今、再び名作が蘇る! 4月7日開幕
ナイロン100℃『百年の秘密』稽古場
レポート

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)率いるナイロン100℃の舞台『百年の秘密』が、2018年4月7日(土)東京・下北沢 本多劇場を皮切りに、兵庫、豊橋、松本にて上演される。稽古も佳境を向かえる3月某日、稽古場の模様が公開された。
『百年の秘密』は、2012年に初演され、高い評価を得た名作。友情で結ばれた二人の女性の10代から70代半ばまでの長い期間の中の「日常の数十分」を切り取り、時代を行ったり来たりしながら、女性同士の心理を繊細に紡ぎだし、同時に半世紀に渡る家族の物語を描いた物語。
二人の女性がそれぞれの人生を送りながら、人生の局面で再会する。二人の間にある秘密、そして二人を取り巻く秘密、の深淵がシリアスにシニカルに描かれる。
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
この日公開された場面は、老女となったティルダ(犬山イヌコ)と、同じく老人となったティルダの同級生・チャド(みのすけ)が二人座って語り合う場面。ティルダはどうやら老人特有の痴呆が進行しており、チャドがあれこれ話しかけても話が微妙にずれている。チャドが心に秘めていたある思いを真剣に訴えてもティルダには響かない。その何とも言えない悲しさ、侘しさをKERAはごく自然に表現したいと、チャドの台詞の入るタイミング、口調の強弱を丁寧に指示する。演じるみのすけも自分で台詞を何度も繰り返しながら、これだという間合いを探っていた。また、ティルダが以前チャドにお願いした「あること」を確認するやり取りでは、稽古ではありながらも涙を浮かべてすがりつく犬山に胸が熱くなった。
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
一方、そんな二人のやり取りを静観しているような女中メアリー(長田奈麻)の出ハケのタイミングにもKERAは気を配る。その様子は例えるなら一糸のほころびも見逃さず、大切な服を丁寧に作り上げる職人のよう。
そんな二人のもとに、久しぶりにコナ(峯村リエ)がポニー(松永玲子)と共にやってくる。老いたティルダを心配するフリッツ(廣川三憲)をよそに、ティルダとコナは一言一言、言葉を交わす度に、疎遠になっていたこの年月の記憶を少しずつ手繰り寄せ、埋めていく。二人の心が重なり合い、まるで少女の頃のような笑顔を見せた直後、事態は思わぬ展開に……。
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
この日、ほんの一部分を見学しただけだが、ティルダとコナのやり取りだけで、ここに至るまでの二人の人生の歴史や心情がかいま見えるかのようだった。と共に、本作の再演がずっとファンから熱望されてきたという想いも伝わってきた。
以前、インタビューで犬山と峯村が「一生のうちで何本観られるかっていう中、これは観ておいてほしい作品」「芝居に興味がある若者にも観てもらいたい。そしてこの作品をいつか自分たちでもやってくれたら嬉しい」と語っていた自信作。初演を観劇できた方にとっては、今回の再演で役者と作品の成熟した姿を再確認でき、また、初見の方にとっても、きっと出会って欲しい宝物の一作となるに違いない。
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』稽古場風景
取材・文・撮影=こむらさき

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