THE ALFEEインタビュー 結成45周年
で声優に挑戦する“レジェンド”たち
のブレない姿勢とモチベーションの源

現状に満足せず新しいことに挑戦し続ける。言うは易く行うは難し、だ。しかし、バンド結成から45周年を迎え、THE ALFEEの桜井賢、坂崎幸之助高見沢俊彦は“声優”というジャンルに、一歩踏み出してみせた。リュック・ベッソン監督の新作SF『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』で、主人公の連邦捜査官ヴァレリアン&ローレリーヌの極秘任務に、金目当てで協力することになる三人一組の地球外生命体・ドーガン=ダギーズを演じているのである。
3人は、その人数にかけて、「ダチョウ倶楽部さんのほうが上手いと思う」などと終始冗談を交わしながらも、各々が奮闘しやり果せたことを、インタビューで朗らかに報告してくれた。活動休止や解散などの道のりを辿っていくバンドも少なくないが、THE ALFEEは立ち止まることなくライブを主軸に活動を行い、常にクリエイティブな空間で生き続ける。ファンはもちろん、ファン以外にも「レジェンド」と評されるゆえんは、キャリアの長さによるところではなく、こうして進化するプロ意識が垣間見えるからにほかならない。そんな彼らの、一言一句を受け取ってほしい。
地球外生命体の役は「普段の楽屋での俺たちの会話みたいなもんですよ」
Photo:HAJIME KAMIIISAKA
――『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』をご覧になって、率直な感想はいかがでしたか?
高見沢:やっぱりリュック・ベッソンの、すごい映像美が印象に残りますね。だから、IMAXとかの大画面で観ていただけると、より良さが分かるんじゃないかなという気がします。予告編でザ・ビートルズの『Because』を使っていて新鮮だったし。本編冒頭でもデヴィッド・ボウイであるとか、音楽も非常にリンクしているし、新しいサイエンス・フィクションじゃないかな、と思いました。
坂崎:僕も、やっぱり惹き付けられたのは映像ですかね。
高見沢:やっぱりすごいよなあ。キャラクターもそうだけど、宇宙やスペースシャトルとか、スペースシップのデザインが秀逸だよね。スカイジェットもいい。
坂崎:冒頭、パール星人の綺麗で平和な場所に、いきなり空で戦争しているところなんかは、すっごいインパクトがありましたね。びっくりしました。
桜井:最初に観たとき、内容を理解しようと字幕スーパーを追いかけるのに精いっぱいで、あまり素晴らしさを感じられなかったんですよ。だから、また最初から吹替えで全部観直して、「ああ、何だ。こんなに面白かったんじゃん!」と思いました。映像的に見どころがたくさんあると思いますし、特に砂漠のシーンは仮想現実っていうのかな?眼鏡をかけないと、何も買えないっていう発想もズバ抜けて面白いよね。想像を超えてくるところがいいなあ。

(c)2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION
高見沢さんから先ほどお話がありましたが、本作は劇伴も印象的です。皆さんは、普段、映画を観ているときに音楽も気になりますか?
高見沢:やっぱり音楽とのリンクは非常に気になります。自分はサントラも結構買いますからね、気に入っちゃうと。
坂崎:映画と音楽はやっぱり切り離せないものがありますよね。だからあまりに映像に集中しちゃうと、「あれ?音楽何だっけな?」となっちゃうときもあったりして。やっぱり僕の場合は2~3回、観ないとダメなんですけどね。桜井じゃないですけど。桜井も音楽、やっぱ好きでしょ?
桜井:うん。もちろん使い方にもよるけれども、音楽があるから感情が高まるっていうのは絶対あると思います。つい最近、『トップガン』を久々に観たら、やっぱりあれは音楽の力が大きいなあ、と思いましたし。『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』では、あのディスコシーンの……。
坂崎:ビージーズのところ?
桜井:時代感を出すあれで、オールディーズだの何だのと言っていたでしょ?あそこの音楽とか、いいね。
坂崎:そうだ、そうだ。
高見沢:監督の趣味かもしれないよね。(デヴィッド・ボウイの)『Space Oddity』なんて、まさに、この映画のために書き下ろされたようだしね。
――今回、皆さんは“ドーガン=ダギーズ”という地球外生命体の吹き替えをオファーされたわけですが、人間でないことに驚きや抵抗はなかったですか?
高見沢:いや、やると言った以上は全然ありません(笑)。
坂崎:かえって、普通の俳優さんがやっている役をやるよりもいいんじゃないですか?
高見沢:僕らは、こういうキャラクターのほうがいいかも。好きにできるじゃないですか。逆にやりやすかったと思います。
ドーガン=ダギーズ (c)2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION

――そもそもオファーがきたときには、どのように感じられました?
高見沢:オファーをいただいて、ドーガン=ダギーズがどんなものかを観たんです。「えっ、これ俺たち?」って(笑)。「ちょっと、3人だからって安易じゃないの!?」と思ったんですけど。
坂崎:分かりやすいっちゃ、そうだけどね。
高見沢:重複しますけど、最終的には映画を観て、やっぱりリュック・ベッソンの素晴らしい映像美に惹かれましたから。そこに僕らが要求されるというのは、それは非常に光栄なことで。とはいえね、驚きもありました。結果、やって良かったな、と思っています。
坂崎:まあ、声優に関しては素人ですからね。吹き替えを3人でやるのは初めてだし。散歩番組でナレーションは1回やったことはあるんですけど、こうしたキャラクターをするのは初めてなんで。そういうチャンスはなかなか巡ってこないですからね。
高見沢:ちょうどいいキャラクターだったんですね、3人でね。
坂崎:ね。おふざけのキャラ。ちょうど僕も童顔で、老眼ですから。
高見沢:ドーガン=ダギーズじゃなくて、老眼=ダギーズ。
桜井:はは(笑)。最初に(作品を)観させてもらったとき、どのキャラクターをやるんだろうって思っていたんです。「あっ、これだ!」と観ていたら、ものすごい(話す)テンポが速いんですよね。「あっ、これはダメだ」と思って……。
坂崎:速過ぎたよね。
桜井:そう。速過ぎて、「いつ(台詞を)言うの?」みたいな。これは現場で、プロの方たちのアドバイスを受けながらやろうと思い、現場に行ってやってみたら、意外とスムーズにいって。たっぷり時間があったのに、かなり早巻きで終わりましたよ。「もしかしたら、声を多少合成するとかもあるのかな?宇宙人だから」とか言っていたら、結構そのままで。
坂崎:そのままだったね。
高見沢:全然(合成を)していないよね。このドーガン=ダギーズのキャラが「金にがめつい」っていうところがあって。桜井にピッタリだなと。
桜井:がめついって、久しぶりに聞いたよ(笑)。よくそういうことを言えるね?皆、信じるよ!?
高見沢:だって、貯金が趣味だからしょうがないじゃん(笑)。
Photo:HAJIME KAMIIISAKA
――桜井さんは役作りの必要がないとお話されていましたが、実際には声の演技にどうアプローチしていかれたんですか?
高見沢:何もないよな?
桜井:ないですね。要するに役作りをする材料がないんで。
高見沢:英語版(オリジナル)のほうは、ドーガン=ダギーズをひとりの方がやっているらしいから、それなりに自分でできると思うんですけど、僕らは分けてやんなきゃいけなかったから。もう本当にぶっつけ本番でその場ですよ。うん、見たまんま。
桜井:要するに、(ひとり頭の)台詞の尺が短いからね。1秒間に3人でやらなきゃいけない。
高見沢:結構大変だったね。そういう意味では僕ら、プロじゃないですからね。だから、自分たちの良さというか、3人の呼吸みたいなものを今回はやっぱり求められたのではないのかな、と思います。でないと、僕らにきませんからねえ。面白さを追求するなら、ダチョウ倶楽部さんに言ったほうがいいですよ。
坂崎:そら、そうだよね。
高見沢:役作りはあえてしなくて、普段の楽屋での俺たちの会話みたいなもんですよ。
坂崎:ていうか、役を作ったらできないよね。
桜井:演技できないしね。
高見沢:そりゃそうだ。あと、ずっと俺たちはライブでコントとかもやっているし、そういう部分では、こういうものに対しては、そうアレルギーはないですからね。
――では一番苦労した点を挙げるならば?
坂崎:やっぱりテンポというか。
高見沢:そう!テンポ感だったね。
坂崎:あっという間に流れていっちゃうんで。
高見沢:3人でキャラクターをやるところが特異点ですから、合わせるところがやっぱり一番大変でした。
桜井:声優の方はもちろんプロですけど、本当にすごいなって思いました。言葉だけの演技で全部出すわけだから。
坂崎:確かに。
桜井:もうこっちは、秒数が出てきて、次、出る場面を数えながら「あっ、あーっ」って(笑)。台詞を見ながら秒数を見て、「何だ!演技どころじゃない!」って。
坂崎:ローレリーヌの声は先に入っていたんで、だいたい彼女との掛け合いが多いから、それに答えるようにやっていましたね。秒数を見ちゃうと間に合わない、っていう。本当にもう、1秒遅れるとアウト。本当に声に反応してやらせてもらった感じです。でも、いい経験をさせていただきました。
THE ALFEEが45年間モチベーションを保てる理由
THE ALFEE(上)とドーガン=ダギーズ(下) (c)2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION
――皆さんの声が、わざと似せているのかなと思うぐらい似通っていたんですけど、そのあたりは意識されていたのでしょうか?
高見沢:いや、全然してません。
坂崎:そのまんまです。
高見沢:コーラスを45年以上やっていると似てくる部分はありますけど、でもやっぱり長年ステージで自然に培ってきた、3人独自のリズム感。これがあるから、早いセリフ回しも大丈夫だったと思いますね。
坂崎:それはある。
高見沢:そういうのって、急にやれって言われてできるもんじゃないから。今回は結成45周年というものが、吹き替えで活かされたのかもしれないですね。
桜井:意外に、早く終わっちゃったしね。
高見沢:やっぱりね、45年間やっていますから。こういう感じ得意なのかもしれないですね。もし、この手のキャラクターなら、ぜひ次回もTHE ALFEEでお願いします(笑)!
――次回作も期待しております。主人公のヴァレリアンとローレリーヌは正義感や好奇心を持って任務に就いていますが、皆さんにもどこか共通するところがあるようにお見受けします。今回の声優挑戦もそうですが、長く第一線で活躍するには好奇心を持ち続けることもひとつポイントなのでしょうか?
高見沢:秘訣ということではないかもしれないですけど、何を中心に考えていくか、だと思っていて。例えば、僕らはミュージシャンとして、ライブ活動を中心に45年やってきたんです。そこから派生するもので、ラジオとかテレビとかはありますけど。ただ、メインで考えていくものはライブであって。やっぱりお客さんが来て、その前で歌う。それをずっと続けてきたことが、ここまでやれたことの要因のひとつかなと思います。あれもこれもやっているように見えるかもしれないけど、実を言えば僕らは常にライブ活動を中心にやってきている。そこだけなんですよね。そうやって45年経ったから、今回のようなお話も来るのかもしれない。そこはブレていないですかね。やっぱり、ひとつ何かを持つということは、何事においても必要なことではないかなと、僕は思うんです。
坂崎:はい、全く同じ意見です!
一同:(笑)。
桜井:やっぱり、何をやるにしてもライブツアーをね。
高見沢:演奏するのが好きだしね、やっぱね。
坂崎:そうそう。
Photo:HAJIME KAMIIISAKA
高見沢:THE ALFEEを結成したアマチュアのときから、公園でやっている頃から。コンサートが、というか、人前で歌う、ギターを弾く……そこがやっぱり、ミュージシャンとしての一番大事にしなきゃいけないことではないかな、と思います。
坂崎:よくね、若いバンドとかに「よく飽きませんね、ツアー」とか言われたりはするんだけど、「そうかなあ?」って。
桜井:そういう風に思ったことはないね。
坂崎:うん。「飽きるかなあ?」みたいなね。
――若いバンドマンにそういう質問をされるんですか?
坂崎:ありますよ。やっぱり秘訣とか、「どうやってそのモチベーションを保ちますか?」とか。やっぱり、バンドってなかなか難しいでしょう?他人同士、何年も一緒にやるっていうのはさ。アマチュア時代は同じ志があったりするけど、例えばヒット曲が出ちゃうとか、武道館でコンサートをやっちゃうとか、ひとつの目標に達しちゃうと、なかなか次のステップというか、目標が見えづらくなってくる。そうなると、それぞれやりたいことがあったりして、足並みが揃わなくなりますよね。その辺は、よく聞かれたりしますね。
――どうお答えに?
坂崎:性格じゃないですか、って(笑)。だってやっぱり人間がやっていることですから、秘訣とかはないと思う。ほら、がめついやつがひとりいたほうがさ。
桜井:そこにいくの(笑)?ライブって、飽きるとかいう以前に、一歩一歩、皆違いますから。お客さんだって変わるわけだし。うちは特に、メニューがよく変わるということもあるんですけども。だからもう、本当に飽きる以前にやることがいっぱいあって、それどころじゃないんですよね。
坂崎:3人とも次男坊で、そこそこの家で育って、人を蹴落としてまでってパワーもなく、ね。東京近郊で育った3人でバンドを組んだからか、最初からハングリー精神はなかった。地方から出てきた人たちは、例えば反骨心とかパワーがあるし、それはそれで強いですからね。けど、その後はどうかというのは、また別問題。僕はダラダラダラダラ、3人で楽しいことをやっていけばいい、というほうなんで。やっぱり秘訣っていうのは、なかなか見つからないですよね。この通りやれば、45年やれるとも限らないし。やっぱり3人の性格というか、そういう呼吸がないと続かないと思いますけどね。
映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は3月30日(金)より、全国公開。
インタビュー・文=赤山恭子

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