MONKEY MAJIKが捉えた、眠らない光の森、東京。そして、日本とは…。【インタビュー】

MONKEY MAJIKが捉えた、眠らない光の森、東京。そして、日本とは…。【インタビュー】

MONKEY MAJIKが捉えた、眠らない光の
森、東京。そして、日本とは…。【イ
ンタビュー】

日本という国は、とても神秘的で不思議な国というイメージ
──まずは、アルバム『enigma』を作るに当たっての狙いから教えてください。

『enigmaーエニグマー』
Maynard:アルバム制作へ入る前から、すでに何曲か楽曲は出来ていたんだけど。それらの楽曲を並べたときに感じたのが、「どれも、何となく日本を意識した楽曲だなぁ」ということ。そこから、メンバー内で「今回のアルバムは、何かしら日本を感じさせる楽曲を作ろう」という話になり、そのうえで、いろんな角度から日本を捉え、それらを曲にしていこうとなりました。
それは歌詞の世界はもちろん、使った楽器だったりも、そう。和楽器を使えば、ビンテージのシンセを使った遊び心も発揮。中には、アニメーションのタイアップ話から、MONKEY MAJIKなりに捉えたジャパニメーションという意識のもとインスパイアされた楽曲も作りながら、結果的にすごく神秘的なアルバムになりました。
──収録曲自体、とてもバリエーション豊か。それは狙ってのことですか?それとも、楽曲へ導かれた結果、そうなった形なのでしょうか??
Blaise:今回のアルバムでは1曲ごと、その曲の表情に合うサウンドスタイルや歌詞を求めたように、「曲のテーマごとにアタックした」形でした。加えて、先にアニメ「サイボーグ009」のタイアップ曲として流れていた『A.I. am Human』と『Is this love?』を並べて聴いたら、その流れがとても心地好かった。そこからもイメージが広がれば、その流れも含めた中で生まれた楽曲もあったりと、いろんなアプローチがありました。
──タイトルへ記した『enigma』を、みなさんは「enigma=神秘、謎、解き明かせないもの」と解釈しています。『enigma』というタイトルも、アルバム制作を行ううえで最初から決めていたものなのでしょうか?
Blaise:いや、『enigma』というタイトルは、アルバム曲がすべて並んだうえで、最後に決めています。というのも、収録曲を並べたときに、「とても日本らしいアルバムだなぁ」と思えた。何より日本という国は、海外から捉えた場合、とても神秘的で不思議な国というイメージがある。それは、重ねてきた歴史的な面からも言えること。僕ら自身、そのイメージからインスパイアされ楽曲を作った面もあるように、『enigma』というタイトルをこのアルバムのイメージと重ねあわせたとき、まさにパーフェクトな組み合わせだなと思い、それで名付けました。

東京は、日本の中心。それを僕らは"光の森"と例えました
──東京を舞台に描いた『Tokyo lights』の中、東京という都市を、歴史と先端文明の入り混じる象徴として捉えていません??

TAX:東京は、日本の中心。それを僕らは"光の森"と例えました。その光る森には、人間だけが行き交っているわけではなく、日本に棲むあらゆる生物が東京の日本橋を起点に行き交っている。
──えっ、日本橋が東京の起点なんですか??
TAX:日本橋には麒麟と獅子の像が設置してある。それを僕らは日本の象徴として捉え、そこから神秘的な世界を広げていけたらなぁと思い、その地を起点に据えました。言うなれば、日本に於けるグウランド・ゼロ。そこから、すべての物語が繋がっていきます。
Blaise:よくハイウェイの標識に、東京まであと何百キロと出てくるじゃない。そのゼロ地点。つまり、グラウンド・ゼロをこのアルバムでは日本橋にしたわけなんです。
──『Tokyo lights』には、外(海外)から観た日本という視点も入っていません??
Blaise:日本にはもう20年くらい住んでいるように、だいぶ日本人と同じ感覚にはなったけど。日本は、本当にモダンクラシックな面がすごいよね。とてもハイテクな家なのに、中に入ると、みんなこたつを囲んで団欒していたり。食事も、昔からの家庭料理が並んでたり。いくら文化が進化しようと、日本らしさを大切にしながら暮らしているなというのは、今でも感じること。
Maynard:海外の研究者や作家などが日本について語るとき、よく「enigma」という言葉を使って表現しているんですよ。それは、「神秘的な国」としてや、「過去をとても大切にしながらも、先端も追いかけている国」としてだったり。何より、「伝統文化と先端文明とのパラドックスが多い国だ」とよく評されている。
きっと、長く歴史を重ねた国であれば、それは何処の国にもあることだと思う。日本は、中でも東京は、そのパラドックスな面も含め、とても魅力を感じる場所なのは間違いないこと。
──今の日本は、確かに伝統と進化をミックスさせている面はあります。でも、一時期の日本は伝統をないがしろにしていた面もあったなとも感じてしまいますけどね。

Maynard:僕が好きで惹かれた日本は、80年代の日本。それこそ鉄腕アトムや機動戦士ガンダムじゃないけど、つねに未来へ向けて進化を求めてゆくのが日本人だと、輸入されたそれらを見ながら勝手なイメージを持っていました。だけど実際に日本へ来てみたら、じつはトラディッショナルな国で、とても過去の文化を大事にしていた。そこに新鮮さを覚えたんですよ。
僕ら(Maynard&Blaise)の生まれ故郷であるカナダは、まだまだ国としての歴史が短いから、過去へ視線を向けるよりも、つねに新しいものを追いかけ続けている。別の捉え方をするなら、自分たちのルーツがない。だから、みんな自分のルーツとなるものを探している。実際、カナダの人たちは「俺はアイルランド系のカナダ人」「俺はイタリア系のカナダ人」と自己紹介するんですよ。そこで、「あなたは二世代目ですか、三世代目ですか?」と聞くと、「いやいや、ひいおじいちゃんの、そのまたおじいちゃんが」と言うわけ。それくらい、かなり遠いルーツの話なんだけど。でも、そこへ自分のルーツやアイデンティティを求めたがる傾向がある。それは、カナダ自体が若い国だから。でも、日本人でそれを語る人っていないじゃないですか。何故なら、それを語る必要性がないくらい、日本という国に自分の精神が根づいているからなんですよ。
DICK:MONKEY MAJIKって日本(という存在)からいろんな影響を受けながら音楽を作ってはいるけど、住んでいるのはみんな仙台のように、これまで東京の先端にいるからというアプローチはしてこなかった。だけどあえて今回、東京へ視点を向けたのは面白いアプローチだなとは思うよね。

80年代の日本の音楽と言えば、僕の大好きな松田聖子
──『Venom』では、女性ヴォーカルも加え、とても和で雅な音楽的アプローチを施しましたよね。

Blaise:昔もMONKEY MAJIKはHIP HOPのビートの上にメロディアスな歌を乗せつつ、そこへR&Bと民謡をミックスした女性ヴォーカルを入れたアプローチで楽曲を作ったことがあるんだけど。『Venom』を作っている中、和要素の中へ、R&Bや演歌をミックスした女性ヴォーカルを入れたいと思い、そういう楽曲へチャレンジ。結果、世界が終わりそうなすっごい悲しい曲が生まれた。この歌、聞いていて涙がポロリとなりそうだからね。
──『Venom』の中から聞こえてくる女性の歌声は、胸にグッと突き刺さり、心揺らす衝撃がありました。
Blaise:とても美しいのに、今にも泣きそうな歌声だからね。あのアプローチは、演奏をしていてとても楽しかった。今回も、そう。違うジャンルの音楽とフュージョンしてゆく作業は、毎回難しいんだけど。結果的にやり甲斐があれば、制作自体とても面白いチャレンジでしたからね。 
──『enigma』へ収録した楽曲のどれもが、多彩な音楽ジャンルとのフュージョンみたいなものですからね。
Blaise:そうだね。洋楽と日本のトラディッショナルな音楽との融合。それこそが、このアルバムのテーマでもあったことだからね。
──このアルバム、曲順の流れも聞いていて心地好いですよね。
Blaise:こういう流れをと意識したわけじゃなかったけど、結果、はまるべくしてはまった綺麗な流れは出来たなと思っている。
Maynard:アルバム制作の中、最後に生まれたのが『Seiko』という曲なんだけど。僕の中では、日本と言えば80年代。きっかけは、バンクーバーで開催になった万博へ遊びに行ったときに訪れた日本のパビリオンを体験し、すごく感動したことから。あそこには、他のパビリオンとは明らかに違う感動や刺激があった。そこから日本を好きになったんだけど。
自分の中での80年代の音楽と言えばニューウェイブであり、海外から観た当時の日本のイメージと言えば、映画「ブレードランナー」的な世界。そこからインスパイアを受け、ビンテージシンセを使った楽曲をと思って作りあげたのが『Seiko』でした。しかも僕は、女の子の名前をタイトルにしたいと思っていた。最近でこそ、女の子の名前をタイトルにすることって見かけなくなったけど。80年代はよくあったじゃないですか80年代の日本の音楽と言えば、僕の大好きな松田聖子。そこから彼女へのオマージュソングとして誕生したのが、『Seiko』なんですよ。
──歌を聞いていても、とても愛おしい想いが伝わってきますからね。
Maynard:たとえばの話、誰かが「Maynard Maynard」と歌ってくれる楽曲があったら、僕はとても嬉しくなる。むしろ、そういう曲を作ってもらえることが一番の褒め言葉にも思えること。だから、そういう想いを持って、僕はこの『Seiko』を作っています。もちろん、歌詞だけではなく楽曲の面でも80年代を感じてもらえたらなと思ってる。

MONKEY MAJIKはバランスを持てないバンド
──アルバム『enigma』には、愛おしい想いを届けた歌もあれば、辛辣なメッセージを抱いた楽曲、心の内に抱えた想いを伝える歌など、いろんな表現をしています。そこは、曲調も含め、いろんなトータルバランスも考慮してだったのでしょうか?
Maynard:以前はね、バランスを考えたりすることもあったけど。最近は、そこの考え方が変わってきた。全曲スローソングのアルバムだとバランス的にどうなのかと思いファストソングも入れるのが以前の考え方だったとするなら、世の中にはスローソングしか歌わないアーティストもいれば、ファストソングしか演奏しないバンドだっている。何故なら、みんな「そのスタイルが好きだからこそやっている」こと。なのに、無理に「バランスを考えて」となってしまうこと自体がナンセンス。そんなことより、そのときの自分らが表現したいと思った音楽を素直にやれば良いこと。
Blaise:僕たちは、インディーズの頃から一つのジャンルやスタイルへとらわれることなく、いつもオムニバス盤のようなアルバムを作り続けてきた。収録した一つ一つの曲の色が違うんだけど。でも、そういう曲たちを集めたアルバムが好きだったからこそ、僕らは、そういう作品を作り続けてきた。今回の『enigma』だって曲調はバラバラのように、MONKEY MAJIKはそのバランスを持てないバンド。だからこそ面白いんですよ。
──中には、『のぞみ』のような奥深いメッセージを。それこそ、3.11にも繋がる深い想いを込めた楽曲も収録しています。
Blaise:この曲は、湊かなえさん原作の「望郷」という本のドラマ版「夢の国-望郷-」の主題歌を作って欲しいという依頼があって作った楽曲。この曲のテーマが「心にある場所が、その人にとっての家になる」ということ。そのテーマを描くため、歌詞の創作にはTAXも加え、ドラマに寄り添う形であり、自分たちが感じていた心のホームということを題材に、『のぞみ』を書き上げました。
TAX:Blaiseも語ったように『のぞみ』は、「望郷」の世界観へ寄り添いながら。だけど、自分たちの日常にも照らし合わせ、僕らが住んでいる場所や、そこで感じる想いや景色などを重ね合わせ、そのうえで巧く歌詞を落とし込めたらなぁと作った楽曲なんです。言われたようなことも、僕ら自身強く抱いている想いのように、そう感じてもらえたのなら、それは光栄なことだと思います。
──タイアップ作品の場合、どれだけ作品の世界観と自分たちの想いを重ね合わせるかが大事になっていくわけですもんね。
TAX:むしろタイアップというのは、僕らの世界観をさらに押し広げてくれるもの。いろんな作品とコラボレートすることで、それまでの僕らが知らなかったMONKEY MAJIKが生まれてゆくきっかけにもなる。だからこそ、新しいチャレンジは絶えずしておきたいなと考えています。

たっぷりサイズだから、行楽用のお弁当箱としても使えるように
──「新しいチャレンジは絶えずしておきたい」という発言がありましたが、「mu-mo Shop限定盤」には「オリジナルお弁当箱3点セット」がついてきます。これも「新しいチャレンジ」だったのでしょうか??
TAX:あははははっ。まさに、その通りです(笑)。今回も「CD+DVD」「CD+Blu-ray」盤を作っているように、この組み合わせならみんなも納得な形じゃないですか。そこへお弁当箱も組み合わせる。たぶん、これって世界初の試みじゃないかと思うんですよね。これから季節的にもあったかくなるように、公演のベンチなどで『enigma』を聞きながらお弁当を食べてもらえたら素敵じゃないですか。
──でも、なぜ弁当箱だったのでしょうか??
TAX:確かに、首を傾げますよね。でも、日本的な要素という面での相性としては良いんじゃないでしょうか。
──良いなと思います。みなさんも、お弁当箱は使ってます??
Blaise:僕は、この間使った。この箱の中に入れると、料理が全部美味しく見えるよね。DICKは毎日お弁当を作っているようだけど。

DICK:さすがに毎日は作ってないよ(笑)。ただ、MONKEY MAJIKのキャラ弁を作ってSNS上にアップはしました。そもそも、料理を作るのが好きなんですよ。このお弁当箱、とても使い勝手が良いんです。しかもたっぷりサイズだから、行楽用のお弁当箱としても使えるように、花見やパーティでも重宝するんじゃないかな。
Maynard:ちょうど、これから桜シーズンだからね。
──ぜひ持っていきたい気持ちになりました(笑)。ここらでぜひ、「『enigma』は自分にとってどんな作品になったのか」を聞かせてください。
Maynard:『enigma』は、これまでの作品の中でも一番パーソナルなアルバム。今のMONKEY MAJIKが感じていることがここにはすべて詰め込まれているように、ぜひ聞いて欲しいなと思います。
Blaise:『enigma』というアルバムは、本当にエモーショナルで、とてもスピリチュアルで、いろんなメッセージを詰め込んだ作品。これを聴いたら、絶対に何かが心にひっかかるように、とても不思議な感覚を覚えるアルバムです。しかもこの作品は、今の僕たちの新しい…リニューアルしたMONKEY MAJIKの始まりのようなアルバムにもなりました。
今回は、細かい楽器の面にも注目して欲しいけど、歌声でもけっこう遊んでいます。いろんな機材を駆使して歌声の加工をしていて、たとえば『Tokyo lights』の頭の部分も、じつは全部自分の歌声をモーフィングしたもの。『Venom』の中で聞こえる尺八の音色も、じつは声をいろいろ加工し、尺八っぽくしていった結果、本当に尺八のように聞こえる歌声になった。そういう遊び心を随所に入れ込んだので、そういうところもチェックしてもらえたら面白いかなと思う。
TAX:歌詞を総じて見た場合、見えない存在に対して祈りを捧げるというか、「生まれ変わりたい」という願望を書いていたなぁという印象も感じたこと。同時に、「破壊と想像の繰り返し」を自分たちは無意識の中で繰り返しながら、このアルバムを作り上げたのかなという意識でもいます。
DICK: とても心地好い流れを持った作品のように、最後まで一気に聞きたいアルバムになりました。ぜひ、みなさんも楽しんで聞いてください。

各地にラーメンが待っているから、ぜんぜん大丈夫(笑)
──この記事を目にする頃にはファンクラブツアーの真っ最中。今年も長いツアーをやる予定はないのでしょうか?
Maynard:夏にはいろんなフェスに出たいし、今年の秋にまた長いツアーをやりたいなと思っているように、今、そこのプランを組み立てているところです。
──昨年は47都道府県ワンマンツアーを行いました。けっこうハードじゃないですか??
Blaise:ツアーは楽しいよ。各地にラーメンが待っているから、ぜんぜん大丈夫(笑)。そういう楽しみのあったほうがツアーを楽しめるからね(笑)。
TEXT:長澤智典
PHOTO:片山拓

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