カイワレハンマー、過去最大キャパ・
豊洲PIT公演で見せた集大成と未来へ
の挑戦

TOUR2017-2018~配達ガワリノ挨拶マワリ~

2018.2.18 豊洲PIT
昨年5月から『TOUR2017-2018~配達ガワリノ挨拶マワリ~』をスタートさせた、BEMAとimigaによるヒップホップユニット・カイワレハンマー。そのツアーファイナルが、2月18日、豊洲PITにて行なわれた。
カイワレハンマー
ステップアップを図った活動休止期間を終え、年をまたぐロングツアーをスタートせたカイワレハンマー。それと並行してシングル「【閲覧注意】セカンドシングル出してみた結果www」、さらにはアルバム『Regression』をリリースし、精力的に活動を続けてきた彼らだが、ついにツアーファイナルであり、彼らにとって最大キャパの会場となる豊洲PIT公演がやってきた。アルバム『Regression』のインタビュー時に、豊洲PITは「ツアー中にいろいろと考えていたことを全部ぶっこみたい」「エンターテインメント寄りのライブにしたい」と話していた2人。まさにその言葉通り、この日のライブは大量の演出が盛り込まれた目まぐるしい展開でありながら、かつ、約1年に渡るロングツアーを経て、確実に力を増した2人のパフォーマンスを見せつけたステージとなった。
BEMA

imiga

DJ OMAが高鳴らしたエアーホーンを合図に、場内が暗転。オーディエンスが歓声を上げる中、「第四ノ刺客」が流れ始める。レーザー光線が飛び交い、フロアの高揚感がぐんぐん高まっていくと、耳をつんざく爆発音が鳴り響き、ステージに組まれたセットの最上段にポップアップで勢いよく2人が見参! ど派手な登場に大歓声があがる中、2人は立て続けに「五番目ノ砦」へ。生バンドのグルーヴィーな演奏に乗って、ステージ上を練り歩きながらマイクリレーをする2人は、さらに「メデューサ」をドロップ。アッパーチューンの連続投下で、フロアからは常に歓声が上がり続けていた。
カイワレハンマー
そんな中、「実はですね、ツアーファイナルなのに、ここからのセットリストを決めていません!」と、衝撃発言! なんと、ここから披露する曲は、すべてくじ引きで決めるということになった。何が出るのかヒヤヒヤしながらBEMAが抽選箱から引いた曲は、「げえむのすたるじっく」。「俺の好きな曲だった」と胸をなでおろしつつもハイテンションで曲を終え、再び次のくじを引こうと抽選箱にBEMAが近づいた……その瞬間、抽選箱が突如爆破! かなりの爆発音に、焦る2人とオーディエンス、そして無残な姿になって使えなくなってしまった抽選箱……。その状況を見たBEMAが、舞台袖にいるスタッフに「すみません、抽選箱……“もう、無理ですか”……?」と話しかけると、そのまま「【予想外】もう無理です…」へなだれ込んで行った。
カイワレハンマー
カイワレハンマー

カイワレハンマー

先ほどの爆破を振り返り、「危なかったけど、ちょっとおもしろかったね」と話すimiga。その言葉に「いや、おもしろくはねえよ? ケガしたらやばかったじゃん」と、BEMAが反論する。そして、「なんかさ、そういうところじゃない? 気の使えないところ。お前もなんかないの?」と、アンサーを求めるBEMA。しかし、無言でいるimigaに「そういうとこだよ!」とBEMAがキレて、「俺が今からこいつの気に入らねえとこ教えてやっからよ」と、「BEMA vs imiga」へ。サビの部分は原曲のまま、ラップパートはフリースタイルでお互いをディスりあう2人。ときには若干物騒な言葉も飛び出しながら激しく言葉をぶつけ合うと、「勝手にやってろよ」とステージからはけるBEMA。それを追うようにimigaも舞台袖へ走っていった。
imiga

imiga

ケンカで仲間割れをしてしまったため、ここからはそれぞれのソロコーナーへ。まずはimigaが、ぷすと共作した「スピニングヒストリー」を披露。自分の背丈ぐらいの長さはある棒をグルグルと振り回すパフォーマンスでも魅せていたのだが、実は彼が約10年前に初めてYouTubeにアップロードしたのが「ペン回し」の動画。ちなみにimigaは過去にペン回しの日本チャンピオンになった経歴もあり、そんな自身の特技を拡張させたようなパフォーマンスだったのだが、MCでは「当時は“地味だなー”って自分でも思うぐらいだったんですけど(笑)。それが今はこんな大舞台で、曲を作って盛大に歌ってしまうという、昔じゃ考えられなくて」と、今と昔の違いを話す。「でも、学生時代の頃からゲームだけは今も変わらずにやめられなくて。次の曲は、昔から今に至るまでの僕の青春を語るような曲です」と、披露したのは「HARUKAZE」。8ビット音を散りばめた軽やかなポップチューンでフロアを盛り上げていた。
BEMA

BEMA

続いて、BEMAのソロコーナー。「KOKOMO」が流れる中、クラップを求めながら登場したBEMAは、「この曲は俺ひとりじゃできないから」と、財部亮治をステージに呼び込み、爽快感全開なナンバーを届ける。また、曲中では東海オンエアのとしみつも駆けつけ、場内は大興奮となった。そして、「帰りの会」をスペシャルバージョンで披露。ミディアムをしっとりと歌い上げると、「ちょっとここに立ってくれない?」と、BEMAに誘導されるとしみつ。そんな彼をスタッフが取り囲み、「いってらっしゃい!」と言われると、としみつは天井高く吊り上げられ(!)、そのまま「天使と悪魔」へ。BEMAが歌い、としみつが豊洲PITの空を舞っているところに、素肌に革ジャン姿のてつや(東海オンエア)が登場。彼もフライングし、客席を大いに盛り上げていた。
『Regression』のインタビューで、豊洲PITでは「劇とかもやろうと思っている」と話していた2人だったが、それはライブ中盤に用意されていた。BEMAに置き去りにされ、宙に吊られたままでとしみつとてつやが話をしている最中、ステージには学校で使う机や椅子が運び込まれ、舞台はさながら教室に早変わり。そこにチャイムが鳴ると、生徒役としてJENNIと、夕闇に誘いし漆黒の天使達の4人が制服姿で登場。大歓声が上がる中、「ごめん、ちょっと言い過ぎたわ!」「俺もごめん」と談笑しながらステージに現れたカイワレハンマーの2人もブレザー姿で、黄色い悲鳴があがりにあがる。そして、先生役のデカキンが、「授業を始めます、一限は数学です。教科書を開いて。今日やるのは、“三角形”」とくれば、曲はもちろん「三角係」だ。学生時代の淡い恋心を歌ったミディアムで盛り上がったところで、再びチャイムが鳴る。「次の授業は体育だから」と、先生の指示で生徒達は外に移動したのだが、教室にはBEMAとimigaが残っている。
カイワレハンマー
BEMA:あれ? 行かなくていいの?
imiga:疲れた。
BEMA:え、まだ2限目なのに?(笑)
imiga:いや、体育苦手だし。
BEMA:まあいっか。でもさ、学校では話さないしグループも違うけど、学校終わったら一緒に遊んだりするじゃん。側から見たら俺達って、“デコボコ”だよね?
imiga:間違いない。
そんなやり取りから「凸凹フレンド」へ。<陰で参る 陽で参る>とポーズを決めながらラップした2人は、曲を終えると「体育に行ってきます!」と教室の外へ駆け出して行った。
カイワレハンマー
カイワレハンマー

ファイナルらしいスペシャルな演出はまだまだ続く。「suite room」「play with love」「ネオン」と、メロウな空気で場内をクールダウンさせたところに、ヒューマン・ビートボクサーのDaichiが登場し、「ちょっと一息」をコラボレーション。アコースティックギターの響きが心地よく、それでいてメッセージは熱いラップで魅了したのだが、「まだ足りないよね? 今エンジンかかったぐらいじゃない?」と、Daichiにステージを任せて2人は一度ステージを離れた。そこからDaichiがオーディエンス驚愕しまくりのボイスパーカッションを見せつけていたところに、突然鳴り響く笛の音……。「すみませんね、ここ道路なのよ」「ちゃんと許可取ったの?」と、警備員に扮したBEMAとimigaが姿を現し、Daichiは追い出されるようにステージから離れる。すると、それと入れ替わるように、たいぽんがピンク色の車(ダンボール製)に乗ってステージに登場。そして「こっちには進めないのよ。“一方通行”だから」と、「一方通行」を披露。ミディアムナンバーで会場を心地よく揺らすと、次の曲が流れ始めた。「このイントロが流れたときに、頭の中に“?”が4つ浮かんだと思うけど、それが正解なのかどうか、グーとパーで答え合わせてしてみようぜ!」とBEMAが叫ぶと、Amaryllis Bombのサグワとゆうこんが登場。BEMA、imiga、サグワ、ゆうこんによる4MCユニット・quad4sとして「注文の多い料理店」、さらに「第一次卓上大戦争」を披露し、オーディエンスを大興奮させていた。
quad4s
quad4s
次から次に現れた所縁のあるサプライズゲストや、曲の繋ぎ方まで細かく工夫された様々な演出など、まさにエンターテイメント然としたライブ構成になっていたが、後半戦は、演出といった武器を使わずに、素手で、生身でフロアにぶつかりに行くようなものになっていた。「俺達カイワレハンマーは、お前達がサイリウムを握ってくれている限り、マイクを握り続けようと思ってます」と、オーディエンスに感謝を告げると、2人は「sprout2018」「Break Down」「TOP&GO-突破口-」「最高path」と、聴き手を奮い立たせる力強い楽曲を、矢継ぎ早に4連発で繰り出す。今回のツアー序盤に行なわれたZepp DiverCity公演もレポートさせてもらっていたのだが、そのときとは比べ物にならないぐらい、歌もパフォーマンスも格段にたくましくなっていて、オーディエンスを熱く先導していた。そして、そんなたくましさや熱さが、2人が曲に込めているメッセージをより強いものにしていた。
BEMA

imiga

特にその熱が凄まじかったのは、「俺達はこうやってステージの上に立っているけど、結局はYouTuberなんだ」と切り出した「動画投稿2016」。この曲は元々BEMAのソロ曲なのだが、imigaも歌詞を書き加えて披露された。その内容は、日々動画を投稿していく中で胸に湧き上がった葛藤や悔しさ、そしてそこで芽生えた意志や想いを、19歳の自分に向けて綴ったもの。なかでも、〈ピエロ演じる俺はバカなのか? 笑顔見れるなら 踏むバナナの皮〉というフレーズは、BEMAやimigaはもちろん、多くのYouTuberであり、ひいては人前に立つエンターテイナー達の気持ちを代弁したようなものともいえるかもしれない。あの頃を思い返すように、そしてこの先も歩んで行くために、熱い言葉達を力強く紡いでいく2人の声とその姿はとにかくエモーショナルで、胸を強く打つものだった。そして、長きに渡るツアーを締め括ったラストナンバーは、「GO MY WAY -STEP BY STEP-」。曲中で「お前のライブ構成、マジで神がかってるよ!」と、BEMAに向かって叫んだimiga。胸に激しく込み上げてくるものがあったのだろう。万感の思いで2人は歌い上げると、最後には空高くテープが発射され、ロングツアーは大団円で幕を降ろした。
BEMA

imiga

カイワレハンマーは、今回のツアーでよかった場所を再び訪れるというコンセプトの追加公演を、3月21日に高松オリーブホール、3月27日に青森クォーターで開催し、成功を収め全31公演終了した。また、アルバム『Regression』のインタビューで、活動再開以降の流れは、アルバムと豊洲PITで「一回区切る感じ」とも話していた彼ら。これまでの集大成をみせつけたステージを経て、これから2人がどんな活動をしていくのか楽しみだ。

取材・文=山口哲生 撮影=大橋祐希
未掲載カット含む、全ライブ写真は【 コチラ 】
カイワレハンマー

カイワレハンマー

カイワレハンマー

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