ROTTENGRAFFTY 様々な感情を抱いて
“人生をPLAYする”5年ぶりアルバム
『PLAY』の再生と革新

ROTTENGRAFFTYが約5年ぶりとなるニューアルバム『PLAY』をリリースした。メインコンポーザーであるKAZUOMI(Gt,Programming)が体調不良によりライブ活動を一時休止しながら制作作業を続行し、完成させた本作。「近年で一番いいレコーディングだった」と語るニューアルバムについて、そしてライブ復帰となるツアーへの想いをKAZUOMIに訊いた。
後悔があったからこそ見えた光も、愛も希望も。そういう様々な感情を抱くことこそ、人生をPLAYしているっていうこと。
――体調不良で今年1月からライブを休んでいますが、今の具合は?
良いです。ほんと心配おかけしました。正直暇を持て余しています(笑)。
――暇だし、だったら取材でも受けてみるかぐらいの?(笑)  暇つぶしとして。
違いますよ(笑)。
――アルバム『PLAY』の制作と並行してライブをずっと続けていたことで、一時期、身体が根をあげちゃったんですか?
身体と脳と心がちょっと疲れちゃったというか。ライブだけ少しお休みさせてもらうことで、随分ラクになりました。
――端から見ていて思うのは、一人でいろいろ抱えすぎじゃないかと。全て作曲しているし、作詞に関しても全曲で絡んでいるし、アレンジも全部やるし、プログラミングもプロデュースもやっているじゃないですか。
抱えすぎってことは否めないですが、でも自分で描いたヴィジョンを形にしたいし、それを聴いてもらい感じてもらいたいから。大変だけど幸せなことです。
――それにソングライターとして、昔から多作ですよね。
きっと僕は色んな音楽が好きなんだと思います。ただの音楽ファンなんでしょうね。常に曲作りはしてますし。音源を出すから作るというわけでもなく。だから今回のアルバムは数年前に書いた曲もあるし、最近書いた曲もあります。日々、アルバムのことも頭の片隅に置きながら制作しているのですが、“さあ、アルバムを作るぞ”って気負った感じでもなくて。僕の中でアルバムの全貌が見えたころ、“この子達が一つのアルバムにまとまるかな?“っていう思いもありました。けど、作った時期が違う曲達を、『PLAY』というタイトルが一つの作品にしてくれた感が凄くあって。『PLAY』って言葉がこの数年僕の中でいろんな意味を持つ言葉になってて、次に出すならアルバムタイトルは『PLAY』がいいなって。随分前に決めていました。
ROTTENGRAFFTY 2017.11.29 新木場STUDIOCOAST
――曲の生まれ方や煮詰め方はいろいろあると思いますけど、一つの曲の最終形が見えるまでに、かなり行ったり来たりを繰り返すことが多いですか?
そうですね。ぐるぐる繰り返す時もありますし、意外と形になるのが早い時もあります。今回のアルバムは早く形にできた曲が多いかも。曲が生まれる時って一瞬なんですけどね。作詞もですが、アレンジ構築をする段階では行ったり来たりを繰り返すことも多いです。曲が出来た時はなるべくその日のうちにバババッとアレンジを構築させていきます。でも“これはいい楽曲だ”と思えるのってなかなか出てこないです。だから作った曲も詩もたくさんあります。小ネタも合わせたら、この5年間で百曲近く作っているかも。でもなかなか自分自身“キタ~、カッコいい”という感覚になる曲って出てこないし、一人で考え込んだり、悩むことは多いです。
――曲の小ネタを、他のメンバーに投げたりしないんですか?
しないですね。ほぼ完成形を各メンバーに投げます。歌メロに関してもPIANOで入れることが多いんですが、やっぱりそれだけではニュアンスが伝わらないので直接会って伝えます。ROTTENGRAFFTYを19年、僕はボーカル二人が一番カッコよくなる歌声も駄目になる歌声も、熟知しているし、作曲するときも、あの二人が歌うことは頭の片隅に常にある。
――ある種、歌モノを作っている感覚も?
それはあります。ギター弾き語りで作ることが多いんですけど、「PLAYBACK」はそれとは違うかも。ROTTENGRAFFTYのデビュー当時にあったようなミクスチャーと呼ばれるスタイルというかMIX ROCK。あの当時に戻るといういうよりは、もともと持っていた部分を今の自分のフィルターを通して形にしたMIX ROCKといいますか。ラップとも少し違った二人の掛け合いがやりたくて。時代は動いているし、僕も今を生きているので、明らかに昔のままの形とは違う。一周したミクスチャー感を表現できたんじゃないかと思います。この曲を作ったときから“PLAYBACK”という言葉を口ずさんでて。PLAYBACK=再生。あのミクスチャー感やラウド感をもう一度やりたくなっている自分と、“PLAYBACK”という言葉がリンクしたんですよね。その“PLAYBACK”というテーマだけを渡して、歌詞はボーカル二人に任せました。バンドのことにも通ずる歌詞になってたりして、“ああ、間違ってなかったな”って。感情も、出てくる言葉も、やりたいことも、良い感じにつながったって思います。

ワケが分からないところまで心が追い込まれる時も仲間の何気ない言葉に救われたり。なんか人の感情って忙しいですね。
――その「PLAYBACK」は長期に渡った作曲期間のいつぐらいに生まれました?
2017年の夏過ぎくらいですかね。「PLAYBACK」を作ったときに、このアルバムのリード曲にしようって決めました。
――最初に書いたのは、やはり1曲目「寂寞 -sekibaku-」なんでしょうか? もがき苦しんでいる状況下を、そのまま打ち出しているじゃないですか。
ああ、そうですよね。「寂寞 -sekibaku-」は1番最後に作った曲です。もともと他の曲をアルバムに入れようとしていたんですが、このアルバムの最終レコーディングに入る直前に「寂寞 -sekibaku-」が出来て。
――それが2曲目「PLAYBACK」になったとき、「寂寞 -sekibaku-」にあるネガティヴさを打ち砕くポジティヴさに切り替わり、そのエネルギーは外にも向かい始める。ストーリー性を感じたんですよ。
うわぁ、ありがとうございます。心情なのか分からないですけど、この曲を作ったときから1曲目は必ず「寂寞 -sekibaku-」にすると決めてたんです。アルバム的には序章というか、そのときの感情がそうであったのかなぁ。これを幕開けに、そこから始まり広がる『PLAY』という音。『PLAY』ではいろんな想いを歌にしています。それこそ情けないような想いを言葉にしているのもあれば、“前へ突き進め”的な言葉もある。そういう様々な感情こそが“PLAY”であって、人生の“PLAY”というか。いわゆる演奏するという意味のPLAYじゃなくて、人生をPLAYするという。
――どう歩むか、ですか。
うん。人生の過程にはいろんな感情があるものだし、「寂寞 -sekibaku-」のような儚げな感情もあれば、絶望や悲しみからくる幸福もある。「PLAYBACK」で歌にしているような決意にも似た“やってしまえ精神”も、後悔があったからこそ見えた光も、愛も希望も。そういう様々な感情を抱くことこそ、人生をPLAYしているっていうことで。
――いや、でも1曲目だけ聴いたときは、KAZUOMIは音楽をやめるぐらいの覚悟で向かっていったのかな、と感じたぐらいで。
そういう気持ちはやっぱりあります。ステージに立つ人間として正しいか分かりませんが。自分はもう枯れてしまうのかなとか、これが最後かなとか。モノ作りに対しての不安も、常にあります。そういうのって考えれば考えるほど悪い方向に行ってしまうんですね。才能もないのに、よく俺はやれてるなとか。良からぬ方向にどんどん向かってしまう。でも、ワケが分からないところまで心が追い込まれる時も仲間の何気ない言葉に救われたり。目を瞑りたくなるような1日だって自分の気持ち一つで前を向けたり。なんか人の感情って忙しいですね。
ROTTENGRAFFTY 2017.11.29 新木場STUDIOCOAST
――それで気になったのが6曲目「hereafter」で。
いや、あーはっはっ(笑)。
――何を笑い出すか(笑)。イントロのサンプリングボイスで“2017.2.27”って言ってますよね。2月27日はKAZUOMIの誕生日でしょ。
はい、よくご存知で(笑)。この曲は、なんかね“あくまでもROTTENGRAFFTYというよりも”という感じなんですね。こういう表現をアルバムに入れたいなと常々思ってて。随分昔にもそんな試みをした”electribeee”という曲があるんですが。ROTTENGRAFFTYを好きな人達にこういう音楽性は求められているのか? そこは分からないけど、自分があまり見せない部分まで音楽にしたら、どう聴いてくれるだろうかって。でもこの曲、影が濃いですね。僕自身はわかっていますが、詩として載せている言葉も、何を言ってるのか分からないですもんね。でも、この曲の言葉、これも本心。
――でも7曲目「『70cm四方の窓辺』」につながったとき、曲の響き方がシングルとは変わったんですよ。もともと「hereafter」に続く形で7曲目が作られたのかなと思いました。「hereafter」のアンサーソング的に感じたんですよ。
響き方が変わったと感じてくれたのは、すごく嬉しいです。アルバムならではですよね。そもそも「『70cm四方の窓辺』」も、僕の頭の中の世界観なんで、どこかつながりはあると思うんですね。どうやってアルバムを構築しようかと考えたとき、1曲目「寂寞 -sekibaku-」から2曲目「PLAYBACK」と同様に、僕はこの「hereafter」から「『70cm四方の窓辺』」が凄くいいなと思った。
――ROTTENGRAFFTYは、ライブはガンガンに盛り上げますけど、曲や詞を聴けば聴くほど、悲しみや挫折も知っていて、それを背負ってるところがあると思うんです。
そうですね、“悲しみ”や“挫折”もですし、“悔しさ”が原動力になるとこありますね。実際悔しさからもらえるパワーっていっぱいあると思うんです。そのもらったパワーをどういった方向に向けるかだと思うんですね。卑屈になりすぎると、作った音楽も卑屈なだけのパワーに変換され、多分、今回のような作品にはならなかっただろうなと思う。悔しさや挫折を、いい形に変換できればと思うんです。僕自身、卑屈な精神から生まれる曲もたくさんあるし嫌いではないですが、このアルバムみたいな伝え方、楽曲にはなってなかったと思います。ただただマニアックなことをやってしまったり、伝わりにくいだけの表現に逃げてしまってた気がするんです。
――サウンドの軸になっているのは、ライブで培ってきたあのROTTENGRAFFTYですからね。活き活きとしてますから。今回の楽曲に対するメンバーの挑み方は、プロデューサー目線でどう感じました?
各メンバー、前向きに曲を良くしようとしていたし、近年で一番いいレコーディングだったんじゃないかなと思いますね。基本的に、僕がヴィジョンを作って、そこからレコーディングを始めるので、楽器に関しては煮詰まることはあまりないんですが、詩に関してはディスカッションをする時間をよくとりました。作曲しているときに出てくる言葉もたくさんあるので。僕はそのインスピレーションから詩を書いていくんですけど、ボーカル二人の持ってくる言葉が、僕の思っている理想と違う時があったり。例えば“友情”のことを歌にするとして、人それぞれ描く“友情”の形も違うでしょ。その世界観を一つに作り上げたいんです。世界観を一つにすれば楽曲として成立する事が多くて。全てがそうではないんですけどね。でもこのアルバムは、そんな感じで言葉を集め詩にしています。
ROTTENGRAFFTY 2017.11.29 新木場STUDIOCOAST
新譜のツアーはバンドとしてもプレイヤーとしてもレベルを上げられるタイミング。メンバー間で刺激し合ってツアーを廻ることにワクワクしてます。
――歌メロもほぼKAZUOMIが作っているでしょ。今回、歌がまた前面に溢れていて、いいですね。伝わってきますよ。
僕は二人のカッコいい歌声を知っているので、それを出しつつ、新しい一面も引き出したいと考えているんですね。そこは常に挑戦していたい。楽曲でもそういうふうに思っています。新しいチャンネルを見出すのはすごく難しいことだけど、今、このキャリアでもそれをするバンドでいたいし、そういうことをやれているほうが音楽を作ってて楽しいんです。「Just One More...」や「『70cm四方の窓辺』」など、二人の新しい一面を出せたと思ってます。歌は表現がダイレクトに伝わるパートだし、そこへの理想は尽きないです。
――アルバムは後半に進むにつれ、広い視野でメッセージを投げていってるように感じるんです。それにエンディングナンバー「So...Start」に来たとき、1曲目「寂寞 -sekibaku-」とは真逆の心情で前へ歩み始めたなという感動も味わいました。
聴き手の感受性が全てで、そもそも作り手側が何かを言うことは違うかなと思う方なんですけど、その感想はすごく嬉しいです、ほんとに。人生いろいろありますが、最後に「So...Start」を持ってきたように、皆んなが前を向ければと思っています。
―― 作品が、こうして形になりました。今の思いは?
そうですね。一時は“体持つかな”とか、“完成させれないかも”とか思ってたんで。今はホッとしてます。それと同時に、ずっと追い求めていたものが形になり終わりを迎えると、虚無感にもさいなまれるんですが。今そのタイミングでもありますね。
――そういうときはツアーでしょう、と。3月24日から長期に渡る『ROTTENGRAFFTY PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018』がスタートしますが?
去年はツアーをしていないので、今年は長くツアーを廻ろうとメンバー、スタッフと話し決めていましたから、すごく楽しみです。ほんと、久しぶりに行ける町もたくさんだし。
――やってやるぞと。
新譜を出したツアーって、バンドとしてもプレイヤーとしても、レベルを上げられるタイミングだと思うんですね。メンバー間で刺激し合ってツアーを廻ることに、ワクワクしてますし、初めましてや久しぶりなお客さんと共にどんなライブが作れるのかワクワクしています。良いツアーにしたいなぁ。にゃ。
取材・文=長谷川幸信
『ポルノ超特急2017』2017.12.24 京都パルスプラザ

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