【ライブレポート】<均整を乱す抗う
は四拍子>、“V系新世代 四天王”の

“ヴィジュアル系新世代の四天王”と言われる己龍BugLug、R指定、vistlipの4バンドが3月11日よりライブツアー<均整を乱す抗うは四拍子>を開催した。
今のヴィジュアル系シーンを語る上で絶対に外せないこの4バンドの競演。2年ぶりの開催となった本ツアーでは全国各地で熱演が繰り広げられ、3月30日新木場STUDIO COASTにてツアーファイナル公演が行われた。ここではその日の模様をレポートする。
先陣を切ってステージに立った己龍のライブはパワフルに疾走する「天照」で幕を開け、わらべ歌をモチーフにした「朔宵」を経て、メタリックなミディアムテンポの「阿吽」に移る流れからスタート。華やかにパフォームするメンバー達の姿とヘヴィ&エモーショナルなサウンドにオーディエンスのボルテージは高まり、場内は一気に己龍の世界へと染まった。
3曲聴かせたところで、黒崎眞弥(Vo)のMCが入った。「<均整を乱す抗うは四拍子>が、2年越しの再集結を果たしました。いろんなバンドが生まれたり、消えていったりする中で、この4バンドは今なお前線に立っています。それを実現させてくれたのは、みんなの力です。ご来場、ありがとうございます」。彼の言葉に、客席からは温かみに溢れた拍手が湧き起こっていた。
その後は、「自惚レテ愛玩」や「鬼遊戯」「百鬼夜行」といったハード&メロディアスなナンバーを相次いでプレイ。己龍の楽曲はヘヴィメタルに通じる重厚さや翳りがベースになっていて、どちらかというと内側に向かった音楽性といえる。だが、鮮やかな和テイストを活かしたアレンジや眞弥が歌の合間に「声を出せ!」「次は、この振りでいくぞ!」といった言葉を発してオーディエンスを先導していくライブ・スタイル、メンバーが織りなすフィジカルなステージングなどが一つになって、彼らのライブはアッパーな空気感になっているのは興味深い。彼らならではの“ダークでいながら気持ちを引き上げられる”という持ち味は本当に魅力的で、場内は終始一体感に満ちた盛り上がりを見せていた。
ハイボルテージな「情ノ華」でいきあげた後、ラストソングとして新曲の「春時雨」が演奏された。オーディエンスに馴染みの薄い新曲で、さらにダンサブルなサビ・パートを配した新機軸のナンバーを最後に持ってきたことからは、己龍が新たな路線に自信を持っていることがうかがえた。オーディエンスのリアクションが上々だったこともあり、今後の己龍にも大きな期待を寄せずにいられない。
暗転した場内にオープニングSEが流れ、ステージにR指定のメンバーが登場。客席から熱い歓声が起こる中、「しょっぱなから、かかって来い!」というマモ(Vo)の力強い声が響き、R指定のライブは狂騒感を放つ「愛國革命」から始まった。ステージ中央に立って力強い歌声を聴かせるマモと、ステージを行き来してパワフル&タイトなサウンドを奏でるバック陣。R指定特有の“尖り”を放つステージは最高にカッコ良くて、ライブが始まると同時に強く惹き寄せられた。
その後はレトロかつ妖しい味わいの「帝都に死す」やヘヴィな歌中とキャッチーなサビ・パートのコントラストを活かした「ぼくらアブノーマル」などをプレイ。背中に日の丸を背負った揃いの衣裳や旧日本軍をイメージさせる映像、現代社会に対する批判を込めた歌詞など、彼らの世界観は危険な香りに満ちている。でいながら、重ったるく感じさせないのはさすがの一言。内面の怒りをエネルギーに変えて発するアプローチが奏功して、場内は終始良い雰囲気で盛り上がっていた。
3曲聴かせたところで、「<均整を乱す抗うは四拍子>のファイナルです」とマモが挨拶。その後は「ファイナルが淋しいなら泣けよ。泣けよ、おら!」と客席を挑発したり、「R指定の新しいシングルを買ってないヤツは帰れ!」と言ったり、18才の女の子をオバサン扱いしたりといつもながらのアブナさ全開のMCだったが、嫌な雰囲気にならないのはマモらしい。毒舌で笑いをとって、場内を和ませる姿が印象的だった。


ライブ後半ではヘヴィ&ハイテンションな「規制虫」や荒々しく疾走する「病ンデル彼女」などが演奏され、場内の熱気はさらに高まっていった。場内が一体になったことを感じさせる熱い盛り上がりを見せた後、最後にスロー・チューンの「ソメイヨシノ」を披露。ハードなライブの締め括りに、エモーショナルなナンバーを持ってくる辺りも実に心憎い。“怒りをぶつける系”のライブにも拘わらず、終演後の場内が爽やかな余韻に包まれていることが心に残った。
vistlipは、スタイリッシュなライブで楽しませてくれた。都会的なオープニングSEに続けてステージに立った彼らはヒップホップ・テイストを活かした「FIVE BARKIN ANIMALS」やラグジュアリーなサビ・パートを配した「EVE」、パワフル&キャッチーな「偽善MASTER」などを披露。ハードでいながら煌びやかさや透明感を湛えた個性的なテイストは本当に魅力的で、対バンイベントという場で瞬く間にvistlipの世界を構築したことに圧倒された。
「楽しんでいますか、東京? あっという間のファイナルで、今日で<四拍子>が終わってしまって淋しいという人、いますか? いっぱいいるね。今回の<四拍子>は2回目だったけど、みんなが願ってくれれば、もう一度<四拍子>を…という願いも叶うと思う。このイベントがどれだけ力のあるイベントなのかを伝えていきたいから、今日は最高に熱くなろうぜ!」という智(Vo)のMCを経て、ライブは後半へ。
メロディアスな「Timer」やヘヴィネスとポピュラリティーを融合させた「GLOSTER IMAGE」、ハイエナジーな歌中とダンサブルなサビ・パートの対比が光る「HEART ch.」などが演奏された。メンバー全員がフィジカルなステージングを展開しつつ、常にサウンドがタイトなのもさすがといえる。高度な演奏力も彼らの洗練感を生み出す大きな要因になっていることを、改めて感じさせた。
イベントなどでは激しくいきあげることを目指すバンドが多い中、良質な楽曲と演奏でオーディエンスを魅了し、ライブを通して大きな波を作っていくという自分達らしいアプローチを採ったvistlip。客席にノリを強要することなくオーディエンスを熱狂させたvistlipのポテンシャルの高さには、目を見張るものがある。場内は華やかさと一体感に溢れた良い空気感の盛り上がりを見せ、vistlipは揺らぐことのないスタンスを持ったバンドであり、それが彼らの強さや魅力だということを改めて感じさせるステージだった。
トリを務めたBugLugは「最後まで残ってくれたからには後悔させねぇぞ! 俺達に着いてこい!」という一聖(Vo)の言葉に続けて、パンキッシュな「絶交悦楽論」からライブをスタートさせた。オープニングからアクセル全開で「絶交悦楽論」を聴かせた後、ヘヴィ&キャッチーな「BUKIMI」で畳み掛ける流れは“炸裂”という言葉がふさわしい。アグレッシブなBugLugにオーディエンスも熱いリアクションを見せ、ライブは怒涛の熱い滑り出しとなった。
その後は、一聖が「BugLugです」と挨拶。続けて「<四拍子>は、毎日が本当に素晴らしい、良いなと思えるツアーだった。なにより、もう一度己龍とR指定、vistlipのメンバーと会えたのが嬉しかったし。そして、各会場に来てくれたみんなに、もう一回お礼を言いたいです。ありがとうございました。本当に、生きてて良かったと思える瞬間が多かっただけに、今日のライブも思い切り遊び倒したいと思っています」とも。
一聖の穏やかなMCが終わると同時にBugLugは再びハード・モードに入って、「KAIBUTSU」や「ギロチン」「ENMA」などをプレイ。メンバー全員が激しいパフォーマンスを展開しながらワイルドなサウンドを叩きつけてくるBugLugを見ていると、一聖が復帰してからの彼らは変わったなと思わずにいられない。現在の彼らは“1本1本のライブを大事にする”という域を超えて一瞬一瞬にかける気合がハンパじゃない。その結果、緊迫感や圧倒的な突進力を持ったステージになっていて、こういうライブはバンドの儚さや脆さを肌で感じた彼らだからこそ提示できるものといえるだろう。
形態としてのハードネスではなく、内面の衝動や熱さをぶつけるBugLugのステージは感情を駆り立てる力に満ちている。ライブを通してオーディエンスはハイボルテージなリアクションを見せ、さらに緻密に構築された照明とLED映像演出が独特なBugLugの世界観を創出、場内は膨大なエネルギーが渦を巻く空間へと化した。独自のライブのあり方を身につけたことを感じさせたこともあり、今後のBugLugの活躍も本当に楽しみだ。
BugLugのライブに続けてステージに出演バンドのメンバー全員が姿を現して、最後に一大セッションも行われた。ボーカルは黒崎眞弥(己龍)とマモ(R指定)、智(vistlip)、一聖(BugLug)、ギターは参輝(己龍)に一樹(BugLug)、楓(R指定)、優(BugLug)。ベースは瑠伊(vistlip)、ドラムは将海(BugLug)という布陣で、己龍の「アナザーサイド」とR指定の「波瀾万丈、椿唄」、vistlipの「SINDRA」、BugLugの「ギロチン」をメドレー形態で披露。20人のメンバー達が笑顔を浮かべてステージを行き来する賑やかな情景とアッパーなサウンドに客席は大歓声をあげ、新木場STUDIO COASTの場内は充実したツアーの締め括りにふさわしい華やかな盛り上がりを見せた。
最初に<均整を乱す抗うは四拍子>に参加する面々を聞いた時は、少し意外な印象を受けた。己龍、R指定、vistlip、BugLugに共通したイメージはなく、彼らの競演がどんな空気感になるのか想像できなかったからだ。だが、実際に体感した<均整を乱す抗うは四拍子>は違和感は全くなく、異なる個性を持ったバンドが並び立ったライブは本当に観応えがあった。異色ともいえる顔ぶれにも拘わらず散漫な雰囲気のイベントにならなかったのは、ポテンシャルの拮抗した4バンドが揃っていたからこそといえる。長丁場のライブでいながら見飽きることは全くなく、あっという間の4時間だった。
もう一つイベントを観ていて気づいたことだが、<四拍子>に集った4バンドは、いわゆるヴィジュアル系のセオリーに捉われずに独自のスタイルを築き上げたという点が共通している。翳りを帯びた和テイストやヘヴィネスを活かしつつアッパーなライブを展開する己龍。“病み”を爽快に昇華してみせるR指定。激しさと洗練感を両立させたvistlip。内面の熱さを露わにすることで生まれるハードネスをフィーチュアしているBugLug。オリジナリティーを持ったバンドだからこそ彼らは強い輝きを発しているし、リスナーからの支持も篤い。今回の<均整を乱す抗うは四拍子>のファイナルを飾った新木場STUDIO COASTは、立錐の余地がないほどの超満員だった。ヴィジュアル系シーンが停滞していると言われる中、彼らのあり方は大きなことを示唆しているといえる。非常に観応えのあるイベントだっただけに、再び彼らが一堂に会する機会があることを、強く願わずにいられない。
取材・文◎村上孝之

写真◎田辺佳子

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