【インタビュー】地獄ヘルズ、3バン
ドが合体した地獄のロックンロールア
ルバムが完成

THE SLUT BANKSの板谷祐(vo)、戸城憲夫(b)、金川卓矢(dr)と、Droogのカタヤマヒロキ(vo)、荒金祐太朗、そして首振りDollsのナオ(vo)、ジョニーダイアモンド(g)、D’ERLANGERの菊地哲という錚々たるメンバーが顔を揃えた地獄ヘルズ。活動を始めた当初から大きな話題を呼んでいた彼らが、1stフル・アルバム『地獄のロックンロールファイヤー』を完成させた。ロックンロールの匂いとキャッチーなメロディー、パワフルなサウンドなどを融合させた地獄ヘルズの音楽性は独自の魅力と爽快感に溢れている。さらに同作はDIE(key)が参加して華を添えていることも見逃せない。アルバム・リリースを機に、さらに加速していくことを予感させる地獄ヘルズのインタビューをお届けしよう。
板谷祐 (Vocals) from THE SLUT BANKS

カタヤマヒロキ (Vocals) from Droog

ナオ (Vocals) from 首振りDolls

荒金祐太朗 (Guitars) from Droog

ジョニーダイアモンド (Guitars) from 首振りDolls

戸城憲夫 (Bass) from THE SLUT BANKS

菊地哲 (Drums) from D'ERLANGER

金川卓矢 (Drums,Percussions) from THE SLUT BANKS
■みんなでスタジオに入ったのはレコーディング前日の3時間だけ(笑)

■結構ザックリした感じで曲作りは進めていったんだよね
――まずは地獄ヘルズを結成した経緯などを、話していただけますか。
戸城憲夫(以下、戸城):3年くらい前にDroogと知り合いになって、良いロックンロール・バンドだなと思ったんだよね。それで、対バンをやることにしたら、彼らが首振りDollsを連れてきた。首振りDollsもカッコいいバンドで、それなら3バンドでツアーをやろうよという話になって。それが実現して、アンコールの時にセッションでTHE SLUT BANKSの曲をやったんだ。そうしたら、すごく楽しくてさ。で、Droogも首振りDollsも九州出身のバンドで東北とか北海道には行ったことがないから、行ってみたいと言うんだ。でも、北海道に行こうと思ったら、金が掛かるじゃん(笑)。だったら、3バンドでCDを作って売ろうということになった。Tシャツの売り上げとかじゃ、札幌には行けないから(笑)。それで、3バンドでCDを作って、北のほうにツアーに行って…という風にしていたらすごく面白くなって、3バンド混合のバンドを組むことにしたんだ。
ナオ:そういう流れで地獄ヘルズが始まったんですけど、「やろうよ!」という話がちゃんと出たわけじゃなくて、ライブのアンコールの時に、このメンバーでセッションをやり始めて、気がついたらバンド名義でCDを作ろうということになっていました(笑)。それは、私にとってすごく嬉しいことでしたね。一緒にセッションするとかじゃなくて、このメンバーで音源を作れるんだと思って。3バンドの中では首振りDollsが一番活動歴が浅いので、仲間に入れてもらえることが嬉しかったです。
カタヤマヒロキ(以下、カタヤマ):アンコールのセッションから始まって、“地獄ヘルズ”というバンド名も居酒屋で飲みながら決めた…みたいな(笑)。そんな風にノリの延長で始まったバンドだけど、楽曲とか音のことにはすごくこだわっているし、コンセプトも無い無いと言いながら、しっかりあるんですよ。だから、すごく楽しいと同時に勉強になることが沢山あって、有意義な時間を過ごさせてもらっています。
板谷祐(以下、板谷):俺はどんどん曲ができていく中で、“マジで?”と思ってた(笑)。マジで、やるのかと(笑)。でも、このメンバーで音を出したり、一緒にツアーに出たりするのは本当に楽しいから、否定的なことを言う気にはならなくて。そうこうしている内に、気がついたら巻き込まれていました(笑)。でも、レコーディングしてみたら、このメンバーはすごくバランスが良いし、ノンストレスでやれるんですよ。だから、今は巻き込まれて良かったなと思っています(笑)。
金川卓矢(以下、金川):俺は初めてDroogとか首振りDollsと対バンした時から、こいつらと曲を作ったりライブをしたら楽しいだろうなと思いました。それは、彼らとは年齢が近いからというのもあったと思う。なにせ、普段は大先輩の中で一人だけ若い……いや、若くはないけど(笑)、年上のレジェンド・クラスの方々に揉まれているから、同世代のバンドと対バンできるのはすごく楽しくて。だから、このメンバーでバンドという形になって、アルバムも作ることができて良かったなと思います。
ジョニーダイアモンド:本当に、気づいたらこんなに凄いことになっていたという感じだし、このバンドは初めてのことが多いんですよ。こんなに大人数のバンドは初めてだし、ギター二人でやるというのも初めてなんです。“初めて尽くし”だから新鮮さがあるし、勉強になることもいっぱいあって、ずっと楽しくやれています。良い機会を与えてもらって、ありがたいなと思いますね。
荒金祐太朗(以下、荒金):戸城さん、板谷さん、金川さんは本当に凄いプレイヤーですし、僕もツインギターは今まで経験がなかったんです。だから、このメンバーで演奏することが大きな糧になっています。特にレコーディングできて、そこでいろんなことを学べたというのは大きいですね。地獄ヘルズの活動を通して吸収できるものは、もう全部吸収してやろうと思っています。
――皆さん充実感を得ながら地獄ヘルズを楽しまれているんですね。では、1stアルバム『地獄のロックンロールファイヤー』について話しましょう。アルバムを作るにあたって、構想などはありましたか?
戸城:それは、あまり考えていなかった。このメンバーで良いなと思うものを形にすれば、結果は自ずとついてくるだろうと思っていたから。それに、バンド名が地獄ヘルズだからさ(笑)。どういう音楽が合うかは改めて話し合わなくても、みんなイメージできただろうし。それに、ギタリスト二人が、俺達の知り合いにはいないタイプだから。俺らの世代のギタリストで周りにいるのはジェットフィンガーとか、そんなのばっかりだから(笑)。要は、メタル系ギタリストだよね。俺はロックンロール・ギターがすごく好きだし、(荒金)祐太朗とジョニーがギターなら、俺が作った曲もTHE SLUT BANKSとはまた違ったテイストになるだろうというのがあって。だから、制作に入る前にメンバーで綿密に話し合って…みたいなことはなかった。そもそもね、今回は曲ができるまでのやり取りが、グループLINE上だけだったんだ(笑)。首振りDollsは、北九州在住だから、みんなで集まって音を出せる機会がなくて。それで、俺がデモテープを作って、曲構成を書いたのをグループラインに上げて、それにボーカルの三人が交換日記みたいなやり取りをして詩をつけて…という感じだった。今回はナオとジョニー、祐太朗が書いた曲も入っているけど、それも彼らが上げたデモを俺がちょっとアレンジして、大体の曲構成だけを決めていって。みんなでスタジオに入ったのは、レコーディング前日の3時間だけだったんだ(笑)。そんな風に、結構ザックリした感じで曲作りは進めていったんだよね。
――そういうやり方でバンド感のある作品になったのは、さすがです。『地獄のロックンロールファイヤー』の軸になっているのはロックンロールが香る独自のハードロックで、なおかつキャッチーという方向性ですね。
戸城:一言で言えば、70年代っぽいような気がするんだよね。俺は70年代のロックが好きだし、Droogと首振りDollsのメンバーも若い世代なのに、そういうのが好きなんだ。彼らは、現代っ子ではないんだよね。それに、キャッチーということは常に意識している。だから、地獄ヘルズの楽曲は、自分の中にあるロックンロールを形にしたという印象かな。『地獄のロックンロールファイヤー』に入っている曲は、もう全部気に入っているよ。
ナオ:私もどの曲も好きですけど、特に思い入れがある曲をあげるとしたら「デストロイヤー」です。戸城さんのデモにはメロディーもついているんですけど、この曲はメロディーがほとんどついていなくて私が考えたんです。だから、思い入れが強いし、一番ふざけられた。作詞に関しても、歌に関しても一番ちょけれたというか、ロックンロールの良い意味でのふざけた部分が出せたかなと思います。
戸城:他の曲は俺がメロの指定をしたけど、「デストロイヤー」はサビとか中間の“泣き”のところだけ考えて、Aメロはボーカル三人に、好きなように歌ってもらう予定だったんだ。1曲の中で三人それぞれの個性を出せたら面白いだろうなと思って。そうしたら、ナオ君がメロディーを考えて、“デストロイヤー!”というリフレイン・コーラスも勝手につけてきたという(笑)。それがすごく良かったから“三人の個性案”は却下して、ナオ君のメロディーでいくことにしました。
――「デストロイヤー」は、デンジャラスな歌中とメロディアスなサビ・パートのコントラストも光っています。あと、ナオさんは、今回「ヤバいヤツ」という曲を書かれていますね。
ナオ:「ヤバいヤツ」は、アルバムを作るから、なにか1曲書いてきてという話になった時に、地獄ヘルズでやるなら、こういう曲をやりたいなと思って作った曲です。テーマ的には、不良っぽいというか、地獄っぽいというか。酒とかをイメージしながら曲作りと作詞をしました。メロディーに関しては地獄ヘルズ向けに…みたいなことは全く意識していなくて、自分の中から自然と出てくるものを活かしたんですけど、それを板谷さんとカタヤマ君が歌っているのがすごく新鮮で、面白かった。“こんな風になるんや”と思いました。
カタヤマ:僕の中で印象が強いのは、2曲目に入っている「Welcome to the HELLZ」です。1曲目の「地獄の一丁目」はオープニングSE的なインストなので、「Welcome to the HELLZ」が実質的なアルバムの1曲目ですね。で、歌い出しの“ハロー ようこそ地獄の奥底まで”というのを僕が歌っているんですけど、「そこは、“こんにちは!”という感じで歌って」と言われて(笑)。それで、地獄感をイメージしつつ爽やかに“ハロー”と歌っているので、ぜひ聴いて欲しいです(笑)。
――たしかに、バンド名や写真を見てドロドロした世界をイメージしていたら歌い出しがイケメン声で、“あれっ?”と思いました(笑)。
カタヤマ:アハハ(笑)。でも、使うことにしたのは最後に歌ったテイクで、それまでの歌録りで声がガラガラの状態だったんですよ。それまではもっと嗄れていなくて、きれいな感じだったんですけど、フィットすることを考えて嗄れた声のトラックにしたんです。それは正解だったかなと思いますね。
板谷:今回は、やっぱりナオ君が書いた「ヤバいヤツ」とジョニーが書いた「地獄のサンダー超特急」、祐太朗君の「ヘルズ・ボーイズ」が強く印象に残っています。戸城さんと俺はTHE SLUT BANKSでずっと一緒にやっているから、戸城さんの曲は自分の庭みたいな感覚なんですよ。だから、三人が書いた曲を歌うのが新鮮でした。こんな感じで…というメロディーやアレンジがあったとしても、歌はニュアンスとかも大事だから、その辺を踏まえて伸び伸びと歌わせてもらえたのが楽しかったです。
金川:どの曲も楽しく叩けたけど、強いて1曲あげるとしたら祐太朗が書いた「ヘルズ・ボーイズ」かな。『地獄のロックンロールファイヤー』は全体的にハードロックだったり、バッドボーイズな感じが出ているけど、「ヘルズ・ボーイズ」はDroogっぽいというか、結構ポップな曲ですよね。THE SLUT BANKSにはあまりないし、首振りDollsにもない感じの曲を戸城さんがアレンジして、俺らが演奏することでゴリゴリな感じになったのが面白かった。最初はシャープなエモ系みたいな感じだったのが、ぶっといロックになりましたね。「ヘルズ・ボーイズ」は元々のデモの時から良いなと思っていたこともあって、俺の中で推し曲です。
荒金:ありがとうございます(笑)。「ヘルズ・ボーイズ」はナオ君と同じように、なにか1曲書いてきてと言われて。せっかく一緒にやるなら自分がやっているDroogっぽいニュアンスを聴いた人に感じてもらえるものにしたいなと思って書きました。あとは、ツインギターでやるのは初めてなので、ギターの絡みがあるようなアレンジにしたというもあって。それに、ライブで演奏した時にお客さんも盛り上がれるというか、一緒に遊べるような曲にしたいと思いながら作っていきました。
ジョニーダイアモンド:僕が好きなのは、最後に入っているバラードの「腐るまで」です。もちろんゴリゴリな曲も好きだけど、この曲はデモを聴いた時に感動してしまって、めちゃめちゃ良いなと思って。「腐るまで」が最後に入っていることで、アルバムを聴いた人は“ごちそうさまでした。ありがとうございました”という感じになりますよね。「腐るまで」というすごいタイトルだけど、染みる歌詞というのも良いし。僕は、この曲があることで、地獄ヘルズが一層楽しくなったんです。
■初期衝動を活かしつつちょっとしたリフをつけたり

■展開をつけたりする作業がすごく楽しかった
――こういうバンドで「腐るまで」みたいな曲もやる辺りは、さすがは戸城さんといえますね。自作曲の「地獄のサンダー超特急」についても話していただけますか。
ジョニーダイアモンド:地獄ヘルズが以前出した3曲入りのシングルに「地獄のrock’n roll fire」という曲があったから、次は絶対サンダーやね…みたいな(笑)。
戸城:もはや曲調とかじゃないという(笑)。
ジョニーダイアモンド:そう(笑)。なので、“サンダー”というテーマは最初からあって、それを踏まえて曲を作って戸城さんに聴かせたら、「お前、これ完全にオジー・オズボーンじゃねぇか」と言われて(笑)。
戸城:オジーの「クレイジートレイン」と同じリフを持ってきやがって(笑)。全く一緒で、さすがにこれはダメだろうっていう(笑)。それで、俺が勝手にいじって、今のリフに落とし込みました。
――なるほど(笑)。でも「地獄のサンダー超特急」のリフは、すごくカッコいいです。
戸城:それは、ランディー・ローズのお陰かな(笑)。
一同:ハハハッ!
荒金:僕は、「極楽ANGEL」が好きです。THE SLUT BANKSと首振りDollsはハードロックで好きなバンドが共通していたりするけど、僕は正直そういう畑はあまり通っていなくて。戸城さんとは、ジョニー・サンダースとかの話をずっとしていたんですよ。「極楽ANGEL」はギターのフレーズとかにジョニー・サンダースっぽさを感じていて。それで、この曲は僕の中のジョニー・サンダースっぽさを意識してギターを弾いたんです。そういうところを活かせたのが、すごく良かったと思います。
戸城:俺の中で印象が強いのは、やっぱり三人が書いた曲だね。自分以外の人間が書いた曲をアレンジするのが楽しかったから。だって、ナオとかジョニーの最初のデモは酷いんだよ(笑)。
ナオ:いや、マジでヒドいっス(笑)。
戸城:MTRとかで作ったデモじゃなくて、スタジオで演奏したのを“バコッ”と録ったようなのをラインに上げてきて。それが、これといって何があるわけでもなくて(笑)。しかも、1曲の形になっていなくて曲の断片が並んでいるんだ(笑)。
ナオ:Aメロはこういう感じです、サビはこういう感じです…という(笑)。
戸城:せめて曲の形にしろやっていう(笑)。でも、それは彼らの初期衝動の塊だよね。だから、初期衝動を活かしつつちょっとしたリフをつけたり、展開をつけたりしていって。その作業が、すごく楽しかったんだ。
――プロデューサーの役割も果たされているんですね。では続いて、『地獄のロックンロールファイヤー』のプレイや音作りなどについて話しましょう。
ナオ:ボーカルが三人いるので、私は主にハモリの担当が多かったです。祐さんとカタヤマ君は声のタイプが全然違うから、それぞれに合わせた声でハモる必要があるんですよ。たとえば同じAメロでも1番は祐さんが歌っていて、2番はカタヤマ君が歌っていると、一緒のニュアンスでハモっても良い感じにならない。逆に、それが面白かったですね。レコーディングしていく中で二人の声に合わせるコツみたいなものもだんだん掴んできて、ちょっとハモリの職人になったような感覚を味わえました(笑)。
板谷:そこは、俺もやるなと思った。でも、ナオ君がメインで歌っている場所もいっぱいあるよね。というか、むしろ一番多いんじゃない?(笑)
ナオ:……実は、そうなんです(笑)。でも、今回はハモリの印象が強いですね。「極楽ANGEL」とかは、メッチャちょけた感じでハモッたんですよ。きれいに音を乗せるんじゃなくて、ちょっと上でキュンキュンいってる感じのハモリにしたんですけど、それが自分的には楽しかったです。
――ハードロックでトリプルボーカルというのはレアですよね。歌の振り分けは、どうやって決めたのでしょう?
ナオ:最初はそれぞれが作詞したところを歌ったりしていたんですけど、曲の中で三人の得意分野みたいなところが見えてきて。それで、得意なところを歌ったり、同じメロディーをそれぞれが歌ってニュアンスの違いを出したりという感じでした。
――三人は色気があるところが共通しているうえで、ナオさんは情熱的、カタヤマさんはエモーショナル、そして板谷さんは貫禄に溢れています。
一同:そう! 板谷さんの歌には、人生が滲み出ている(笑)。
戸城:アハハ(笑)。最後に入っている「腐るまで」は、最初は1番と2番があって、ギター・ソロがあって…という構成だったんだけど、ちょっと違うなと思って。それで、どうせならということで、それぞれに1コーラス歌ってもらうことにしたわけ。で、仮歌の時は祐が最初に歌ったんだよね。そうしたら、人生を悟ったヤツが最初に歌っちゃったもんだから、次に来るのが若造過ぎちゃって(笑)。それで、祐には最後に登場してもらうことにしました(笑)。
ナオ:最初に私が歌って、次に(カタヤマ)ヒロキ君が歌って、最後に祐さんという順番になったんですけど、この曲を聴いていると3番になるたびに“敵わねぇ!”と思います(笑)。これは、俺には出せねぇって。私も人生経験を積んで、祐さんみたいな歌が歌えるようになりたいです。
カタヤマ:歌に関しては祐さんとナオ君がすごくパワフルというか、武器でいうと金棒みたいな“ブォーン!”というタイプで、僕は小さいナイフみたいな感じだなと思っていて。それで、二人に負けないように吠えることにしたのが「ヘルズ・ボーイズ」です。サビのところを歌っていて、そこは凶暴さを出すことを意識しました。Droogで激しい歌を歌っていないわけじゃないけど、もっとパワフルにという。そういうところで、歌に関しては「ヘルズ・ボーイズ」が印象に残っています。
戸城:ヒロキは、あとの二人とちょっとカラーが違うというのが良いんだよ。チェッカーズでいうところのフミヤさんだから(笑)。もちろん祐は、高杢さんね(笑)。
板谷:まぁ、そうなりますよね(笑)。
戸城:俺、チェッカーズのカバーとかも、やろうかなと思っているんだ(笑)。
一同:ええっ? そうなんですか?(ザワザワザワ…)
――それも、ぜひ聴いてみたいです(笑)。板谷さん、ご自身の歌に関しては、いかがでしたか?
板谷:自分が歌詞を書いたところは自分の中にイメージがあるけど、ナオちゃんやヒロキ君が書いたものは彼らの世界なんですよね。それを俺が歌うにあたって言霊というか、想いを入れるということにやり甲斐を感じました。それができていないと自分の歌を歌えないから、そこはしっかりやりましたね。その結果、ナオちゃんやヒロキ君が意図したものとはちょっと違っているかもしれないけど、自分なりの表現ができたかなというのがあって満足しています。そういうアプローチを採ることで、トリプルボーカルというスタイルがより映えるだろうというのがあったし。それに、ナオちゃんとかは普段首振りDollsではドラム&ボーカルでやっているけど、地獄ヘルズでは歌に専念してハンドマイクを持って歌うわけだから。
ナオ:もう、地獄ヘルズでは解き放たれています(笑)。
カタヤマ:もう、ずっとステージ前のキワッキワにいるよね(笑)。
板谷:そう(笑)。ナオちゃんが“ガッコーン!”といくから、俺らは怒られるんですよ。お前ら二人ももっと前に出ろよって(笑)。そんな風にナオちゃんは地獄ヘルズではよりシンガーとして立っているし、ヒロキ君は俺とは違ったエモーショナルなスタイルだから、より自分を出さないと…という気持ちもあって。だから、どの曲も自分らしくということを意識しました。
金川:ドラムに関しては、今日ここにいない人のことを代弁するとD’ERLANGERの菊地哲(dr)さんも参加されていて。5曲くらい叩いているんですけど、どれも彼のドラムが炸裂していて、彼の後輩ドラマーとしては“全部、哲さんで良いんじゃね?”みたいな感じでした。でも、「地獄の一丁目」とか「デストロイヤー」はツインドラムで、交互に叩いているんですよ。
――お二人の名前がクレジットされているのに2台のドラムが同時に鳴っていないので、一人はパーカッションを叩いたのかなと思いました。
金川:いや、「デストロイヤー」の速いフィルとかは、全部哲さんが一人で叩いているんです。で、後半のショボくなるところが俺です(笑)。
――ショボくはないです(笑)。個性の異なるお二人のドラムも楽しめましたよ。菊地さんの饒舌なドラミングに対して、金川さんのドラムはタイトかつ肉感的という心地好いリズムが光っています。
金川:俺は、そういうところを目指しているんです。フレーズとか、音だけでは哲さんみたいに凄いと言われるところには持っていけないから、気持ち良いリズムということを大事にしている。そういうドラムの良さは伝わりにくいから、哲さんと比べると地味に感じるだろうなというのがあって。だから、そこに気づいてもらえたのは嬉しいです。THE SLUT BANKSの時は哲さんみたいに叩けたら良いなと思って結構手数をぶち込んだり、音もヘヴィな方向ではなくて“スコーン!”と抜ける、ある意味シャープで抜ける音を出すようにしたりしているんですね。でも、地獄ヘルズは哲さんが参加すると分かっていたから違いを出したかったし、地獄だしということで低い音作りにして、普段やらないようなバカっぽいドラムを叩きました。難しいことはしないで、シンプルにいこうと。特に、ナオ君が書いた「ヤバいヤツ」とか、8曲目の「極楽ANGEL」とかは、普段はこういう音にはしないという、低くて、どっしりした音で、結構シンプルに叩いたつもりなんですよ。それが結構気持ち良い感じに仕上がっていたから、完成したトラックを聴いて、“良いじゃん!”と思いました。自画自賛な感じですけど(笑)。
ナオ:いや、みんなメガにぃのドラムは、すごく良いと思ってるから。
一同:うん、兄貴のドラムは気持ち良いし、カッコいい。
――同感です。どの曲をどちらが叩くかという振り分けのポインは?
金川:曲作りの段階で俺は一応全部の曲を叩けるようにしておいて、これとこれは哲さんに任せるかと戸城さんに言われて、分かりましたという感じでした。本当は全部叩きたかったのに…みたいな(笑)。
一同:ハハハッ!!
板谷:チクリと来ましたね(笑)。
戸城:言うねぇ(笑)。でも、俺も断腸の思いで振り分けたんだよ。
金川:本当ですか?
戸城:……多分(笑)。
ジョニーダイアモンド:アハハ(笑)。ギターは、僕と祐太朗君は全くタイプが違うから、役割分担とかを話し合ったりはしていないけど、良い感じにキャラ分けができたかなと思います。僕の中では、自分は“汚いほう担当”という感じです(笑)。戸城さんにエグいギターを入れて欲しいと言われたことあって、そういう方向でいきました。
荒金:今回はジョニーと二人でやり取りする時間があまりなかったんですよ。レコーディングの時も戸城さんに、ジョニーにこういうものを弾かせたり、ギター・ソロを弾かせたいから、その裏で何をしようか考えようと言われることが多くて。でも、それを想像してアプローチを考えるのが楽しかったし、その場でフレーズとかを決めて録るという経験をあまりしたことがなかったので勉強になりました。ギターで印象が強いのはさっき話した「極楽ANGEL」もそうだし、あとは「腐るまで」ですね。「腐るまで」は今回の中で最後にできた曲で、これも現場でギター・パートを作っていったんです。で、どんな音にしようかというところを揉んでいって、この音良いねということになって。それで、じゃあ一回合わせてみようかといって弾いたテイクが、そのままOKになった。そういう録り方ができたのがすごく嬉しかったし、ライブ感のあるテイクを録れたという意味でも満足しています。
ジョニーダイアモンド:僕は6曲目の「ヤバいヤツ」で、初めてトーキング・モジュレーターを使ったんです。前から興味はあったけど、現物を見たのも初めてで、こんな風になっているんだと思いました。
戸城:俺が使えと言ったんだけど、現物を見てすごく喜んでた(笑)。
ジョニーダイアモンド:気持ちが上がりました(笑)。トーキング・モジュレーターはすごく面白くて、今回使わせてもらえたのは良い収穫になりましたね。今後は首振りDollsでも使うことになると思います。
■飲み代はギャラで賄うからライブに人が来ないと困るんだよ

■なので、皆さんよろしくお願いします(笑)
――新しい扉が一つ開きましたね。ギターに関しては「地獄のrock’n’ roll fire」と「デストロイヤー」のソロ・バトルも聴きどころです。
荒金:二人で弾いている曲は、ソロの順番もそうですけど、僕が先に弾いて、それに対してジョニーがどんなソロを弾くかを考えたんです。
ジョニーダイアモンド:いや、自分のソロは何も考えずに、もうノリで弾きました(笑)。ツインギターで交互にソロを弾くというのも初めてだから面白かったし、二人でハモるのもメッチャ気持ち良いよね?(笑)
荒金:気持ち良い(笑)。バトル・ソロとかツインリードは、ライブで演奏することも楽しみにしています。
戸城:二人はキャラが違っていて、良いコンビネーションだと思うよ。みんながプレイの話をして、あとはベースだけど、ベースの話します?
――えっ? してくださいよ。
戸城:いや、だってさ、俺ベースには全然興味ないというか、特に話すこともないし(笑)。
――そんなことはないです(笑)。改めて、戸城さんのベースは凄いなと思いましたよ。まず、ほとんどルート弾きをされませんね。
戸城:弾かないんだよね(笑)。いや、昔ZIGGYでデビューした時にさ、俺は動くベースが好きで、そういうベースを弾いていたのに、プロデューサーに全部ルート弾きにしろと言われたんだ。それに対する反発心が今でもあるのかなと思うけど、基本的にルート弾きはしない(笑)。
――そんなことが、あったんですね。それに、ずっとリフやカウンター・メロディーを弾いていながら、絶対に歌の邪魔をしないのもさすがです。
戸城:ありがとうございます。俺はポール・マッカートニーが好きだから、自然とそうなっちゃうんだと思う。そういえば、「Welcome to the HELLZ」は哲がもうトリッキーなドラムをガンガンにぶち込んできたから、合わせるのが大変だった。変なところに、変なアクセントが入ったりしているんだよ(笑)。あの曲は苦労したな。
――「Welcome to the HELLZ」は、常に16ノリでうねっているベースがグルーブの核になっていることを感じました。
戸城:そうでしょう?(笑) そこに命をかけたから(笑)。本当に大変だったけど、それがこの曲の個性になっているから良いと思うよ。
――音圧と抜けの良さを併せ持ったトーンなども含めて、ベースも聴きどころ満載です。さて、『地獄のロックンロールファイヤー』はメンバー構成や楽曲、良質なプレイなどが相まって充実したアルバムになりました。3月17日に渋谷La.ma.maで行なわれるレコ発公演は、どんなライブになりますか?
ナオ:ワンマンなので、当然曲数が多くなりますよね。でも、我々が北九州に住んでいるもので、バンドリハがどれくらいできるか分からないというのがあって(笑)。
戸城:いや、多分1回だけだよ(笑)。
一同:えっ、マジすか?
ナオ:やっぱり……。そうなると、そのリハまでにメチャメチャ仕上げてないといけない。なので、今ライブに向けてどうですかと聞かれると、「メッチャがんばります」という言葉しか出てきません(笑)。でも、良いライブになるという確信があるので、ライブを楽しみにしている人は期待していて欲しいです。
カタヤマ:あまりリハに入れないし、初めてライブでやる曲ばかりなんですよね。だから、どういうライブになるか分からないけど、楽しいライブになることは間違いない。どんな空間が生まれて、どんな景色が見れるのかを楽しみにしているし、ぜひそれを一緒に味わいに来て欲しいです。
板谷:ライブでは哲さんが叩いたフレーズをカネタクが叩くというのがあって。それが、すごく楽しみですね。個人的に心配なのは、「地獄のサンダー超特急」は“サンダー!”というのと“オウ・オオウー”というのを、どこに入れれば良いのかっていう(笑)。パターンが変則なんですよ。だから、そこは口パクっぽくして、ヒロキ君辺りに乗っかろうかなと思っています(笑)。
カタヤマ:じゃあ、ライブ時は僕が祐さんの横に立って、“ここですよ”というところでポンポンと肩を叩きます(笑)。
板谷:おおっ! 頼むわ(笑)。
ナオ:すみません、僕は一人で前にいると思います(笑)。
金川:きっと、そうなると思う(笑)。俺は哲さんの鬼畜なドラムをがんばってコピーして、練習しておきます(笑)。でも、こう言うと語弊があるかもしれないけど、俺にとってこのバンドはTHE SLUT BANKSに比べるとすごく楽なんですよ。ボーカルが三人もいるし、戸城さんやジョニーダイアモンドはボーカルよりも前に出るくらいフロントマンだし。そういうバンドだから、俺は無理して立ち上がってドラムを叩いたりしなくて良いという(笑)。
板谷:無理やりとか言うなよ(笑)。お客さんは、気持ちが上がって自然と立ち上がると思っているだろうから(笑)。
金川:いや、もちろんそういう時もありますよ(笑)。で、逆に祐太朗がリズム隊っぽい感じでいてくれるから安心感があって。普通に気持ち良く演奏すればライブが進んでいくから、すごく良いテンションで叩けるんですよ。だから、3月のライブも楽しみにしています。
ジョニーダイアモンド:地獄ヘルズのライブはもう絶対に間違いないと思うので、楽しみにしていて欲しいです。僕も練習して、なんとか当日までに仕上げてきます(笑)。そういうことも含めて、もう全部を楽しもうと思っています。
荒金:今までは3バンドで廻って、THE SLUT BANKSのライブが終わった後にアンコールでセッションするという形でやってきたんですよ。みんな一汗かいた後だし、お客さんも“最後のシメだ!”という空気の中でやっていたので、盛り上がりがすごかったんですね。今度のライブも、ちゃんとそういう雰囲気まで持っていけると良いなと思います。それこそ、ライブの頭からそうなることを目指します。
戸城:地獄ヘルズのライブは、飲み会の延長みたいなモンだから(笑)。もう、楽しむしかないよね。3月のライブは前日にリハだしさ。リハをして、その後みんなで飲みにいくじゃん?
ナオ:多分、リハよりも飲みのほうが長いでしょうね(笑)。
一同:ハハハッ!! そうなるだろうね(笑)。
戸城:なる。みんなの飲み代は地獄ヘルズのギャラで賄うから、ライブに人が来ないと困るんだよ(笑)。なので、皆さんよろしくお願いします(笑)。
☆菊地哲コメント☆

「去年末に緊急参加が決まり、あまり全貌を把握しないまま今にいたりますが、祝・完成! 出来上がってみると、1曲参加の予定が最終的には4.5曲になっていたり、ジャケットにも登場していたりとw。冒頭からツインドラムの曲があったり、前後半に二人のドラマーで叩き分けた0.5ってのもあり、けっこう実験的なことも。なかなかの行き当たりバッタリではありましたが、だからこそ実力発揮で生まれた奇跡の名盤ではないでしょうか!? 計算尽く? いつもいつも一杯喰わされますが、まぁ、いつもの戸城パイセンのアッパレ戦術ということですね。久しぶりに板谷祐の唄と供に音源が出来たこと、勢いある若手の方々と一戦交えられ光栄でした」(菊地哲)
取材・文●村上孝之

リリース情報


『地獄のロックンロールファイヤー』

2018.3.14 in stores

定価:\2,600+tax/CD:KICS-3680

【収録曲】 

01.地獄の一丁目 

(作曲:戸城憲夫)

02.Welcome to the HELLZ 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:戸城憲夫)

03.ヘルズ・ボーイズ 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:荒金祐太朗)

04.地獄のサンダー超特急 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:ジョニーダイアモンド)

05.地獄のrock 'n' roll fire 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:戸城憲夫)

06.ヤバいヤツ 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:ナオ)

07.地獄の影 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:戸城憲夫)

08.極楽ANGEL 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:戸城憲夫)

09.デストロイヤー 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:戸城憲夫)

10.腐るまで 

(作詞:板谷祐、カタヤマヒロキ、ナオ/作曲:戸城憲夫)
ライブ・イベント情報


「地獄HELLZメジャーリリースパーティー“地獄のロックンロールファイヤー”」

●3/17(土)渋谷La.ma.ma

出演:地獄ヘルズ / [O.A.]天国ヘヴンズ
関連リンク


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◆Droog

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