iri、自らの世界観を確立した初の全
国ツアーから東京公演をレポート

iri 1st Tour 2018 2018.3.20 恵比寿・LIQUIDROOM
2月28日にセカンド・アルバム『Juice』をリリースした神奈川県逗子市在住のアーティスト、iriの自身初となる全国ツアー『iri 1st Tour 2018』が大盛況の中終了した。名古屋から始まり、大阪、仙台、東京、福岡の全公演がSOLD OUTとなり、一昨日3月20日に恵比寿・LIQUIDROOMにて東京公演が行われた(本原稿はその恵比寿・LIQUID ROOM公演のライブレポートである)。
デビュー前にジャズバーで行っていたというギター弾き語りで培われたスモーキーな歌声とフォーキーソウルな楽曲は、2016年のデビュー以降、飛躍的に進化。ヒップホップ、R&Bから未来的なダンストラックまで、緩急を付けたビートに生音を織り込むことで個性を確立した作品世界をライヴで再現、発展させるべく、ステージに登場したiriはフロントに立つと揺るぎない歌声、その第一声でオーディエンスを一気に引き込んだ。1曲目は新作のオープニングナンバー「Keepin'」。キーボードのGeorge(MOP of HEAD)、ドラムの荒田洸(WONK)、DJのTAARからなるバンドが洗練とダイナミズムを兼ね備えた演奏で高揚感溢れるハウストラックをドライブさせると、続く「Slowly Drive」は90年代ヒップホップ・マナーの跳ねたビートで“”歌うようなラップ”を披露。3曲目の未来的なアーバンファンク「Corner」では“ラップするようなボーカル”でメロディと言葉をグルーヴさせた。
iri  撮影=田中聖太郎
そんな冒頭の3曲は、ヒップホップ色が強まった新作を通じ、ラップするように歌い、歌うようにラップするボーカル・アプローチを確かなものにしたiriの進化の証。そうした表現の広がりが高い歌唱力と相まって、楽曲に躍動感を与えた彼女は、5曲目の「ナイトグルーヴ」で手にしたガットギターをリズミックに弾いたかと思えば、水曜日のカンパネラでお馴染みのケンモチヒデフミがプロデュースを手がけた2曲のダンストラック、「Watashi」と「For Life」をノンストップで繋ぎ、オーディエンスを揺らした。
そして、ライブ中盤は、ミッドテンポのビートに乗せ、曲中で歌とラップを自在に行き来する楽曲が続いた。フックのメロディがキャッチーな「ガールズトーク」に未来的なビートがアクロバティックに展開する「無理相反」。作品ではラッパーの5lackをフィーチャーしている「Telephone」では、iriが彼のパートも見事にこなし、ガットギターをフィーチャーしたフォーキーソウル「会いたいわ」からR&Bとベースミュージックを融合した「rhythm」のエモーショナルな流れにオーディエンスの両手が挙がった。
iri  撮影=田中聖太郎
ドラムの荒田洸が一員であるWONKが生演奏主体のネオソウルなアレンジを施した「Dramatic Love」で突入したライブ後半はメロウなタッチの楽曲でしっとりと。「fruits (midnight)」ではたたみ掛けるラップのスキルを、「Night Dream」では歌の力を際立たせ、新作のラスト曲「Mellow Light」のリラックスしたグルーヴに自然体のiriを投影して本編を締めくくった。
この日のライブは、話すのが得意ではないと、MCは少なめであったが、そんな彼女にはリスナー、オーディエンスと気持ちを共有するための音楽がある。iriの歌声が持つ強い引力は、彼女と世界を繋ぐコミュニケーション手段としての音楽に対する切なる思いがあってこそなのだろう。アンコールでステージに独り登場した彼女は再びガットギターを手に、特に大切な曲だという「brother」を弾き語ったが、その思いを強く一方的に押しつけることなく、ドリーミーな楽曲に溶かし込む彼女らしい絶妙なタッチが甘美な余韻となり、ライブ後の会場に心地良く漂っていた。

文=小野田雄 撮影=田中聖太郎

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