リアクション ザ ブッタ、ツアーファ
イナルの代官山UNITで伝えた不屈の意
志と新たな決意

リアクション ザ ブッタ “After drama”Release Tour 2018~愛を吠える犬って、イタい?~
2018.3.25 代官山UNIT
リアクション ザ ブッタが昨年12月6日にリリースしたミニアルバム『After drama』を携えた全国ツアー『リアクション ザ ブッタ “After drama”Release Tour 2018~愛を吠える犬って、イタい?~』のファイナルを3月25日に代官山UNITで開催した。ブッタの地元・埼玉県の西川口Heartsを皮切りに全国6会場をまわり、バンド最大規模のキャパシティに挑戦したこの日のツアーファイナルで、佐々木直人(Vo・Ba)は「もっと大きな景色を見たい」と何度も口にしていた。まだメンバーは若いが、結成が高校時代というブッタのキャリアはすでに10年。決して短くはない時間を積み重ねたいまだからこそ、改めて“聴き手の人生に寄り添うバンドでありたい”という強い決意を掲げた熱い一夜になった。
会場にSEが流れはじめ、佐々木、木田健太郎(Gt)、大野宏二朗(Dr)が楽器をスタンバイすると、ミニアルバム『After drama』でも1曲目に収録されていた「ドラマのあとで」からライブはスタートした。小さな別れの瞬間を綴ったミディアムテンポの楽曲にのせて、ハスキーな佐々木の歌声が優しくメロディをなぞり、会場をじんわりと温めてゆく。そして、「俺たちのライブへようこそ!東京のみなさん、楽しむ準備はできていますか?」という佐々木の問いかけに大きな歓声が湧き、カラフルな照明のもとで木田のタッピングが炸裂した「仮面」から、大野&佐々木の手数の多いリズム隊が混沌を描いた「仮面」や「Fantastic Chaos」へ。ベースボーカルの佐々木が複雑なメロディラインを歌いながら、激しくスラップを繰り出すプレイはなかなか真似できるものではない。昂揚感を煽るグルーヴにのせて孤独や痛みにこそ“生きてる実感を得る”と歌う「fall fall fall」や、自分のなかに宿る狂暴性を剥き出しにした「クローン」など、前半はスリーピースながら、確かな演奏力で様々な表情を見せるライブアンセムを次々に投下して、タフなステージを見せつけていった。
リアクション ザ ブッタ  撮影=白石達也
「僕らの歌は全世代にも響いてほしいけど、いちばんは同世代、働いている人たちに響いてほしいと思ってます」という佐々木の言葉と共に届けたのは、日々不条理と闘うワーキングマンに捧げたコミカルな曲調の「孤独は最高です!」だった。そこから続く珠玉のラブバラードが素晴らしかった。オレンジ色の温かな光に包まれて、木田がアコースティックギターに持ち替えた「はしゃぐ君を見ていた」、力強いバンドサウンドで聴かせた「君へ」。冒頭で見せたロックで激しい楽曲も彼らの魅力のひとつだが、ボーカル佐々木の泣いているように震える歌声を武器にした、切ない歌もの系の曲こそブッタの真価が発揮される。
中盤のMCは、「宏二朗、なんで顔面が傷だらけなの?」という佐々木の言葉にはじまり、ツアーを振り返ったエピソードを語り合うコーナー。広島の打ち上げのあと、べろんべろんに酔っぱらった大野が“俺は広島にロックンロールをやりに来たんじゃ!”と叫んで、タクシーから転げ落ちたという話や、松山のライブバーでゆずの曲をカバーする企画“ゆずナイト”に飛び入り参加した話から、ゆずの「またあえる日まで」の一節を歌ったりと、メンバー同士の和気藹々としたトークで会場を和ませてくれた。
リアクション ザ ブッタ  撮影=白石達也
そして、ライブは後半戦へ。「まだ全然知られてない俺たちだけど、見たい景色があります。そこまでみんなを連れていきます!」という佐々木の宣言のあとに届けたのは、「救世主」。“この歌が巡り巡って誰かの人生を救えたら”という願いを込めたポップな楽曲のあと、ライブのクライマックスに向けて、「何度も」や「ヤミクモ」といった、この先も諦めずに進んでいこうというような不屈の意志を込めた曲たちが披露されていった。そんなバンドの生き様に賛同するようにフロアから一斉にこぶしが突き上がると、「別に一体にならなくてもいい!僕らは一対一の気持ちでやるから」と佐々木。「ヤミクモ」の最後には、スタンドからマイクを奪い取るようにしてステージ際まで歩み出ると、会場いっぱいにウォーウォーという大きなシンガロングを巻き起こして、その場所を幸福感で包み込んでくれた。
最後の1曲を残して、佐々木は「小さい頃から音楽がなかったらって考えると怖いぐらい、音楽に救われてきました」と静かに語りかけた。「俺も同じように、音楽で聴いてくれる人を救いたいと思っています。ひとりでも多くの人の居場所になることが、何よりの僕の存在意義です。その気持ちを込めて歌います」。そう言って届けたラストソングは、“君と生きていたい”という真っすぐな想いを言葉にしたバラード曲「behind」だった。いつも以上にエモーショナルな佐々木のボーカル、その右隣で歌に宿る情熱を何倍にも増幅させるようなギターを奏でる木田、そしてドラムを叩きながらマイクを通さずに熱唱する大野。3人の演奏がひとつの想いのために重なり合うラストソングはあまりにも感動的だった。
リアクション ザ ブッタ  撮影=白石達也
アンコールでは、まずメンバー全員がステージ前面に並び、木田はアコースティックギター、大野はカホン、佐々木はベースを弾かずにハンドマイクで歌うという編成で、友人の結婚式のために書いたという新曲「寝癖」を届けた。そして、最後にもまた「いっぱい見たい景色があるんですよ。俺たちは、自分で言うのも何だけど……もっと大きくなるバンドです。それは確信してる。だから絶対に辞めないし、“今日来たんだ”って自慢できるバンドになるから」と、何度目かの決意を口にすると、“あなたの支えになりたい”とストレートに歌うアップテンポな新曲「人として」を届けて、ライブは幕を閉じた。
この日のライブでブッタが伝えたかったことはひとつだった。「この歌が誰かのためになれば」「そのためにもっと大きなバンドになりたい」。本来ブッタはそういう泥臭いことをストレートに言うタイプのバンドではないと思う。だが、おそらく充実した今回のツアーを経て思うことがあったのだろう。初の代官山UNITという大きな舞台で新たな決意を固めたリアクション ザ ブッタは、この場所からまた力強い一歩を踏み出していくはずだ。
取材・文=秦 理絵 撮影=白石達也
リアクション ザ ブッタ  撮影=白石達也

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