桐山漣インタビュー「カメラの前で芝
居するだけが役者の仕事じゃない」『
テニスの王子様』から『曇天に笑う』
まで変化したスタンス

『曇天に笑う』は、唐々煙原作の同名漫画の映画化作品。明治初期を舞台に、脱獄不可能な監獄・獄門処に重犯罪者を護送する、通称“橋渡し”を行う曇三兄弟の活躍を描く時代劇アクションだ。メガホンを『踊る大捜査線』シリーズやアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』などで知られる本広克行監督がとり、アニメ版とおなじく高橋悠也氏が脚本を担当。物語の中心となる曇三兄弟の長男・天火を福士蒼汰が、次男・空丸を中山優馬が、三男・宙太郎を若山耀人が演じている。
同作で、曇三兄弟とともに物語の軸となるのが、桐山漣演じる元風魔の忍者・金城白子である。ドラマ『花さかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス2011~』など、様々なフィールドで“実写化”作品を経験し、ドラマ『コードネームミラージュ』では世界を照準としたタクティカルアクションを見せた桐山。その経験が導き出した役へのアプローチは、幕末・明治時代を舞台にしながらファンタジックな同作で、どう活かされたのか? インタビューで丁寧に語ってくれた。
目指したのは「観ている方が何かしら違和感を抱くような」演技
桐山 漣 撮影=荒川 潤
――『曇天に笑う』はとても世界観が作りこまれた作品の映画化です。出演が決まったときの感触を教えてい下さい。
最初は原作を存じ上げなかったので、出演が決まってから漫画とアニメを拝見したのですが、すぐに引き込まれました。幕末あたりの作品が結構好きなんです。和に洋のものが混じりあっていく時代なので。しかも、白子のキャラクターは深くて、闇も持っている。いわば、物語を大きく左右するキーパーソンだと思いました。こういう役に出会えることはなかなか無いと思うので、このタイミングでこの作品に出会えたのは、ぼくにとってとても大きなことですし、嬉しかったですね。
――いわゆる“実写化”される映画の役を演じる際は、原作、脚本どちらを重要視されるのでしょうか?
両方ですね。ぼくはデビュー作がミュージカル『テニスの王子様』ですし、ドラマでは『スイッチガール!!』とか、『花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス〜2011』とか、原作ものを色々とやらせていただいているので、原作ものへの抵抗がそんなにないです。ぼくの場合は、ヒントを貰えるものは絶対に観るようにしています。だから、漫画も読みますし、アニメも観させていただくのですが、それを大変な作業と思うことはないですね。白子を演じるにあたっては、お話が決まってから撮影に入るまで、常日頃からヒントを探していました。準備期間もいただけたので、すごくありがたかったです。
――桐山さんが演じられた元風魔の忍者・白子は非常に柔和な性格なんですが、実はそれだけではない、複雑なキャラクターです。演技プランなどは立てられたのしょうか?
匂わせすぎないこと。ただ、あまりに匂わせすぎないと、ただの優しいお兄さんになってしまうので、観ている方が何かしら違和感を抱くような、何かひっかかるものを持ちながら観てもらえたらいいな、と思いながら演じました。白子は風魔としての宿命も背負いながら、曇(くもう)家にいる人物です。だから、白子が腹の中に持っているダークな部分は、ぼくも常に持っていました。匂わせすぎず、あまりに匂わせすぎない絶妙なラインを監督と話し合いながら作っていけたかな、と思っています。

桐山 漣 撮影=荒川 潤
――実写映画で演じられるときは、原作のキャラクターに忠実に演じられるのでしょうか?逆に、映画ならではのアプローチを心がけたりもしますか?
作品のテイストや、作り手のみなさんの指向だったりによりますね。作り手の方が「原作ものだけど、自由にやってください」というスタンスの場合もありますし。今回の場合は、原作に忠実にやりたい作品ですよね。衣装にしても、ディティールまですごく作り込まれていますし、お金もそれだけかかっています。どのキャストを見てもハイクオリティな再現率だと思いますし。こういう作品だと、準備と努力はきちんとして臨みたいと思っています。白子の場合は、身に着ける風魔の衣装が、身体のラインがピタッと出るものなんですよね。なので、白子を演じるにあたっては、トレーナーの方についてもらって、「この何ヶ月でここまで持っていきたい」と伝えて、ボディメイクのためにトレーニングしました。ウエストをキュッと絞って、逆三角形の体型になるように糖質制限したり。高たんぱく低カロリー生活は結構大変でした……本広監督はおいしそうにラーメンを食べてましたけど(笑)。
――(笑)本作はアクションが多い作品です。アクション監督の小池達朗さんと白子の動きについて、コンセプトを話し合われたんでしょうか?
ちょこまかした動きはしないようにしよう、ということはお話ししました。小物に見えてしまうといけないので、ドシっと大きく構えていよう、と。武器が苦無(クナイ)なので、リーチが短くて、手元だけで動かすと小さく見えてしまう。なので、あえて大きく振ろう、といったご指導はしていただきました。
――小池さんは桐山さんが主演された『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』でワイヤースタントコーディネーターを担当されていらっしゃたのですが、ご存じでしたか?
え!そうだったんですか。吊るされましたよ、ぼくも。

(c)2018映画「曇天に笑う」製作委員会 (c)唐々煙/マッグガーデン
――福士さんも『仮面ライダーフォーゼ』で注目された方ですよね。現場でアクションの話などで盛り上がったのでは?
蒼汰がアクションを好きなのは知っていたんですが、『曇天に笑う』はぼくが本格的にアクションに取り組む『コードネームミラージュ』の前に撮った作品なんですよね。『コードネームミラージュ』をやっているときに、蒼汰がたまたま観たらしくって、「あれって、どこの流派?」とか聞いてきたことはありますよ。
――マニアックな聞き方してきますね(笑)。
「いや、流派とかわかんないけど」って思いましたけど(笑)。「(アクションの)チームはどこ?」みたいなことも聞かれたり。彼もアクションがすごく好きで、休みの日にプライベートでアクションの練習に行っちゃうくらいなんですよね。だから、『コードネームミラージュ』に興味を持ってもらえたのは嬉しかったです。
“アクションするだけ”のアクションではダメ
桐山 漣 撮影=荒川 潤
――桐山さんは、『曇天に笑う』あたりからアクションに目覚められたんでしょうか?
たまたま、ここ1、2年は『新宿スワン』とか身体を動かす作品との出会いが多いので、すごく恵まれているというか、感謝していています。そういう意味では、本作はその火種なのかもしれません。『コードネームミラージュ』では、これまで自分がやったことを全部捨てて、ゼロから教えてもらうつもりでやりました。やっぱりアクション作品は好きなので、これからも携わっていきたいと思います。
――完成してからご覧になった、『曇天に笑う』のアクションはいかがでしたか?
反省点はあります。それはやっぱり、『コードネームミラージュ』を経験した後だから、「今のぼくだったらこうするかな」とか思ったりもしますけど。でも、その時の自分のベストを尽くしたものなので、ああだこうだ言うつもりはないです。
――桐山さんが出演されている部分以外にも、アクション的には面白い映像がありますよね。
主観映像だったり、ドローンを飛ばしていたりとか、ありましたね。
――ちなみに、桐山さんは普段はどんな映画をご覧になられるのでしょうか?
最近観たものでは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』がすごく好きな作品です。ゾンビものは好きかもしれないですね。『ウォーキング・デッド』とかも観ますし。ただ、怖いだけのゾンビはあまり好きではないので、人間ドラマのあるものが好きです。
――そういった作品は、自分の中に何かをとり入れようとしてご覧になったりするのでしょうか?
とり入れようという意識はあまりないですけど、観ていて勝手にインプットしているところはあります。インプットしようとして観ると作品に集中できないし、巻き戻したりしちゃって、めんどくさいので(笑)。ただ、ボーっと観ることはないです。役者の芝居を見ながら物語を追いかけていって、あまりにも面白くなかったらボーっと観ることはありますけど、そういう時は、消しちゃったりします(笑)。

桐山 漣 撮影=荒川 潤
――『コードネームミラージュ』の時は、『ジョン・ウィック』などの洋画のアクションをご覧になっていたそうですが。
そうですね。作品が面白かったからというのもありますが、その場合はどちらかというと、ストーリーよりもアクション(の動き)から取り入れたところが多かったかもしれません。ただ、“アクションするだけ”のアクションではダメだと思っています。例えば、『コードネームミラージュ』でドブネズミ(佐野ひなこ)が殺されて、ミラージュがその仇の甲斐(鈴木拓)を撃つ場面があるんですが、そのシーンでは“感情の乗った3発を撃つ”というように。ただ、パンパンパン、と撃つわけではなくて、悔しさや怒りの感情からの発砲なんです。そういう風に、感情をアクションに乗せられる役者でありたいと思っています。
――『曇天に笑う』では、まさにそういったアクションをしてらっしゃいます。役者としてのあり方と言えば、以前は「与えられた役を全力で演じることが大切」とおっしゃっていました。それは現在も変わらず意識していらっしゃる?
もちろん、それも大事だと思うのですが、最近は“与えられながらも、与えられる人”でありたいと思っています。それには、与えるだけのものも持っていなければダメだと思います。これは、観ている方だけではなくて、作り手、スタッフのみなさんに対してもそうあるべきだと思っています。ただカメラの前で芝居するだけが役者の仕事じゃないと思うようにはなりました。現場の空気だったり、演者であるぼくらの空気だったり、そういうものは、ぼくら自身よりも作るスタッフのみなさんに影響に絶対に影響することだと思うんです。寝ずに、ぼくらよりも大変な思いをしているみんなにも、頑張ろうという気持ちを与えられるような、そんな心で現場にいたいですね。
桐山 漣 撮影=荒川 潤
映画『曇天に笑う』は2018 年3月21日(水・祝)全国公開。
※桐山漣のレンの字は、サンズイに連
インタビュー・文=藤本洋輔 撮影=荒川 潤

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