中森明菜、つっぱりソングの集大成「十戒(1984)」

中森明菜、つっぱりソングの集大成「十戒(1984)」

中森明菜、つっぱりソングの集大成「
十戒(1984)」

2010年に疲労が蓄積し活動を休止していた彼女だが2014年に紅白へ出場し、2016年には10公演のディナーショーを開催するなど活動を再開しているようだ。
数々の明鏡を生み出した彼女は、クイーンオブディスコと言われたドナ・サマーから影響を受けているという。
R&Bテイストのアルバムも多く、その音楽性の根底にはブラックミュージックの匂いを感じる。
松田聖子と並び80年代を牽引してきた中森明菜。良い悪いは別として現代のアイドルとこの時代のアイドルは性質が違う。
山口百恵小泉今日子などアーティストとして確立されている、カリスマ性を感じさせるアイドルが多かった。
その中でも、中森明菜は艶っぽくどこか翳りすら感じさせるアイドルだ。
今回は、そんな彼女の魅力がたっぷりつまった楽曲「十戒(1984)」を紹介したい。
同曲は中森明菜のつっぱりソングの集大成とも言われている。美しい彼女から発される過激な歌詞を見ていこう。
中森明菜の「十戒(1984)」
十戒は「愚図ね」という衝撃的な歌詞から始まる。日本中を探してもこれほど過激な一節から始まる歌は見つからないだろう。
さらに「優しさは軟弱さの言い訳なのよ」と、魅力的な部分である「優しさ」をバッサリと切る。
中森明菜のあのオーラで歌われてしまえば、男性陣はコクリと頷くしかないだろう。
「暴言」ともとれる過激な歌詞でさえ、魅力的にさせる中森明菜はやはり超一流のアイドルなのだ。
言い方は相変わらずにきついが、求めていることを感じられない男性にイライラしている心情を表している。
女性は心の中で同様の感情になったことがあるのではないだろうか。
『3年B組金八先生』の不良少女役で大ブレイクした三原じゅん子を皮切りに、この時代のアイドルには「つっぱり」の要素があった。
南野陽子斉藤由貴もその路線で売り出されていた。
どこか影を感じさせ説得力のあるハスキーボイスを持つ中森明菜も同路線を辿ったのは必然のように感じる。
強がりな歌詞から垣間見られる女性視点のメッセージ
強がりな歌詞がひたすら続くが、これは「優しいだけでは愛する人を守れない」という女性からのメッセージを代弁したものなのではないだろうか。
表面上はどれだけ強がっていたとしても、「口だけではなく私を守ってほしい」と男性に対し約束してほしいのだ。
聖書の中にある10の戒律である「十戒」というタイトルもそう考えれば納得がいく。
約束事ではなく「十戒」とした方がより女性が切望している気持ちが伝わる。
さらに、タイトルと中森明菜のキャラクターが相まってより説得力を持つ。
時代が変わればアイドルの存在意義は変わる。
人によっては永遠のアイドル「中森明菜」も若い人たちにとっては新鮮となるのではないだろうか。
数え切れない人に忘れられない記憶をくれた彼女は、まさに本当の意味でのアイドルだ。
アイドルは可愛らしいだけではないと中森明菜が教えてくれる。
TEXT:笹谷創

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