【インタビュー】2(ツー)、もっと
人と繋がりたいという想いを突き詰め
て完成させた2nd『GO 2 THE NEW WOR
LD』

The SALOVERSの古館佑太郎(vo)とギタリストの加藤綾太が中心になって2017年春に結成し、活動をスタートさせると同時に大きな注目を集めた2(ツー)。そんな彼らの2ndアルバム『GO 2 THE NEW WORLD』が4月5日にリリースされる。前作から半年という短いスパンで制作されたアルバムでいながら、同作は彼らの新たな魅力が詰め込まれていて、彼らが早くも新たなステージに入ったことを感じさせる。そんな彼らをキャッチして、全員インタビューを行った。
■四人でスタジオに入って最初に音を鳴らした瞬間に“これだ!”と思って

■パッとP助を見たら彼も同じことを感じていることが分かりました
――2は、どんな風に結成されたバンドでしょう?
古舘佑太郎(以下、古館):元々は、僕が前にやっていたThe SALOVERSというバンドが3年前に解散して、、もうバンドなんか二度とやらないと、いろんな取材で言っていたんです。The SALOVERSは4歳の頃からの幼馴染みとやっていて、僕は彼らとしか音を鳴らしたことがなかったから、他の人とバンドをやるということが想像できなかった。それに、活動の中で疲弊した部分もあって、もうバンドはやらないだろうと思っていたんです。その後、解散から半年くらい経った時に、ちょっと音楽をやるかという話になり、サポートの方達を決めていく中で、ギタリストとして声をかけたのがP助(加藤綾太)だった。元々彼は、僕が一番ホームにしていたライブハウスに出ていた後輩バンドのボーカル&ギターだったんです。16歳くらいからの知り合いで、お互いにライバルであり先輩後輩であるという関係性で、ギターが上手いことも知っていたから、彼にお願いしてみようかなと思って。そうやってP助がギタリストとして僕のソロ活動に関わり始めて、ソロで二作目を出した時には、彼がプロデューサー的な位置にいて、作曲も手伝ってくれていたりした。つまり、僕は彼がいないと音楽活動ができないような状態になっていたんです。それで、これはもうサポートという域を超えているから一緒にバンドをやろうと思うようになりました。
――もう一度バンドをやりたいという気持ちになったんですね。
古館:そう。ソロで2年くらい活動していて、地方に弾き語りライブをしに行ったりしていたんですね。そういう時に、バンド時代に見つけた好きなラーメン屋や飯屋にマネージャーを連れて行くんですけど、“一人で食べても全然美味しくない病”にかかっていて。これは淋しいのかなと思ったりしていた時期だったこともあって、P助にバンドをやらないかと囁くようになりました(笑)。当時のP助はボーカル&ギターで自分のバンドをやっていたんですけど、ちょうどその頃に彼のバンドが活動休止になったんです。それで、“キタッ!”と。ここしかないと思って、より圧をかけるようになり(笑)。でも、最初は渋っていたよね?
加藤綾太(以下、加藤):うん。(古館)佑太郎君はThe SALOVERSが無期限活動休止してから半年くらい休んでいたんですよね。だから、「自分もそういう期間があったでしょう。俺にも休ませてくれ」と言ったんです。なにしろ佑太郎君がバンドをやろうと言ってきたのは、自分のバンドの最後のライブが終わってから3日後とかだったから(笑)。
古館:アハハ(笑)。でも、P助が言ってることは一切聞かずに、バンドをやろう、バンドをやろうと押し切りました(笑)。
加藤:すごく熱心に誘ってくれるし、これも縁なのかなという気持ちになり始めて。僕ももうバンドはやらないだろうなと思っていたけど、佑太郎君となら楽しくできるかもしれないなと思ったし。そうやって、短期間で洗脳されました(笑)。
古館:二人で組むことになったから、メンバーを探そうということになって。何人か候補はいたんですけど、その時から半年くらい前にP助と二人でアコースティック・ライブをしたことがあって。yonigeというバンドに誘ってもらったんですけど、その時にyonigeでサポート・ドラムをやっていたのがyuccoで、すごく良いドラムを叩いていたんです。当時は自分と同世代のサポート・ミュージシャンを探していたから連絡先を聞いて、その時からyuccoとは繋がっていたんです。yuccoは北海道に住んでいて、東京に出て来たいという話も聞いたので、その後サポートをしてくれませんかと何度か連絡したけど、やっぱり渋られて。それで諦めていたけど、P助とバンドをやることになったから、今度はメンバーとして誘ってみることにしたんです。そうしたら、また渋られたという(笑)。
yucco:……ごめんなさい(笑)。その時は古館君のことは全然知らなくて、The SALOVERSのことも知らなかったんです。対バンした時に初めてお会いして音楽を聴いたんですけど、弾き語りなのでバラードチックというか、しっとりした曲をやっていたんですね。そういう人がバンドをやるということは、静かな曲をやるんだろうなと思って。私はハードな音楽が好きなので、この人の後ろかぁ…と思って渋っていたんです。
古館:僕からしたら、サポートはともかくバンドとなったら快諾してくれると思っていたんですよ。yonigeは僕が前にやっていたバンドを気に入ってくれていて、僕が作った曲をSEで使ってくれていたりするから。だから、当然「本当ですか? やったぁ!!」みたいな反応を予想していたのに違ったから拍子抜けして、僕は若干イラつき始めて(笑)。そこからは、もうyuccoのことは“北海道の女”呼ばわりするという(笑)。それで、他のドラムを探すことにしたんですけど、良いと思う人は他でバンドをやっていたりして、P助とこれは無理だねという話になって。そうなった時に、P助がもう一度北海道の女に声をかけてみようと言うんですよ。それで、ダメ元で連絡したら、今度は全くリアクションが違っていたんです。
yucco:そう。「ええっ、マジすか!?」みたいな(笑)。一度断った後にThe SALOVERSを聴いてみようと思って聴いてみたら、めっちゃカッコ良かったんです。それで、こういうバンドだったら叩きたいという気持ちに変わったけど、一度断ってしまったから、こっちからやりたいですとは言えなくて。そうしたら、もう一度連絡してくれたので、東京に行きますと即答しました。
古館:そうやってドラムが決まって。ベースはなんとなく考えていたのが、P助が前にやっていたバンドの(赤坂)真之介だったんです。それで、P助に真之介はどうだろうと言ったら、「全然良いけど、俺からは誘えないから、自分で会ってみて欲しい」と言われて。その時も当然快諾してもらえると思っていたのに、また渋られたんです(笑)。
赤坂真之介(以下、赤坂):いや、P助と同じで、その時は前のバンドが終わってから2ヶ月後くらいで、次のバンドをやろうという気持ちになっていなかったんです。それに、僕は東京出身で上京というものを経験したことがないから、逆のことをやりたいなと思っていたんです。自分が気になっている地方に行って、そこでゼロから生活してみたいなと。
――上京と同じような経験をするのであれば、海外などに行くのが一般的な気がしますが。
一同:そうそう! そうなんだよな!(笑)
赤坂:いや、海外も選択肢の一つだったけど、まずは地方に行ってからと思っていたんです。
古館:なんか、アサラトというアフリカの民族楽器があって、それを探す旅に出たいとか言っていて。こっちとしては、「うるせぇよ!」と言いたいわけですよ(笑)。それで、でもバンドをやったら絶対楽しいよと言ったら、1ヶ月くらい時間をくれみたいなことを言われて。いや、そんなに待てないと。3日以内、最長でも1週間で決めてくれと言ったら、少しずつ気持ちが傾いた感じになってきて。そうしたら、真之介は最後にタワレコに今から行こうと言うんですよ。もう我慢できなくて、「いや、行かねぇよ」と言いました(笑)。タワレコに行く暇があるなら、今返事くれやと(笑)。
赤坂:アハハ(笑)。その時は返事をしなかったけど、帰り道ではもう頭の中が“Yes”の状態になっていたんです。それで、とりあえずP助と話をして、その後すぐに佑太郎君に連絡して、やると言いました。
――イメージしていたメンバーが揃って良かったですね。
古館:その過程で、僕はだいぶ自信を喪失しましたけど(笑)。そうやって2017年の3月にメンバーが決まって、課題曲を決めて四人でスタジオに入って、最初に音を鳴らした瞬間に“これだ!”と思って。パッとP助を見たら、彼も同じことを感じていることが分かりました。そこからのスピード感は異常に早かったですね。すぐにP助が12曲書き上げて、1ケ月後にみんなで合宿に行って、12曲を完成させて、2か月後に大阪で初ライブをして。ライブから戻ってきて、即レコーディングして1stアルバム『VIRGIN』(2017.10.4リリース)を作って、それが完成した時に2nd用の曲ができていたので、また合宿に行って、帰ってきてレコーディングして、今回の『GO 2 THE NEW WORLD』に行きつきました。
■最後に「FALL FALL FALL」という曲を形にした時に

■2ndアルバムの意味がここでできたなと思いました
――では、最新作『GO 2 THE NEW WORLD』について話しましょう。本作の曲作りに取り掛かる時は、どんなことを考えていましたか?
加藤:今回は、明確なテーマがありました。1stは完全に初期衝動じゃないけど、バンドの中での爆発感みたいなものを重視したアルバムだったんですが、今回は逆で、内側を向いていたのを、外に向かって広げたいというのがあったんです。1stの時は自分達だけだったけど、そこにお客さんもいて欲しいと思ったし。だから、メロデイーを分かりやすくしたり、アレンジとか構成も分かりやすくしたり、過剰なものをどんどんそぎ落としていったりしました。だから、今回はずっと引き算を意識して曲を形にしていった感じですね。そうやって曲を作っていって、最後に「FALL FALL FALL」という曲を形にした時に、2ndアルバムの意味がここでできたなと思いました。このバンドで初の直球のバラードであると同時に、新しいところにいけたことを感じたから。だから、これは絶対に入れて欲しいと佑太郎君に言いました。
古館:1stを作った時は、「俺らは、これしかないよね」という話を、よくP助としていたんです。自分達は背伸びをするつもりもないし、お互いに前のバンドでいろいろあったけど、新しいバンドを組んで、その喜びを表現するとなると“これだ!”というものしかやりたくなかったから。そういうアルバムを作って、発売して、ツアーを廻っている頃からP助が2というバンドが明確に見えたと言うようになったんです。自分達の核を提示した1stを経て、確固たる自分達の指針が見えたと。その後、あがってきた曲も1stをさらに進化させたものだったり、より人と繋がりたいという想いを感じさせるメロディーだったりしたんです。それに引っ張られる形で、自分が書く歌詞も内にこもったものではなくて、外に飛び出ていこうという気持ちを表現したものになった。今回の『GO 2 THE NEW WORLD』は、そういうものが詰まったアルバムです。
加藤:僕の中に、もっと人と繋がりたいという想いが生まれて曲作りを始めたけど、それを佑太郎君に話したりはしなかったんですよ。でも、僕が“外に向かって開く”ということを意識して曲を作ったら、佑太郎君もそういう歌詞を書いてきた。お互いが求めたものが同じだったことが分かって、その時は嬉しかったですね。
yucco:『VIRGIN』の潔さみたいなものはすごく好きですけど、『GO 2 THE NEW WORLD』は幅が広がっていて、前回とはまた違う良さのあるアルバムになったなと思います。今回の曲で、私の中で特に印象が強いのは「LOVE FEELS LIKE A WAR」です。合宿に行ってアレンジを決めたりしている時に、まだ歌詞ができていなかったのに、みんなで音を合わせていると古館君が“ヨークシャーテリア”と歌っている言葉だけ聞こえてくるんですよ(笑)。それがすごく良いなと思って、そこから入って、この曲がすごく好きになりました(笑)。
加藤:みんな思っていたよね、“今、ヨークシャーテリアって言ったよな?”って(笑)。
一同:そうそう!(笑)
――それは、気になりますね(笑)。「LOVE FEELS LIKE A WAR」は静から動に変わる構成でいながら、2分で終わるというのも絶妙です。
加藤:この曲は『VIRGIN』のイムズを引き継いだ曲で、1stの曲はほとんどが2分くらいなんですよ。1stを作った時に、そういうソリッドさの魅力に気づいてしまって、今回も1曲入れることにしました。ただ、サイズはコンパクトだけど凝縮感があって、面白いものになったと思います。
赤坂:僕は『GO 2 THE NEW WORLD』の中で特に気に入っている曲をあげるとしたら、「BOY AND GIRL」になりますね。ベースから始まるし、露骨にベースが引っ張る曲です。前もベースが引っ張っている曲はあったけど、「BOY AND GIRL」は、“こんなに、ちゃんと前に出て良いんですか?”みたいな感じで(笑)。ベースの弾き甲斐が一番あるし、楽曲自体も好きです。
▲古舘佑太郎


古館:僕の中で印象が強いのは……歌詞の話になりますけど、「NEVERLAND」かな。赤裸々という意味で、この曲は今の自分だから書けたというのがあって。ピーターパンをモチーフにした象徴的な歌詞という体を装っているけど、“年下に大威張り”という言葉が出て来たり、2番で放ったらかしになっているバンドのブログのことを歌っていたりして。今回、最初に歌詞を書いたのが「NEVERLAND」だったんです。これを書けたというのが、自分の中では結構デカかった。前の自分だったら多分全編ピーターパンで押し通して、オブラートに包んでしまったと思うんですよ。でも、今の自分はそれだけでは完結させたくないんです。みんなの日常だったり、身近なものを入れないと人に共感されないということに気づいたから。だから、ネバーランドを題材にしつつ、ネバーランドにはない漫画とか、バンドのブログといったものを差し込むことにしました。歌詞のアプローチを変えていく中で、最初の頃に書いていた歌詞のほうが良かったみたいなことを言われて悩んだ時期もあったんですよ。変わっていった自分を後悔したりとか、16歳の頃とかに純粋に書いていたものが良いんだなと思ったりとか。でも、「NEVERLAND」は、この年齢になったからこそ書けたものなんですよね。だって、16歳の頃には年下のヤツはいないし、やめていくバンドも少なかったし。「NEVERLAND」みたいな歌詞が書けるようになったということも、2というバンドを組んでセカンド・ステージに戻ってこれて良かったなと思える要因の一つになっています。
――続けることの大切さを感じます。「NEVERLAND」は、ドリーミィーな曲調も良いですね。
加藤:「NEVERLAND」も「FALL FALL FALL」とはカラーが違うけど、ある種バラードっぽいというか、ゆったりした曲ですよね。この曲は山下達郎さんの「蒼氓」とかをイメージした部分もあって、リバービィーなサウンドでいくことにして。そこに佑太郎君が書いた「NEVERLAND」というタイトルの歌詞がついて、上手く世界観がマッチングしたなと思います。それに、この曲ができあがった時に、2はこういうものもいけることが分かって嬉しかったですね。
▲加藤綾太


――たしかに「NEVERLAND」を聴くと、繊細さを表現できるバンドだということが分かります。ドリーミィーということでは、アッパーかつドリーミィーという独自の味わいの「UFO CATCHER」も印象的です。
加藤:「UFO CATCHER」も、めちゃめちゃ気に入っています。この曲は唯一四人だけでは再現できないアレンジになっているんです。鍵盤とかシンセ、グロッケンとかが入っていますから。それに、ギターが10何本入っているんですよ。もう何をやっているのか分からないと思う(笑)。その“ザワザワ感”が「UFO CATCHER」というタイトルと連結している感じもあって、これも良いパッケージングになったなと思いますね。
古館:この曲を最初に聴いた時は、イントロとかで“なんじゃ、こりゃ?”と思いました(笑)。これは凄いなと。メロディーを聴いていくうちに、ただの変わり種ではないなと思ったけど、歌詞を書くのに一番苦労したかもしれない。あのメロディーに“ユーフォー・キャッチャー”という言葉を乗せた辺り、わけが分からなくなっていたのかなという気がしますね(笑)。ただ、タイトルから明るい歌詞をイメージするかもしれないけど、今回の中では一番暗い歌詞になっています。最終的にハッピーエンドに落とし込まないといけないという気持ちがあって、いろいろ試みたけど無理だった。でも、アルバムの他の曲がハッピーで、希望に満ち溢れているから、1曲こういう曲があっても良いかなと思って。それで、暗い歌詞のまま完成させました。
――「UFO CATCHER」も、アルバムの重要な要素になっています。では、続いてプレイや音作りなどについて話しましょう。
yucco:2ndを作るにあたって、Pちゃんからデモのまま形にしたいと言われていたんです。なので、デモのドラムを聴いて、それをちゃんと再現することを一番意識しました。そういう中で一番苦戦したのが、「UFO CATCHER」です。機械的なドラムを叩いたことがなかったし、個人的にすごく苦手なんですよ。感情を無にして叩くということに、めちゃくちゃ時間が掛かりましたね。あと、「FALL FALL FALL」と「NEVERLAND」は2に入って初のバラードということで、古館君と一緒に歌う気持ちで叩くということを大事にしましたね。特に「NEVERLAND」のほうが、そういう気持ちが強かったです。
――「NEVERLAND」のゴーストを活かした繊細なビートは絶妙です。逆に、この曲のドラムは自分らしいなと思う曲をあげるとしたら?
yucco:どうだろう? ……「SAME AGE」かもしれないですね。
古館:俺も、そう思った。
yucco:でしょう? 人間味のあるリズムを叩いているし、1曲の中でダイナミクスも効かせていて、この曲は自分らしいなと思います。
加藤:yuccoは、8ビートがカッコいいんですよ。うちのバンドは8ビートばかりで、いつもyuccoのドラムに引っ張ってもらっています。
yucco:……改めて言われると恥ずかしい(笑)。でも、メンバーにそう言ってもらえて嬉しいです(笑)。
赤坂:ベースは、1stの時は衝動感というか、前に行きたがる気持ちがありつつ、それを抑えるみたいな気持ちでベースを弾いていたんですけど、今回はそういう感覚で弾くと良さが出ない曲もあって。なので、基本的に“ちゃんと、どっしりと下にいるベース”ということを意識しました。「SONG FOR YOU」は、最初は1stの時と同じような気持ちで弾いていたけど、全然良くなくて。それで、“自分がこう”ではなくて、ちゃんと下を支えて、リズムの縦を揃えることを意識したら良くなりました。ただ、「SAME AGE」みたいに1st寄りの気持ちで弾いている曲や、さっき話した「BOY AND GIRL」みたいにベースが前に出ている曲もあったりして、幅広さを出せたんじゃないかなと思います。
――それぞれの楽曲に合わせて、メリハリを効かせたんですね。それに、常に弾力感のあるベースを弾かれていることもポイントです。
赤坂:僕は、無表情なベースを弾く気はないので。基本的にシンプルですけど、人間味とか、強弱といったことを大事にしていて、それが今言われた弾力感みたいなものに繋がっている気はしますね。特に「FALL FALL FALL」とかはそれが出ている。最後のサビとかはちょっと走ったかなという感じがあったけど、逆に感情の高まりがベースに出ている気がして、それが良かったんです。なので、そのまま活かすことにしました。
加藤:ギターに関しては、歌の後ろで何を弾くかを、しっかり考えた気がしますね。サビとかは上のほうでピロピロするんじゃなくて、あえて佑太郎君と同じようにコードにしたりとか。上物を弾くことを否定しているわけではなくて、このアルバムに関してはいらないなと思って、全体的にギターはあまり主張しないようにしました。目立つべき場所では目立つけど、ギタリストとしてではなくて楽曲に必要な要素としてフレーズやリフを弾いていて、それ以外の歌がしっかりいるところは後ろに下がってコードを弾くという感じのギターになっています。
――とはいえ、決して地味なギターではなくて、いろいろなアプローチを効果的に使っています。
加藤:そう。実は、いろいろやっています。個人的に気に入っているのは、「MY FRIEND IN NEW YORK」。ちょっとハワイっぽいリフが出てくるんですけど、それが難しくて。上手に弾けるかなと思って、緊張してレコーディングに臨んだんです(笑)。
――ハワイが出てくる歌詞に合わせて、ハワイ感のあるフレーズを弾かれたんですね?
加藤:いや、実はそれは逆だったんです。
古館:あのフレーズが先にあって、それを聴いた僕がハワイを連想して、そこから歌詞を広げていったんです。ここでハワイと言いたいから、逆算して歌詞を書いていく…みたいな。だから、あのリフがなかったら、絶対にこの歌詞にはならなかったですね。
加藤:佑太郎君がリフと歌詞をリンクさせてくれたのは嬉しかった。それも含めて、今回のアルバムの中でも僕は「MY FRIEND IN NEW YORK」のハワイ・リフが一番気に入っています。結構難しいからレコーディングで苦労するかなと思ったけど、サクッと録れたし。それに、録ったら、「これ、めっちゃ良いじゃん!」みたいになったんですよ。ということは良いんだなと思って安心しました。
■今になって歌うということのルールブックを読んでいる感じ

■僕は今まで本当に音程という概念がなかった
――「NEVERLAND」のボトルネックや「SAME AGE」のトレモロ・ピッキングを使ったギター・ソロなどにも耳を惹かれました。
加藤:ボトルネックはほとんどやったことがなくて全然得意じゃないんですけど、佑太郎君のソロの時に1曲だけ使ったことがあって。それを思い出して、バラードっぽい曲だからボトルネックがハマるんじゃないかなと思ってあててみたら、リフとの相性が良かったんです。「SAME AGE」のトレモロ・ピッキングは、がんばりました(笑)。1音1音をしっかり鳴らしたくて、 “ウワァーッ!”と弾いたんですよ。そうしたら、録り終わったら右手の手刀のところが切れていました。
――その甲斐のあるトラックになっていますね。音の粒立ちがすごくきれいですし、リズムも正確で、“おっ?”と思いましたよ。
yucco:Pちゃんは、ドラムも叩けるんですよ。だから、リズム感がめっちゃ良いんです。
加藤:そう、最初はドラムをやっていたんです。吹奏楽部でスティックの持ち方からちゃんと習ったから手首を使ってギターを弾くことが自然と身についていたし、リズムに関しては自信があります。
古館:それに、P助はボーカル&ギター出身のギタリストだというのがあって。僕は、ボーカル&ギターの人が弾くギターがめっちゃ好きなんですよ。P助も“ザ・ギタリスト”ではなくて、歌心のあるギターを弾くところがすごく良いなと思っています。
――ギターに関しては、強く歪んだパワフルな古館さんの音と艶やかな音の加藤さんというキャラクターの違いを、そのまま活かしていることも印象的です。
古館:僕は前のバンドが終わってソロになった時は、もうオーバードライブとかは大嫌いみたいな感じだったんですよ。二度と叫ばないし、エフェクターも踏まないといってソロでアコースティックを2年間やったら、ぶり返しが来て(笑)。もう、歪ませたいし、叫びたい…みたいになったという(笑)。要は、僕の根本はこっちなんですよね。2年間アコースティックをやったことでリフレッシュできて、それがよく分かりました。
加藤:僕は、佑太郎君が歪ませたくない、歪ませたくないという時期に一緒にいたんです。今回のレコーディングでは佑太郎君の音作りを僕が手伝ったんですけど、佑太郎君のエフェクターのゲインを“グイッ”と上げて顔を見ると、笑顔で“うんうん”と頷くんですよ(笑)。変わったなと思いました(笑)。
古館:そうなんだよなぁ(笑)。俺は、虚言癖か…みたいな(笑)。今はパワフルな音でギターをかき鳴らすことを楽しんでいます。
▲yucco


――テイストの異なるギターのアンサンブルということも2の特徴の一つになっていますので、良いと思います。今作の歌についても話していただけますか。
古館:歌に関しては、今になって歌うということのルールブックを読んでいる感じというか。僕は、今まで本当に音程という概念がなかったので。
――どういうことでしょう?
古館:半音とかを理解しないでメロディーを作ってきたから、前は微妙なところが正解になってしまっていたんです。でも今はP助が作った鍵盤のメロディーがあって、それにピッチをあてていかないといけない。そういうことを、今までやったことがなかったんです。2が始まって、歌録りをP助がディレクションしてくれて、音程の気になるところを全部歌い直してというのをするんですけど、それが本当に新鮮というか。前までは気づかなかったから、昔の自分の音源とかを聴くと、結構ゾッとする(笑)。こんなに音を外していたんだと思って。
加藤:音痴ということではなくて、それが味になっていたんです。
古館:そうかもしれないけど、全編“味”というのはどうなんだ…という(笑)。今は意図的に、ここは味として残そう、ここは正確なピッチで歌おうという風に使いわけているんです。それが僕の武器だとするならば、武器の使い方をP助がコントロールしてくれるようになった。前は使い方の分からないものを振り回し続けている状態で、癖だらけの歌だったんですけど(笑)。
加藤:佑太郎君は、最初は半音の意味が分からなかったんですよ(笑)。「めっちゃカッコいいじゃん、この半音」と言ったら、「半音?」とか言ってて(笑)。それで、「あっ、一度こっち来ようか」みたいな(笑)。
古館:本当に分かっていなかった。あと、歌というのは音程以外に抑揚の面もあって、P助はそれを全部決め込むんですよ。平歌は抑えて歌って、サビは“ガッ!”といったりとか。そういうこともやってみて、聴いた時の印象が大きく変わることが実感できた。だから、今は歌い方の設計図の作り方みたいなものを学んでいる最中ですよね。今回、歌の面で印象に残っているのは「NEVERLAND」です。この曲は3拍子で……。
加藤:6/8拍子だけどね(笑)。
古館:うっ……僕にとって謎のリズムで、どう拍を取ったら良いのか分からなくて、最初は全く歌えなかったんです。それを理解して、歌えるようにしていくのが新鮮でしたね。あとは、感情面でいうと「FALL FALL FALL」は、いつ歌っても、何回歌っても飽きないんですよ。レコーディングでも一番感情を込めて歌えたのは、この曲だった気がしますね。そういうところで、「FALL FALL FALL」は繰り返し歌っても色褪せない曲だろうなと思います。
▲赤坂真之介


――ライブで聴くのも楽しみです。ライブといえば、6月から7月にかけて全国ツアーを行います。
古館:僕の中では、このツアーが転換期になるという気がしています。2が始まってから1年間“バァーッ”と動いてきて、1年前とはもう状況が全然違うし、メンバーそれぞれも違っていて。そういうことの集大成が、今度のツアーかなということを感じているんです。それに、僕個人で言うと、前のバンドはSHIBUYA CLUB QUATTROが最終地点で終わったんですよ。その時は、まさか自分がもう一度CLUB QUATTROに違うバンドで戻ってくるなんて、全く想像していなかった。第一章のページがそこで止まったものが第二章になってそこに立ち返ってきたからこそ、CLUB QUATTRO以降が自分にとっての新章になる気がしているんです。過去の悔しい思いとか、トラウマが消えて、新しい景色がそこに広がると思う。その瞬間を、お客さんとも共有したいし。それを実現させるためには、今度のツアーはどういうライブをするのかということや1本1本を本当にしっかりやるということが、すごく大事になってきますよね。夏のツアーは、そういう意識で臨みます。
加藤:今の2はお客さんを楽しませようという気持ちはあるけど、盛り上げようとはしていないんです。そうじゃなくて、曲でちゃんと伝えたいというか。だから、みんな“イェーッ!”みたいなことはしないし、僕もギター・ソロで前に出たりしない。すごく真摯というか、ストイックな姿勢でライブをしていて、僕はそういう見せ方が良いなと前から思っていたんです。とはいえ、ライブというのは見せ物ではあるなと思っているので。お客さんに、2はこういうバンドです、こういう曲ですということを、ちゃんと見せ物として見せるライブにはしたいですね。あとは、今までは『VIRGIN』の曲を中心にしたセットリストを組んでいたけど、今度は新曲もガンガンやることになるから、曲が育っていくというのがあって。それを、すごく楽しみにしています。
赤坂:2のライブは、それこそ曲を知らない人でもノレると思うんですよ。だから、まだ音源は聴いたことがないけど、とりあえずライブに行ってみようかなと思っている人にはぜひ来て欲しい。きっと楽しんでもらえると思います。それに、さっき話が出た佑太郎君がCLUB QUATTROでThe SALOVERSのラストライブをした時に、僕は観に行っていたんです。今度は、その佑太郎君の横で自分がベースを弾くということで、そこでどんな景色が見れるのかを楽しみにしています。
yucco:ツアーに向けた意気込みはPちゃんと同じで、2ndの曲が育っていくと同時に、自分自身ももっと2ndの曲を好きになっていきたいなと思います。あと、私は2に入ってからは初めてのことばかりで、ワンマン・ライブは一度しかしたことがなくて、それは初めて組んだバンドの解散ライブだったんですね。だから、ワンマン・ライブができて、しかもツアーでできて、札幌でもできるということで、すごく気持ちがアガっています。だから沢山の人に来て欲しいし、特に札幌のライブは観て欲しいですね。それに、初めてのワンマン・ツアーということで、勉強になることがいっぱいあると思うんですよ。ツアーでいろんなものを得て、また成長して帰って来たいと思っています。
取材・文●村上孝之
リリース情報


2nd FULL ALBUM『GO 2 THE NEW WORLD』

2018.04.05 ON SALE

YRNF-0008 \2,500(tax in)

01. GO 2 THE NEW WORLD

02. SONG FOR YOU

03. BOY AND GIRL

04. LUCKY BOY

05. NEVERLAND

06. UFO CATCHER

07. LOVE FEELS LIKE A WAR

08. MY FRIEND IN NEW YORK

09. SAME AGE

10. FALL FALL FALL

11. SEE YOU AGAIN
ライブ・イベント情報


ONE MAN LIVE TOUR 2018 “GO TOUR THE NEW WORLD”

仮6/20(WED) 新潟CLUB RIVERST

6/21(THU) 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

6/23(SAT) 札幌 SOUND CRUE

6/28(THU) 名古屋 CLUB UP SET

6/29(FRI) 大阪 Music Club JANUS

7/1(SUN) 福岡INSA

7/11(WED) 渋谷 CLUB QUATORO
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