SHOGUN芳野藤丸×THE TOKYOコダマア
ツシ対談「男たちのメロディー」は時
空を超えて響き続ける

今や伝説とも言えるSHOGUNの芳野藤丸氏と、近頃昔の歌謡曲をカバーしたアルバムをリリースし、その中でもSHOGUNの「男たちのメロディー」もカバーしているTHE TOKYOのコダマアツシ氏の、奇跡とも言える時空を超えた対談が実現した。40年という時間を超えて尚、人の心に刺さる楽曲とは?ここでしかよめない激熱の対談は必読。
コダマ:今日は藤丸さんにお会いできて、めちゃくちゃ光栄です。俺らTHE TOKYOというのは、全員20代のバンドで、藤丸さんと比べたらまだまだ駆け出しもいいとこなんですが。でも今回カバーさせてもらった「男たちのメロディー」という曲がめちゃくちゃ好きで、俺達が今持っているもので、この曲の、俺たちがいいと思っているものを表現できたらと思いまして。
芳野:聴かせてもらいました。すごく良かったですよ。20代の人たちに支持されるなんて嬉しいね。
コダマ:光栄です!聴いてもらえただけで嬉しいです! 明日メンバーにめちゃ自慢してやろう。
芳野:(笑)あの曲自体は40年前の、SHOGUNのデビュー曲に近い感じで、せっかくカバーしてもらったのに、こんな事言っていいのかどうかわからないんだけど、最初はあの歌が大嫌いで(笑)
――SHOGUNのメンバーのケーシー・ランキンさんが作った曲ですよね。
芳野:あのオリジナルは、どカントリーだったんですよ。ズンチャカズンチャカ♪みたいな。俺はカントリーがどうも苦手で、というか大嫌いで「こんなの歌いたくない」ってごねまくって(笑)。でも大人の事情と意向で、どうしても歌えって事になって。それで、じゃあしょうがないやって「走り、出したら〜」って、半分ふてくされて、投げやりに歌ってるのがあのテイクです(笑)。
コダマ:それが大ヒット(笑)。
芳野:そうしたら、その歌い方がいいとか言われて。
――大嫌いだった曲が、約50万枚のヒットになりました。
芳野:そうなんです、おかげさまで(笑)。売れたら好きになりました(笑)
――藤丸さんがやっていた音楽って、当時でいうAORでした。
芳野:だからそれをなんとか、都会風のアレンジでもっていくようにって作りました。だって当時はディスコミュージックが流行っていたので、そういうオシャレな感じに仕上げようと。でもあの曲は、間違っても、歌いこんでから歌う曲じゃないから。だから、もういいやって半分投げやりに歌ったら、それがいいと言われて。
コダマ:歌いこむようなメロディじゃなかったんですか?
芳野:うん、投げやりな感じの方が曲には合ってた。
コダマ:歌詞も男の歌って感じなので、そういう歌い方が合っていたのかもしれませんね。
芳野:そう。あれ、けっこう男くさい詞だからね(笑)。
コダマ:確かに思い切りくさく歌うんじゃなく、けっこう粋というか、伊達というか、ふわっと歌ったほうがかっこいいんじゃないかなって、俺もこの曲をレコーディングする時に思いました。
芳野:その通りだと思いますよ。歌いこんだら、逆につまらなくなると思う。
投げやりに歌ってくれればよかった
――コダマさんは歌入れには時間がかかったんですか?
コダマ:実はそうなんですよ。いつもはミックスブースで歌った仮歌を、そのまま採用してしまう感じなのに、どうしてもこの「男たちのメロディー」だけは、むちゃくちゃ時間がかかりました。
芳野:本当に?
コダマ:めっちゃかかりました。THE TOKYOはそれまでほとんどコピーやカバーをやった事が無くて。だから、今回、自分がいいと思っているものを、自分を通して表現するという事がいかに難しいかよくわかりました。俺は気持ちよくこの曲を歌えたけど、俺が感じているこの曲の好きな感じが出てるかなって、どうしても自問自答してしまって。もう何度も何度も録りました(笑)。苦い思い出です(笑)。
芳野:その辺を取っ払って、投げやりに歌ってくれればよかったのに。でもすごく良かったけどね。俺ね、自分の持ち歌で、歌詞覚えている曲って3曲しかないんですよ。今まで色々な曲やってきたけど、「男たちのメロディー」は、そのうちの一曲なんです(笑)
コダマ:えっ!そうなんですか!
芳野:詞を見ないでも歌える、数少ない曲(笑)。
コダマ:俺達がこの曲を初めて知ったのは、たぶん、俺らが中高くらいの頃にテレビ番組「ザ!鉄腕!DASH!!」でTOKIOが歌ってた時だったと思います。それで音楽を始めてから、この曲は『SHOGUN』ってバンドがやってたらしいという事を知って。そこからもうハマリしました。この曲は、さっき出ましたAORと言われるジャンルというか、そういう曲音楽なんですか?
芳野:なんだろう?
――ちょうど70年代後半から西海岸の音楽が流行り始めて、それがいつしかAORと呼ばれていましたよね?
芳野:そうです。ちょうど、TOTOとか、あの辺が出てきた頃でした。TOTOもスタジオミュージシャンの集まりだけど、でも特に意識したわけでもなんでもなくて、俺達はたまたま仲のいいスタジオミュージシャン同士でバンドを組んで音を出して遊んでたら、音楽出版社の人が「デビューしないか」って言ってくれて。
コダマ:タイミングがばっちりだったんですね。
芳野:でもこのカントリーっぽい歌だけは嫌だって言ってたんだけどね(笑)。
コダマ:(笑)THE TOKYOで俺はボーカルで、曲はほとんど書いてなくて、基本はギターの2人が作詞作曲をしています。
芳野:2ギター、ベース、ドラム?
コダマ:そうです。5人編成でローリングストーンズみたいな感じの音楽が好きで。
芳野:ギターバンドいいよね。ギーボードが入っていないっていうのは、俺すごく好きなんだよね。
コダマ:本当ですか?
芳野:うん、一番好きだな。変にキーボードが入ると、音がまろやかになりすぎちゃって。
コダマ:メンバーが曲作って来た時に、藤丸さんと同じように「これ、俺歌うの?」って最初は戸惑う事もあって。でもライヴで歌い込んでいくと、お客さんから「すごくアツシの気持ちが伝わったよ~」って言われるほどまで「自分」のものになってて。自分の感情だって、そんな万能なもんじゃねぇんだなって思うんです(笑)。「男たちのメロディー」も最初、感情タップリで歌っていたんですけど「やっぱりなんか俺の好きな「男たちのメロディー」じゃないな」って思って。それでさっきの歌い入れの時の話に戻りますが、力抜いて、粋にやるのに苦労したんです(笑)
松田優作がとにかくかっこよかった
――コダマさんの音楽体験のお話に少し戻ってもいいですか?SHOGUNとは、「男たちのメロディー」とはどうやって出会う事ができたんですか?
コダマ:俺らの時って、もうYouTubeが登場していたので、ロックはローリング・ストーンズ、ビートルズから入って、というのと同じように、俺たちは昭和の日本の曲を掘っていって。どの時代にできたとか関係なく、それこそ「男たちのメロディー」も全部同じとして聴くので、聴いていて純粋に楽しいものを集めて、よく聴いていました。うちのバンドメンバーは‪キャンディーズからスペクトラム知ったり、‪SHOGUNとかちょっと大人っぽい音楽をやっているアーティストも好きなんですよね。
――「男たちのメロディー」はドラマ「俺たちは天使だ!」(沖雅也、柴田恭兵、神田正輝他/1979年)の主題歌で、同じ年の10月にはドラマ「探偵物語」(松田優作他)のエンディングテーマが「Lonely Man」で、オープニングテーマが「Bad City」になって、ドラマも音楽も大ヒットしました。SHOGUNのこの3曲は、ドラマと共に当時に人には擦り込まれていますよね。
コダマ:「男たちのメロディー」が流れる渋谷を、俺は歩いてみたかったです。
――「Lonely Man」が流れる「探偵物語」のエンディングは、渋谷パルコの壁のところでロケをしていましたよね。
芳野:当時パルコの壁面のところは、一番かっこいい場所でした。松田優作がとにかくかっこよかった。
コダマ:俺らは優作さんの事は映像の中でしか知らなくて、でも、今回のカバーアルバム『男』の中に「ヨコハマホンキートンクブルース」も入っているんですけど、あの曲を最初に知ったのは、優作さんが歌っている映像でした。
芳野:あの曲って、元々エディー藩が書いた曲で、レコーディングは、俺ギター弾いてるから(笑)。
コダマ:えーーそうだったんすか!
芳野:だから(松田)優作が、「夜のヒットスタジオ」に出て「ヨコハマホンキートンクブルース」を歌った時、俺、後ろでギター弾てたもん。
コダマ:そーだったんですか!たぶん、その映像で初めてこの曲を知ったのだと思います。すごいです。めちゃめちゃつながりました!。藤丸さんは歌も歌っているし、ギタリストに徹する時もあるし、歌うのと、ギターを弾くのは、やっぱりギターを弾くほうが好きですか?
芳野:それはよく聞かれるんだけど、元々歌はあんまり歌いたくないほうでした。本当のことをいうと、フロントマンが誰かいて、その斜め45度くらいの立ち位置っていうのが好きなの。だから自分がセンターなんてとんでもないって話で(笑)。
コダマ:逆に俺は楽器がろくに弾けないので、センターでしか歌った事がなくて。
芳野:それはすごいよな~。
コダマ:それを横で見ている、たとえばうちの弟がギターなんですけど、どういう気持ちなのかってたぶんわからないですね。斜め45度後ろにいる楽しさっていうのは、どういう感覚なんですか?
芳野:俺が全部引っ張らなくちゃっていう、プレッシャーがさほどないじゃないですか。その気楽さもあり、その分演奏を楽しめるし、それでちょこっとコーラスでハモったり、そのくらいなら歌うのも面白いかな。そんなスタンスだったんですよね、ずっと。
コダマ:なるほど、バンドを一番楽しめるポジションなんですね。そういう目で俺もメンバー見ちゃおうかな、楽しみやがってって(笑)。俺は歌しか歌えないから、逆にギターの練習して曲を覚えて、弾くほうがよっぽど大変だなぁって思います。
芳野:でも歌詞を覚えたりするのと同じじゃない?たぶん、やっている事は一緒だと思う。
やっぱり餅は餅屋なのかという思いが強く
――カバーアルバム『男』では「男たちのメロディー」も含めて、昭和の名曲を歌っていますが、作詞家の方が書く詞は、歌っていて現代の歌詞とは違う感覚はありましたか?
コダマ:全然違いますね。今の詞って、ありのままをさらけ出すのがカッコいいじゃんっていう空気を、ずっと感じてて、でも俺はあんまり好きじゃなかった。今回歌った曲って、俺が憧れる色男の空気がどの歌詞にもあって、それは、すごく自分をプロデュースしているような感じがして。それが職業作家の方が書いているという事で、歌手の方をこういう男に見せたいという意思が感じられて、そのフィクションの部分が、すごくかっこいいですよね。
――シンガー・ソングライターが登場してから、歌詞が変わりましたよね。
芳野:当時はちゃんと職業作家、作曲家がいて、そのアーティストに合った詞を書いて、演出してくれてたね。
コダマ:俺達が音楽を聴くようになった時はもうシンガ・ソングライター全盛で、そんな中で昭和の曲を曲聴くと、やっぱりいいんですよね。で、なんでいいんだろうと思ったら、やっぱり餅は餅屋なのかという思いが強くなりました。だからTHE TOKYOも、まだまだではありますけど、そういう感じにはしていて。詞と曲はギターの二人が分担して、俺は今は詞も書いてないし、ドラムとベースには死ぬほど練習して、誰よりもかっこいいリズムを作れよ、俺はちゃんとその神輿に乗ってやるからと、いつも言っています。
――さきほどコダマさんのルーツミュージックはお聞きしたのですが、藤丸さんは……。
芳野:俺もビートルズ、ストーンズです。そしてポール・マッカートニーが大好きでした。だからギターじゃなくて、とにかくベースがやりたかった(笑)。
――もしベースをやっていたら、どうなったんでしょうね?
芳野:全然人生変わったと思う。
コダマ:うちのギターも一人はストーンズ大好き、もう一人はビートルズ、しかもポールが大好きです。
そういう人達が、いっぱしの作曲家です、アレンジャーですとか言っているけど、どこが?みたいな
――藤丸さんは去年45周年でした。レコードからCD、デジタル配信と、うメディア変化も全て経験して、そんな中でずっと音楽を鳴らし続けていて、今の音楽シーンを見て思う事はありますか?
芳野: 今は音楽をほとんどコンピュータで作るようなっていますが、それにしても、切り貼りの音楽を作っている連中がすごく多い。要するに、楽器が弾けないミュージシャンが、演奏もできないのに音楽を語るなよって思う。でもできあがった作品を聴くと、どうやって作ったの?って言いたくなるくらいよくできている(笑)。それはそれで、いいところは認めるし、かっこいいなって思う。でも、俺は好きか嫌いかで言ったらそういう作り方で作った音楽は好きじゃないですね。
――そうですね、機材の進化もすごいですよね。
芳野:歌まで歌えちゃうもんね、今は。
コダマ:ボーカロイドですね。
芳野:ピッチだって悪いところはすぐ修正できるし、そんなので音楽やってるって自慢してるような人も、多い。
コダマ:俺等もうからきしだめなんですよ、そういうデジタル系(笑)。全員完全にアナログ人間です。もしパソコンを使えていたら、できる音楽も変わったと思いますけど、それも20年くらい生きてきた中で、何かやるべきことがある、それをとことんやるしかないという気持ちで音楽をやっているので、そういう人たちを見ると、すごいなぁって思いますけどね。それが好きか嫌いかでいうと、もうお任せしますって感じです。
芳野:そういう人達が、いっぱしの作曲家です、アレンジャーですとか言っているけど、どこが?みたいな。レコーディングの時、譜面をお願いしますって言ったら、「え、譜面書くんですか?」って(笑)。じゃあ俺は何を弾けばいいの?譜面なしでどうやってレコーディングやるの?って思った。自分でやる分には譜面がなくても頭の中にあるからいいと思うけど、だったら全部自分でやればいいのにって思っちゃう。
コダマ:(笑)。たぶんそういう人達もわかっていると思うんですよ、音が味気ないって。全部自分でやって、人の手を通してない音が鳴っているからもの足りなくて、藤丸さんのようなすごいいギターを弾く人とか、いい演奏する人に、作品に命を吹きこんで欲しいと思っているんだと思います。
――コダマさんも藤丸さんのギターで歌ってみたいと思いますか?
コダマ:もちろんです(笑)
芳野:呼んでくれたらいつでも行くよ。
コダマ:まじですか?(笑)
芳野:駆け付けるよ(笑)。
コダマ:最後に藤丸さんにお聞きしていいですか?どうやって生きてきたら、こういう曲を作る事ができるのでしょうか?
芳野:俺一人っ子で、親の言う事を聞かないでわがまま放題、好き勝手にやってきて、こういう事を言えるがらじゃないけど、自分がやりたいことをやってる時が自分が一番楽しいし、自分にプラスになると思うから、人にやれって言われるよりは、自分のやりたいことでやっていくのが一番いいと思う。だから音楽の種類にしてもなんでも、ロックンロールでも演歌でも、俺はいいものは本当にいいと思うから、柔軟さはずっと持って生きてきた。なんか偉そうなこと言っちゃいましたけど(笑)。
コダマ:とんでもない!感動しました!俺、いつも思っているのが、好きなことをとことんやりたいからバンドやっていて、たまたま好きな事がバンドだったし、「男たちのメロディー」のような歌だったし。それをとことんやりたいと思っていて。それを続けていけば、死ぬ時にいい人生だったって思えると思っています。でもそれを藤丸さんみたいな人が言ってくれると、めちゃくちゃ嬉しいです。背中を押された気分になります。生きてきた時代は違いますが、今日お話を聞いて、やっぱりいい男っていうのはこうあるべきだなと思いました。なんかもう…大好きですね(笑)。
芳野:俺もたぶん、コダマ君と同じ歳の時に、今の俺くらいの人から何か言われると、説教臭いなって思ってた。そういうの大嫌いだったし、反発してた方だけど、いざ自分がこの歳になると、逆にそのころの自分を思い出して、あまり語らない方がいいなって思っちゃうわけ。だってその人はその人のやりたいこと、好みもあるだろうし、それをこっちがなんだかんだ言ったら押し付けになっちゃうし、こうやれって言ったら単なる説教になって、嫌われるだけだから。
コダマ:そんなことないです。俺は本当にそう思った事はないです。
芳野:ギターの事で教えてくれって言われたら、いくらでも教えるけど、生き方とか、進むべき道みたいな事を聞かれたら、自分で考えろよって言うしかない(笑)。
コダマ:自分に自信がないと、人には聞けないと思うんですよ。だから俺は僭越ながら、一端で筋通して生きてきたという自信があるから、こういう話を聞きます。どういう風に生きてきたんですかって。で、それに対しての答えが説教臭いとは全く思わない。そういうことを教えてもらえて嬉しいです。俺たちの音楽を若い人達が聴いて、THE TOKYOのルーツミュージックを遡っていくと、藤丸さんの音楽にたどりつく、そういう形で、俺達も木の枝の節目のひとつになって、また新しい枝を伸ばしていけたらなって。今回『男』というアルバムで、素晴らしい音楽を残してくれた先人たちへの感謝の形を残す事ができて、それが筋を通す事かなと思っています。俺はこれからずっと、今の藤丸さんの年齢を超えても、歌を歌っていこうと思ってます。
取材・文=田中久勝  撮影=三輪斉史

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着