【インタビュー】KAMIJO、重厚なオー
ケストラとロックの融合を追求する最
新型エピックロック『Sang』

KAMIJOの3年半ぶりとなるソロ・アルバム『Sang』が3月21日にリリースされた。メタル・チューンとオーケストラを有機的に融合させたドラマチックかつ華麗な味わいの楽曲を軸にしつつエモーショナルなナンバーも配した同作は、唯一無二の魅力を湛えている。さらに、『Sang』と共に、彼にとって初の試みとなる室内楽アルバム『Chamber Music Ensemble』(完全限定受注生産豪華盤のみ収録)を完成させたことも注目。KAMIJOの美意識で染め上げられた二作について、大いに語ってもらった。
■曲を作って最終的にそれがピタッとハマッた時というのは

■歌詞のメッセージと楽曲が完全にリンクした時ということ
――『Sang』の制作は、いつ頃から、どんな風に始められたのでしょう?
KAMIJO:僕がアルバムを作る時というのは、当たり前のようにコンセプト・アルバムになるんですよね。今回も僕の中に主軸になる物語があって、それはフランス革命が起こった頃のヨーロッパを舞台にしたオリジナル・ストーリーです。僕が今ブログで公開しているストーリーがありまして、それが今回の「Theme of Sang」の歌詞になっているので、それも読んでいただければと思います。そのストーリーを土台に音を作りました。作り始めがいつだったかと言うと、僕がソロ活動をスタートした時からです。その時から伝えたいものというのがあって、それは“過去の暗い歴史を、明るい未来に繋げよう”という想いです。ソロ活動を始めた時点でストーリーが完成していたわけではないですが、作品を作る時は次作のことも踏まえて伏線を張りながら作っていて、今回の『Sang』は2014年9月にリリースしたアルバムの中の「Heart」という曲から派生したものになっています。ただ、だからといって僕がソロで作ってきた作品を全部聴かないと意味が分からないというわけではなくて。それぞれの作品単体でも楽しんでいただけるものということを意識して作っていて、それは今回も変わらなかったです。
――良いリンクのさせ方といえますね。アルバムの骨格になるストーリーを先に考えたということは、曲作りもストーリーに合わせて作るというやり方でしょうか?
KAMIJO:そうです。基本的に僕が曲を作る時は映画のサウンドトラックを作るように場面ごとのスケッチを作って、そこに対して音を作っていくんです。昔は曲を作るところから始めていましたが、どれだけ曲を作っても歌詞を乗せるタイミングで歌詞がメロディーに“ビシッ”とハマらないと結局ボツにするんですよ。だから、一番最初に作るべきはメッセージだなと思うようになりました。それが最終的にコンセプトとなり、オリジナル・ストーリーへと発展していきました。僕が思うに、きっとどんなミュージシャンでも、どんなアーティストでも、曲を作って最終的にそれがピタッとハマッた時というのは、歌詞のメッセージと楽曲が完全にリンクした時だと思うんですよね。世の中にはサウンドさえカッコよければ良いという人もいるかもしれませんが、そういう音楽には限界がある気がするので、僕は音楽というものからさらに飛び出た視点で音楽を創りたいなと思っているんです。それで、映画音楽的な創り方をしています。
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――面白いです。それに、KAMIJOさんのソロ作品はメタルの要素とオーケストラを融合させた楽曲が軸になっていますが、単にメタル・チューンを作ってオーケストラを乗せているだけではないという印象を受けました。
KAMIJO:その通りです。一般的にメタルソングを作曲する時はギター・リフから入って、オケを作って、最後にメロディーを乗せるということが多いですが、僕はメロディーから入ります。それに、たとえばイントロでギターがメロディーを弾いていて、Aメロから歌が入るとしても、僕はギターで奏でるメロディーも、歌も同じように扱っています。つまり、歌とかボーカルということではなくて、主旋律をどのパートが受け持つのかという考え方をする。主旋律がしっかりと繋がることで、必ずリスナーの耳はそこにいくので。僕は元々ポール・モーリアが大好きで、彼の楽曲はバイオリンが主旋律を弾いていて、その裏でチェロがオスティナート(同じフレーズを反復させること)していたとしたら、その次のパートではチェロが主旋律を弾き出したりするんですよ。そういう感覚が自分の音楽にも活かされていると思います。
――ということは、自作曲のオーケストラ・アレンジも、ご自身でされているのでしょうか?
KAMIJO:しています。独学で始めて、いろいろなことを表現するためにオーケストラ・アレンジを勉強するようになりました。オーケストラで構築する場合は、主旋律をどの楽器で鳴らすかということ……たとえば、静かなパートでフルートとオーボエがユニゾンでオクターブでテーマ・メロディーを奏でているとなったら、第二バイオリンとビオラはスタッカートでいこうか…という風に考えることになる。そういう組合せの違いだけなので、どのパートにどういう役割を持たせるかということを考えるのは、僕にとってそれほど難しいことではないです。一般的なロックバンドでも、たとえばドラムとベースがキメをやっているなら、ギターはミュート・アルペジオにしよう…みたいなことを考えますよね。その延長でアプローチすると、自分なりのオーストラリア・アレンジはできます。
――あっけらかんと仰いますが、驚きです。『Sang』は楽曲によってオーケストラのフィーチャー加減が違っているので、アレンジャーと相当綿密にやり取りしたんだろうなと思いました。
KAMIJO:相当綿密に作るために、僕はデモを作る段階で全部の楽器を自分で打ち込むんです。ギターも、ある程度打ち込みで作りますし。全部の音がMIDIで並んでいるものが僕にとっての譜面で、その譜面上で構築していかないと自分がイメージしているものにはならないので。リフを弾いて、なんとなくこれで合ってそうだなということでは僕は済ませない。デモでそこまで作り込むから、今言われた“オーケストラのフィーチャー度”みたいなものも僕の中では明確なんです。
――さすがです。『Sang』を聴いて、メタリックな楽曲でいながらギターがあまり前に出ていないのも特徴になっているなと思ったんですね。今の話をお聞きして、その理由も分かりました。
KAMIJO:たとえば、Within Temptationは『ブラック・シンフォニー』という作品でオーケストラとコラボレーションしていますけど、その作品のギターはとことんパワー・コードだったりで、重さの部分に徹しているんですよ。で、Angraは、逆にギターが前に出ている。真逆なんです。どんなアレンジを採るにしても、バンドでやるとなるとギターが重要な役割を果たす方向に持っていかざるを得ないというのはありますよね。じゃあ、それが理想かというと僕の中ではまた違うところにあって。それを形にしているのが、僕のソロ作品です。Versaillesのメンバーもある程度僕に近い感覚というのは持っていますけど、細かいところまで作り込めるという意味では、この手法をソロでやったのは正解だったと思いますね。
――やり切りたかったんですね。それに、ここまでの話を読んで、とっつきにくい音楽という印象を持たれる方がいるかもしれませんが、『Sang』はすごくキャッチーで聴きやすいアルバムに仕上がっています。
KAMIJO:そう言っていただけると嬉しいです。というのは、僕はそこに関しては意識していないので。僕にとって『Sang』というアルバムは、今までで一番マニアックな作品なんですよ。
――マニアックという意味では、本当にマニアックです。でも、聴きやすいものになっているということは、KAMIJOさんの中にキャッチーであるということが自然と身についている証といえますね。
KAMIJO:どうなんでしょうね……。たしかに、『Sang』の楽曲はメロディーがキャッチーだし、構成とかもシンプルなんですよ。でも、実は2番に来た時はキーが違っていたりするんです。1曲の中で場面がどんどん変わっていくことで壮大なイメージになる楽曲って、ありますよね。いわゆるプログレッシブ・ロック的な手法というか。僕はそういうアプローチよりも密かにフックを効かせたりするのが好きなんです。たとえば、歌い出しのメロディーとサビのキーが全然違っていたとしても、そのサビに行きつくために何度でも転調したりとか。しかも、それをトリッキーに感じさせないようにすることに燃えたりします(笑)。
――スキルの高さを感じます。キャッチーということでは、『Sang』の最後に入っている「Sang I」から「Sang III」までの3曲は、組曲のようにして長尺の1曲にするのも“あり”だと思うんですね。でも、独立した3曲になっていることからも、KAMIJOさんの指向がうかがえます。
KAMIJO:それに関しては、まず「Sang III」に関しては全くの別曲だったんです。Cubaseのセッション上では「Ambition -Interlude-」と「Sang I」「Sang II」は一つのセッションなんですよ。「Sang III」は別物として作った後、前奏にストリングスのメロディーを加えたんですけど、そのメロディーが「Sang II」のメロディーなんですよね。「Sang I」はBPM=135で「Sang II」は180なので、テンポが違っているんですが、3連のフィルを入れることで自然とテンポ・チェンジできている。でも、「Sang III」は全く違うBPMの別曲だったので、ストリングスの前奏をつけることにしたんです。そういう意味では組曲ともいえますが、トラックは分けておくことにしました。そうすれば1曲1曲を独立した曲として聴きたい方にも、壮大な1曲として聴きたい方にも楽しんでいただけると思いまして。
――好みに合わせて聴けるというのは、リスナーは嬉しいと思います。それに、『Sang』はオーケストラを配さないマッスルなテイストの「Vampire Rock Star」や、エモーショナルな「Mystery」「mademoiselle」といったナンバーも収録されています。
KAMIJO:「Vampire Rock Star」は、単純に言葉から生まれました。“Vampire Rock Star”という言葉を、ファンのみんなと叫びたいと思って(笑)。じゃあ、どういう曲だろうというところから始めていったら、ストーリーの中でたまたま物語の登場人物がメディアに出演するシーンがあって。そのシーンに合う楽曲として作っていった結果、こういう曲になりました。この曲は「Sang I」や「Sang II」とはテイストとは違っているけど、それは僕の一部なんですよ。「Vampire Rock Star」や「Mystery」「mademoiselle」も自然と出てきたものなので、僕の中では違和感はない。ただ、「Vampire Rock Star」に関しては、敢えて“ハイブリッド感”というか、“現代感”みたいなことを意識しました。というのは、僕のメロディーはクサいんですよね。
――キャッチーだと思います。
KAMIJO:ありがとうございます。でも、僕の中では、一歩間違えると演歌や歌謡曲になってしまうという感覚があって。そこが良いところでもあるかもしれませんが、それを違う聴かせ方にしたいなというのがあって。それで、「Vampire Rock Star」は全編英詩でいくことにしました。そういう手法を採ることで、今までの自分にはないハイブリッド感を出せたかなと思います。「Mystery」は、鼻歌で作りました。メイクをしていただいている時になんとなく鼻歌で作ったので、メイクさんは作曲する瞬間を見ることになったという(笑)。この曲はメロディーが浮かんだ時から日本語ではなくて、英語のイメージでしたね。日本語にすると、あまりにも童謡のようになってしまうだろうということを感じたんです。それで、最初から英詩でいくことにして、それこそディズニー・ミュージカルのようなイメージで作りました。「mademoiselle」は日本語ですけれども、コード進行をジャジーに変えました。この曲は英語とかいう視点ではなくて、いかにコード・アレンジでメロディーを新鮮に聴かせるかというチャレンジをした曲です。
――いろんな引き出しを持たれていますね。メロディーは変えずにいろいろなテイストを出す辺り、ちょっと料理人を思わせます。
KAMIJO:アハハ(笑)。自分を料理人に例えるとしたら、コース料理を手掛けた時の料理の出し方はすごく大事にしていますね。曲展開のドラマチック性というのは、自分が一番大事にしているところです。
――それは楽曲単体に限らず、アルバム全体にもいえますね。『Sang』は構成が絶妙ですし、セクションごとに織り込まれた3曲の「Interlude」も重要な役割を果たしています。「Interlude」が入ることで楽曲の繋がりがスムーズになり、さらにアルバムの世界観を深めていますので。
KAMIJO:僕の理想は、映画のサウンドトラック全部を作ることなんですよ。だから、「Interlude」を作ることは、最大の楽しみの一つになっています。適当なビート・パターンを流して、雰囲気物のシンセを鳴らして…みたいなもので済ませるということは絶対にない。かといって、サイズが長過ぎる「Interlude」も違うなと思って。一気に世界が変わる深みがありつつ、サッと終わるというのが好きですね。あとは、「Castrato」の前に入っている「Delta- Interlude-」はシングルで出した時に「Castrato」の一部として収録してあったのですが、アルバム単位で聴こうとした人が、パッと「Castrato」を聴けるようにしてあげたくて。それでマーカーを付けたというのもあります。
――そこにもリスナーを思う気持ちが表れているんですね。それに、「Interlude」を聴いていると、映画の中でBGMに合わせて様々なシーンがコラージュされるような場面を連想しました。
KAMIJO:そう感じてもらえたなら良かったです。特に、「Ambition -Interlude-」の6/8拍子になるところとかは、時代の変遷を表現したかったんです。それに6/8拍子のパートは、ピラミッドが見えてくるイメージだったんですよ。そこは、ナポレオン・ボナパルトがエジプト遠征をするシーンなので。それを表現するメロディーを作って譜面にしたら、音符がピラミッド型になっていたんです。譜面上もピラミッドという(笑)。改めて、音楽は面白いなと思いましたね。
■それぞれのキャラクターをちゃんと演じることができれば

■表情や温度感といったものは自然と決まってきます
――今日お話をうかがって感じたことですが、『Sang』は前作から3年半ぶりのアルバムですが、逆によく3年半で作れたなと思います。
KAMIJO:いや、構想は3年半前からありましたけど、実際に楽曲を作りだしたのは去年の年末くらいからでした。
――えっ、そうなんですか!?
KAMIJO:はい(笑)。歌入れは2月中旬以降に、3日間で纏めてやりましたし(笑)。だから、制作期間自体は短いんですよ。
――……驚愕です。歌の話が出ましたので、続いてボーカルについて話しましょう。今作は、歌も難しかったと思います。
KAMIJO:そうですね、英語が難しかったです(笑)。
――いえ、そういうことではなくて(笑)。冒頭にも言いましたが、“メタル+オーケストラ”という圧があるサウンドに対して歌が弱いと成立しませんし、かといって歌が濃すぎるとミュージカルのようになってしまう気がするんですね。そういう中で、それぞれの楽曲で絶妙のテイストを出されています。
KAMIJO:歌に関しては、ある意味歌い出しの声色さえ決まってしまえば、後は早いというか。僕が作る曲はキャラクター・ソングなんですよ、全部が。ですから、それぞれのキャラクターをちゃんと演じることができれば、表情や温度感といったものは自然と決まってきますよね。自分自身が素直に歌ったら「mademoiselle」とか「Mystery」みたいな歌になるんです。あとは、「Sang III」とか。その3曲は、もう自然体の感情が出ています。ですけど、「Sang I」とか「Sang II」「Castrato」といった曲はそこで描かれているサンジェルマン伯爵とかルイ17世、ナポレオン・ボナパルトといった人物になり切らないと歌えない。自分の中には、そういう人達のカッコいいイメージができあがっているので、それを表現する歌い方を探すんです。口の開き方をもうちょっと横にしたほうがイメージに近づくかなとか、声の圧はこれくらいかなという風に、いろいろ試してみる。その作業は、いつも入念にしています。
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――キャラクターになり切れるイメージの豊かさと、それを表現できる歌唱力の両方が必要になりますね。“これが自分のスタイルだから”というところに逃げていないことが分かります。
KAMIJO:僕はKAMIJOである前に、楽曲だったり、ストーリーだったりを伝えたいので。僕はVersaillesというバンドを10年くらい前に始めた時に、それぞれの楽曲が必要とする歌を歌えるシンガーとして、新しい自分を創りあげました。ですが、そういう中で「mademoiselle」みたいに自分の素が出てしまう曲があって、それが合えばそのまま活かしますが、全ての楽曲でそれを押し通す気はないですね。
――シンガーである前に、表現者でありたいんですね。KAMIJOさんのスタンスが功を奏して、『Sang』はメタル・アルバムとしても楽しめると同時に、メタルに馴染みのないリスナーをも魅了する作品になりました。
KAMIJO:ありがとうございます。子供から大人まで楽しんでもらえるんじゃないかなという気はしています。僕が目指すものというのは、ハリウッド映画の予告編なんですよ。本編ではなくて、予告編。ハリウッド映画の予告編はいきなり無音になって、その後“ドーン!”と来たりしますよね。ああいうインパクトの強さは子供も、大人も、みんなカッコいいと感じると思うんですよ。ヘヴィメタルはむちゃくちゃカッコいいけど、お爺ちゃんがカッコいいと感じるかというと、そうではない。子供がカッコいいと感じるかというと、そうではない。じゃあ、子供にとってカッコいい戦隊モノを大人がカッコいいと感じるかというと、人による。でも、ハリウッド映画の予告編は、誰もがカッコいいと言いますよね。僕は、そういうものを音楽で創りたいんです。
――その例えはすごく分かりやすいですし、『Sang』を聴いて、それを実践されていることを感じました。続いて、『Sang』の完全限定受注生産豪華盤に収められている『Chamber Music Ensemble』について話しましょう。こちらは、弦楽四重奏とピアノ、そしてKAMIJOさんのボーカルという編成で録音された室内楽アルバムです。
KAMIJO:こういう形態で、打ち込みが一切なしというアルバムを作ったのは初めてです。僕がソロで創っている音楽は中世ヨーロッパをテーマにしているので、その頃と同じ音楽をやってみたいなと思って、そういうライブを一回したんですね。それがすごく良かったので、作品として残すことにして作ったのが『Chamber Music Ensemble』です。
――作ろうかなと思って実現できるのもさすがです。収録する楽曲は、どんな風に決めたのでしょう?
KAMIJO:ライブで演奏した楽曲の中で、僕的にお気に入りの曲を選びました。「Royal Blood」や「Heart」の原曲は完全にメロディアスなスピード・メタルですから意外な印象を受ける人も多いと思いますけど、僕はネオ・クラシカルというのであれば、クラシック・アレンジができないとネオ・クラシカルではないと思うんですよ。だから、僕の中では整合性が取れています
――新鮮な驚きがあるので、ぜひ原曲と今回のバージョンを聴き比べて欲しいです。メタル・チューンを大胆にリ・アレンジした楽曲がありつつ、「Romantique」や「あの人の愛した人なら」「運命」といった原曲に近いエモーションを活かしたものも入っていますね。
KAMIJO:その辺りの楽曲は完成した作品として成立していたので、生の四重奏とピアノという形態で若干のアレンジが加わることで十分良いものになるなと思って。それに、今回は全員クリックを聴かずにアイ・コンタクトだけで演奏するという形を採ったので、よりエモーショナルなものになるだろうというのもありました。
――一発録りということは資料に書いてありましたが、クリックも使わなかったんですか?
KAMIJO:はい。室内楽でやる良さというのは、お互いの空気の読み合いというか、そのドキドキ感が魅力だと思うんです。僕のブレスに合わせて、みんなが入ってくるわけですよ。そういう空気感をパッケージしたくて、クリックも使わないライブ録音でいくことにしたんです。指揮者もいませんが、ピアニストの佐山こうた君ができる場所では片手を振ってテンポを出したりしていました。
――良い演奏をしている中で自分がミスッたりした時に、後から歌だけ録り直すというわけにはいきませんよね。プレッシャーを感じたりしませんでしたか?
KAMIJO:たしかに、たとえばエンディングの手前とかで誰かがミスッたりした場合でも、そのテイクは使えなくて、もう一度頭から演奏し直すしかないという状態でした。でも、プレッシャーに押し潰されてしまうというようなことはなかったですね。長年に亘って歌って来た曲達ですし、一度ライブで歌ったこともあって、それぞれの楽曲の歌のイメージが明確でしたし。それにテンポも僕次第なので、すごく歌いやすくて。もちろん良い意味での緊張感はありましたが、室内楽という形態で歌うことを本当に楽しめました。それに、今回の制作はシングルも含めて、かなりの曲数のレコーディングでしたが、『Chamber Music Ensemble』に関しては一日で全部終わったんです。
――ええっ! 本当ですか?
KAMIJO:はい(笑)。皆さん本当にプロだなと思いましたね。5時間くらいで全部の録りが終わったんです。
――今日のインタビューは、驚くことの連続です。さきほど周りのプレイヤーが自分の歌に合わせてくれたとおっしゃいましたが、逆に言えばKAMIJOさんが全てを背負っているともいえますよね。
KAMIJO:いや、そんな大それた感覚はなかったです。今回のレコーディングで、クリックも何も聞かずに自分の感覚で歌い出して良い、伸ばしたいところは好きなだけ伸ばして良いというのは本来のあり方なんだなということをすごく感じたんですよ。それこそ何十年か前というのは、みんなクリックなんか使わずにレコーディングしていたし、同期は使わずにキーボーディストが手で弾いていましたよね。僕も前の前のバンドは、そうでしたし。今回のレコーディングで、“音楽というのは、こうだよな”と改めて思ったんです。“サビ前は少しリットするよな”とか“気持ちが上がると少しテンポは速くなるよな”とか。それが、すごく気持ち良くて、自分が背負っているというようなことは感じなかった。そういう作り方をしたという意味では、『Chamber Music Ensemble』は『Sang』とは真逆の作品ですよね。
――異なるアプローチの二作を同時期に作ったということも注目です。『Chamber Music Ensemble』も『Sang』同様、素晴らしい完成度を誇っていますし。
KAMIJO:僕自身も良いものになったなという手応えを感じています。“オーケストラをフィーチュアしている”とか“室内楽”といった言葉を聞くと、敷居の高い音楽というイメージを抱く人もいる気がするんですよ。でも、『Sang』にしても『Chamber Music Ensemble』にしても、J-POPとして聴いてもらえると思います。なので、沢山の人に届くと嬉しいですね。それに、僕が今回の二作を一言でいうとしたら、“5年聴けるアルバム”です。他にない音楽ですし、すぐに色褪せてしまうような音楽ではないという自負がありますし、きっと聴くたびに新しい発見があると思いますし。だから、じっくり聴いて欲しいです。
――同感です。それに、『Chamber Music Ensemble』の続編も、ぜひ作って欲しいです。
KAMIJO:『Chamber Music Ensemble』に関しては、実は今作に入れなかった曲も1曲録ったんですよ。それは“96(24bit/96kHz)”で録ったからCDにはできなかったんです。でも、せっかくこういった抑揚のある、ダイナミック・レンジの広い音楽を高音質で録ったので、なにかしらの形で世に出したいなと思っています。他の曲も機会があれば室内楽アレンジにして録りたいですし。次はハープを入れたいんですよ。なので、『Chamber Music Ensemble』は次作も作ることになるんじゃないかなという気はしますね。
――まだまだやりたいことがいっぱいあるというのは頼もしいです。“やりたいことがある”といえば、ソロ・ツアーも、かなり面白いものになっていると聞きました。
KAMIJO:皆さん映画とか、ドラマとかを観られると思いますが、ラストシーンとかで感動的な言葉を言ったり、感動的な場面になったりした時に、良い音楽が流れますよね。僕は、その感覚でライブをしたかったんです。音楽よりもストーリーが前に来ているエンターテイメントを見せたかった。だから、今回作るのはアルバムじゃなくても良かったんですよ。たまたま音楽という形が自分にとってやりやすいだけで、僕は原作を創りたいんです。『白鳥の湖』とか『オペラ座の怪人』とかはいろんな方がカバーして、いろんなところで公演されていますよね、音楽と共に。それを、僕は『Sang』でやりたいなと思ったんです。なので、今回のライブは声優の皆さんに演技をしていただいて、その世界にお客さんが入り込んだところで自分達の生演奏が入るという形態を採ることにしました。ですから、映画を観るような感覚で楽しんでいただけるライブになっていると思います。全身で暴れて、汗だくになって、気持ち良かったというライブも良いと思いますけど、僕としては音楽の中にある主人公の気持ちになって感動してもらいたいんです。だから、チャレンジすることにしました。今はツアーの初日が終わったところで、自分でもどうなるかまだ分からない部分がありますけど、初日の公演では自分が伝えたかったものを、お客さんは良い意味でショッキングに受け止めてくれたみたいです。「こんなライブは初めてだ」という声を沢山いただいています。
――そうだと思います。ミュージカルやオペラではないですし、朗読ライブでもないという、本当に独自のものですからね。
KAMIJO:僕はこういう話をする時によく可能性の話をするのですが、ミュージシャンというのは音楽業界のことやレコード会社のあり方から何から、知れば知るほど夢がなくなっていくんですよね。現実というものを知れば知るほど、可能性というものが狭まっていってしまう。楽器とかの練習もどんどん重ねていくと、それ以上は伸びないというところまで行ってしまったりするし。でも、練習をしている中で新たなことにチャレンジすることで、そこでまた可能性が広がったりしますよね。それと同じように、僕としては今回のライブを観ていただくことで、KAMIJOのライブはまだまだいろんなものが出て来るぞと思ってもらえると思います。果てしない可能性を感じるライブを見せている自信はあるので、ぜひ体感しに来ていただければと思います。
取材・文●村上孝之
リリース情報


ニューアルバム『Sang』

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Disc 1 [CD]

1. Dead Set World

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3. Nosferatu

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8. mademoiselle

9. Delta -Interlude-

10. Castrato

11. Ambition -Interlude-

12. Sang I

13. Sang II

14. Sang III

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初の室内楽アルバム。弦楽四重奏とピアノの生演奏とKAMIJOの声のみによる室内楽アレンジにてスタジオライヴ録音。

1. Heart

2. Presto

3. Romantique

4. Royal Blood

5. あの人の愛した人なら

6. Royal Tercet

7. Louis ~艶血のラヴィアンローズ

8. 運命

9. 追憶のモナムール

Disc 3 [Blu-ray]

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品番 : SASCD-091

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Disc 2 [DVD]

Nosferatu MV/Story of Sang

品番 : SASCD-092

価格 : 4,500円(税別)
通常盤 [CD]

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1. Dead Set World

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品番 : SASCD-093

価格 : 3,000円(税別)

全タイプ封入特典「EMIGRE CARD」ランダム封入
期間限定デュオシングル KAMIJO x 初音ミク「Sang-Another Story-」

初回封入特典としてスマホ用音楽カード

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発売日:Now On Sale

■完全限定盤[特殊ジャケット仕様]

形態:CDシングル

品番:SASCD-089

価格:2,160(税込)

収録曲:

1.Sang-Another Story-

2.私たちは戦う、昨日までの自分と

3.Sang-Another Story-[Instrumental]

4.私たちは戦う、昨日までの自分と[Instrumental]

■通常盤

形態:CDシングル

品番:SASCD-090

価格:1,620(税込)

収録曲:

1.Sang-Another Story-

2.私たちは戦う、昨日までの自分と

3.Sang-Another Story-[Instrumental]

4.私たちは戦う、昨日までの自分と[Instrumental]
ライブ・イベント情報


<Live Tour 2018 -Sang->

◆Live Member

Gt:Meku 

Gt:Anzi

Ba:時雨

Dr:YUKI

◆Special Guest

初音ミク

◆キャスト(声の出演)

サンジェルマン伯爵:関智一

ナポレオン・ボナパルト:杉田智和

マリー・アントワネット:青木瑠璃子

ベートーヴェン:近藤浩徳

ほか
4月8日(日) 新横浜NEW SIDE BEACH!!

OPEN 16:30/START 17:00

4月14日(土) 柏PALOOZA

OPEN 16:30/START 17:00

4月21日(土) Sendai CLUB JUNK BOX

OPEN 16:30/START 17:00

4月29日(日・祝) 神戸VARIT.

OPEN 16:30/START 17:00

4月30日(月・祝) 岡山image

OPEN 16:30/START 17:00

5月3日(木・祝) 熊本B.9 V2

OPEN 16:30/START 17:00

5月4日(金・祝) 福岡DRUM SON

OPEN 16:30/START 17:00

5月12日(土) 名古屋ell. FITS ALL

OPEN 16:30/START 17:00

5月13日(日)SHIZUOKA Sunash

OPEN 16:30/START 17:00

5月19日(土) HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2

OPEN 16:30/START 17:00

5月26日(土) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE

OPEN 16:30/START 17:00

5月27日(日) 金沢vanvanV4

OPEN 16:30/START 17:00

6月2日(土) DUCE SAPPORO

OPEN 16:30/START 17:00

6月3日(日) DUCE SAPPORO

OPEN 16:30/START 17:00

6月10日(日) CLUB JUNK BOX NAGANO

OPEN 16:30/START 17:00

6月16日(土) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3

OPEN 16:30/START 17:00
【KAMIJO Live Tour 2018 -Sang- Final】

7月15日(日) Zepp DiverCity Tokyo

OPEN 16:00/START17:00
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