輝きの向こうに見えたものは『アイカ
ツ!ミュージックフェスタ in アイカ
ツ武道館!』

アイカツ!ミュージックフェスタ in アイカツ武道館! 2018.2.28(Wed) 日本武道館
データカードダスを原作に持つTVアニメ『アイカツ!』そして『アイカツスターズ!』。女子向けアニメながらアイドルたちの青春と輝きを閉じ込めた本作は年齢層を超えて愛されている。その楽曲を歌うために結成されたSTAR☆ANISAIKATSU☆STARS!という2つのユニット。彼女たちはこの5年間で多数のステージをこなし、アイカツ!シリーズを盛り上げてきたが、4月からスタートする最新作『アイカツフレンズ!』の発表とともに、彼女たちの卒業も公表された。彼女たちが見せてきた「アイドル活動」の最後を見届けるために、『アイカツ!ミュージックフェスタ in アイカツ武道館!』最終日の日本武道館に足を運んだ。
会場は超満員。武道館の表には飾りきれないくらいファンからのスタンドフラワーが届いていた。これだけの数が並べられるのもまず見ないくらいの量だ。それほどたくさんの人間が今日のライブに、これまでアイカツを支えてきた彼女たちの卒業に花を添えようとしている。
ライブの始まりは全員で「アイカツ☆ステップ!「START DASH SENSATION」からスタート。開幕ダッシュというに相応しい全力スタートだ。勿論会場もこれに応える。
その後も「Lovely Party Collection」「スタージェット!」とAIKATSU☆STARS!が披露すれば、STAR☆ANISが「KIRA☆Power」、マスカレードのりさ・えいみを加えて「Signalize!」を披露するなどアイカツの世界観が武道館を染め上げていく。
「アイカツ!」シリーズはアイドルに憧れ、アイドルとして生きる女の子たちの物語だ。その劇中で歌われる曲を歌ってきたSTAR☆ANISとAIKATSU☆STARS!のメンバーは、キャラクターのコーデの衣装を着て歌い続けてきた。アイカツを表現しながら、彼女たちもアーティストが夢見続ける大舞台、日本武道館のステージで堂々とパフォーマンスを行っている。
そのきらびやかで熱量のあるステージを見ていると、どこかアニメとリアルの境目を見失いそうになる。「アイカツメロディ!」「星空のフロア」の後には最初の主人公、星宮いちご世代の楽曲「prism spiral」「Trap of Love」「Angel Snow」「同じ地球のしあわせに」「Growing for a dream」とメドレーで次々と披露されていく。
「アイカツ!」が世代を問わず人気があるのは何故なんだろう、確かに昔『オシャレ魔女ラブandベリー』などにハマっていた世代が親になり、子供と共に楽しんでファンになるというのもあるだろうが、何よりも現場で感じたのは、ステージ上も観客席もキラキラしているという事。
アイドルを目指し奮闘するキャラクターたちは時に傷つき、時に励ましあい、ライバルと競いつつ一歩ずつ高みに目指して進んでいく。そこには悲壮感や苦しみよりも「憧れに向かっていくパワー」が溢れている。アイカツを見ると少し元気になれる気がするのは、まさにアイドルが持つ夢と熱量を内包している作品だからだと思う。
そしてこの武道館は夢に向かって走り続け、アイカツと共に歩んできたSTAR☆ANISとAIKATSU☆STARS!の終着点でもあるのだ。さっき感じたアニメとリアルの境目の無さは、ステージに立てる喜びという点で、演者と作品がシンクロしているからなのではないかと思った。
その熱量は客席をも包む。精一杯の声援と応援を送り続ける客席もどこか輝いている。アニメの歌と侮るのは間違っている。ここに居るのは紛れもなく“アイドル”だ。
ゆなが一ノ瀬かえでのソロ曲「マジックスマイル」を披露し、「ヒラリ/ヒトリ/キラリ」から豪華客船型アイドル学園ヴィーナスアークのメドレー、アイカツ!二代目主人公である大空あかり世代のメドレーとトークをはさみながら怒涛のように展開していく。
わかが披露した「輝きのエチュード」では『眠りの森の美女』のリラの精をイメージした「リラフェアリーコーデ」の衣装を着ての歌唱で「この衣装を着て歌えるのが嬉しい」とMCで涙を見せた。彼女たちのアーティストとしての活動はこれからも続いていくのだろうが、このステージで彼女たちが情熱を燃やしてきたものが一つ終わる。青春は出会いと別れの季節だと思うが、まさに武道館に存在していたのは「アイドルの青春」だった気がする。
何よりもそれを感じたのは、全15人で元気いっぱいで会場を明るく歌声で彩った「AIKATSU GENERATION」の後に歌われた「SHINING LINE*」の時。「聞かせて これは誰のストーリー?」と歌いだされた時のステージ上の15人の表情は、その日一番の輝きを放っていた気がする。これは15人の少女がアニメーションと、キャラクターと共に成長してきた物語。それを見守り、応援し、力をもらってきたファンの物語。それを実感できた。
「もらうバトンキミとつなぐ 光のライン」と歌いながら、先輩から後輩へ手を合わせ、バトンが渡されていく。それを見て本当に今のアイカツが終わるんだと素直に思えた。バトンは繋がっているのだ。彼女たちが奮闘してきたものは何も消えない。消えないからこそ受け渡していかなければいけない。コンテンツの停滞は緩やかな死なのだ。
アンコールは「STARDOM!」から始まり、MCでは全員が泣きながら、笑いながらアイカツへの思いを思いっきり語る。最後の曲は「カレンダーガール」。全員が満面の笑みで歌い切って、夢の舞台は終わった。泣いている人も、感動で立ち尽くす人も、笑顔の人もいた。たくさんの思いを受けてこれからも「アイカツ!」は続いていく、同じようにSTAR☆ANIS、AIKATSU☆STARS!の彼女たちも歌い続けていくのだろう。それもまた、アイカツなんだと心から思えるステージだった。人の心に何かを残すことが出来るのは、本気の思いだけなのだから。
レポート・文:加東岳史

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