緑黄色社会、マカロニえんぴつ、uch
uu,が3者3様のライブで魅了した、SP
ICEとスペシャの新イベント『エスカ
ミ Vol.1』

SPICE✕SPACE SHOWER TV presents 『エスカミ Vol.1』 2018.3.7 LIVE HOUSE FEVER
3月7日、SPICEとSPACE SHOWER TVによるコラボイベント『エスカミ Vol.1』が、LIVE HOUSE FEVERにて開催された。『エスカミ』とは、主催両社の頭文字である2つの“S”に“Coming”=“来ている”、“次来る”の意を組み合わせた名称の通り、今後のさらなる活躍を期待するアーティスト、早耳の音楽ファンにいち早く“今”聴いてほしいアーティストをレコメンドするためのイベント。今回は緑黄色社会マカロニえんぴつ、uchuu,という3組のバンドが出演したのだった。因みにこの3組、今後の活躍が期待されているという点はもちろん、それぞれに鍵盤を弾くメンバーが所属しているという共通点もある。
uchuu, 撮影=風間大洋
uchuu, 撮影=風間大洋
トップバッターはuchuu,。“Crossover Music Creators”をキーワードに掲げつつ、ダンスミュージック色の強いサウンドを鳴らすバンドだ。……と書くと、何だかクールなバンドのように聞こえてしまうがそうではない。1曲目「FLY」からK(Vo/Gt/Pf)がフレーズの一つひとつをオーディエンスに手渡しするように歌う姿、そしてシンガロングするオーディエンスの顔をメンバーがしっかりと見る様子が印象深かった。
uchuu, 撮影=風間大洋
uchuu, 撮影=風間大洋
場面によっては、Sujin(Ba/Syn)がシンセベースを弾いたり、Hiroshi(Seq/Per)がシンバルなどを叩きAiri(Dr)と一緒にダブルドラムに近いサウンドを生み出したりすることにより、エレクトロやヒップホップ、ディスコポップなどの要素を取り入れた先鋭的なサウンドを再現していく4人。しかしそれらの根底にあるのは純粋なコミュニケーション欲なのだということが読み取れるから、そのサウンドは機械的というよりも人間的な温かさがある。
uchuu, 撮影=風間大洋
uchuu, 撮影=風間大洋
それが特に表れていたのが「これからみなさんと一緒にこのイベントが育っていきますようにと、そう祈っています」(K)と伝えてから披露した「Magic」の柔らかなループ感や、演奏に一層熱量のこもっていた「東京エソラ」「Keep on living in my music,」だったように思う。パフォーマンスの激しさのあまり眼鏡を吹っ飛ばしてしまったKが慌てて眼鏡を探す、という微笑ましい場面も挟みつつ、「HAPPY」の開放感で締め括った。
マカロニえんぴつ 撮影=風間大洋
マカロニえんぴつ 撮影=風間大洋
「イェーイ!」と、はっとり(Vo/Gt)の気持ちの良い叫びから幕を開けた2番手・マカロニえんぴつのステージ。シンセのフレーズに導かれて始まる王道ギターロック「鳴らせ」にオープナーを任せ、ベースラインを前面に出すことにより一気に立体感の増した「MAR-Z」、そして歪なコードと弾むリズム、女々しい歌詞が何だかコミカルな「哀しみロック」へと繋げていく流れだ。ここまでの3曲を聴いて思ったのは、音源で聴くよりも泥臭い音をしていること。結構ポップな音楽性であるためメンバーもニコニコ笑顔で演奏しているのかと思いきや、眼光は鋭く、案外そうでもない。
マカロニえんぴつ 撮影=風間大洋
マカロニえんぴつ 撮影=風間大洋
そして「俺たち3~4年ぐらい『次来る』って言われてるんですけどね」(はっとり)と自虐を挟んだMC後の4曲目「ミスター・ブルースカイ」が特に素晴らしかった。最新アルバムの表題曲であり、「いつか届け」という願いが込められているという同曲は、きっと今の彼らにとって大切な曲なのだろう。岩肌剥き出しのまま鳴らされている各楽器のサウンドが、呼吸を合わせながら描いていくワルツの円。
マカロニえんぴつ 撮影=風間大洋
マカロニえんぴつ 撮影=風間大洋
壮大な景色を作り出していくサウンドは、この会場のキャパシティに収まっていないように思えたし、この曲を機にバンドのグルーヴがさらに良くなったような感じすらあったのだ。その後は、余白のあるアンサンブルでムーディーな雰囲気を演出した「クールな女」、パンク魂を感じる疾走感が肝である「ハートロッカー」などを演奏。短い時間の中でバンドの様々な表情を印象づけていくようなライブとなった。
緑黄色社会 撮影=風間大洋
緑黄色社会 撮影=風間大洋
そしてトリは緑黄色社会。ここのところメディアでもよく名前を見かけるようになったバンドだが、2012年活動開始と若手ながらキャリアは長く、自分たちの見せ方を知り尽くした上でのパフォーマンスがこのバンドの魅力の一つだ。長屋晴子(Vo/Gt)の深みのある歌声(低音がここまでよく鳴る女性ボーカルは稀有)をじっくり聴かせることにより、オーディエンスの集中力を引き出した1曲目は「Re」。ドラムのビートで手拍子を誘発し、穴見真吾(Ba)による上昇するベースラインが痛快な「始まりの歌」へ繋げたあとは、peppe(Key)の声に合わせみんなでカウントして「Alice」へ。同曲では小林壱誓(Gt)やハンドマイクに持ち替えた長屋が前に乗り出すように演奏したり歌ったりする場面もあり、視覚的にも動きを生みだしていく。
緑黄色社会 撮影=風間大洋
緑黄色社会 撮影=風間大洋
緑黄色社会 撮影=風間大洋
――と、曲を重ねるごとにテンポアップした冒頭3曲からしてライブ運びが秀逸だ。こういった構成の妙によって、「こういうのって勝負とかじゃないと思うんですけど、(前2組のライブを観ていたら)負けてられないと思っていて」と語る長屋をはじめ、メンバーの前のめりな衝動が一層輝きを帯びているし、オーディエンスがそれに積極的に巻き込まれにいっている感じが目に見えて分かる。
緑黄色社会 撮影=風間大洋
緑黄色社会 撮影=風間大洋
そうして全体的にポジティブな空気が流れていたのも、そういうライブの中で披露された曲のほとんどが新譜(3月14日発売の1stフルアルバム『緑黄色社会』)からの楽曲だったのも、今のこのバンドの勢いを象徴しているようだった。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=風間大洋
緑黄色社会 撮影=風間大洋

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着