LEGO BIG MORL 創意工夫と多才ぶり
が炸裂した“心配と安心”リキッド2
デイズを完全レポ

LEGO BIG MORL BIRTHDAY LIVE 2018“心配と安心” 2018.3.27-28 LIQUIDROOM ebisu
今年3月28日より結成12年目に突入、いわば12歳になったLEGO BIG MORLが、3月27・28日に『LEGO BIG MORL BIRTHDAY LIVE 2018“心配と安心”』を開催した。レゴはこれまでにも結成記念日ライブを開催してきたが、2デイズでワンマンをやること自体初めてであり、1日目は『「心配」~Acoustic Live~』、2日目は『「安心」~Rock Live~』と異なる内容で2デイズを行うのも当然初めてである。既にニュースもリリースされているので先に言ってしまうと、28日の終演後には、『LEGO BIG MORL ~Acoustic & Rock~ TOUR 2018 『月と太陽』』を開催することが発表された。つまり今回の2日間は、そのツアーの前哨戦だったということだ。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
1日目、アコースティック編成でのライブのコンセプトは“カナタタケヒロ(Vo/Gt)の実家”。ソファやテーブル、間接照明が配置されたステージセットからして実家感が出ていたが、なんと開演時間を待たずしてカナタとタナカヒロキ(Gt)が登場。ソファに座って話し始めたり楽譜を見ながらB’ z「いつかのメリークリスマス」を弾き始めたりするリラックスっぷりである。その後、ピンポーンと音が鳴り、ヤマモトシンタロウ(Ba)、アサカワヒロ(Dr)も登場。「最近UKっぽいコードが好き」と言いながらカナタが鳴らすギターに他3人が音を重ね、次第に「moonwalk for a week」へと突入した。もはやいつから開演していたのか分からない始まり方。後のMCによると、レゴは前身バンドの頃からカナタの家に集まって曲作りをしているらしく、今回のコンセプトの背景には「アコースティックをやるなら(制作風景を)覗いてもらえるような機会にしたい」という想いがあったとのこと。7拍子のアウトロを終えたあと、カナタが「できた」と呟いたのもリアリティがあって良かった。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
この日のライブはいつもよりも曲数がやや少なめでトークが多め。以後、ゆるさに拍車のかかったMCをカナタが不意に発する「よっしゃ行こか~」等の発言でぶった切り、4人がアイコンタクトをとりながらおもむろに演奏を始めていく、という進み方が主だった。曲の軸となるリズムをバンド全体で共有することは欠かさず、キメる時は4人で息を合わせてバッチリとキメにかかる。それ以外の箇所では各自が遊びまくっており、各楽器が五線譜の上をめちゃくちゃ細かく動いてもいる。最初の4曲を終えたところで、“個”と“集合”を鮮やかに行き来する、このバンドのアコースティックスタイルの在り方が見えてきた。また、この4曲ではアサカワが曲ごとに楽器を替え、パーカッションがバンドの演奏を彩る役割を果たしていたことも特筆しておきたい。特に西アフリカの民族楽器・ジャンベを使用した「end-end」 は原曲とは異なる“鼓動”の音色が新しかったし、サンプリングパッドの無機質なビートによって「バランス」が光よりも暗闇を、温かさよりも冷たさを感じさせる曲になっていたのも新鮮だった。因みに「moonwalk for a week」「テキーラグッバイ」ではカホンを使用。5曲目「マイアシモト」以降はずっとドラムセットだったが、曲ごとにスティックを持ち替え、ビートの硬さを調節しているようだった。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
4拍子と3拍子を行き来する複雑な構成に変貌した「マイアシモト」のように、原曲から大胆にアレンジを変更して、普段から実はプログレ的なこともやっているこのバンドの変態性を、思う存分発揮させた曲が多かった印象。一方で、どの曲に関しても歌やコードの響きが大切にされており、そういう意味ではアコギのコードに始まりアコギのコードに終わった「melt」、弾き語りに始まり弾き語りに終わった「大きな木」のアレンジは象徴的だったように思う。電圧に頼ることのできないアコースティック編成だからこそ、バンドの地力はどんどん浮き彫りになっていく。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
終盤にタナカが「レゴの底力を見せられた気がするし、みんなとも一つになれて。幸せな、ロックのライブでは味わえない空気を味わうことができました」「こんなんできるの、他所にそんなおらんとちゃうかな?」と話していた通り、12年かけて磨かれてきた彼らの演奏力を前にすれば“心配”なんてもはや無用。多彩なアレンジを通してバンドの多才さを堪能できる至福の時間がそこにはあった。オーディエンスもそのことに早い段階から気づいていたようで、フロア、ちょっと異様な熱量。バラードの時には息も漏らさぬほどにじっくり集中し、アッパーチューンの時にはその興奮を歓声に変え、ステージに投げかけていた。そしてメンバーがソファの上に立ち上がったりステージ前方に乗り出しながら演奏した「正常な狂気」では、オーディエンスも声で加勢。結果、「今日はゆっくり音楽を楽しむんじゃなかったの?」(タナカ)、「結局ロックしてますね」(カナタ)と言わしめるほどの熱狂が生まれたのだった。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
その後は、メンバー自身が久々にやる曲だと話していた「素晴らしき世界」の披露、東京事変「スーパースター」のカバー、カナタがオーディエンスの近くに移動して弾き語りした「最終回は透明」などの特別な場面を経て、本編終了。「また明日もいい日になるように」とアンコールラストには「a day in the live」を演奏し、翌日へと橋を架けた。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
2日目は通常のバンド編成での演奏――なのだが、この日もいつも通りのワンマンライブではなかった。SEを背に暗転のなかメンバー4人が登場。シンバルが4発鳴ったのを合図にライブがスタートし、ヤマモトが「Wait?」のイントロを弾き始めた。そしてカナタが「LEGO BIG MORLです!」と挨拶した瞬間、ステージ上が真っ赤に染まり、「WAIT?」の文字が大きく表示される。そう。この日のライブは、白い衣装のメンバーと背後のモニターに映像を投影する、プロジェクションマッピング的な演出が全編にわたって行われたのだ。カナタは拳を握りしめたり掲げたりしながら唄っていて、序盤 から気合いが漲っている様子。最初のMCでは「今日は映像を……あ、言っちゃった(笑)」とまさかのネタばらし発言でオーディエンスを笑わせた。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
ブラスの同期も華やいだ「パーティーピーポー」では軽やかなリズムがオーディエンスの身体を揺らし、「Fo(u)r rockstars」ではソロ回し的なイントロ、そして曲が進むにつれてキメの難易度が上がっていくような展開でさらなる歓声を巻き起こしていく。「love light」を経ての「Blue Birds Story」は、まだ7曲目とは思えないほど、オーディエンスのシンガロングがかなり大きく、タナカが少し驚いたような表情をしたあと、笑いながら自分のマイクをフロアに向けたのが印象的だった。そのままヤマモトとアサカワのセッションに突入。バッチバチのアンサンブルの最中、カナタが手拍子をしながらノッているのが楽しげで微笑ましい(一方、花粉症のタナカがこの隙に鼻をかんでいたのだということを、後にヤマモトに暴露されることとなる)。続く「真実の泉」はアサカワのアドリブが冴えわたり、それを筆頭にバンドサウンドが白熱していっている感があった。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
中盤には、レゴが一貫して歌い続けてきた“命の始まりや終わり”に焦点を当てた“命三部作”が披露された。宇宙や動物、砂漠、花などの映像とともに演奏された「Spark in the end」。スクリーン上の数字がBPMに合わせてカウントダウンしていき、曲の終了とともに「0000」になる演出があった「end-end」。楽曲の基になったという絵本の内容を彷彿とさせるような映像に乗せられた「大きな木」。この3曲は特に映像演出が凝っており、また、それと併せて届けられる演奏も趣深いものに。例えば、「Spark in the end」ではバスドラの重心低めの一発がビッグバンのように聴こえてハッとさせられたし、「end-end」はステージからフロアへ流れる赤色の照明とともにサウンドがじんわり広がる様子も、音と音との間をたっぷりと繋げながら奏でられるギターソロも、決められた時の流れに抗っているかのようでとても美しかった。「大きな木」終盤でサウンドの熱量が増せば、スクリーンの中では木の葉が舞い、さながら春の嵐のような光景が生まれていく。この3曲を終えたあと、フロアからはこの日一番の拍手と喝采が。タナカも「昨日もこんな気持ちになった時が何度かありましたが……リハーサルの時から泣きそうになりました」とその感慨を語った。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
先日タナカがライブを観に行ったというデビュー30周年のエレファントカシマシと比べれば、自分たちはまだ半分も行っていない、としながらも「12年間ありがとうございます」とオーディエンスに感謝を伝えてから演奏した「OPENING THEME」からいよいよ後半戦へ。「シェイカー」「Hybrid」「テキーラグッバイ」とアッパーチューンの連続で勢いづけ、「RAINBOW」のシンガロングへと繋げていく流れだ。因みにこの「RAINBOW」、前日のライブではカナタが<虹がかかった>の直後にある「うらら~♪」のフレーズが如何に重要なのかを力説していたのだが、その甲斐もあり、この日は一発目からそこも含めてバッチリ。「完璧やな、恵比寿!」と思わず2回言ってしまうほどカナタもご機嫌である。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
「たまに浮気してもいいけど、こういうライブがある時には顔を見せてもらえたら。僕ら4人顔には出ないですけど嬉しく思ってます」。本編ラストのMCでタナカはそんなふうに話していたが、その後演奏した3曲が別れの多い春という季節の中で歩を進める人の気持ちに寄り添うようなものだったことからも、またアンコールでスクリーンに大きく「Many thanks to all of our fans for supporting LEGO BIG MORL」と映された演出からも、バンドからオーディエンスに対して向けられた温かな気持ちを読み取ることができた。
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一
――のだが、ここで終わりかと思いきや一転。最後の最後、ツアーの日程がスクリーンにドンと映されるサプライズがあったのだ。そういえば本編中のMCでは「今のところ何もない」と言っていたのに……! と思いはしたが、フロア中みんな嬉しそうにしているし、まあいっか。まっすぐな感謝を目の前の相手に欠かさず伝えるということ。それだけに留まることなく、2日間であらゆる“挑戦”に臨んでいたこと。それから、相変わらずの天邪鬼っぷりが炸裂したラストシーンまで。全部ひっくるめて、このバンドならではの工夫に満ちた2日間だった。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=西槇太一
LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

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