amazarashiとAimerが凍える夜を越え
アジアを席巻
Text_Hiroyuki Ozawa
amazarashiのラブソング
この3曲を終えた時点で、秋田ひろむはMCというよりもポエトリーリーディングという表現が相応しい、感情の昂ぶりを宿らせた言葉を次々と撃ち放つ。
持ち時間は60分。距離にして580キロメートル、時間にしたら11年分、費やす言葉は7,300文字。このライブが終わる頃、願わくば皆さんの胸に、不安や、迷いや、失望を穿つこの言葉たちの破片が突き刺さっていますように。 死にたい夜を越えてきました。amazarashiです!
ライブでは決して定番とはいえない『ラブソング』が新曲の特に多かった今回のセットリストのなかで披露されたのは、Aimerに対し、amazarashiなりに呼びかけを行なうためだった気がしている。「Aimer」は「愛する」(=love)を意味するフランス語の動詞「aimer」と同綴りであることから、「ラブソング」の「ラブlove」と響き合うのだ。
後で触れるように、今回のライブではamazarashiとAimerがそれぞれ双方に歌で呼びかけているようなシーンが何度か見られた。『ラブソング』はその最初の呼び交わしだったように思う。
秋田ひろむの言葉の弾丸にのぼせた状態のまま、彼が一語一語を探すように訥々(とつとつ)と語りかけてくるMCに耳をすませる。
いい…夜も、悪い夜も、色々な夜を越えて…今の…わいたちがあると、思います。(…) 今日までの…わいたちが…越えてきた…色んな…綺麗な夜や、苦しい夜…あと2曲、全部ぶつけて、僕らの出番は終わろうと思います。
後ろ向き、逃げたがり、死にたがり、不満抱えて、不安抱えて、やむにやまれず逃げ込んだこの夜の向こうに答えはあるのか。 持ち時間は60分。距離にして580キロメートル、時間にしたら11年分、費した言葉は7,300文字。死にたい夜を越えて、今ここに立っています。
もちろんamazarashiのライブだけで全ての円環が閉じられたわけではない。一個の円として完結していた彼らのライブはAimerというもう一つの円と呼応し、その両方が響き合うことで、今日のライブは本当の完成を迎えるのだ。
Aimerの雨
“響くため”に“サイレンス”(=沈黙)を選択すると誓う『ninelie』、“傷つくのが運命(さだめ)だとしても”、“願いの破片”を誰かに届けようとする『LAST STARDUST』。切実な感情の一つひとつが、抑揚とビブラートとで彩られたAimerのかけがえのない歌声に乗せられ、解放されてゆく。
雨をテーマに作った曲で、くり返す季節の中で、戻らない瞬間をくり返す。そんな気持ちを書きました。
この時点までは哀しく切ない楽曲が中心だったが、ファンの手拍子に合わせて歌った『カタオモイ』でホールの雰囲気は一変。さらに『ONE』ではファンが頭上で両手をクラップする(打ち鳴らす)のに合わせ、陽気に、そしてリズミカルに声を弾ませ、会場を盛りあげた。
ステージの上を小走りし、ジャンプし、「後ろのほうも見えてます!」とファンに手を振って呼びかけ、最後はくるくる回って真っ白なワンピースの裾をふわりと浮かせ、「ありがとうございます!」。「キュート」という言葉はひょっとしたら彼女のために作られたのかもしれない。キュートの化身。ホールはもちろん大喝采だ。
ありがとうございます。私は、音楽が好きです。音楽を作ることが好きで、そして歌うことが好きです。(…) この先も、この声が出る限り、歌いつづけていきたいです。そして、音楽を通して、皆さんと少しでも一緒に生きていけたらうれしいです。
セットリスト
amazarashi
1. ワードプロセッサー
2. フィロソフィー
3. 季節は次々死んでいく
4. 僕が死のうと思ったのは
5. 悲しみ一つも残さないで
6. 水槽
7. 空洞空洞
8. ラブソング
9. 空に歌えば
10. 美しき思い出
11. 命にふさわしい
12. スターライト
Aimer
1. insane dream
2. Brave Shine
3. holLow wORlD
4. 花の唄
5. ninelie
6. LAST STARDUST
7. Ref:rain
8. 蝶々結び
9. カタオモイ
10. ONE
11. Stars in the rain
Amazarashi
オフィシャルサイト
Aimer
オフィシャルサイト
amazarashiとAimerが凍える夜を越えアジアを席巻はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
アーティスト
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。