ホリエアツシのロックン談義 第5回
:ウエノコウジ(と、飛び入り参加の
日向秀和)

ちょっと御無沙汰でしたが、第5回を迎えます『ホリエアツシのロックン談義』!!

今回のお相手はウエノコウジさん。武藤昭平withウエノコウジの新作『JUST ANOTHER DAY』のリリースを記念して、僕たっての希望で居酒屋対談させていただきました。
集合が夜遅めの時間だったので、その前にひなっちと晩御飯を食べていたんですが、ノリでひなっちも飛び入りすることになり、レアな三者鼎談となりました。
思い出話や与太話から、先輩ロックアーティストしてのアドバイスもしっかりと頂き、胸が熱くなるロックン談義。
この後に予定されていた武藤ウエノのツアーは、武藤さんの病気療養のためキャンセルとなりましたが、武藤さんの一刻も早い快復と、また元気な姿でご一緒できることを願っております。 ――ホリエアツシ

■ミッシェルはやべえって聞いてたけど、本当にやばかった(日向)
――本日は、ひなっち(日向秀和)さんも飛び入りで参加いただくことになりました。
ウエノ:ひなっちと並ぶと照れるね。
日向:(笑)。東北とかでしか並んだことないから、東京だとあれですね。
――今でこそ共演や交流も多いですけど、世代的には結構離れているじゃないですか。最初はどんな出会いだったんですか。
ホリエ:僕がスカパラの谷中(敦)さんに連れて行ってもらったバーで、そこのバーテンとめちゃめちゃ仲良くなって、そのつながりで恵比連(恵比寿連合:デザイナーやミュージシャン、飲食オーナーらが集う大人の遊び仲間グループ)のDJイベントに呼んでもらったんですよ。
日向:めちゃめちゃ前の話だよね?
ホリエ:11年前とかかな。DJとして呼ばれて行ったらウエノさんもDJで出演していて、確かその時が初対面だと思います。めちゃくちゃ緊張しながら挨拶したら、「今度ミスター(『水曜どうでしょう』の鈴井貴之氏)と飲むから来なよ」って誘ってもらって。
――へえ!
ホリエ:その飲み会に武藤さんも来てて。『水曜どうでしょう』好きの集いみたいな。そこに僕は細美くんを誘ったの。細美くんも『水曜どうでしょう』好きだったから。ELLEGARDENが活動休止した時期で、そのときにウエノさんが「細美、俺にベース弾かせろや」みたいな事を言ってて、のちにthe HIATUSになるとは。
日向:やば! そうなんだ!
ウエノ:全部をつなげてるはずの俺が、あんまり覚えてない(笑)。でもミスターを紹介したのは覚えてるな。それが初めてかぁ。
ホリエ:そうなんです。対バンじゃないんです、最初は。
日向:俺は初めてウエノさんに会ったの、ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)の福岡のライブの打ち上げ。ビルの上、最上階で打ち上げやってて、そこに俺と(大山)純が呼ばれたの。そこで初めて挨拶した。
ホリエ:ART-SCHOOL時代だね。
日向:あーれは怖かったぁ……!
ウエノ:俺らはその頃一番イキってる時期だから(苦笑)。
日向:しかもその店に行くまでも、ズッチーズッチーって鳴ってるようなクラブを通らなきゃいけなくて、若いからその時点でもう怖いじゃん。で、行ったらミッシェルのメンバー全員革ジャン着てるしさぁ。超怖かったんだけど、ウエノさん優しかったの。「何てバンドやってんの? ART-SCHOOL? じゃあ今度聴いてみるよ」と言ってくれて。そういう結構ハートフルな話してたら、バコーン!!って何かが降ってきて、机の上に。見たらアベ(フトシ)さんだったの。
ウエノ:はっはっはっは!!
ホリエ:そのときのアベさんの名言あったよね?
日向:「アベさん、大丈夫ですか!」って聞いたら、「今日は良いーの!」ってどっかに消えてっちゃった(一同笑)。
ホリエ:だから、(日向は)俺より先に出会ってるんですよね。その頃からひなっちと仲良かったんで、その話も聞いてました。福岡でミッシェルの打ち上げがあって、なぜか混ざっちゃったって。
日向:「あの人たち本当にやべえぞ」って話したんですよ。「やべえって聞いてたけど、本当にやべえから」って。
ウエノ:(爆笑)。当時は飲んでたよねぇ。
日向:今でも飲んでるじゃないですか(笑)。
ウエノ:でもね、多分ひなっちもホリエも信じないと思うけど、最近飲むの飽きてきたんだよ。
日向:マジで言ってるんですか?
ウエノ:こういう風に一杯飲んじゃうと、楽しくなっちゃうから飲むんだけど。
ホリエ:ああ、そういうことか。スイッチさえ入れなければ……
ウエノ:入れなければ、いくらでも(飲まなくて)大丈夫だっていうことに最近気付いて。そんなに、昔ほどは全然飲んでないよ。そうしたら、財布の中身が減っていかないんだよ!
ホリエ:でしょうね(笑)。
日向:飲むと減りますよねぇ。一人で飲む方が案外減っちゃったりとかするし。地方とか行くとホテルに引きこもるんですけど、そのぶん買っちゃうから、結局は飲みに行った方がいいなっていうくらい飲んじゃったりします。
ウエノ:ホリエは一人で飲みに行ったりもする?
ホリエ:僕は近所に行きつけの店があって、そこには行きます。大将とも仲が良くて、常連のお客さんともしゃべれるっていう、そういう感じだったら行きます。
ウエノ:俺は基本的に行かないんだよね、唯一来れるのがここだから。
ホリエ:僕は今日初めて来ましたけど、噂には聞いてました。相当ディープな店って。
ウエノ:役者さんもよく飲んでるよね。下北沢はそういう街だから。
日向:でも深夜の役者論だけはちょっと……。
ウエノ:はっはっは!!
日向:あれは伝説ですよ。
――なんですか、それ?
ホリエ:3年くらい前、石巻のBLUE RESISTANCEに武藤ウエノ、僕とひなっち、(伊澤)一葉くんという3組で出て、翌日が『GAMAROCK』だったんですよ、塩釜の。みんなで一緒に移動して、塩釜着いてから和民かなんかで飲んでたとき――
ウエノ:武藤さんの役者論が始まって(笑)。
ホリエ:役者論をずっと、3周ぐらい聞かされて。
日向:ひどかったなぁ(笑)。有森也実さんと役でチューしたっていうのを、ひたすら語るんですよ。2時間くらい。
ウエノ:それだけ嬉しかったんじゃない?
日向:それプラス有森さんがいかに素晴らしい人かを1時間くらい。だから3時間くらい。
ウエノ:俺は5人の会話をグルーヴさせよう、グルーヴさせようと思ってるんだけど、ずっとホリエだけに言うんだよ。
――なんでロックオンされたんですかね?
ウエノ:それがわからないんだよなぁ。
日向:マジでなんでだったんですかね?
ウエノ:もう途中から、ホリエはこれ生贄だなって。
ホリエ:最終的には武藤さんが「すいません。武藤昭平、限界です」って言って帰ったの(一同爆笑)。
日向:さんざん役者論を語っておいて。
ホリエ:俺の方が限界だったのに(笑)。
ウエノ:いやぁ、楽しかったけどなぁ。
日向:最高だった。あんな日あるの?っていうくらい楽しかった。
ウエノ:ホリエ以外は全員楽しかったんじゃない?
ホリエ:いやいや、俺も楽しかったですよ?(笑)
ホリエアツシ / ウエノコウジ / 日向秀和 撮影=上山陽介
■『ギヤ・ブルーズ』は決定打みたいなものを作ろうとしてた(ウエノ)
――元々の話でいえば、ホリエさんとひなっちさんは当然、ウエノさんを知ったのはミッシェル時代ですよね?
ホリエ:もちろん、大ファンでしたからね。高校時代に長崎でラジオで聴いてたんですよ。で、家のめっちゃ近くにStudio DO!っていうライブハウスがあって――
ウエノ:ああ、はいはい!
ホリエ:そこに来てたんですよ、ミッシェルが。1stと2ndの間ぐらいですよね?
ウエノ:うん。長崎はやるところが無くてね。スタンディングっていう文化もまだ無かった。
ホリエ:まだDRUM Be7も無くて、その頃は。平和会館とか、テレビ局スタジオライブハウスはあったんですけど、まずStudio DO!にメジャーのバンドが来るっていうのはなかなか無かったんですよ。
――普段は地元のバンドが出てるようなハコ。
ホリエ:そうです。僕らも出たことあるし。そこにミッシェルが出るっていう。
日向:すっごい好きだったからね、ミッシェル。
ホリエ:好きだったよねぇ。で、東京に出てきてからよりハマって、でももうチケット取れなくなってたからライブは行けなくて。やっと『ギヤ・ブルーズ』くらいのときに観に行けました。……ウエノさんの胃に穴が空いたという頃の(笑)。
日向:なんで空いたんですか?
ウエノ:『ギヤ・ブルーズ』って4枚目か。4枚目くらいになると、なんつうんだろうな。決定打みたいなものを作ろうとしてたんだろうね、多分。
ホリエ:あぁー。でも決定打でしたよね?
ウエノ:今聴いてもものすごい重いでしょ。
ホリエ:重いっす。
――あそこから一気に質感が変わった印象はあります。
ホリエ:暗い、ちょっと暗いんですよ。
日向:ストイックというか。
ウエノ:ストイックみたいな方向に行っちゃったのかなぁ。何回もやった記憶もあるし。それが『ギヤ・ブルーズ』のイメージなんだよね、俺のね。
ホリエ:結構時間かけて作ったってことですよね?
ウエノ:うん。当時は全部テープで録ってたんだけど、テープってやっぱり、ProToolsと違って良いところもあれば悪いところもあるし、クリック(曲のテンポをガイドするメトロノーム)も俺らは使ってなかったから。やっぱり、気持ちが入れば早くなるっていうのが、人間だから普通だろうって思ってたんだけどね。
日向:でもテープはすげえなぁ。
ホリエ:うん。で、(ミッシェルは)最後までずっとファンで、最後の幕張の日ももちろん行きましたし。
日向:一方その頃、Nothing’ sのドラムのオニィ(大喜多崇規)が、最前でダイバーを受け止めるバイトやってたんですけど、それで鎖骨折ったんですよ。
ウエノ:え、それは俺らじゃないでしょ?
日向:いや、ミッシェルで。ミッシェルの後期の頃。
ウエノ:マジで! オニィ細いのにそういうことするからだよ(笑)。
ホリエ:そうなんですよ(笑)。
――そんないちファンやスタッフだった時代から、さっきの出会いの話があって。
ホリエ:ですね。
――今ではこうして交流があるわけですけど、お互いの活動や音楽をどんなふうに見てます?
日向:いやもう、神様ですからね。こう一緒に並んでるっていうのが信じられないくらいの。
ウエノ:何回も会ってるじゃん(笑)。
日向:そうだけど!
ホリエ:最近の活動でいうと、吉川(晃司)さんとはどういう経緯だったんですか?
ウエノ:一番最初は『中津川(THE SOLAR BUDOKAN)』。中津川に吉川さんを呼びたいっていう話になって、ちょっとフェスっぽいバンドにしたいっていう。
日向:ロックアプローチで、みたいな?
ウエノ:そうそう。それで俺とEmma(菊地英昭/THE YELLOW MONKEY、brainchild’ s)さん、あとTRICERATOPSの吉田(佳史)くんとエマーソン(北村/シアターブルック)さんでやったんだよね。それからなんだけど。
ホリエ:俺、吉川さんすごい好きで。「モニカ」とか「ユーガッタチャンス」の頃からファンで、Complexなんてめちゃめちゃ好きで、全曲歌えるくらいですよ。
日向:僕も好きです!
ホリエ:でも吉川さんには挨拶したことない。怖くてなかなか近寄れないんです。。
ウエノ:いや、めちゃくちゃ良い人だよ。本当に偉ぶらない人。
ホリエ:……でも電話ボックス引き抜いたことあるんですよね?
ウエノ:それは都市伝説(笑)。
日向:そんなこと言ったら、いっぱいいるじゃん。都市伝説なんて(笑)。
ウエノ:池畑(潤二)さんとか、ねぇ?
日向:そうそう。車に轢かれたら池畑さんの形にバンパーが凹んで止まったとか。
ウエノ:俺がこないだ聞いたのは、百々(和宏/MO'SOME TONEBENDER)をツーシームで投げたら、百々がちょっと揺れたっつうんだから。
日向:最高でしょ(笑)。
ホリエ:ヤバい(笑)。
ウエノ:……あれ、何の話だっけ!
ホリエアツシ / ウエノコウジ / 日向秀和 撮影=上山陽介
■バンドやってる人って不良なイメージがあったけど、今は違う(ホリエ)
――ウエノさんから見ると、テナーやNCISの音楽ってどんな印象なんですか?
ホリエ:あぁ、それは聞いてみたい。
ウエノ:あのね、俺はひなっちと8つ、ホリエと10違うんだけど、それだけ違うとルーツが違うんだよね。そこはすごく感じる。良い意味で色んなところから取り入れることができてるなって、いつも思うんだよね。
俺はパンクが好きでさ、そこから遡ってロックンロールだ、ロカビリーだとか、そういうとこに行くんだけど、もうルーツがゴッツリ固まっちゃってるから。そういう意味では一つ下の世代のみなさんは色んなことを吸収できてるんだなぁと、羨ましいなぁと思う。
ホリエ:最初の最初、(音楽の)キッカケみたいなのって誰なんですか。
ウエノ:本っ当の一番最初はキャロルだけどね。近所に悪いお兄さんがいて、その人がキャロルや甲斐バンドRCサクセションとか教えてくれて。
日向:じゃあ、そこで色んな悪さを知ってしまった。
ウエノ:まぁ、そういうことになるよねえ(笑)。
ホリエ:広島だから永ちゃん、みたいなこともあったんですか?
ウエノ:そのお兄さんはもしかしたらそうだったかもわかんないけど、単純に音楽ありきで、子供心に革ジャンでリーゼントは俺の中で憧れだったね。
ホリエ:でも、僕らぐらいまでですよね。不良がバンドやるっていうのは。僕は全然不良じゃなかったですけど、バンドやってる人ってなんか不良なイメージがあった。今は違いますもん。
日向:不良がバンドやってないもんね。当時、町田なんかもう不良しかいなかったよ(笑)。
ホリエ:でもなんか不思議ですよね。不良が、言ったらクリエイティヴなことをやるわけじゃないですか。
ウエノ:好きこそものの何とかでさ、音楽の中に入っていくと悪い奴らも「もっともっと」ってなるんだよね。
ホリエ:そういう意味では、ウエノさんは今に至っても一貫してるものがありますよね。
ウエノ:ルーツはね。今度のレコード(『JUST ANOTHER DAY』)もそうなんだけど、もう惜しげもない感じがいいなと思って。今までは、ブルースを聴くんなら本物の黒人の方がやってるものを聴くのがいいなと思ってたのが、ちょっと前にレオン・ラッセルが亡くなって、そのレコードを久しぶりに引っ張り出したら、すごく良かったんだよね。白人の方がブルースに憧れてやってる感じというか。
ホリエ:ああ!
ウエノ:ブルース愛がもう、ハンパないわけよ。あとはグラム・パーソンズってカントリーの人もそうで、「あ、白人のブルース全然いいじゃん」ってなっちゃった。昔のさ、ストーンズのレコードにもカントリーの時期があったりして、そういう曲って昔は退屈だから飛ばしてたんだけど、今聴くとむしろそっちの方がいい、みたいな。
日向:それはすごくわかりますね。
――お2人の世代でもそれは感じますか。
日向:ありますね。カントリーが沁みるみたいなことって結構あるかも。
ホリエ:あとは好きなバンドでも、アッパーな曲しか聴いてなかったのが後々になってバラードが好きになってくるとか。
ウエノ:まぁ、年なのかもわかんないけど。ザ・ジャムとか聴いてると、シングルのB面でブルースやR&Bの曲とかを自分たちの解釈で速くして、荒くしてやってるっていうのが、すごくいいんだよね。だから、そういう愛は惜しげもなく出した方がいいなと思って。
日向:めっちゃかっこいいですよ。
ホリエ:武藤さんの歌詞もすごく、シンプルに抜けてきますよね。
ウエノ:うん。「こういう感じがいいんじゃない?」ってコンセプトみたいなものは俺が提案するんだけど、武藤さんっていうフィルタを通すと、もはや武藤昭平節だし、そこらへんが揺るぎないのはなんとなく自信はあるんだよね。
ホリエ:歌い方を途中で変える曲、あるじゃないですか、急にプレスリーみたいになる。あれって全部武藤さんが歌ってるんですか?
ウエノ:歌ってる。
日向:役者!(笑)
ウエノ:カラオケボックスで2人で曲作ってるんだわ。そのとき、プレスリーの「ミステリー・トレイン」っていう有名な曲があるんだけど、その歌い回しがかっこいいってキャッキャ言いながら作ってて。そしたらあの男、レコーディングのときカッコつけて普通に歌いやがってね(一同笑)。俺、途中で止めたよね。「プレスリーどこいったんだよ」って。それで歌い直させたんだよね。
日向:抜群だよね。この二人の関係性っていうか、シルエットが。
ウエノ:あとは酒の匂いでしょ(笑)。
――ライブのお客さんも酔っ払いたい人と酔っ払ってる人ですもんね。
ホリエ:武藤ウエノのイベントには何回か誘ってもらってるんですけど、ほんっとに客が酔っ払いなんですよ。ひなっちも一緒に、夏に海の家でやったやつがあって。
日向:あれは一番ひどい(笑)。
ホリエ:最高で(笑)。カオスでしたもんね、LOW-ATUSとか……
日向:LOW-ATUSがひどい!
ウエノ:あれはひどかったねぇ。
ホリエ:子供がステージ走り回るし。
日向:なんかもう沖縄みたいな雰囲気になっちゃって。
ホリエ:そうそうそう(笑)。
ウエノ:年に一回、バカなことやって楽しむみたいな感じなんだ、あれは。またいつか復活させるから。
ホリエ:そのときは気合入れていきます。「飲むぞ」って(笑)。
ホリエアツシ / ウエノコウジ / 日向秀和 撮影=上山陽介
■俺、谷中さんと週8で飲んでた(ウエノ)
――武藤ウエノの音楽もそうですけど、年齢を重ねるごとに気持ちよくなってきたり、やりたくなってきたことも含め、ロックミュージシャンとして年を重ねていくって、どんな感覚なんですか?
ウエノ:いや、しんどいですよ(一同笑)。……もう50なんで、最近、俺は何が一番嫌かなって思ったときに、長いツアーをできなくなることが一番嫌だなと思って。そのためには、さすがに筋トレとかはしないけど、走ったりはしますよ。それは俺がマッチョになりたいとか、すごい健康になりたいとかじゃなくて、長いツアーをやれる感じがずっと続けばいいなと。ただただそれだけだけどね。
日向:かっこいい。
――若い頃ってそんなことしなかったですよね?
ウエノ:まさか!(笑)
ホリエ:本当そうですよね。若い頃はロックしてるか飲んでるか、で良かったんですよね。
ウエノ:それね、カッコよく言ってる風だけど、事実そうだったから(笑)。
ホリエ:でも今はもう――
日向:ロックのために走る!
ウエノ:(笑)。スカパラの谷中さんも(お酒を)やめたけどさ、当時は俺、谷中さんと週8で飲んでたんだよ?
ホリエ:ええー!
ウエノ:すごい深い時間まで飲んでて、一回別れたんだけど、お互い「もうちょっといけるんじゃないか」と思って、また同じ店で会うみたいな。谷中さん伝説を話そうと思ったら、3時間でもいけるんだけどね(笑)。
――スカパラに原稿確認しなきゃいけなくなっちゃいますから(笑)。
ウエノ:そうだよね(笑)。で、これは書かなくていいんだけど――
(結局、谷中伝説をひとしきり話す)
ウエノ:そういう中で生きてきたからね。そりゃ強くなるよね、俺もね。
ホリエ:でも、俺らから見た先輩の中で、ウエノさんって一番常識人みたいな。一番優しいというか。
日向:そう! 先輩へのアテンダーみたいな。仲介をして頂いてる先輩だよね。
――ウエノさんより上の世代って、破天荒の度合いがすごいことになってる気がするんですよ。
ホリエ:本当にヤバい人たちを見てきたんだろうなっていう感じがありますよね。
ウエノ:増子(直純/怒髪天)さんとかも凄かったよ。
ホリエ:増子さんに関しては、俺らはスペシャでMCをやってるところから入ってるんで、ウエノさんとか(山中)さわおさんとかから伝説として聞く感じなんですよ。増子さんの凄さは。
ウエノ:増子さんの言うことは絶対だから。やっぱり今でも増子さんは怖いもん。……前、ロフトで飲んでたら増子さんがヘロヘロになっちゃって、スカイブルーのゲロ吐いたんだよね(一同笑)。「増子さん、何飲んだんですか!」「わかんねえ!」って。
日向:スカイブルーはヤバい!
ウエノ:あ、これは全然書いて大丈夫(笑)。
――いいんですか(笑)。
ウエノ:うん。まぁ、そういう人たちに鍛えられてきたわけ。で、こないだのACIDMANのフェス(SAI)終わった後、みんなで飲んだでしょ? 俺は建志(Dragon Ash)とかTOSHI-LOWとかに絡まれるんだけど、ホリエって絡まれない枠なんだよなぁ。
ホリエ:そうなんですよね、でもKjからはめっちゃパンチされるかな。肩に。
日向:あいつ! じゃあ、俺が守る(笑)。
ホリエ:(笑)。そういえば、そのSAIの打ち上げのときにもウエノさんとしゃべってて、僕が寝てるとき首とかを痛めるのは枕が悪いのか?って相談してたら、ウエノさんが「抱き枕、いいよ」って勧めてくれて、抱き枕買ったんですよ(笑)。
ウエノ:はっはっは!
日向:いや、抱き枕って、ミッシェル・ガン・エレファントだぞ?(笑)
ホリエアツシ / ウエノコウジ / 日向秀和 撮影=上山陽介
■俺たちも今が一番いいって思いたいし、そうなれてたらいいな(ホリエ)
――ウエノさんは、吉川さん、加山雄三さんとか、上の世代とも一緒に活動されてて、世代間のパイプ、ハブのような役割になってるのかなって。そこがホリエさんと通ずる部分でもあるのかなって思ったんですけど。
ホリエ:僕は勝手に、ウエノさんはすごく安心感があるっていうか。
ウエノ:まあ、俺は飲んでも暴れないしね(笑)。50になったらもう少しデカい顔できんのかなって思ってたんだけど、俺の上の人たちが一切やめないもんだから、もう、一生中間管理職(笑)。でも(ホリエ・日向も)40っていったらもうベテラン枠だよね。
ホリエ:そうですね。でもそれはすごくいい具合に感じられてるし、気を遣わなくてよくなりましたね。ミュージシャンとしては上には上がいますけど、でも例えばこういうメディアの人たちとかって、バリバリ働くのは30代前後が多いじゃないですか。そういう人たちよりも僕らが上になってきたのは、めちゃめちゃ楽になりました。
ウエノ:あー、それはそうかもな。
ホリエ:続けてきたことがこうやって実るんだって。やっとわかったんですよ。30、35くらいまでは本当に、とにかく戦ってる意識がすごくて。
日向:(楽曲の)アレンジも攻めてたもんね。
ホリエ:そう。やっぱり秀でなきゃいけないって思うじゃないですか。
ウエノ:いい意味で力は抜けてくるよね。でも攻めてないわけじゃない。
ホリエ:自分のやりたいことを研ぎ澄ましていけばいいのかなって、安心できるというか、いろんなこと考えなくてもいいんだっていう。
ウエノ:もちろん、今からでもいろんな時期があるから。さっきの俺のブルースとかカントリーの話じゃないけど、いろいろな時期がある。次のレコードを作るときに何を考えてるかはわかんないわけ。だから、今やりたいこと、思ってることが出せればそれでよくて。……なんか上手く言えないんだけど、絶対、やりたいことって増えていくと思うんだ。
ホリエ:そうなんですよね! 尽きないんですよ、やっぱり。
ウエノ:有名な人が「才能が尽きるんじゃないか、それが一番怖い」と言うけど、そのときにやりたいことを出せれば、いつまでだってできるような気はするんだけどね。
ホリエ:ウエノさん見てると、ずっとかっこいいから。年取ったら年取ったなりのカッコよさがもっと出てくるんですよ。
日向:そうなんだよね。
ホリエ:そういう先輩を見てると、俺たちも今が一番いいって、自分でもそう思いたいし、そうなれてたらいいなって思う。
ウエノ:うん。武藤昭平withウエノコウジでリリースした『JUST ANOTHER DAY』は、30代じゃ絶対に作れなかったものだと思うんだ。カントリーとかって、ほっこりするための音楽じゃなくて鋭い部分もある音楽だと、今の俺は思うし、それを出せたことがすごく嬉しいんだよね。今はそういう、やりたいと思ったらできる環境にあって……今のところおじさんしか褒めてくれないけど(笑)、そういうレコードを出してくれるレコード会社があって。それはすごく嬉しいね。
だから、レコードを出せる環境と、自分がまだレコードを作りたいっていう欲と、今これがやりたいっていうコンセプトさえあれば、いくらだって俺はできると思う。今から全然脂乗っていくもん。
――ホリエさん、ひなっちさんは大体40歳前後の世代ですけど、歳を重ねたからこその新たなやりたいことって、生れてます?
ホリエ:生れてます。もちろん、ずっと続けてきたバンドがあっての自分なんですけど、でもなんというか、そこに執着しすぎずにいろいろな人たちと楽しく音楽をやっていくのはすごく大事だし。
日向:うん、本当そうだね。人と接するから音楽が生まれるっていうかね。
ホリエ:音楽を介してできることって、自分が思ってたよりもいっぱいあるし、出会う人もいっぱいいる。そこを若い頃はわかってなかったですね。
ウエノ:そうそう。今日こうやって3人で飲んだことがもう、一つの経験だから。これがもしかしたら何か音に表れるかもしれないよ。たとえば今日、家に帰って何か映画観たりして、「今日話したこととシンクロするじゃん、俺こういう曲作る!」とかもありえない話じゃない。
日向:タイミングと出会いと。
ウエノ:前のレコードを作らなかったら、今回のレコードはできないはずなんだし、やりたいことはどんどんやったらいい。もちろん、俺もそのつもりでいるし。
日向:本当、一緒に作っていきましょうよ! ……すごいアツい話してますけど(笑)。
ウエノ:ね。次はthe HIATUSのレコーディングがあるんだけど、そうやっていろんな人から影響を受けて音楽ができるって、幸せですよ。

取材・文=風間大洋 撮影=上山陽介

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