FRIGS / Solid State 断言する――思
索的で硬質なポストパンクほど美しい
ものはない。理性がフェティシズムに
圧倒されるその一瞬を逃すな、絶対に

カナダ最大の都市・トロントを拠点とするオルタナ/ポストパンク・バンド、FRIGS(フリッグス)が2月23日に発表した1stアルバム『Basic Behaviour』。
「これは2018年のマイ・ベストに突き刺さるのでは……」とまで思わせてくれた今作は、アルバムとして非常に高い完成度を誇っているので、ぜひとも紹介しておきたい。それから、実際に彼らの Bandcamp(http://frigs.bandcamp.com/album/basic-behaviour) もしくは各種サブスクリプション・サービスにて全編通して聴いてみることをオススメする。

ちなみに、2016年のデビューEPと同じく〈Arts & Crafts〉からのリリースとなっている。
この内省的な態度がアルバムを貫いている。魅力でいっぱいだ。

さて(楽曲それぞれにひとつの実体があったとして)、この曲にはグレイッシュな布が覆い被さり、その内で硬質なビートが暴れている。私はその前に立ちすくむような気持ちでこれを聴く。しかし、恐れがそうさせるのではない、驚きだ。これほどまでに自分の感情や思考、心のモードと酷似した音楽があったなんて、という驚きによるのである。

だから、むしろそれは落ち着き――反抗心を孕んだ――をもたらすのだ。ありふれた言葉を使えば、“ほどよい緊張感”とも言えるだろう。そしてやはり何と言っても、Brianna (Vo.)の歌声を聴いていると否が応でも自己対峙させられる。力強くクールに発せられる低音のハスキー・ボイスにはそういうパワーがあるように思うし、その闘い(葛藤)を終えることはできないのだと痛感する。
曲のクオリティもさることながら、なにしろアートワークが素晴らしい。理性で隠しきれないエグみと、だだ漏れる品のよさ。睫毛に吊るされたカーテンの隙間から、矛盾だらけのシュールレアルが覗く。

(楽曲に話を戻して……)こちらの「Talking Pictures」はベースの音数がかなりストイックで、当然バンドのスタンスが変わる気配もない。けれども軽快なギターのおかげか、開放的な空気が流れているように感じる。この曲の姿は、そこにはためく大きなマントのようなものかもしれない。

辺りが静まったと思えば強風が吹き荒れる「Waste」や、鎖に繋がれた人間の心境を映し出す「I」とそれが解かれた肉体に残る痕を模した「II」。そして、次々と壁を突破していくような爽快感のある「Chest」など、強烈なナンバーが揃っているので、(最後に念を押すが)ぜひアルバムを聴いてみてほしい。

FRIGS 『Basic Behaviour』

Release Date:2018.02.23 (Fri.)
Label:Arts & Crafts
Tracklist:
1. Doghead
2. Talking Pictures
3. Waste
4. Solid State
5. Gemini
6. I
7. II
8. Heavyweights
9. Chest
10. Trashyard

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