三浦大知は深い。『BEST』から感じる
エンターテイナーの背景

三浦大知初のベストアルバム『BEST』を
もっと楽しむために、制作背景を知って
ほしい!

3月7日。日本の音楽シーンに注目すべきベストアルバムがリリースされる。
そのベストアルバムをリリースするアーティストの名前は三浦大知。世界水準のダンスと歌で日本が誇るべきアーティストとして注目を浴びているエンターテイナーだ。
今回、ミーティアでは昨年の『HIT』に続いて、自身初となるベストアルバム『BEST』をリリースする三浦大知にインタビューを敢行。
『BEST』に収録されているシングル曲と一緒に、三浦大知のダンス、歌、ファン、人間模様など、彼が積み重ねてきた20年間の軌跡を語ってもらった。

Photography_Yuya Wada
Interview&Text_NOZATATSU
Edit_Satoru Kanai


三浦大知がこのタイミングでベストアルバムを出した理由とは?
――初となるベストアルバムのリリースおめでとうございます。

三浦大知 : ありがとうございます!

――20周年を経てデビュー曲から新曲まで盛りだくさんなアルバムですが、改めてどういうベストアルバムになっていますか?

三浦大知 : 「これが三浦大知のベストだ」っていう感じで選んだというよりは、歴史を振り返るようなシングルコレクションになっています。昔から三浦大知を応援してくれている方はもちろん、最近知ってくれた方にもわかりやすい入門編のような一枚になればと思って作りました。

――初めてベストアルバムを出すと発表があった時、意外というか、今までも出していたんじゃないかなっていう感じもしたのですが、このタイミングでベストアルバムを出したいという構想があったのですか?

三浦大知 : タイミングは考えていなかったですね。5年目、10年目の節目にベストアルバムを出そうかって話はもちろん議題にあがったんですけど、これまでは自分の中で「ベストってなんだろう」って考えた時に、今自分がやりたいこと、形にしたいこと、やったほうがいいと思うこととか、自分の興味としっかり向き合ってニューアルバムを作るほうがベストなんじゃないかなと思っていたんです。

なので今までベストじゃなくてニューアルバムを出していたんですけど、2016年の頃からより多くの方に三浦大知の歌やダンス、エンターテインメントを見て頂ける機会が増えたので、最近興味を持ってもらった方は特にそうだと思うんですけど、どこから三浦大知を聴けばいいの?って迷子になる方もいるんじゃないかなって(笑)

だったらこのタイミングで入門編となるシングルコレクションを出したいなという話があって、ベストアルバムを出すことになりました。
積み重ねてきたから今がある! 三浦大知が作り上げた歌とダンスの反響
――たしかに2016年から大注目を浴びて今の反響に繋がっていますよね。その時期にリリースした『Cry & Fight』の無音シンクロダンスやアカペラダンスは、今でもメディアで取り上げられますが、このパフォーマンスはいつうまれたのですか?

三浦大知 : 2013年の“Door to the unknown”というライブの中で考えた演出のひとつで、『Black Hole』という曲でやったのが最初です。そこから『Cry & Fight』にも当てはめたという形ですね。

――無音シンクロダンスを始めた時、ここまで反響を生み出すと思っていましたか?

三浦大知 : ライブの演出のひとつとして考えていたので、今みたいな反響は考えてなかったですね。このパフォーマンスは“緊張と緩和”の最たる部分だと思うので、ここからどうなるのって固唾を飲む感じとか、ライブでもそういう盛り上がりをみなさんが一緒にしてくれたので、ライブの演出として自信を持って披露できるパフォーマンスだと思っていました。

――2017年は様々なテレビ番組に出演する中で、めちゃイケのオファーシリーズが大反響を呼びました。ベストに収録されている『Cry & Fight』と『(RE)PLAY』が番組内でもフィーチャーされていましたが、めちゃイケ放送後の反響はどうでしたか?

三浦大知 : もう凄かったですね! めちゃイケがやってきた企画の中でもすごく人気のある企画ですし、その時は最後のオファーシリーズだとは知らなかったんですけど、そこに三浦大知を選んで頂いたのは嬉しかったです。反響で言えば街中でダンサーが声をかけられるほどの反響があって、めちゃイケがダンサーのこともしっかり掘り下げてくれたことに愛を感じました。

――出演していたダンサーのSNSで、ダンサーと岡村さんと三浦さんだけで打ち上げを何回かやったという投稿を見たのですが、そこではどんなことを語りあったのですか?

三浦大知 : ダンシングヒーローズの会ですね。熱く語り合うというよりは、単純に「またみんなで踊りたいよね」って話をしました。あのとき出ていたダンサーってみんな世界で活躍している人たちじゃないですか。「明日から中国です」とか、「僕たちはどこどこに行ってました」とか、普段の会話がすごいんですよ。その時にみんなで海外に行ってダンスができたら最高だねって話も出ましたね。

――すごい打ち上げですよね。世界といえば、先月開催されていた平昌(ピョンチャン)オリンピックに出場していたスノーボードの広野あさみ選手がずっと三浦大知さんの大ファンでオリンピックを目指すきっかけが大知さんだったというエピソードや、スピードスケートのウイリアムソン 師円選手が『(RE)PLAY』を、パシュートとマススタートで金メダルを獲った高木菜那選手が『Darkest Before Dawn』を、それぞれ試合前に聴いて気持ちを高めているというエピソードがあります。オリンピック選手が自分の曲を聴いていると知ってどう思いましたか?

三浦大知 : もう、嬉しいですよね! やっぱりスポーツは生き様であり、積み重ねてきた努力がすべてを語る世界だと思うんです。厳しい競争世界ですから、その努力が必ずしも実るわけではない。そうやって人生をかけて戦っている人たちが、音楽から力をもらっているんだと思うと、音楽を通して自分を表現している者としてすごく誇らしいです。歌っていてよかったなと思います。
20thシングル 『(RE)PLAY』

――必ずしも努力が報われるわけではないというのはダンサーやアーティストにも同じことが言えると思うのですが、三浦さんも積み重ねてきて現在の評価と反響を手に入れました。どうやってここまでモチベーションを保ってきたのでしょう?

三浦大知 : 大前提として、歌とダンスが好きという揺るがないものがあるのは大きいですね。

もちろん制作していく中で色々と壁にもぶつかりますし、アイデアが出ないとかうまくいかないこともたくさんあります。でも、歌とダンスが好きだから苦じゃないんです。パフォーマンス自体に自信や誇りもあるのでモチベーションが絶えることはないですね。

スポーツ選手には、オリンピックやワールドカップなどの大きな大会で結果を残すという明確なゴールがあると思うんですけど、僕はエンターテインメントという枠組みの中でやらせてもらっているので、ゴールは自分で決められると思うんです。

例えば、自分のやりたいことがうまく形にならなくてそこで終了したら失敗なんですけど、諦めないで試行錯誤を繰り返して10回目で成功したら、この失敗はもう失敗じゃなくなると思うんです。基本的にうまくいかないことの方が多いですけど、自分の納得できるところまで持っていけたらそれは成功ですよね。失敗だけを見ないで、そこからどうしようって考える環境を楽しむことが自分のモチベーションに繋がっています。

――そのマインドや積み重ねが今の三浦さんに繋がっているのですね。また反響の話に戻らせてもらいます。『BEST』に収録されている『Right Now』のリハーサル動画がYouTubeで公開された時も大反響を生みました。動画がバズった時のことは覚えていますか?

三浦大知 : 定点で撮った編集もしてないリハーサル動画を楽しんでもらえるというのは、予想してなかったことなので嬉しかったですね。ダンスと構成が一目でわかるダンスに特化した動画なので、すごくシンプルにダンスをみんな楽しんでくれるんだなって思いました。
13thシングル 『Right Now』

――日本武道館の公演では「Right Now」の時に、前方に設置された斜めのステージで踊っていましたが、あの日が初めての試みだったのですか?

三浦大知 : LEDに傾斜をつけてやったのは、1/31の大阪城ホール公演と2/14・15の武道館2daysが時が初めてですね。今回LEDを使った映像演出が前半・後半に結構あって、ステージの後方に大きなLEDを置いていたので、前方にもLEDを置いて三浦大知とダンサーが映像に囲まれているようにしたら面白いんじゃないかという案が出ました。でも、ただ前方にLEDを置くだけでは面白みがなかったので、だったらその上で踊ったらさらに面白いんじゃないかということで、LEDを踊れるギリギリの角度で斜めにしました。

それに、2階席で見ている方は前方にあるLEDの演出が見えますけど、アリーナは斜めにしないと見えないので、会場のどこからでもLEDの映像を見れるようにという狙いもありましたね。もともとw-inds.が昨年の日本武道館でやっていた演出なんですけど、映像演出もできるし、踊れるということで本ステージとは違う見せ方をするという三浦大知バージョンでパフォーマンスを見せられたらなと思ってやりました。

――三浦さんとDMダンサーズのパフォーマンスはダンスの構成や移動もカッコいいので、その部分も見やすくてすごくいい演出だとおもいました。でも、斜めで踊るのって大変じゃないんですか?

三浦大知 : ターンが大変ですね。踊りやすい角度を計算して決めたので普通に踊るのは大丈夫ですけど、どうしても軸が斜めになっていくので、ターンは気合でキメるって感じでした(笑)

――ダンスが話題を呼んだ楽曲といえば菅原小春さんとコラボした『Unlock』もあります。日本武道館では菅原小春さんと一緒にパフォーマンスして会場を盛り上げましたけど、一緒にやってみてどうでしたか?

三浦大知 : 本番はリハーサルとまったくやってることが違ったんで……。それが面白かったです(笑)

――それは、菅原さんが仕掛けてきたということですか?

三浦大知 : 仕掛けてきたというより、自分の世界に入ったんだと思います。

――その場の空気感で踊りが変わったということですかね。

三浦大知 : リハーサルの時にこんな感じでというのはやっていましたけど、小春じゃないとできないことをやったほうがいいと思ったので、あまり決め事はせずに出たとこ勝負でやろうかなって思っていました。

お互いがその場でキャッチボールするみたいな、小春の爆発に僕はついていって、小春がそれ以上に爆発したいと思っているのか、冷静にこっちに戻ってこようとしているのか、お互い駆け引きしながらその場で行けるとこまで行くって感じのほうが面白いって思ったので、本番のテンションで作っていこうと判断しました。ちょっと賭けな部分もあったので、危険な部分を残したなと思ったんですけど...。頭から違ったので、あれ?って(笑)

――「あれっ? 小春??」みたいな。

三浦大知 : 予想よりだいぶ入りこんいでるなって思いましたね。ダンス一発であの空気を作れるのはさすがですよ。Unlockしている奴は誰だ? 小春だ! と思ってオファーした曲なので、一緒にライブできてよかったです。
17thシングル 『Unlock』

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三浦大知は深い。『BEST』から感じるエンターテイナーの背景はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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