奥田民生、Theピーズ、
the pillows、YO-KINGが結集!
短期間でロックへの敬愛を詰め込んだ
『O.P.KING』
ロックアーティストのコラボ
日本でも2011年、東日本大震災の復興支援として、サザンオールスターズ、福山雅治、ポルノグラフィティ、Perfumeらが参加した“チーム・アミューズ!!”による「Let's try again」が制作されているし、それ以前の1997年1月には小室哲哉が自身がプロデュースや楽曲を手掛けたアーティスト達に賛同を求めて、“TK presents こねっと”名義で「YOU ARE THE ONE」を発売している。“TK presents こねっと”には小室哲哉自身はもちろんのこと、氏も参加しているバンド、ユニットであるTMN、globe、H Jungle with t、さらには安室奈美恵、trf、hitomi、華原朋美らが参加している。
ロックシーンでも例を挙げていけば枚挙に暇がなく、東京スカパラダイスオーケストラ辺りのフィーチャリング、コラボは相当数に及ぶし、最近で言えば、斉藤和義、スガシカオ、トータス松本、大槻ケンヂら1966年生まれのアーティストが集った“ROOTS66”は豪華なコラボだ。それぞれに思い入れの楽曲やユニットがあるだろうが、そんなコラボの例として、ここではO.P.KINGを取り上げてみたい。
一夜限りがその夏限定に延期
ここまで止まることなく活動を続けている奥田民生とthe pillowsはもとより、YO-KINGは2001年に真心ブラザーズの活動を休止して、その翌年にアルバム『愛とロックンロール』を発表してソロ活動に弾みを付けたところだし、1997年に活動休止していたTheピーズはO.P.KING結成の前年である2002年に佐藤を正式ドラマーに迎えて活動再開したばかり。まさに熱々の4ピースが揃って音を出したのだから、盛り上がらないわけがない。一夜限りのライヴを観た人が延命を望むのは当然だし、観れなかった人なら尚更のことだ。
メンバー全員が均等に楽曲へ参加
《連れだって行こうぜ 気になってきたら/わかちあって行こうぜ かみ合ってきたら/まちがってみようぜ 煮つまってきたら/またがってみようぜ 分かりあってきたら》(民生)。
《関わりあわなきゃ おもしろくはないだろう/関わりあわなきゃ 何も生まれないだろう/自分があればいい そのままいればいい/自分でいればいい そのままいればいい/どこでも いつでも 誰とでも 何とでも》(YO-KING)。
《燃えつきとこーぜBaby せっかくだから/遊ばれきろーぜ 人生チャックベリーだから》(大木)。(以上「O.P.KINGのテーマ」)
…と、それぞれが歌うパートはそれぞれが書いた歌詞と分かる内容なのである。「通り過ぎる夏」も同様で、それぞれ《通り過ぎる夏》というフレーズで締め括っているが、それ以外は全て各人が手掛けている。しかも、こちらは佐藤も歌っている。
《俺は知らねー/何も聞いてない/夏の記憶も/風に揺れるはっばも/ぼんやりばっかしてるほど/まだ涙は枯れてねーぞ/温泉行きてーなー/海水浴に行きてーなー/来年40》(「通り過ぎる夏」)。
《俺は知らねー/何も聞いてない》辺りはライヴ感がある作風だし(?)、この人、実はいい声をしていることも分かってとてもいい。
各コンポーザーの個性も発揮
民生が手掛けたM3「Rock'N'Rollが必要だ」はオールドスクールなR&R。即興演奏のようなスタイルで、流石に若々しいし瑞々しい。《ロックンロールに必要な物はスピード/ロックンロールに必要な物はビート/ドラマーとベースグイングインギターギュイーン/安全なテレビよりも全然ファニー/ヘル新聞ヘル雑誌よりもむしろクリーン/ボーカルはいつもOKベイビーイェー》と綴られる歌詞も勢いで書いた感じだが、心なしか、いや、完全に民生のテンションが高くて、そこがいい。
M4「OVER」はYO-KING節全開。《ひねりつぶしたい あの夏の重い思いは》に始まり、《変わることはない とんぼは秋に飛ぶんだ》~《ふわふわ舞いおちる ぼたん雪 東京の空》、そして《白とピンクのちょうどあいだくらいの/桜の花びらが歩道の脇にたまってる》~《悪いときは過ぎたよ 今からもっと良くなってくんだ》と連ねっていく歌詞は泉谷しげるの「春夏秋冬」のオマージュのようでもある。サウンドは「Twist and Shout」や「Day Tripper」などThe Beatlesへのリスペクトも随所に見られる上、佐藤のコーラスワークがいいことも強調しておきたいところだ。
ジョン・レノン愛を感じるカバー曲
M6「RIP IT UP〜Ready Teddy」はRichard Pennimanの楽曲で、Elvis Presleyのカバーが有名だが、John Lennonがソロ時代にこの2曲をメドレーでカバーしている。オリジナルはブラス入り、Presley版はピアノ入りだが、John Lennon版はテンポがやや緩やかなものの歯切れは良く、朴訥としながらも全体的にグイグイとドライブしているYO-KINGのヴォーカルは、やはりこちらをお手本としていると思われる。若干こもった感じで割れ気味のサウンドもいい具合だ。
M7「Hippy Hippy Shake」のリードヴォーカルは大木(カバー曲3曲もしっかりと3人それぞれがメインヴォーカルを務めているのだ!)。こちらは、原曲はアメリカのChan Romeroだが、リバプール出身のThe Swinging Blue Jeansのバージョンが有名で、当然The Beatlesもカバーしている。オリジナルはオリジナルで十分にカッコ良いのだが、ややもったりしている感じを、O.P.KING版ではシャープなR&Rに仕上げているのは流石であろう。YO-KINGの煽りもいい具合でライヴ感もある。斯様に、The Beatles、特にJohn Lennonを敬愛するアーティストたちが集い、オリジナルにもカバーにも、ロックアーティストとしての面目躍如を見せつけたのがO.P.KINGなのであった。
TEXT:帆苅智之
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