Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Kohei Nojima
――The fin.としてイギリスに移住してからすでに1年半くらい経ちますが、向こうでの生活や日常はどのような感じなのでしょうか?
Yuto:向こうに引っ越して、初めてみんなと共同生活を始めたんです。おっきな家を借りて、家の中をスタジオみたいにして、ドラムも叩けたり、リハもできたり、簡単なレコーディングも出きるようにして。そういうスタイルが、結構このバンドには合ってるなと思っていて。ある程度の音なら、24時間いつ出しても文句言われないし。かなり自由に音楽と向き合えるようになった。だから、移住したのは本当に正解だと思いますね。
――幼馴染とは言え、初めての共同生活の中で、お互い新たに気づくこともあったのではないでしょうか?
Yuto:そうですね。……(ふたりに向かって)どう?
Ryosuke:東京に住んでた時はみんなバラバラに住んでたので、スタジオで顔を合わせるっていう感じだったんですよね。だから、それ以外の時間はメンバーそれぞれ何をしてるのか、どんな風に音楽に向き合ってるのか、そういうことが直接はわからなかったんです。それが向こうに行ってからは、それこそ四六時中一緒にいるんで、そういう部分がお互い見えてきたんじゃないかなって思います。
Yuto:東京にいた2年くらいは、みんなわりと近くには住んでたんですけど、やっぱり集まるときはスタジオとかライブとかで。制作もおれが家でやったり、その間にみんなはスタジオ入ってたりとか、そういう感じで活動してたんです。なので、今から考えると、バンドと自分の距離が結構開いていたなって思うんですよね。正直、他のメンバーもどういう感じでこのバンドをやってるのかとか、今何を考えてるのかとか、そういうことがあんまり伝わってこなかったんですよね。でも、今は一緒に暮らしてる中「今、こいつはこんなこと思ってるんやな」とか、「こういう風にバンドをしたいんやろな」とか、結構自然に伝わってきたんです。
そもそも、僕らは友達からスタートしているので、プロフェッショナルなミュージシャン同士として割り切る部分と、友達としての関係が、中途半端になっていたんですよね。プロフェッショナルに徹すると、友達としては傷つけてしまうかもしれないし、逆に友達としての関係を優先すると、プロフェッショナルな仕事ができない。でも、一緒に住んで、24時間一緒にいることで、今ではそれが両立できているというか、自分たちの中でちょうどいいバランスが見つかったんですよね。向こうに移住して、それが一番大きなメリットだったかもしれないです。
Kaoru:小さな話で言えば、Ryosukeはツアーとかでもホテルの部屋をすごく散らかすんですけど、自分の部屋でもそうなんだ、とか。別々で住んでるとあんまり分かりにくい所とかがいろいろ見えておもしろいですね(笑)。
――向こうでは家で制作も練習もできて、さらに各地へツアーに行ったりと、音楽漬けの日々を送っているのでしょうか?
Yuto:そうですね:本当にツアーとかインタビューとか、そういう用事がない限り、基本的にはずっと家にいて。朝起きて、朝ご飯食べてからリハをして、それからみんな散って個人練習したりして。夜ご飯食べた後はたまに『FIFA』(サッカー・ゲーム)やったりして(笑)。
Ryosuke:気分転換にね(笑)。
Yuto:それからまた個人練習とかして、寝る、みたいな感じですね。一日6時間から8時間ぐらい音楽に費やしてると思います。サポート・ドラマーをやってくれてる人はロンドンに住んでて、リハがある時はたまに家まで来てくれて。普段のちょっとした練習とかは、ドラムの音源流して僕らだけで練習してますね。
――今住んでる場所は、ロンドンの隣町くらいに位置するんですよね?
Yuto:そうですね。ロンドンが東京なら、埼玉とか千葉くらい?
 
Ryosuke:千葉よりはもうちょっと近そうだよね。
Yuto:たぶん、結構コンサバな町というか。閑静な住宅街っていう感じですね。住みやすいし、車で40分くらいでロンドン行けちゃうから便利です。そこからロンドン辺りに出勤してる人も多いっぽいですね。
Ryosuke:ちょうどいい距離感だよね。
Yuto:個人的にはロンドンより好き(笑)。ロンドンは東京みたいで、結構ごちゃごちゃしてるんですよね。
――ロンドンの音楽シーンについてお聞きしたいのですが、何か肌で感じるようなシーンや盛り上がりはありますか?
Yuto:たぶん、外から見てるのと違って、意外と明確なシーンみたいなものはないと思いますね。ただ、日本と違うのは、そういうシーンみたいなものがなくても、常に人々の生活と音楽が近い位置にある。だから、日常的に色々な音楽が耳に入ってくるし、何となく「最近はこういうのがきてる」、「クラブで最近こういう音楽流れてる」みたいな感覚はみんなあると思います。でも、音楽が身近な分、その振り幅もすごい大きくて。バンドとか観てても色々なジャンルの人がいるんですよね。
Ryosuke:グランジっぽいロック・バンドもいれば、ジャズとかブラック・ミュージック的なサウンドのバンドもたくさんいて。
Yuto:ジャズ・バーみたいなところがあって、そういうところで演奏するバンドのレベルがすごく高いんですよね。全然有名じゃなかったりするんですけど。
あと、ジャズ以外にもブルースとか、そういうルーツ・ミュージックも常に身近にあって。その上で、新しい音楽のトレンドがある。そういうのは日本との違いだと思いますね。
――ロンドンではベニューがなくなってきているという話も訊きます。
Yuto:少し前に規制とかがあったらしくて、クラブとかは少し減ってるかもしれないです。あと、時代的にはやっぱりバンドは減ってきているように感じますね。バンドよりも、ソロ・アーティストが目立つ傾向にありますよね。名前が売れると、バックに凄腕ミュージシャンをつけていきなり大きいところでライブするようになったり。
――ロンドンは特にそういう傾向を感じますよね。Tom Mischとか。あと、イギリスのミュージシャンにインタビューや話しをしたりすると、口々にロンドンではグライムやアフロバッシュメントが流行ってるし、みんな聴いてるという話を聞くのですが、そこら辺の感覚はどうでしょう?
Yuto:特に若い子の間で、っていう感じですね。ただ、目に見えて大きなムーヴメントだっていう実感はないですね。
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――イギリスに移住してからの生活の変化が、自分たちの作る音楽にどう反映されていると思いますか?
Yuto:今回のアルバム『There』は、ちょうど3年前くらい、初めて海外ツアーを開催した頃くらいに書き始めた曲が収録されているんです。なので、イギリス移住以前の、日本に住んでた頃の経験やインスピレーションの方が多くて。ただ、そこから色々な国に行ったし、様々な人と出会って、そして今ではイギリスに住むようになった。そうやって環境が変わっていくにつれて、僕自信もひとりの表現者として考え方とかがすごく変化してきて。だから、最近はこういう音楽を聴くようになって、とかそういう音楽的なことよりも、自分の思考の変化とか、自分の人生を送ってきた上で得た学びや刺激、そういったことの方が音楽に反映されていると思うんですよね。
――なるほど。では、具体的なプロセスはどうでしょう? 以前はYutoさんがデモをほぼ完成に近い形まで固めてからメンバーに渡すという流だったと思うのですが。
Yuto:そこは相変わらず変わらないですね。僕がひとりで音を重ねてデモを作り上げていって。そこからメンバーで練習するっていう。
――去年から立て続けにシングルをリリースされていましたが、今回、ようやくそれらの楽曲も含めてアルバムとしてまとめようと思ったのは何かきっかけが?
Yuto:えっと、実は順番的には逆なんです。アルバムがすでに1年くらい前にほぼ完成していて。そのまま出すこともできたんですけど、ヨーロッパとかアメリカと、アジアでのマーケティングの進行具合が全然違くて。アジアではすでに1stアルバムを出してるけど、イギリスアメリカではアルバムはまだ出していない。そういう状況だったんです。だから、そこでポンと2ndアルバムを出すのはまだ早いなと判断し、シングルをコンスタントに切っていきました。そうしたら、Spotifyが『NEW MUSIC FRIDAY』(Spotify公式プレイリスト。毎週金曜日更新される、膨大なフォロワーを擁する人気プレイリスト)に入れてくれたりして。
今作も実はアジアでは3月、欧米では6月頃リリース予定なんですけど、この1年は、そういう時差みたいなものをどんどん縮めていくための戦略っていう感じで。なので、日本を含むアジアの方々には結構長いこと待ってもらったことになるんですけど。
――Spotifyの『NEW MUSIC FRIDAY』に選曲されたのはすごいことですよね。その影響というのは実感できましたか?
Yuto:すごかったですね。Spotifyだと聴かれてる国のデータとかをすぐに見れるじゃないですか。それで一気にイギリス1位、アイルランド2位とかになったりして。再生数も跳ね上がりましたね。リアルの場でも知ってるって言ってくれる人も増えたし、やっぱりすごい影響があるんだなって。
結構前からSpotify UKの『NEW MUSIC FRIDAY』には入れてもらってたんですけど、最近になってSpotify USの方も入れてくれて。それからはアメリカのメディアやブログでも紹介してくれるようになった気がします。
――アルバム自体は一年前にほぼできてたとのことでが、曲だけでなく、レコーディングも終わっていたのでしょうか?
Ryosuke:はい。レコーディングは2年前くらいからやってて。
Yuto:本当にもう丸々完成してたんですけど、後からマスタリングだけやり直しました。結構有名な方にお願いしてみたんですけど、1年くらい聴いてたらどうしても納得できなくて。もっと絶対よくなるだろうと思って、これまでの作品と同じくJoe Lambert(ジョー・ランバート)に頼んだら、予想してた通り僕らが描いていた理想に近い感じのものができあがって。
今回のアルバムは、縦横と前後の全方位にレンジが広がってる。ちゃんと奥行きがあるっていう部分が気に入ってたんですけど、それをより洗練させてくれたっていう感じですね。
――この度初めて外部のプロデューサー・Bradley Spence(alt-j、Radiohead、Kasabian、ColdplayBeady Eyeなどのレコーディングに携わってきたプロデューサー。最近ではROTH BART BARONの作品も手がけた)を起用したそうですが、その理由と経緯は?
Yuto:彼が僕らのライブを観に来てくれたみたいで、直接向こうから「やりたい」っていう風に言ってくれたんですよね。初めてライブ観てくれた後に「次のロンドンのライブはいつですか?」って連絡がきて、次のライブも来てくれて。そこで喋っていく中で、「一緒に音源作ってみないか?」って言ってくれて。
彼はどういうものを表現したいか、ということを一番に置いてた人で、すごく仕事がしやすかったですね。レコーディングが始まる前にノートを作って、「この曲はこういう感じ」とか、「この曲はこういうことを歌ってる」「この曲はこういう感じにしたい」とか、そういうことを全部書き出して。その上で、どうやって音でそれを表現していくか、みたいな作業をしていくんです。自分がひとりでやってきたことに近いというか、すごいナチュラルだったし、最終的な決定権は全部僕らに委ねてくれて。だから、向こうの提案とかも取り入れたり断ったり。いいものはいい、違うものは違うと、ストレートに伝えられて。ストレスなくスムーズに作業できましたね。
これまではレコーディングもミキシングも、ほぼひとりで独学でやってきたので、結構わからない点も多くて。自分の中でもそろそろ限界がきてるなと思ってたんです。
――すごくいいタイミングで、外部の優れたプロデューサーと作業ができたと。
Yuto:はい。役に立つことをたくさん教えてもらいましたし、すごく新鮮な体験でしたね。本当にずっと我流でやってたことを、ロンドンの第一線でやっている人たちのやり方を見て、「あーこうするんだ」とか、色々と学べて。「こういうサウンドが出したいっていう時は、あれをこうやって作るんだ」っていう感じに、イメージしていた音にパッと仕上げてくれるんですよ。
これまでは、頭に理想の音があるのに、機材を何時間イジってもそれに到達できない、っていうことが多々あって。今回はそういうことが一切なく、「こうしたい」といったらすぐに結果が返ってくる。なので、自分のイマジネーションとかクリエイティブな部分が損なわれることなく、作品に没頭できました。
――前作『Through The Deep』EPリリース時のインタビューでは、コンセプチュアル1stアルバムに対し、EPは溜まっていた曲をまとめたような作品になっていると語っていました。今作『There』はどちらでの側面が強いと言えますか?
Yuto:最初作ってた時は、そんなにコンセプチュアルにする必要もないかなって思ってたんです。どっちかっていうEPの時みたいに、曲がバラバラと入ってるみたいな感じにしようかなと。でも、作っていく内に、最終的にはコンセプチュアルになっていったというか、自然とまとまっていきました。一年かんくらいの間で一曲一曲できていくうちに、自分の中で流れができてきたような感じですね。最初の半分くらいはバラバラに作っていた感じだったんですけど、後半は曲に呼び寄せられるように制作が進んでいって。なので、結果的には結構まとまったアルバムになってるのかな、と。
――以前からミキシングに最も時間をかけるとおっしゃっていましたが、今作も同様に?
Yuto:はい。やっぱり一番時間をかけるのはミックスで。僕の場合、結構デモを作ってる段階でレコーディングもしちゃうんですよね。その素材をそのまま活かして完成させてしまうことが多くて。もちろんアレンジし直したりとかもあるんですけど、そういう作業は短期的に集中してバチッと終わらせて。あと、機材を変えたりしたので、良い機材で録り直すっていうことはありましたけど。レコーディングも一部Bradley Spenceと一緒にしましたけど、一番大きく手伝ってくれたのはその後のミキシング、アレンジ作業でしたね。
――収録曲も自然と固まっていったとのことでしたが、そうすると候補となった曲なども少ないのでしょうか?
Yuto:基本的にいつもそうなんですけど、あんまりワーって大量に作って、そこから選ぶっていう感じではなくて、できてきたものをそのままハメっていったらしっくりくる、みたいな。そういう感じなんですよね。そもそも、僕らってあんまり色々なことはやってないんで(笑)。
「次はこういう音楽やってみよう」とか、「ダンスミュージック作ってみよう」とか、そういう意識で曲を作ることってあんまりなくて。例えば、その時々で自分の中から出てくる感情、フィーリング、ニュアンスみたいなものを音に変換していく。その作業をやってるうちに、曲がだんだんとできあがってくる、みたいな。だから、急激に僕の人間性とかが激変しない限りは、The fin.の音楽性が大きく変わることはないと思いますね。交通事故とかで頭バーンって打って人が変わるとか、そういうことがなければ(笑)。
Kaoru:音楽的な面で言えば、きっとYutoが絡んだら全部The fin.らしいものにはなるよね。
Ryosuke:そうそう。まさにYutoの内面がこのバンドの個性、The fin.らしさっていうものなんですよね。で、僕らメンバーも、そのバンドの核となっているYutoと24時間一緒にいる、一緒に生活しているっていうことがひとつの強みなのかなとも思ってて。たくさんの時間を一緒に共有しているからこそ、彼の内面を理解しようと思える。
Yuto:でも、僕が自分らしくいれるのも、結局はこのふたりがいるからっていうのもあるので。やっぱり、メンバーが変わったらたぶんその人に合わせちゃったりもするし。結局自分らしさを出すためには、バンドのメンバーが必要なんですよね。
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――Ryosukeさん、Kaoruさんのおふたりはプレーヤーとして、渡英したから何かプレイヤーとしての意識に変化はありましたか?
Yuto:たぶん、それだけで2万字くらい書けるんじゃない?
Ryosuke:ハハハ(笑)。単純に音楽に向き合う時間も増えたし、あとはメンバーがひとり脱退したっていうことも、改めて自分たちの活動について考える大きいきっかけになったと思います。さっきYutoも言っていましたけど、僕らはみんな幼馴染で、いい意味でも悪い意味でもそこがなぁなぁのままここまできてしまった。でも、外部からサポート・ドラマーを入れざるを得ない状況になって、改めて「プロのミュージシャンとは」っていうことについて考えたんですよね。サポートで参加してくれたミュージシャンはみんな本当にプロとして自立していて。そういう人たちと接することで、自分も意識も変わってきたと思います。
Kaoru:技術的な面で言うと、サポート・ドラマーに限らず、向こうのミュージシャンって本当にレベルが高いんですよ。それを常に、間近で見れているのは、やっぱりすごく刺激になりますよね。
Ryosuke:技術の話で言うと、そうやってプロのミュージシャンと接する機会があれば、具体的な練習法とかも聞いたりして。
Yuto:(ふたりの方を向いて)本当に意識が変わったよね。何か、リズムに対しても貪欲になったというか。
――バンド内でもいい緊張感が生まれたというか。意味で演奏面の緊張感みたいなのが高まるというか。歌詞についてなんですけども、率直にイギリスに行って英語もかなり以前より上達されたと思うんですけど、それを含めて英語で詞を書かれているので、自分の書く詞に変化とか感じたりしましたか?
ー(Yuto)でも確かに英語を普段使うようになってから書いた詞が多くなったんで、昔は詞を書くときに英語を使ってってことが多かったんですけど、多分そんときに書いてるのって普段使ってる日常で英語使ってて、それをそのまま詞も英語で書くっていうその段々、自分の日常ん中で日本語っていうのと英語っていうののパーセンテージが変わって来てるときに書いた曲が多かって、だから割とこう昔書いてた時よりもリアルに書けるようになったというか割とすんなり書けるようになったこと多くて、もっとラフに書いてるものも増えたし、考えてるものもあれば本当にペラって書いたものもあるし。そこは結構自然になったというか。なんかこう良くなったなあって思うとこあって、その分向こうの人に褒められることも多くなったし、それは結構自分も嬉しいなあと思うし。結構2ndアルバムで良くなったとこかなあって思います。
表現の幅とかが広がったというか?
ー(Yuto)んー、なんかもっと英語っていうのと自分のハートが繋がったみたいな。今までちょっとだけ変換されてたものがよりこうストンって入りやすくなったみたいなんは結構感じてます。
なるほど。お二人はYutoさんの詞に対して変化とか感じてますか?
ー(Kaoru)まとまって聞く感じじゃないですか、このアルバムができたよ、バン!って感じじゃなくて、いつも毎回の変化を見てるんで、その中でYutoにとってなんか歌うときの言葉が近くなってるのかな、みたいなんは毎回すごい感じます。
詞っていつもどこから沸いてくるもの何ですか?
ー(Yuto)俺なんか作曲の順番としては、まずコードを考えるんですけど、コードっていうのは自分の気持ちで、コード進行っていうのは自分の気持ちにぴったりハマったときに割と曲ができるんですけど、だから曲作ろうと思って適当にコード進行決めて曲作ったらだいたい変な曲できるんですよ。でもそのコード探してるときにちゃんと自分の気持ちにぴったり合うコードが見つかれば絶対曲はよくなって。割と何をしても。でそれをちゃんと自分の中で探して、まず自分のフィーリングの状態をコードで見つけて、次それにだいたいビートとかベースとかを入れて、ある程度曲の骨組みみたいなの作るんですね。そうなったらだいたいメロディは頭ん中にあって、でもうずっとその気持ちのまま作業してるんで、割とそこで詞を書き上げちゃうことが多くて。メロディが出た段階で歌詞を書いて、俺もうだいたいその時の状態のこと書いてたりするんで、今自分が何を思ってるかとか。例えば昔のことを書きたかったら昔のこと思い出しながら書いたりだとかするんですけど、でも割と今自分がいる環境、状態、フィーリングのことを書くことが多くて。それはなんでかっていうとコードを探してるときに、そのコードが一番ぴったりくるっていうのが、多分”今”の自分にぴったりくる気持ち、コード進行で。その今の気持ちを載せるのが一番ぴったりくるというか。そこからこうギター重ねていったりとか、シンセ重ねていったりするんですけど、作り方としては色々あって、メロディと歌っていうのが自分を表現してて、他の楽器が今言った環境、自分の周りを表現してるものとかもあれば、そっから全部それを引っ張り出したみたいな、歌詞のフィーリングをギターで表現したものもあればシンセで表現してるものもあるし、結構いろんな作り方はするんですけど、でもやっぱりメロディと歌詞っていうのが一番自分に近いというか、自分のアイデンティティを表現してて。そっからだんだんアブストラクトになっていくというか。もっとこう周りの気持ちというか、自分のわからないフィーリングというか、そういうものを他で表現していくというか、そういうのが一番多いかなって思います。やっぱ人間って言葉で考えるんで歌詞ってやっぱり一番思考に寄っちゃうというか。ギターとかシンセとかコードとかってもっと気持ちっていうか、直感的なもっとふわっとした気持ちとかを表現するのに適してて。それをこう自分の中でうまく塩梅取りながら自分のそのナチュラルな感じを崩さずに音にするみたいなのを結構ずっとやるみたいな。んでそれがある程度完成したら曲も完成するみたいな感じでいつも作ってます。
オウム返しになっちゃうかもしれませんが、曲を作ろうと思って作る、というよりは曲を作ろうと思って作ってもあんまり完成しないって感じですか?
ー(Yuto)そうですね。曲を作るっていう理由でやっちゃうと、あんまよくなくて。
「曲つーくろ!」とは思うんですよ。(笑)曲を作ろうとする、っていう言い方が難しいいですね。ちゃんとそこに表現するものがなければなくなっちゃうというか。側だけ作ろうとしても何も入っていかないというか。逆に真の自分のフィーリングみたいな部分から発生していったらどんだけ外側くっつけても割とちゃんと自分のものができるんですけど、最初に側から始めちゃうとわけわからんくなっていって、何がしたいのかわからんくなるみたいなのが多くなって。そういう曲は割とボツになってたりするけど。最近は自分の曲作りの感じが自分でもわかってきたから、どこが大事かとか、その辺はやりやすくなったというか、上手くなったかな。
その時々の内面を切り取ったもの、イメージが詞になるというか?
ー(Yuto)そうですね。本当にアルバムとか聞き返したりすると、自分がいっぱい、みたいな感じで。(笑)ほんまに「俺アルバム」みたいな感じで。逆に昔の自分に教えてもらうことっていっぱいあって、「こんときこんなこと言ってるやん!」みたいなんとか。「今こんな風に思えへんな」とか。色々あって、それをライブ中に気づいたりと加するのが結構面白い。ライブ中に勝手に感動してたりとかするもん。「こんときこういうことあったなあ!」みたいな。急にエモーショナルになるみたいな。
なるほど。今後の話をお聞きしたいんですけど、直近での目指していることというか、目標みたいなものって何でしょうか?
ー(Yuto)目標は、うーん。ツアーがいっぱいあるんで、バンドが最近すごいいい状態になってきてるんで、きっとこうツアー回れば今までで一番いいツアーができそうな気はしてて。去年から各々の演奏力も上がってるし。
ー(Kaoru)それは自分も楽しみにしてて、それでそっからまたいろんなものを得たいなっていうか。それでまた次のアルバムに繋げられたらいいなって。
ー(Yuto)新曲結構もう書いてて今。ツアー終わってもそれ書き続けてまた次のアルバム作りたいなって思ってるんで、あともうちょっといろんなプロデューサーとも仕事したいなって思ってて。シングル出してて結構有名な人からメール来てて、よく聞くアーティストやってる人が多いんですけど、そういうロンドンのプロデューサー数名やりたいって向こうから言うてきてくれてるんで、やってみたいなって。結構最近のアーティストって一枚のアルバムでいろんなプロデューサー起用したりしてるじゃないですか。ああゆうの面白そうやなって思って。もしかしたら次のアルバムはそう言うアルバムになるかもしれない。
昨年はジャパンツアーと、年末に東京と地元の神戸でライブしたと思うんですけど、久しぶりの日本に対して変化とか感じたりしましたか?
ー(Yuto)やっぱり最初帰って来た時が一番なかった?外タレ感あったよな。(笑)あん時なんか「バリ久しぶりや!ウェイ!日本のテレビや!」みたいな感じやったよな。でももう行ったり来たり何で何もあんま思わなくなりました。イギリスも普通やし日本も普通やし。やから逆に中国とか楽しみですよね。あんまりよく知らないところが。でも日本ていう国が面白いなって思うようにはなりましたけどね。イギリス人とかもめっちゃ日本気になってるし、今アジアが結構流行ってるんかなっていうのすごいあって。それはやっぱり感じるなあ。特殊やんな、なんか。
最後に、3人で共同生活始めて、幼馴染でよくお互いを知ってらっしゃると思うんですけど、仲悪くなることとかあるんですか?
ー(Yuto)逆やんな、めっちゃ良くなったよな。東京ん時の方が何もなかったから。何もない!みたいな。ツアーとか、練習とかで一緒になって準備して練習して帰る、みたいな感じやったよな。それが今四六時中いるから、ずっと冗談言ってるよな。(笑)たまにどれが冗談かわからんくなってくる。
ー(Ryosuke)俺が冗談言うとあんま返してくれんかったりすることあるからな!(笑)
ー(Yuto)え、何それってこと結構あんで。
ー(Ryosuke)え、何それってことやったら俺の方があるし。
ー(Yuto)言うけど、俺の冗談拾ってなくても、俺全然何も思ってないからな。
ー(Kaoru)何なんこれ。(笑)
ー(Yuto)俺基本的にジョークの中で生きてるみたいなとこあるから。バリかっこいい感じで言うと、真剣な時のエナジーが強すぎて、普段はずっとちゃらんぽらんしてたい。(笑)集中する時すごいやん俺。やってる時ずっとやってるんすよ。
ー(Ryosuke)それ関係性あんの?(笑)
ー(Yuto)あるある。これ自己分析な。自己分析と自分への許し。(笑)
ほんま、変な声で喋りながらRyosukeの部屋入って行ったり変な動きをしながら。
ー(Ryosuke)とりあえず俺の部屋がなんか結構みんな気軽に入ってくるんですけど、暇や、とか言うて。(笑)
ー(Yuto)お風呂溜まるまで10分くらいあるけど、ギターのアレンジ行っちゃったらこっから一時間くらいかかるから、そういうのあったらみんなに迷惑かかるから。「この10分間何しよ」ってなった時に「あ、とりあえずRyosukeの部屋いこ」って。
ー(Ryosuke)いやいやいや、おかしい、おかしい。
ー(Yuto)そこでいろんな曲生まれたりして。Ryosukeの歌とか生まれたり。な?
ほしたらKaoruがその曲で踊り出して首痛めるとか。Ryosukeの部屋行ってもあんま構ってくれんからだんだんとその冗談が解けて行ってそのままギター弾いてる、みたいな。(笑)
ー(Kaoru)それ多いからね。数が。
ー(Yuto)俺多分芸人より多いと思う。数。質はものすごい低いけど。
お三方の仲の良さがばっちり伝わって来たのでよかったです。
ー(Yuto)楽しすぎて寝れへん時あるもんな。最初やばかったよな。ずっと修学旅行みたいな。リビングにいとけば何かと楽しいことが起こりそう、みたいな。あいついるやん!みたいな。(笑)
==
レコーディングも結構スムーズに進みました?
ー(Yuto)そうですね、俺デモ作ってる段階で録ってるものが多くて。その素材をそのまま活かしたりしてて。そのまま最初からデモとる時からレコーディングするクオリティで録ってるんで、わざわざ録り直す必要ないものが多くて。例えばボーカルとか、あとまあアレンジし直したりだとかそういうものは数ヶ月にまとめてバチって録って、みたいなことはありましたね。あとは機材が変わったりしたんで、いい機材で録り直したいものはもう一回録り直したりとかはしましたね。
なるほど。ではBradley Spence一緒にやったのはどちらかというとレコーディングとかっていうよりかはミキシングとか、って方ですか?
ー(Yuto)そうですね、まあレコーディングとかもしたんですけど、パーカスいれたりとか、ちょっとだけコーラス入れたりだとか。ほとんどまあミキシングって感じですね。持っていった時に曲の土台は完全にできてたんで。そっからミキシングしていって音を足したりとか組み替えたりしていって、みたいな感じですね。
前からThe fin.にとってはミキシングってすごい重要ですよね。
Yuto)そうですね、それを一緒にできたっていうのはすごいよかったですね。いつもやっぱミックス時間かけますね。作業的には。ミックスしながらアレンジしていくというか。アレンジしながらミックスしていくというか。
アルバムの収録曲が結構自然に固まってったってことですけれども、っていうことは何を入れようかみたいな迷いはほぼ無かったって感じですか?
ー(Yuto)
ー(Yuto)
ー(Kaoru)何だろうなあ、。(The fin.らしさは)Yutoらしさですね。(笑)
そういうことをずっとやってるだけなんです。それをそのままパッケージングしてるから、自然とまとまってくるんでしょうね。
やってることは割と変わんないですね。それがこうパッケージされてるっていう感じなんで。だから結構何してもまとまるというか。
――
できてくに連れて、「これがこうやんな」みたいな感じでしっくりハマってったんですよ。
もう作ったものをそのまま入れたら割とまとまってることが多くて。だからなんかうやってみよう、ああやってみようっていうよりかは、
別の媒体のインタビューとか読み直してると、言ってることが一貫してるなあって感じます。本当に自分の内から出るものとか、あといろんな音楽は聴いてるけど、それを真似したりすることはあんまないと思うんですけども、今回のアルバムも聴いて本当にその通りだなあって思いました。The fin.らしさ、自分達らしさってYutoさんの内面から出るものが大きいと思うんですけど、お二人(Ryosuke,Kaoru)はどういう部分がThe fin.らしさだと思いますか?

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