【たまアリ直前・未公開レポ解禁 第
2弾】エレファントカシマシは2018年
もドーンと最高! 新春ライブ・NHK
ホールを観た

エレファントカシマシ“新春ライブ 2018” 2018.1.14 NHKホール
エレファントカシマシの2017年の活動をひと言で表すならば、「ドーンと行くぜ」という言葉がふさわしいのではないだろうか。これは宮本のMCでもたびたび登場するフレーズだ。ベスト盤リリース、47都道府県ツアー、「風と共に」「RESTART」「今を歌え」といった新曲発表、『NHK紅白歌合戦』出場などなど、2017年の彼らの快進撃はめざましいものがあった。ライブを観るたびに、ステージの完成度が高くなり、歌も演奏もさらに輝きを増していた。しかも日々、成長し続けているのに、限界がまったく見えない。ピークを迎えたり、ゴールにたどりついたりする気配もない。これはつまり音楽には限りがないということを表しているのではないだろうか。
2018年に入っても引き続き、彼らは精力的に活動を展開中だ。毎年恒例になっている新春ライブも、1月6、7日の大阪フェスティバールホール2daysに続いて、1月14日には『NHK紅白歌合戦』の舞台でもあったNHKホールでのステージが開催された。オープニング・ナンバーは「ドビッシャー男」。いきなりバンドが覚醒していくような気迫あふれる演奏が始まっていく。骨太なシャウトもソリッドなサウンドも男っぽい。<男は侍さ>と歌われるこの歌によって、彼らは自分たちにも気合いを注入していくかのようだった。2曲目の「今はここが真ん中さ!」では宮本浩次(Vo&G)、石森敏行(G)、高緑成治(B)、冨永義之(Dr)、サポートのヒラマミキオ(G)とSUNNY(Key)という6人に加えて、金原千恵子ストリングス・チームの4人が加わるスペシャルな編成での演奏となった。47都道府県ツアーによって鍛え抜いてきたバンドに、ストリングス・チームが融合することで、さらに曲のパワーが増していく。重厚で華麗で痛快な「今はここが真ん中さ!」だ。新春のフレッシュさ、めでたさ、そしてツアー完走、紅白出場という達成感が混じり合って、明るいエネルギーがほとばしる空間が出現した。「今はNHKホールがど真ん中!」という宮本の歌声が誇らしげに響く。
エレファントカシマシ
「2018年が始まりました。お正月っていいですよ、エブリバディ! どこへ行く? 決まっているぜ。この世で一番素敵な場所へ。さあ、ドーンと行こうぜ」という宮本のMCに続いては「新しい季節へキミと」へ。バンド・サウンドという堅牢な骨組みの上に見事に構築されたストリングスが鮮やかに映える。バンド編成のみでの演奏となった「悲しみの果て」は、その時々で印象が変わる曲だ。悲しみのどん底で歌われる「悲しみの果て」と、山あり谷ありの日々を何度もくぐりぬけた上で歌われる「悲しみの果て」では見えてくる景色がちょっと違う。宮本という歌い手が特別なのは、曲を作った当時の心情にプラスして、その時々の感情や気分を歌の中に込めることができるという点にもあると思うのだ。と同時に、彼が作った歌には様々な感情を受けとめていくだけの度量の大きさが備わっているということでもあるだろう。人は日々変化しているし、同じ感情は二度とないのだから、歌もまた同じ歌は二度とないということになる。新春ライブにふさわしく、どの歌もみずみずしくフレッシュに響いてきた。
エレファントカシマシ
「年明けのリハーサルで提案しまして、その場でアレンジしながら弾いてもらいました」とのことで、バイオリンの金原千恵子のバイオリンと笠原あやののチェロが加わったスペシャル・バージョンで演奏されたのは「夢のかけら」。弦が加わるというだけでなく、男性6人に女性2人が加わることで生まれる包容力と繊細さを備えた演奏が歌の世界を深いものにしていく。さらにストリングス・チームが参加して演奏されたのは「旅」。この日のステージでもいくつかのハイライトがあったのだが、そのひとつがこの曲だった。「2018年もスタートしたばかりですが、ドーンと行こうぜってことで」という言葉に続いて、演奏が始まったのだが、起伏のあるダイナミックな展開が実にスリリングで、聴いていて、体中の血がたぎるようだった。「ギター、俺!」と宮本。この曲の中に、<毎日は心の旅さ>というフレーズがあるのだが、この1曲の中にもひとつの旅が存在しているかのようだった。宮本のアコギの弾き語りで始まった「珍奇男」はメンバーそれぞれが音楽の本能を解き放っていくような自在な演奏が気持ち良かった。
第一部後半の10曲は、「翳りゆく部屋」「桜の花、舞い上がる道を」「笑顔の未来へ」など、多くの曲でストリングスが加わることによって、それぞれの曲から見えてくる景色が一変していた。聴く側の感覚を拡張する作用があるのか、光の射し込み方や風の流れ方などまでもが感じ取れるような演奏なのだ。宮本の歌声もバンドの演奏も実にエモーショナルかつドラマティック。名曲がさらに素晴らしい曲になっていく。たとえば「笑顔の未来へ」。バンドが前面に出たり、ストリングスが前面に出たりすることで、それぞれの持ち味が存分に発揮される構成も見事だった。この日の「笑顔の未来へ」はより多くの人々を一緒に笑顔の未来へといざなったのではないだろうか。観客も熱演の数々を熱烈に受けとめて、盛りあがっていた。
エレファントカシマシ
「いいノリしてるぜ~。さすが、新春のNHKホール。乗せ上手でなんて素敵な人たちなんだろう」と宮本も気持ち良さそうだ。アコギを弾きながら、“お正月、年の初めに会えて、うれしいぜ。盛りあがってくれてうれしいぜ”と即興で歌い、さらに「こんなたくさんの人の前で、信じられないぜ。さあ今年も一緒にドーンと行こうぜ。一緒じゃなくてもいいけど、それぞれドーンと行こうぜ」という言葉に続いて「3210」「RAINBOW」へ。ツアーでも屈指の流れとなっていたこの2曲、ストリングスが加わることで、さらに壮大に広がっていった。曲間の静寂の瞬間はいつもより長い。その分、蓄積されたエネルギーが一気に爆発していく。渦巻く虹のように、バンドとストリングスが融合していく。フィニッシュで宮本は胸を張り、大きく手を広げて天をあおいでいた。その姿に割れんばかりの拍手が降り注ぐ。感動の嵐を貫くように始まったのは「ガストロンジャー」。ただならないエネルギーがNHKホールの中に充満していく。“歩いていこうぜ、今年もよろしく”といった言葉も散りばめつつ。これはこれまでで最もポジティブな響きを備えた、最新最強の2018年の「ガストロンジャー」だ。
「2017年はびっくりすることがたくさんありまして。自分たちが思っている以上にみんなが祝福してくれて、信じられない1年になって、紅白歌合戦もこの場所で出て、こうして新春に会えてうれしいぜ」とは宮本のMC。「50すぎてこういう歌も自然に歌えるようになりました」との言葉に続いての「今を歌え」はストリングスが入ることで、さらに懐の深い歌になった。宮本の歌も絶品。なんとさりげなくて、なにげなくて、かけがえのない歌声なのだろうか。歌が体の芯まで染みこんできて、聴いている自分と歌とが一体になっていくような不思議な感覚を味わった。さらに「四月の風」、「俺たちの明日」、そして2017年発表の新曲「風と共に」で第一部が終了。どの歌も2018年の今の心境と歌の世界、演奏とがぴったり重なりあって、唯一無二の説得力が生まれていく。
エレファントカシマシ
第二部は「昔の侍」での始まり。ストリングスが加わって、冬の朝日や夕日や風の気配までを喚起させるような叙情あふれる歌と演奏を堪能した。「真冬のロマンチック」ではバンドとストリングスが一体となって、グラマラスでカラフルな世界を出現させていく。二部の後半はバンド・サウンド全開。ハードでソリッドな音色での疾走感あふれる演奏が気持ちいい「この世は最高!」、NHKホールがダンス天国へと化した「奴隷天国」、そして現在のエレファントカシマシの最強のロックナンバー、「RESTART」、バンドの出発点であり、現在進行形の歌でもある「ファイティングマン」と、バンドの生身の姿が浮き彫りになるようなタフでバイタリティーあふれる演奏が展開されていく。二部のラストは再びストリングスが参加しての「so many people」。この曲ではストリングスも歌を推進させていく。悲しみや無常観をけちらして進んでいくようなダイナミックな歌と演奏が新春にふさわしい。
エレファントカシマシ
三部では2週間前に紅白歌合戦の同じ舞台で演奏された「今宵の月のように」が演奏された。「大事にしてきた歌です。俺たちの代表曲です。みんなに捧げます」という宮本の言葉での始まり。万感の思いがこもった歌と演奏とが染みてくる。でっかい月が輝く背景のもと、バンドが堂々と演奏していた紅白での場面が脳裏によみがえってくる。エレファントカシマシが歴史を積み重ねることで、<いつの日か輝くだろう>というフレーズの重みが増している。今宵の宮本の歌声はとてつもなく温かく優しく響いてきた。鳴り止まない拍手の中で、バンドのメンバーとストリングス・チームの10人が肩を組んで、おじぎして、そのまま前に出て挨拶した。「みんな最高だぜ、いい顔してるぜ」と宮本。もちろんメンバーも最高の笑顔だった。
感情のジェットコースター。そう言いたくなるようなステージだった。熱狂と感動と驚愕とが交互に訪れて、体の奥底から激しく揺さぶられ、突き動かされ、燃え上がり、熱くなる。これこそがエンターテインメントの極地だ。胸の中まで洗浄されて、身も心もすっかり身軽になり、そしてピカピカに一新してくれるステージ。つまりこの新春ライブが2018年を観客ひとりひとりがドーンと行くための準備を完了させてくれたということだろう。さいたまスーパーアリーナでのファイナル、そしてスピッツMr.Childrenとの初競演が実現する『ド・ド・ドーンと集結!!~夢の競演~』も控えている。「ドーンと行くぜ」という言葉はどうやら2018年のエレファントカシマシの活動を表す言葉にもなりそうだ。

取材・文=長谷川誠 撮影=岡田貴之
エレファントカシマシ

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