優香が初舞台を踏んだ三谷幸喜の作・
演出作品『酒と涙とジキルとハイド』
再演に意気込み

2014年に初演された三谷幸喜によるコメディ『酒と涙とジキルとハイド』。片岡愛之助、優香、藤井隆、迫田孝也という初演メンバーが再集結して、4年ぶりに再演することになった。初演時、意外にも初舞台だった優香に、作品の魅力や思いを聞いた。
(撮影:福岡諒祠)
作品にもメンバーにも恵まれた初舞台
――本作品が初舞台だったそうですね。思い出深いと思いますが、印象に残っていることはありますか?
作品に恵まれたなと思います。よく「舞台をやると“もう二度とやりたくない”と思うか“何回も出たくなるか”のどっちか​」と言うじゃないですか。その運命を決める初舞台で、こんなに面白い作品に出会えた。台本読んだ時点から笑いが止まらなかったんです。全く飽きることなく、毎回毎回楽しかったですね。メンバーも本当に素敵な方々で、いい舞台に巡りあえたなという感じでした。
――映像と舞台の違いはどのようなところで感じますか?
やはりお客さんがいるということ。そして、始まったら終わるまで止まれないというのは“違い”かな。頭が真っ白になる瞬間はあまりなかったですね。すごく緊張していましたが、セリフが出てこないということはなかったです。2本目の『不信〜彼女が嘘をつく理由』(2017年、三谷幸喜作・演出)の時の方が、一瞬セリフが出てこないという時がありましたけど……この『酒と涙とジキルとハイド』の時はなかったですね。
(撮影:福岡諒祠)
それぞれのキャラクターが愛おしい
――改めて作品の魅力を教えてください。
出演する4人が愛おしいですよね。一生懸命で、かわいい。それぞれのキャラクターが素晴らしいなと思います。そして、観劇後に本当に何も残らない(笑)。「楽しかったね!」で終わる。すっきりとした舞台だなと思いました。
――4年ぶりの再演が決まった時はどう思いましたか?
初演が終わった時、愛之助さんが「またやりたいね」と仰っていて、ほかのみんなとも「やりたい」と言っていたんです。なんとなくまたやるのかなという感じはあったので再演を楽しみにしていました。再演ということ自体が初めてなので、どんな風になるのか分からないですが(笑)。
『酒と涙とジキルとハイド』(撮影:渡部孝弘)
――初舞台で幕が開いて、いきなりの独白でした。どんな気持ちだったのですか?
嫌でした(笑)。舞台をよく分かっていないのに、台本を見たら、1ページ目からめちゃくちゃ喋っている。独白は難しいですよね。舞台って、最初のシーンを見て、面白いかどうかなんとなく決まるじゃないですか。その大事な最初のシーンでつまずいたら嫌なので……。最初のシーンが終わると、あとは楽しいです。それを乗り越えられればと、毎回思っていました。
――独白を書いてきた三谷さんに対してはどう思われましたか?
本当に「なんで~?!」と思いました(笑)。難しかったです.……。
――今回は、『台湾国際芸術節』からオファーを受けての、東京公演に先駆けた台湾・台北の國家兩廳院公演も話題を呼んでいますね。
藤井さんはパリ公演の経験があるそうですが、そのほかの3人は海外公演を経験していないんです。なので、全くどうなるのかわからないですね。
でもきっと三谷さんの作品を好きな方たちが観にきてくださると思うので、劇場は温かいと思います。不安を前面に出すと失敗してしまうので、なんとかなる!って思いながら臨みたいです。(※台湾公演は成功裡に終了しました-4/12現在)
――お稽古は短めで、長くても2週間ぐらいだそうですが、準備万端ですか?
足りないでしょうと思っています(笑)。けど、4人が揃ったらあの時の感じがすぐ戻るんじゃないかな。とりあえず今はセリフを覚え直しています。
(撮影:福岡諒祠)
気負わずに一生懸命やるだけ
――『不信』のような舞台も経験されたので、ご自身の中でもだいぶ自信がついたのではないですか?
『ジキル〜』の初演時は、早い段階で台本が出来上がっていたんです。三谷さんをよく知る方々には「それは珍しい。よかったねぇ」と言われていたんですが、それでも結構お稽古場で変わったりしているしなぁ……と思っていたんです。でも、『不信』の時は全然台本ができあがらなくて! どんどん変わっていっちゃうし、本当にギリギリでした。共演した段田さん(段田安則)も、栗原さん(栗原英雄)も、戸田さん(戸田恵子)も舞台の人だから、「一緒にしないで!」と本当に思っていました(笑)。
お客さんとの距離も近かったので、『ジキル〜』の時とは全く違った印象でしたね。近いと近いなりに楽しいんですけど、怖さもあって。本当に劇場によって違うし、お話によってこんなに舞台との向き合い方が違うんだなと思いました。
『酒と涙とジキルとハイド』(撮影:渡部孝弘)
――ご自身が演じられるイヴという女性についてはどうお考えですか?
とにかく一生懸命でかわいいですね。ジキル博士のこともそんなに嫌いじゃないし、見た目だって悪くないし頭もいいし、だけど刺激的じゃないと言っているところがすごく愛らしいなと思います。自分は殻を破れないし、そういう激しい人も自分は選べないという、かわいさがとてもある人だなって思いますね。
――普段、役を演じる上ではどういうアプローチをしていらっしゃるのですか?
三谷さんに「こうしてみて、ああしてみて」と言われて、最初は手探りです。やりながらですね。動きなどを覚えるので最初は手いっぱいでした。稽古の進むスピードも早いです。頭の整理がつかず、メモをあれこれ書き込んでいるうちに、次にどんどん行ってしまう。考える間もなく、やって覚える、やって作るという感じです。とにかくめまぐるしかったですね。
(撮影:福岡諒祠)
――初演を見たことがない人もいると思いますが、どう見せるかプランはございますか?
三谷さんが初演の時、「爆笑に次ぐ爆笑」と仰っていましたが、本当にその通りだなと思います。最初はそんなこと言っちゃって大丈夫なのかなと。もちろん三谷さんが作るものだから面白いけど、やる方としてはすごくハードルが高く感じました。でも、相当三谷さんも自信があるのだなと。それに私たちも応えようと、一生懸命やりました。
「初演時より面白くなくなったね」と思われないか不安ですが、より面白くなるようにしたいなぁとも思います。あんまり気負いすぎちゃうと、よくないので。初めて見る方も、前も見てくださった方も、何も考えずに楽しく見ていただけたらいいなと思います。ただただ笑えると思うので、楽しんでいただきたいです。
――コント作品なども含め笑いがある作品によく出演されますが、笑いのある作品に出演するときに意識していることを教えてください。
自分が楽しくないと楽しさは伝わらないと思います。とにかく一生懸命さが面白く見えると思うんです。あまり気負わずに、自分が楽しいと思ってやっていれば、きっと楽しくなるなぁと思います。
――最後に一言お願いします!
損はさせません! 面白いと思います! 是非いらしてください!
(撮影:福岡諒祠)
取材・文=五月女菜穂  撮影=福岡諒祠

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