【ライブレポート】<千歌繚乱vol.1
5>、ヴィジュアル系である理由

BARKS主催ヴィジュアル系ライブイベント<千歌繚乱>の第15回目の公演が、4月2日に渋谷REXにて開催された。
今回出演したのはAIOLIN、SARIGIA、JILUKA、MIZTAVLA、MISERIAの5バンド。いずれのバンドも衝動的で心を揺さぶる楽曲、麗しい見た目、激しいライブなど“ヴィジュアル系ならでは”のステージを繰り広げた。どっぷりとヴィジュアル系の魅力に浸れる一夜となったこの公演の模様を、当日の写真とともにレポートする。
イベントの幕開けは、MISERIAのステージから。一曲目に演奏された「慟哭」は、重いリズムに刹那的なピアノの旋律がのる楽曲。MISERIAは社会やヴィジュアル系という音楽シーンの在り方が間違っていると感じ、その間違いを正していきたいという思いを音楽にぶつけているのだが、そのコンセプトを体現するかのように英斗(Vo)はお立ち台に跪き、心の底からの叫びをシャウト。
「いつだって望んでいた夢の世界はひどく残酷で子ども騙しのようだったんだ」という台詞から始まる「子ドモ騙シ」ではダークな世界観がより強調され、フロアにはヘッドバンキングの嵐が起きる。「ここには希望がない」「世界に惑わされるな、騙されるな」など、MISERIAの思いが凝縮されているような楽曲だ。シャウトが多用されるAメロ、Bメロを経て一気に開けるサビというヴィジュアル系の王道を行く楽曲スタイル、そしてクリアな英斗のボーカルが耳に心地よい。
「MAD BRAIN」「Grief Cry」も同様。ファンもメンバーの煽りにあわせてジャンプしたり頭を振ったりしつつも、英斗の叫びをしっかり受け止めている様子。盛り上がり重視とも言われる昨今のバンドシーンだが、MISERIAは真っ直ぐに自分たちのメッセージを伝えてくるバンドだと感じる。
ダークな雰囲気をそのまま自分のモノにするように、退廃的で美しいSEとともにステージに現れたのはSARIGIAのメンバー。暗転したステージに「俺に頭を捧げろ」というアスカ(Vo)の声が響き、まずは「RUIN」を投下。激しくダークな楽曲なのだが、美しい旋律のサビが胸を打つ。
照明がレーザーのように派手に変わったと思たところで、繰り出された「Mercy Rain」ではフロアの雰囲気がガラリと変わる。デジタルサウンドを効果的に使った今ドキのヴィジュアル系サウンドだ。「狂艶」ではタイトル通りアダルティで艶やかにキメ、「RED SORROW」ではメンバー全員で一斉に頭を振って激しく、と目まぐるしく自身の持つ多様性を魅せつけてくる。
ヴィジュアル系は楽曲だけでなくメイク、衣装、振り付け、煽りなど多種のツールを使ってバンドの世界観を表現出来るのが魅力だが、SARIGIAのステージは各メンバーの派手なパフォーマンスも相まって目が離せない。ヘッドバンキング&逆ダイブのループが起きるラスト「Envies-13」まで、まったく飽きさせないライブだった。
場内暗転ののち、幕が開いたステージに立っていたのはヴァイオリンを弾くAIOLINのヒカリト(Vo&Gt&Vn&Pf)。その優雅な調べに、一瞬ここが渋谷REXというライブ会場であることを忘れてしまう。そのひと続きの流れでヒカリトは「Stardust Crystal」のヴァイオリンソロを奏で始め、他のメンバーのバンド演奏が加わったところで今度はヴァイオリンをマイクに持ち変え、今度は声で会場を魅了する。複雑なフレーズのギターソロも彼が。なんと多才なのか。
ヴィジュアル系バンドに生のヴァイオリンの音を加えるという斬新なスタイルのAIOLIN。だが彼らはヴァイオリンはあくまで「曲を聴いてもらうためのひとつのフックでしかない」のだという。その自信の通り、どの楽曲もメロディがとても美しく聴き入ってしまう。「From Here」の曲中にはヒカリトが「オンリーワンの歌聞かせてやるよ!」とも。
切ない物語に思わず胸がきゅっとなる「Tear In The Rain」、「さよなら愛した人」という歌詞が泣ける「Remember The Name」のほか、イベントライブの25分間という短い時間にバラード曲「Faded」を聴かせてくれたのも特筆すべき点だろう。暗黙のルールや予定調和の盛り上がりなどとは無縁。ラストにヒカリトが宣言したとおり「革命的ヴァイオリニズム」、彼らにしかできないステージだった。
圧倒的な演奏力を持って繰り出される激しい楽曲でこれまでの雰囲気を塗り替えたのはJILUKA。“V系モダンメタル”を提唱する彼らは、怒涛に「Necropolis」「Raison d'etre」を叩きつけてくる。メタルときくと少しとっつきにくい印象もあると思う。だがJILUKAのライブはとにかく楽しい。初めて聴く曲があったとしても笑顔で歌うRicko(Vo)に煽られて自然と体が動いてしまうし、メンバーの激しいステージングも目を楽しませてくれる。
イントロからSena(G)のテクニカルなギタープレイに圧倒される「Ajna -Sg Ver-」も披露される。JILUKAの楽曲はどれも若手バンドとは思えないほどの実力を感じさせるのだが、この楽曲は特にそれが“変態的”でもある。ミクスチャースタイルを取り入れた「M.A.D」では、ただのメタルバンドではないことも証明。25分が一瞬に感じられるほどの怒涛の勢いで全5曲を披露、その間ずっとフロアにいた全員が拳と頭を振り飛び跳ねていたのも圧巻の光景だった。
JILUKAは楽曲、見た目のヴィジュアルすべてを含めて自身を“総合芸術”だと表現する。音源で計算されつくしたサウンドを聴くも良し、ライブで暴れて楽しむも良し、メンバーのヴィジュアルを崇めるも良し。ぜひ総合的な角度からJILUKAを見てみて欲しい。ただメタルを取り入れただけのヴィジュアル系バンドだと思ってはいけない。
<千歌繚乱vol.15>のトリを務めるのはMIZTAVLA。BARKSの千歌繚乱特集ページで行われた投票企画で見事一位を獲得し演奏時間の延長と言う特典を獲得、ライブの前から人気の高さを証明していた。彼らがコンセプトに掲げるのは「ヴィジュアル系の原点回帰」だ。今回もそのコンセプトから一ミリもズレることなく、徹底したステージを構築していた。
水音をイメージしたSEとともにステージに現れるなり、一発目に新曲「「いつか変われる頃」 」を投下。往年のヴィジュアル系バンドを彷彿とさせるメロディラインと曲の構成にゾクゾクする。リウキ(Vo)による振り付けにも、どこか懐かしさを感じてしまった。インタビューにて彼らは「(メンバーの)世代がバラバラなんで、色んな時代のヴィジュアル系をおさえている」と語っていたが、それが要因か。もちろん、フロアにいるファンたちの振り付けは完璧だった。
ヴィジュアル系バンド好きであればもはやDNAに組み込まれているのではないかと思うような音階、リズムで「絶望宣言」「罪悪JERRY」も繰り出される。ただし古臭いというわけではない。デジタルサウンドが効果的に取り入れられていたりと、今聴いて心地よいサウンドに仕上がっている。それはメンバーそれぞれがヴィジュアル系というものをしっかり理解しているからこそ。
それは奏でられるのがダークで暗い曲ばかりではないことからもわかる。華やかで一気に視界が開けるような「カリスマ」、メンバーもデスボイスで応酬する「Psycho Creature」などもぜひ聴いて欲しい。最後にMIZTAVLAは「ミッドナイトマーブル」を提示し、「また共にやりあいましょう!」と叫んでステージを去った。これぞヴィジュアル系バンドの良いところを詰め込んだステージ、だったといえる。
今回の<千歌繚乱>では、どのバンドにも“ヴィジュアル系というシーンで自分たちならではのスタイルを確立させる”という意思を感じた。ヴィジュアル系とは音楽のジャンルとは言えないが、長い年月をかけて形成されてきた文化である。彼らはその中で、普通のロックバンドとは違う何かを見つけ出しているようだ。ヴァイオリンを加えてもいい、メタルを加えてもいい、ダークに特化してもいい、いろいろな要素を加えて見た目も含めて自由に表現できるのがヴィジュアル系の魅力だと改めて感じた。
なお、<千歌繚乱>は5月23日にGARRET udagawaにて派生イベント<Massive Triangle>を開催することが決定している。こちらにはInitial'L、ChantyJin-Machineの3バンドが出演。普段の<千歌繚乱>よりも長い時間のステージを予定しているので、ぜひ遊びに来てほしい。チケットは現在「チケットデリ」にて先行受付中だ。
取材・文◎服部容子(BARKS)
セットリスト


■MISERIA

1.慟哭

2.子ドモ騙シ

3.MAD BRAIN

4.Grief Cry
■SARIGIA

1.「RUIN」

2.Mercy Rain

3.狂艶

4.RED SORROW

5.Envies-13
■AIOLIN

-Vn Solo-

1.Stardust Crystal

2.From Here

3.Faded

4.Tear In The Rain

5.Remember The Name
■JILUKA

1.Necropolis

2.Raison d'etre

3.Ajna -Sg Ver-

4.M.A.D

5.Bloodshot
■MIZTAVLA

1.「いつか変われる頃」

2.絶望宣言

3.罪悪JERRY

4.カリスマ

5.Psycho Creature

6.ミッドナイトマーブル

<千歌繚乱 ~Massive Triangle~>


日時:2018年5月23日(水)開場18:00/開演18:30

出演:Initial'L/Chanty/Jin-Machine

会場:GARRET udagawa

料金:【先行チケット】3,800円 【一般チケット】4,000円 【当日券】4,500円 ※ドリンク代別途
チケット受付スケジュール

【先行抽選受付】

4月9日(木)12:00~4月16日(月)16:00

チケット購入ページURL:[チケットデリ] http://ticket.deli-a.jp/
【一般先着受付】

4月17日(月)12:00~5月22日(火)

[イープラス]

チケット購入ページURL:後日発表

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