「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット」
ダンスの位置づけを向上させた
EXILEのヒットを探る

シングルで唯一のミリオンヒットは
「EXILE PRIDE」はTOP10圏外に…

ちなみに、EXILEのシングルで唯一のミリオンヒットとなっているのは、2013年発売の41stシングル「EXILE PRIDE ~こんな世界を愛するため~」。圧倒的なセールスながらピンとこない人が多いかもしれない。実際、TVのクイズ番組で「EXILEの最も売れたシングルは?」や「『Rising Sun』と『EXILE PRIDE』、CDが売れたのはどっち?」といった問題で大抵のタレントは答えられない状況だ。

なぜ、これだけ売れたかというと、その大半がファンクラブ限定で発売されたCD付LIVEチケットが加算されていたため。他のアーティストでもこうしたおまけ付CDは見られたが、彼らの場合は数十万人クラスのドームツアーが開催された為、初動56.5万枚で1位、その後急落するもチケットの追加発売がある度に何度も再浮上するという通常のヒット曲では有り得ないミラクルを引き起こし累計95万枚ほどに達した。

さらに同年の10月23日には、収録DVDやパッケージサイズを変えた“スペシャル・エディション”を発売し、見事初のミリオンを達成。ちなみに、サウンドスキャン調べでの通常流通分では約7.8万枚。つまり、90万枚以上がLIVEチケットと一緒に出回ったCDだったのだ(確かに、当時はファンのSNSにて「もうCDを買うの6枚目なんだけどww」といった書き込みが多く見られた)。

本作は“HIROが参加するラストシングル”で、だからこそ有終の美を飾る必要があったのだろう。それゆえ、2011年に辞退したはずの日本レコード大賞候補に再び名乗りを上げ、3年ぶりに本作で自身4度目の大賞を受賞。当日の司会をHIROの妻である上戸彩が担当したが、これも感動ストーリーに華を添えた(花を盛り過ぎた気もしないでもないが)。なお、この“LIVEチケット付CD”という“発明”は2015年以降、オリコンの集計対象外となった。

ともあれ、EXILEがPRIDEを賭けてCDミリオンセラー&レコード大賞受賞を実現した「EXILE PRIDE」は、総合ヒットランキングでは11位と惜しくもTOP10圏外に。様々な施策を投入して勝ち取った栄冠は、必ずしも大衆のヒット曲には結びつかなかったようだ。

あらためて気づかされる
EXILEのヒット実績の大きさ

また、意外なヒット曲としては総合15位の「運命のヒト」も挙がるだろう。本作は04年の14thシングル「Carry On」との両A面シングル扱いで、TVでは「Carry On」を中心に歌われていたが、カラオケが4位、配信も21位だが25万件以上のダウンロードと、実は意外とヒットしている。

特にカラオケでの突出した人気は出逢いが“遅すぎた”ことを受け入れて、別々の道を進みつつも、今もまだ“君だけを愛している”という未練しまくりという歌詞のチカラが大きいだろう。浜田省吾の「もうひとつの土曜日」同様に好きな人への告白ソングとして、あるいは久保田利伸の「Missing」同様に未練を吐き出すための歌として、歌う男性が多いということか。

なお、本ランキングから除外した作品が2作ある。1つはGLAY×EXILEとして05年夏に発売されたシングル「SCREAM」。同作はロックとダンス・ポップスが融合した力強いアッパー・チューンで、両者のアーティスト・パワーの相乗効果もあり、同時発売だったL’arc~en~Cielやサザンオールスターズ、BUMP OF CHICKENのシングルのWスコアとなる初動30万枚、累計54.5万枚となる高セールスとなった。当時はGLAYのセールス効果の方が大きかったこともあり、ここでは集計対象外とした。

そして、もう1作は2009年11月12日の「天皇陛下御即位二十年をお祝いする国民祭典」で披露され、翌年5月19日CDシングルとして発売された「奉祝曲 組曲『太陽の国』」。作詞:秋元康、作曲:岩代太郎、演奏:東京都交響楽団で、さすがのATSUSHIもサングラスを取っての陛下の前でのパフォーマンスで、当時の彼らからすると累計20万枚は売れているだろうが、こちらはオリコン集計自体がされなかった。そのセールスが高くても低くても、どこかからの外圧が強くなることへの配慮だろうか。

以上、あらためてEXILEのヒット実績の大きさに気づかされた方も多いことだろう。現在はミュージシャン、ダンサーとして各プロジェクトで活躍するだけでなく、俳優、コメンテーターなど個々のメンバーの活躍が目覚ましいが、これだけヒット曲があるのだからこそ、2018年は盛大にカムバックしてくれることだろう(繰り返しになるが、2020年の東京五輪では、各界から有力視されているに違いない)。やはり、ニッポンの元気と勇気にはEXILEおよびそのTRIBEがよく似合う…ついでに、切ない男心も。

プロフィール
臼井 孝(うすい・たかし)
1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析やau MUSIC Storeでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪

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