年間待たせてごめんね」という松永の言葉から、『ワンピース心中』でライブはスタート。
続いて『スカート革命』、『水玉病』が繰り出され、『自撮入門』では撮影可の時間が設けられる。客席いっぱいにスマートフォンが掲げられる中、ステージの上手下手から花道まで勢い良く跳ねまわる松永とおおくぼ。
10年かけてつき続けた嘘、フィクションです
『コインロッカー・ベイビーズ』や『コンクリートガール』『傷だらけのマリア』など、”THE・アーバンギャルド”的なアップテンポな曲で構成された前半を経て、しっとりとした『平成死亡遊戯』、『キスについて』が披露される。
おおくぼが静かにピアノを奏でる中、CDという鏡の中にいる少女にまつわる物語を朗読し始める松永。
「アーバンギャルドはフィクションです。10年かけてつき続けた嘘、フィクションです……」
そして浜崎がアーバンギャルドのトレードマークともいえる真っ赤な水玉のワンピースを纏って再びステージに現れると、発売されたばかりのアルバム『少女フィクション』のリードトラック『あたしフィクション』へ。
松永が「ロキノン系ならぬ、ロキソニン系バンド、アーバンギャルドです!」と自己紹介し、「”ところで、ところで、ところで……”」と前フリをするとざわつく観客。続いて「こんな前フリも久しぶりですね! ”セックスはお好きですか!”」「大好きです!」というお約束のコール&レスポンスを繰り広げる。観客はもちろんのこと後ろのゲスト席にまで呼びかけていく。
「ふざけるな!」とメガネを吹き飛ばしながら「処女捨てたもうことなかれ!」と絶叫する松永。そして『ベビーブーム』へ。曲間ではスペシャルゲストとして、元メンバーの藤井亮次扮する前衛都市夫が登場、観客からは大きな歓声が沸き起こる。
続いては恒例の”ボックスジャンプ”で『箱男に訊け』がスタート。この日の”箱男”は松永扮する一体だけでなく小さな”箱男”がぞろぞろとステージに現れた。「今日は箱男軍団がやってきた! こいつらに負けないように全力で飛びやがれ!」と瀬々が観客を煽る。『あくまで悪魔』になると、”箱男軍団”が箱を脱ぎ捨てるとセーラー服の女の子に! 「アイドルは誰だ! 俺だ!」と今度はおおくぼ(※ミスiD2017 ファイナリスト)が絶叫し、『病めるアイドル』へ。
MCではアーバンギャルドに加入するきっかけがmixiで、加入時の浜崎のmixi日記が「結婚します」というタイトルだったことや、上京するときに浜崎が母親に「アーバンギャルドと結婚するんだね」と言われたことなど、10年前の思い出エピソードを語る浜崎と松永。
ホールライブということで、「ダンスや舞台装置ありのやりたいことが出来た、もう今日が初ライブだと思って欲しい」と言い出す松永。
新作アルバムの話にも触れ、「10年前は何をしていましたか? ……そうだね、毎日死にたかったんだね? 10年後の今日は? 今日も死にたいんだね、10年間ともに生きられてよかったね!」という松永の言葉に拍手が起きる。
そして終盤は『さよならサブカルチャー』、『大破壊交響楽』と畳み掛け、浜崎の「10年間ありがとう、色々あったけど、今夜は……『少女にしやがれ』」という言葉。病的にポップで痛いほどガーリーで、そして少し切ない歌と音が、現在進行系の少女、かつて少女だった人、ここにいる全員を包み込むように響き渡っていった。
振り返った時に初めて”青春”になる
アンコールで浜崎がセーラー服を纏って登場すると、大きな拍手と歓声で迎えられる。「皆のこと愛してるよ、愛してる……なんて嘘です!」と始まった『都会のアリス』では再びダンサーが登場。その後、浜崎と松永がサポートメンバーの結婚離婚歴を挟みつつ紹介し、メンバー紹介へ。
おおくぼは10周年ということで感謝の気持ちを弾き語りで披露し、「10年間の思い出を話してと言われたけど、俺と天馬は18年くらいだから……」と、大学時代の松永の変人エピソードを開陳する瀬々。続いて「色々ありすぎて本当に何にもない」と前置きし、「よこたんの初のPV撮影のことは覚えていて、ハードすぎて”この人初めての仕事でこんなことやらされたら辞めるんじゃないか”と思ってたけど、よく続けてくれたな、あの時辞めないでくれてありがとう」とコメントすると観客からは拍手が起きた。
「アーバンギャルドは、まっとうな青春を送ってない人が聴く音楽なのに、”青春”という歌詞が意外とたくさん出てくる。青春はその渦中にある時は気づかない、本当は人それぞれ色んな青春、不健康なネガティブな青春もある。振り返った時に初めてそれが”青春”になるんじゃないかな。今日10年間を振り返るようなライブをやって、アーバンギャルドが”青春”になったと思いました」と述べる松永が、MC中に涙をこぼす一幕も。
そして観客からの「ようこぉ〜↑↑」コールに迎えられ、アイドルの聖地・中野でコールされることに感慨深そうな浜崎。そして「私自身はアーバンギャルドは最初から辞める気はなかった。死ぬ時はいちばんにアーバンギャルドのことが来る気がする。天馬の言ったように”青春”だったと思うし、10年間何かを始めることや辞めることは簡単で、続けることがいちばん難しい。色んな出来事があって続けるのが難しい時もあったけど、今日という日を迎えられて嬉しいです」とコメント。
そして「悔い残さず観てくれるよね?」と『堕天使ポップ』、ラストは『セーラー服を脱がないで 』で締めくくられた。投げキッスを客席にむけて贈るおおくぼ、手を大きく振る瀬々、「アーバンギャルドを”青春”にしてくれてありがとう」と松永。「またこの場所に帰ってきます、ありがとう」と浜崎。それぞれに観客に感謝の気持ちを表現し、ステージを後にした。
終演後、毎年夏の終わりの恒例となっている「鬱フェス2018」の開催を告知。各自のソロも活発に行われるとのこと。この”青春”はまだ終わりそうにない。
セットリスト1.ワンピース心中
2.スカート革命
3.水玉病
4.自撮入門
5.シンジュク・モナムール
6.コインロッカーベイビーズ
7.コンクリートガール
8.傷だらけのマリア
9.平成死亡遊戯
10.キスについて
(朗読)
11.あたしフィクション
12.ふぁむふぁたファンタジー
13.ベビーブーム
14.箱男に訊け
15.あくまで悪魔
16.病めるアイドル
17.さよならサブカルチャー
18.大破壊交響楽
19.少女にしやがれ
アンコール
1.都会のアリス
2.堕天使ポップ
3.セーラー服を脱がないで

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