【インタビュー】ザ・プードルズ「良
い音楽を好きにプレイするだけ」

ザ・プードルズは、哀愁のメロディーにキャッチー&エッジのあるハードなサウンドで独自の世界を確立したスウェーデンのバンドだ。2008年に北京オリンピックの公式ソングをリリースし、以降もアルバム『PERFORMOCRACY』『TOUR DE FORCE』でスウェーデン国内チャート1位を獲得するなどの快進撃の一方で、数度のメンバーチェンジを経ながら現在の地位を築いてきたハードロックバンドである。
ザ・プードルズは、多くのバンドで活動をしてきたヤコブ・サミュエル(Vo)によって2005年に結成された。翌年に参加した<ユーロビジョン>にて母国スウェーデンで一躍その名を馳せる事になり、欧州でのメロディック系フェスティバル<Fire Fest>や<Sweden Rock Festival><Wacken Open Air>など巨大フェスティバルへの出演も果たし、2018年にいよいよ日本へも初上陸を果たした。
今回の来日公演では、メンバー都合によりロブ・マルセロ(G/デンジャー・デンジャー)が参加することとなったが、最新作を筆頭に数々の代表曲を網羅するステージを披露してみせた。ヤコブ(Vo)の音域は非常に広く、高音から低音までの楽曲を見事に披露、演奏陣では特にドラムスのキッケン(クリスチャン・ルドクヴィスト)の安定感が抜群で、ベースのジャメイン・レスとともにしっかりとバンドサウンドを支えている。ロブは通常よりは控えめに感じるものの、相変わらずトーンもプレイも素晴らしい。
アコースティックでのメドレーも挟みつつ、全曲をフルコーラスで歌い上げる観客たちの歓喜の姿が、そのまま彼らの楽曲の素晴らしさを物語っているようだ。長年待ち望んでいたファンとの掛け合いも実に暖かい空間を生み出しており、ファッションデザイナーを務めるヤコブ婦人によるステージ衣装も3度のお色直しで見せ場を創出、ファンから贈られたバンドフラッグも丁寧に紹介する、大盛況の初来日公演となった。
東京公演前にバンドの中心人物であるヤコブがインタビューに応じてくれた。
──この日を12年待っていました、まず今のお気持ちを。
ヤコブ:本当に素晴らしい気持ちだよ。とてもワクワクしているしハッピーだ。みんな日本に来てプレイするのを楽しみにしていたし、サウンドチェックでのクルーも素晴らしくて、今夜のショーはきっと素晴らしいものになると思うよ。
──ロブ(マルセロ/G)が参加してのヨーロッパツアーはいかがでしたか?
ヤコブ:とても良かった。ヘンリックがしばらくいなくなる事はショックだったんだ。ずっと一緒に音楽を作ってきてステージをやってきた長年の仲間だからね。でも、ロブもプレイヤーとしてもパフォーマーとしても素晴らしい。実は僕は以前はそれほどロブの事は知らなかったんだけど、初めて2年前のイギリスのフェスティバルで会った時から、ロブはザ・プードルズに入りたいと言ってくれていたらしいんだ。だから、今回ヘンリックが言語学の仕事で1年間オフを取りたいと言った時、ロブを選んだのは自然なチョイスだったよ。ロブはザ・プードルズが好きだから、バンドの事をよく知っている。もうロブはファミリーの一員だよ。とてもうまくいっている。
──同期や同郷のバンドの多くはすでに日本ツアーを経験してますが、焦りを感じた事は?
ヤコブ:僕自身、その状況は理解できなかった。以前の日本のレコード会社からもアルバムのオーダーはどんどん来ているしセールスは好調だと聞いていたのに、プロモーターから声がかからなかった。オファーが全くなかったわけではないけど、たまたま他のヨーロッパツアーと重なってスケジュールが合わない事もあった。でも、これだけアルバムを出しているのに、なかなかコンタクトを貰えない事は不思議だった。今回はこうしてやっと日本公演が実現できたから、これをきっかけに<ラウドパーク>や次の単独公演の軌道に乗れたらいいな。アルバムを出す毎に来日できるようになるかもしれないし、12年も待たせないようにしたいよ。
──今回の来日公演の実現には、昨年トリートで来日した元メンバー、ポンタス(エグバーグ/B)の後押しもあったとか?
ヤコブ:そうなんだよ、ポンタスのおかげなのは本当だよ。今回のザ・プードルズとトリートはツアーマネージャーが同じで、ポンタスがトリートで日本に来た際に、彼にザ・プードルズも呼んだら?という話もあって、ポンタスが僕の連絡先を彼に教えてくれたんだ。そこから始まったんだ、ポンタス様々だよ!
──ポンタスとの別バンド、クリプトナイトも好評ですが、こちらもザ・プードルズと並行して続きますか?
ヤコブ:うん、実は日本に来る前にちょうどフロンティアーズ・レーベルから「また次作を作らないか?」と連絡があったところだよ。来年にはレコーディングをしたいかな。レーベルとしては<Frontiers Festival>にも出て欲しい要望もあるみたいだし、僕もこのバンドは良いミュージシャンの集まりでステージ映えもすると思うから、またアルバムを作ってライブもやりたいよね。正確にはまだいつとは言えないけど、来年には始めたいと思うよ。
──一時的なブレイクはあっても短命なバンドも少なくない中で、ザ・プードルズがここまで継続できた理由は何だと思いますか?
ヤコブ:短命なバンドは多いよね。バンド内って色々な争い事やトラブルや喧嘩もあるけど、ザ・プードルズはいつも話し合って長い関係性を作ってきた。ギブ&テイクと妥協…これは悪い意味ではなくてどんな人間関係にも当てはまる。僕らが前進できる理由としては、常に新しい音楽を作りスタジオに入り、また作ってスタジオというサイクルで続けている。曲がたくさんあるのでツアーに出ていない時はいつも作ってアルバムを出してバンドを前進させられないと1枚とか3枚とかで終わってしまうよね。休みも少しは取って、他の事をやって、それがまたザ・プードルズに還元されるんだ。例えばソロアルバムや他のアーティストへの楽曲提供とかね、さっきのクリプトナイトもそう。それが新しい血となって、またザ・プードルズに注がれるんだ。そして今のザ・プードルズのメンバーは、お互いを評価してありがたい存在である事で、とても良い関係が作れている。あともうひとつは、僕らはわりと早い段階で本国で音楽的に成功できたのも、次の新しい活動へ向くことができた理由だね。
──ザ・プードルズはこれまで7枚のスタジオアルバムをリリースされていますが、バンドとして分岐点などはありましたか?
ヤコブ:特にこれまでの中でのターニングポイントみたいなものはなかったよ。わりとアルバムを3枚くらい作ると次はどんな方向性にしようかって考えがちだけど、僕は自分のポリシーで、音楽性がどうとか方向性がどうっていう事は考えないんだ。肝心なのは流れかな。曲作りや誰と一緒にやるか、だね。ひたすら曲を作って、ヨナス・ゴールド(ミッドナイト・サンやザ・フラワー・キングス)やマッツ・ヴァレンティーノというイタリアのミュージシャンとやったり、とにかく夢中で制作するんだ。それを後から振り返って、できた曲の数々を見てから方向性を判断する。ザ・プードルズは、楽曲がバラエティに富んでいるでしょ?クイーンやレッド・ツェッペリンもみんなバラエティに富んでいる。僕はジャンルという言葉は好きではないし、グラムとかメタルとかハードロックと言われるけど、何と言われようと良い音楽を好きにプレイするだけ。ヘヴィな曲もあればピアノの流れる曲もある、ひとつのアルバムの中で「旅」みたいなものが表現できればと思っている。
──最新アルバム『Prisma』の日本盤ボーナストラック「Soldier of Fortune」は、共演された事もあるジョン・ロードへの想いが?
ヤコブ:まさにそうだよ。僕が初めて観たライブは14歳の時のホワイトスネイクで「Slide It In」の時代だったんだ。ライブの冒頭でジョン・ロードがまずオルガンを弾くんだけど、最初に観たものがジョンのオルガンプレイだったからとても心に残っていてね。それが20年以上経って彼と共演できた事は信じられないほどの素晴らしい経験だった。ジョンも忙しい人だからツアーの合間にやってくれたんだけど、2年くらい一緒にやれたかな。彼は礼儀正しくてヒーローとはかくあるべきを全て備えられた本当に素晴らしい人さ。そんな理想の彼を亡くした事は僕だけでなく世界中の悲しみでとても辛かったよね。ジョン自身から、ディープ・パープルの曲の中でもこの「Soldier of Fortune」がお気に入りだと聞いていたし、実際に15回くらいこの曲を彼と共演できたので僕にとっても思い入れのある特別なものなんだ。
──共演時のエピソードなどはありますか?
ヤコブ:初めてジョンとリハーサルをしたのは『Machine Head』収録の「Highway Star」だったんだけど、テレビ番組で大勢の観客がいてね、僕はとても緊張していたんだ。とりあえず通しでやってみた後に、誰かが後ろにいる気配を感じて振り向いたらジョンが居て、「君は若いのにどうもありがとう。イアン・ギランのようなスクリームを聴けて僕も20歳くらい若返ったよ」と言ってくれた(笑)。
──最後に日本のファンへメッセージを。
ヤコブ:日本に来れて本当に嬉しい。サウンドチェックもバッチリだったから今夜は素晴らしいステージになるよ。リハーサルもたくさんして来たし、ファンもずっと待っていてくれた。それが今日ようやく叶ったよ。良い結果が出せたらまた来れると思う、本当にハッピーだよ、ありがとう。
取材・文:Sweeet Rock / Aki

写真:Takumi Nakajima
The Poodles ~Japan Tour 2018~>

2018年4月4日@Shibuya Club Quattro

1.Crazy Horses

2.Night of Passion

3.House of Cards

4.Shut Up!

5.I Rule the Night

6.Flesh & Blood

7.Go Your Own Way

8.Line of Fire

9.Cut's Like a Knife

10.Acoustic Medley

~Crying~

~One Out of Ten~

~Leaving the Past to Pass~

11.Goodbye Yellow Brick Road

12.Band of Brothers

13.Thunderball

~Guitar Solo~

14.Crack in the Wall

15.Metal Will Stand Tall

16.Echoes from the Past

17.Like No Tomorrow

~Encore~

18.Rockstar

19.Seven Seas

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