【インタビュー】Luna[Eins:Vier]、
「誰からの指図も受けず、メンバーだ
けで純粋に」

Eins:Vierが3月14日、再録ベスト盤『Self Cover Best 2018 Searching Red Light』をリリースしたことに加え、これに伴う6都市12公演の全国ツアー<Tour2018 ”Searching For You”>を3月17日より開催する。2017年末、1568日ぶりの再始動ライブを行なった彼らは、そのMCで前述の再録ベスト盤発売と、全国ツアー開催を発表。ツアーとしては約6年ぶり、音源リリースとしては実に20年ぶりとなるアクションに多くのファンが歓喜したはずだ。
Eins:Vierは1999年の解散後、各々がソロワークを中心に活動を続け、<V-ROCK FESTIVAL 2011>にて再結成を果たした。2012年、2013年にライブを開催したものの、以降空白期間へ。そして、2017年末の再始動公演をはじめとした今回の音源リリースとツアーは、シーンへの完全復活の狼煙となるものと思いきや、どうやらそれほど単純なものではないようだ。
BARKSでは、再録ベスト盤発売と全国ツアー開催直前にパーソナルインタビューを敢行。今回の再始動に対する個々の状況や思いを語ってもらった。そこに浮かび上がったのはキャリアを積んだアーティストならではの葛藤と、Eins:Vierに対する三者三様の深い想い。第一弾のHirofumi(Vo)、第二弾のYoshitsugu(G)に続いて、最終回となるLuna(B)インタビューをお届けしたい。
   ◆   ◆   ◆
■セルフカバー盤も全国ツアーも

■誰一人想像してなかったと思う
──今回の再始動はHirofumiさんの呼び掛けで、メンバー3人がとことん話し合って決められたとか。
Luna:結構しつこかったんですよ(笑)。自分的には今メインでやってるバンド(R2Y+J)もあるので、Hirofumiから話があった時点では、Eins:Vierにまったく興味がなかったんです。もう一回やることに対しての気持ちはゼロというか、どっちかというとマイナスぐらいな感じだったんですよ。
──再始動に乗り気ではなかったんですね。
Luna:だから、「やる気ないから、会っても意味ないと思うよ?」って言ったんですけど、それでも「とりあえず一度会うだけでも」と何度も言われて。無下に断るのも忍びないじゃないですか(笑)。「じゃあ会うだけなら。Yoshitsuguとも全然会ってなかったし、久しぶりに飲もうか」という感じの再会で。
──そこまでEin:Vierを再始動することに前向きではなかったLunaさんの気持ちが、どのように変わっていったんですか?
Luna:最初に会ったときはまず、再始動のことは置いておいて「久しぶり〜」っていう感じで盛り上がって。その帰り際に「よかったらまた近々、飲めへん?」っていうことが3〜4回繰り返されたんです。そのうちに、だんだん自分も再始動のほうへと飲み込まれていったのかもしれない(笑)。
──そうなるきっかけが何かあったんでしょうか?
Luna:やりたい気持ちがまったくない自分は置いておいて、逆に“やるとしたら、どういうカタチがベストだろうか?”というふうに発想を変えてみたんです。それが見出せなければ、やはり再始動の意味がないから。で、“どうせやるならライヴ1本だけじゃなくて、もっと大掛かりでワクワクするような形で動けたほうが面白いよな”と思って、2人に提案してみたんです。最初は2人とも戸惑ってましたけどね。
──HirofumiさんとYoshitsuguさんは、メモリアルなカタチでの1公演を想定していたみたいですもんね。
Luna:そうです。だから、「リリースするとかツアーするとか、ちょっと話がデカなってんなー(笑)」みたいな。インディーズのときみたいにじゃないけど、誰からの指図も受けず、メンバーだけで純粋にやりたいことを決めて、ひとつひとつワクワクしながら自分たち発信でっていう形ならばやってみてもいいかもっていう話をして。結果、今の状態になったんです。
──それで再びEins:Vierが動き出したわけですが、その一発目が2017年11月に行なった目黒鹿鳴館でのライヴ。振り返って、Lunaさんにとってどんなものになりましたか?
Luna:今回は再結成後の3回目のクールになるんですけど、今までのどのライヴよりも肩の力が抜けて、すごくリラックスしてやれましたね。“Eins:Vierはこう観せなければ!”みたいなものも今さらないので、“みんな楽しんでくれてんな~。こっちも楽しいなー”っていう自然体だったというか。
──しかもこの日、Lunaさんがメンバーに提案したという再録ベストアルバムリリースや全国ツアー開催のサプライズ発表もありました。
Luna:それは観に来てくれてる友達にも言ってないくらいの完全シークレットで、すべてのお客さんをサプライズさせるっていう企画だったから、本当に楽しみだったんです。あの日のお客さんの中で、セルフカバーアルバムを出して全国ツアーをやるなんてこと、誰一人として想像してなかったと思うし(笑)。
──では、『Self Cover Best 2018 Searching Red Light』について詳しく訊かせてください。“再録ベストアルバム”という形はLunaさんが提案されたんですか?
Luna:そうですね。メンバーそれぞれが違う場所で音楽をやってて、サウンドも経験値も昔とは全然違う。そういう今の自分たちがEins:Vierをやってみたら、どんなものが録れるのかなと。それを自分でも聴いてみたかった。
──Yoshitsuguさんは自宅でレコーディングしたということでしたが、Lunaさんの作業行程は?
Luna:ベース録りの日は僕ひとりでスタジオにこもって。ドラムに関してはこちらでコントロールしてあげないとわからないでしょうから、僕が中心になってリクエストもしましたけど。基本的に、各自がそれぞれのパートを勝手に録るっていう感じでしたから、他パートのレコーディングの立ち合いもしてないし、ギターとヴォーカルに関しては何ひとつ言ってないですね。何がどうなってるかっていうのはラフミックスを聴いて初めて“おぉ~、ギター変わってるやん!”って知る感じでした(笑)。
──どんなギターが乗るかわからない状態でのベースレコーディングだったんですね。まったくお互いのプレイに干渉せず、好きなようにアレンジできたというのはセルフカバーだからこそで。
Luna:細かく言うと“ここの歌、前と違ってるなー”っていうところもいっぱいあって。昔だったら、それをすごく気にして、「ここなんで変わってんの?」となってたと思う。でも、今はそんなの全然ないので、各自が好き勝手やればいいっていう。ただ、ミックスに関しては自分から意見した部分もあるんです。
──各楽器の音量バランスとか定位の面で?
Luna:そうですね。たとえば、「この曲は昔、ギターフレーズがもっと前に出てたけど、こんなに後ろでいいの? もっと上げたほうがいいんちゃうの?」とかね。それに対してYoshitsuguが「いや、今はこのフレーズ、気持ち的にメインじゃないんねん」って言えば、「へえ、そうなんや」っていう感じ(笑)。
──ミックスも個々の意向を尊重して行われたわけですね。
Luna:Yoshitsuguがそう思うのであれば全然それでOKっていう。僕が全権を任されてたら、そのギターフレーズを前に出したかもしれないですけど、そうじゃないので。“再現アルバム”じゃなくて“セルフカバー”なので、新たなアレンジは当然だし。
■当時本当はこうやりたかった

■っていうフレーズに戻して弾いた
──Lunaさん個人はどういったところをリアレンジされたんですか?
Luna:メジャーで出した3枚のアルバムともそれぞれ異なるプロデューサーがついていたんですね。まだ若かりし頃だったので、自分たちに右も左もわかんない部分があったのも事実。だからプロデューサーに言われたらそうやるしかないところも当時はあって。でも、今ならわかるじゃないですか。「これ、いらんかったやろ」とか「これ、実は当時からダサいと思っててん」とか(笑)。
──著名プロデューサーさんに対して意見するのは難しかったでしょうからね。
Luna:それなりに闘ったんですけどね(笑)。でも、“じゃあ、どうすんねん?”って言われても、当時の僕らにはそんなにたくさんの引き出しもないし。やっぱり技術的な問題もあってフレーズをシンプルに整理されたこともあったんですよ。だから、当時本当はこうやりたかったっていうフレーズに戻して弾いたりしましたね。本当に細かいところですけど。
──今の自分の感覚で表現することに加えて、当時やりたくてもできなかったことが具現化された再録アルバムでもあるんですね。
Luna:ドラムに関してもそうです。デビューアルバムの1曲目と言ったら、どの曲かわかっちゃうけど(笑)……当時、“この曲はこうしたい”っていうリズムパターンがあって、ライヴではその形でやってたんです。でも、いざレコーディングが始まったら、そのときのAtsuhitoの技術では叩き切れなくて、プロデューサーにフレーズをシンプルに変更されて。僕の中ではそれがすごく悔しかった。「“こう直して”っていうのをなんでそのまま聞き入れちゃうの? 2人でアイデアを出し合って作ったフレーズやん」って。それに対してAtsuhitoは「叩けないんだから仕方がないやん」って言うから、「そこは闘おうや」ってケンカしたのを覚えてますね。それもいい思い出ではあるんですけど、今回、サポートドラムの岡本(唯史)君に、「実はオレが頭に描いていたリズムパターンはこうやねん」って言ったら、それを引き受けてくれて。楽曲本来の姿がやっと表現できたんですよ。
──「Not Saved yet」ですね?
Luna:はい。デビューしてプロの洗礼じゃないですけど、プロデューサーがつくっていうのはこういうことなんだなっていうことを思い知らされたというか。再録することが決定して、HirofumiとYoshitsuguに「Not saved yet」の話をしたら笑ってましたけどね、「そんなんあったっけ!?」って(笑)。まぁ、悔しかったこともいっぱいあったんですけど、もちろん勉強になったこともいっぱいあったんです。それに岡本君からは、「いや、このフレーズは結構難しいですよ」って言われたので、やっぱり当時のオレらの技量では無理だったということも改めてわかったり。
──「Not Saved yet」のほかにも、今だから当時のイメージを表現しきれたという楽曲はありますか?
Luna:「Dear Song」もそうですね。当時レコーディングで、バシッと一発で弾けなかったから、“絶対にこっちのほうがカッコいい”って思ってる部分をシンプルにされて。“クソーッ!”と思いながらも“しゃあないな”って言われた通りに弾いたんです。マニアックなところですけど聴いてみてほしいですね……なんかプロデューサー批判みたいになってますけど(笑)、本当に勉強になったところも多いんですよ。
──同じリズム隊として、サポートドラムの岡本さんとのコンビネーションはいかがでしたか?
Luna:嘘偽りなく、初めて合わせたときから自然体でしたね。過去の音源はもちろん、再結成後のLEVINくん(La'cryma Christi)に叩いてもらったものも含め、ライヴテイクを全部聴いてもらって。岡本君自身、すごく研究してくれたと思うんですけど、スタジオに入ってからいろいろ説明する必要がないくらい全部そのまま覚えてきてくれて。合わせた瞬間に「問題なし」みたいな。
──今のメンバーで表現した『Self Cover Best 2018 Searching Red Light』は、Lunaさんにとって納得のいく作品になりましたか?
Luna:納得度は120%です。やってよかったなと思います。
──それにしても改めて名曲揃いだなと思いました。
Luna:ひとつ、自分で自分たちを褒めるわけではないですけど、たとえば「In your dream」とか「I feel that she will come」は、1990年にバンドが結成して2〜3曲目にできた曲なんですよ。“結成当初の曲なんて、恥ずかしくてできへんよ”っていうバンドマンの話をよく耳にする中で、自分らはそういう気持ちにはならないし、むしろ堂々とやれる。Hirofumiが、20代前半で歌ってた曲を今も歌えるってすごくいいなって思いますね。
■覚悟と意気込みがないとやっぱりやれない

■簡単に転がしたくないっていうことです
──3月17日および18日の目黒鹿鳴館から<Eins:Vier Tour 2018 “Searching For You”>が始まりますね。
Luna:(2月上旬現在)全然まだ実感ないんですけどね。鹿鳴館で始まってO-WESTで終わるっていうのがこだわり中のこだわりで。
──Hirofumiさんもそうおっしゃってました。
Luna:ただ、ツアーを組んだ当初はO-WESTが空いてなかったんですよ。別会場なら空いてたんですけど、「いつになってもいいのでO-WESTにしてください」って。だからファイナルの日程が少し離れてるんです。それほど鹿鳴館で始まってO-WESTで終わることが重要だったから。
──HirofumiさんもYoshitsuguさんもおっしゃっていましたが、ツアーとしては今回が本当に最後だと……。
Luna:最後ですね、それはもう言い切ってもいいくらい。これからEins:Vierとして事を起こそうっていうツアーではないし、これでもう十分でしょっていうのは間違いなく感じると思うんです。今までもそう感じてたし、それをさらに上塗りしないための音源リリースやツアーでもあるから。
──ひとつケジメをつけるみたいなことでしょうか。Lunaさんの中でEins:Vierは過去のものになってるということもあります?
Luna:少なくとも進行形のものではまったくないですね。なので、未来を描くつもりもないんです。
──だから、『Self Cover Best 2018 Searching Red Light』に新曲を入れるようなこともしなかった?
Luna:どちらかというと2011年の再結成のときのほうが、“どうせやるんだったら新曲やろうか?”みたいな勢いがあったかもしれない。それから自分の環境も変わっていく中で、“創作活動は他でやってるんで十分”みたいな。掛け持ちで幾つもバンドをやってる人もいるじゃないですか。それを否定するつもりはないですけど、自分にはできなくて。頭の中がゴチャゴチャになっちゃうので。だから5月のファイナルまではEins:Vierの期間って決めて、R2Y+Jも休ませてもらうんです。
──それだけEins:Vierという存在が大きいっていうことですよね?
Luna:そうです。簡単に転がしたくないっていうことです。
──もし、再び本格的に活動するなら、他の活動をすべてやめないとできないと?
Luna:僕だけに限らず、2人にも他のことは一切やらんといてほしいぐらいの気持ちなんです。そうなると“各自に任せて”みたいな悠長なことは言ってられなくなりますよね。ヴォーカルやギターに関してああだこうだって始まるだろうし、他のメンバーもああだこうだってなるだろうし、ヘタしたらグチャグチャになって、改めて“解散”みたいな(笑)。ただ、そんなんが嫌やからやらないとかじゃないけど、それくらいの覚悟と意気込みがないとやっぱりやれないですね。それはEin:Vierに限らず。僕が過去やってたバンドをもう一回動かすのであれば、そこに集中してやろうっていう体制がないとできないんです。
──逆に言えば、そういうカタチをとってないからこそ今、Eins:Vierをリラックスしてできているんですかね。
Luna:そうですね。これが最後だから、ツアーが終わったら再度解散しようみたいな大袈裟な話は出てないし、思ってもないので。今回は再結成後初めて全国に行くし、ツアー日程もすべて土日にして、観たいと思ってくれてる人たちが出来る限り来られるようにしてあげてるんですね。各地でインストアイベントもやりますし。これだけ観られればファンの方も十分ではないかと(笑)。そういうところも含めてバンドもファンも一緒にいこうやみたいな感じのツアーです。
取材・文◎牧野りえ
■再録ベスト盤『Self Cover Best 2018 Searching Red Light』

2018年3月14日(水)発売

【流通盤(CD)】LZLN-007 / ¥3,000(tax out)

※CD10曲入り / 8Pブックレット

※オリジナルポストカード (店舗購入特典)

01.Dear Song

02.In your dream

03.メロディー

04.Notice

05.Not saved yet

06.Words for Mary

07.花の声

08.Nursery tale

09.碧い涙

10.I feel that she will come
【ライブ会場・通販限定豪華盤(CD+DVD)】LZLN-008 / ¥12,000(tax out)

※CD10曲入り / LIVEダイジェストDVD / 32Pブックレット

※2DISCデジパック・スリーブケース

※オリジナルサコッシュ・復刻版ロゴステッカー・オリジナルA6クリアファイル

※Tour2018”Searching For You”ラミネートパス・メンバーサイン入りチェキ1枚入り

▼CD

01.Dear Song

02.In your dream

03.メロディー

04.Notice

05.Not saved yet

06.Words for Mary

07.花の声

08.Nursery tale

09.碧い涙

10.In a void space

▼DVD

<Eins:Vier One Man Live 2017 "Searching For Me">@目黒鹿鳴館LIVEダイジェスト

01.Not saved yet

02.碧い涙

03.Hallucination for this only night

04.Kiss is sleeping pills

05.花の声

06.メロディー

07.Passion

08.Nursery tale

09.Words for Mary

10.Notice

11.after

12.Bravo

13.L.e.s.s.o.n.

14.In a void space

15.Dear song

16.I feel that she will come

■全国ツアー<Eins:Vier Tour 2018“Searching For You”>


3月17日(土) 目黒鹿鳴館

3月18日(日) 目黒鹿鳴館

3月24日(土) 札幌COLONY

3月25日(日) 札幌COLONY

4月01日(日) 仙台enn2md

4月07日(土) 名古屋Club UPSET

4月08日(日) 名古屋Club UPSET

4月14日(土) OSAKA MUSE

4月15日(日) OSAKA MUSE

4月21日(土) 福岡DRUM SON

4月22日(日) 福岡DRUM SON

5月12日(土) TSUTAYA O-WEST

▼チケット

e+ http://eplus.jp/ath/word/51894/

チケットぴあ http://ticket-search.pia.jp

ローチケHMV http://www.hmv.co.jp/artist_Eins-Vier_000000000039263/

Gargoyle & Eins:Vier presents 2MAN LIVE<ZERO CRASH>


4月29日(日) 下北沢 GARDEN

出演:Gargoyle & Eins:Vier

opening guest:Valentine D.C.

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