KEYTALK 最新アルバム『Rainbow』を
聴いて思い知らされる、ソングライタ
ー/プレイヤーとしての才能

「MONSTER DANCE」に代表されるようなアッパーで明るく弾けるダンサブルチューンで、一瞬にしてオーディエンス全員を踊らせてしまう才能はピカイチ。だが、KEYTALKの最新アルバム『Rainbow』を聴いて思い知らされたのは、ソングライターとして、プレイヤーとして、彼ら4人の才能はまだまだそんなもんじゃないということだった。冒頭の「ワルシャワの夜に」からラストの「FLOWER」まで、さまざまな衝撃がつまった本作について、4人に訊いた。
これまで避けてきた訳ではないんですけど。これまで触れようとしなかったテーマで書いた歌詞が、今回は何曲かある。(首藤)
――『Rainbow』は「ワルシャワの夜に」から始まるじゃないですか? そこでデヴィッド・ボウイの「ワルシャワの幻想」を想像しまして、暗いアルバムなのかと思っていたところ、このオープニングから「セツナユメミシ」まで、マイナートーンの曲が続いていく。歌詞も「ワルシャワの夜に」は死生観を感じるような内容の幕開けでした。このようなオープニングにしたいと最初から考えていたんですか?
首藤義勝(Vo,Ba):明確なコンセプトとかテーマは毎回設けず、みんながそれぞれ曲を作っていくので、今回も特にテーマは設けてはいないんですよ。ただ、幕開けの3曲の世界観は、いままでになかった雰囲気だと自分たちでも思いますね。
――歌詞の世界観も含め、重めなんですよね。
首藤:うん、そうですね。それは特に1曲目の印象が強いのかもしれない。
――「ワルシャワの夜に」が1曲目になった経緯を教えてもらえますか?
首藤:曲が出揃った後にみんなで話し合って曲順を決めたんですけど。イントロのサウンドの感じですとか、勢いがあってアルバムの幕開けにふさわしいかなと思って。そこは歌詞のテーマよりも“音”で選んだ感じです。
――その結果、明るくパーンと弾けたKEYTALKの印象とは全然違うタイプのナンバーでの幕開けになった。
首藤:僕らのパブリックイメージってそういうものが一番近いと思うんですけど。そういうものは散々やってきたというのもありますし。今回は、純粋に“曲のクオリティーの高いものを12曲集めましょう”となって、こういうものが集まった。そのなかで幕開けにふさわしいものというところで、ポップで明るい曲で始めたいよねという話もなく、1曲目はこれにしようという意見が多かったんですよ。なので、自然と。特にひねった曲で始めようというモードでもなく。
――なるほど。そして、本作のラストはオープニングとは対象的にホープフルな光が降り注ぐ「旅立ちのメロディ」、「FLOWER」という楽曲で幕を閉じる。この2曲は最初からアルバム終盤にという考えだったんでしょうか?
小野武正(Gt,Cho):これも曲が出揃ったあと、みんなで話し合ってここにたどりつきましたね。最初は「Rainbow road」を最後にするという案もあったんです。アルバムのタイトル(『Rainbow』)にもなっているので。でも、ここ最近『HOT!』もり『PARADISE』もわりと明るく元気な曲でアルバムを締めくくることが多かったので。それと「FLOWER」の案があるなかで、最終的にみんなで話し合って「FLOWER」になりましたね。
――「FLOWER」になった1番の理由は?
寺中友将(Vo,Gt):一番明るい感じがするからですかね。いままでの僕らの作品って、最後は明るい楽曲、幸福感がある楽曲が最後にくることが多かったので、今回も最初は「Rainbow Road」が最後の曲になるかなと思って作っていたところ、アレンジを加えていったら、どんどんどんどん「FLOWER」が音と歌詞と合間って幸福感が増していった。それを目の当たりにしていくなかで、この曲で締めくくれたらいいなという思いがどんどん強くなったんです。あと、アルバムを通して聴いたときに、もう一度このアルバムを聴きたくなる気持ちにさせてくれる曲だったというのも、最後にした理由のひとつですかね。
KEYTALK 撮影=横井明彦
上っ面なところは普通に生きてるだけでも勘違いされることはあるし、そういうところで活動してないから。4人で楽しくやっていきたいだけ。(小野)
――結果、「FLOWER」で終わることで、このアルバム自体が持つ死生観や人生観が、重さと深みを増して聞き手に届いてくるんですよね。
寺中:そう感じてもらったとおりで。だからこそ、間に(「FLOWER」を)入れるのは難しかったのもあります。聴いてる人が一番気持ちよく聴けるのは最後だなと思いますよね。ラストのデザートというか。
――ラストになったことで歌詞を書き直したりはしたんですか?
首藤:直してないです。
――そこが凄いですよね? 死生観から始まって、最後は子供の誕生、生きる幸せみたいなものへと帰結していく訳ですからね。
首藤:偶然なんですけどね。死生観も、偶然ですけど含まれている気はします。
――ですよね? なので、本作ではこれまであまり感じられなかったKEWTALKのシリアスな側面がはっきりと浮き彫りになっていて。そこは驚かされた部分でした。
首藤:そうですね。作詞をする上で、これまで避けてきた訳ではないんですけど。これまで触れようとしなかったテーマで書いた歌詞が、今回は何曲かあって。「ワルシャワの夜に」は、ポーランド侵攻とか悲しい歴史を舞台にした曲なんです。これは戦争がどうのこうの言いたい曲ではないく、死が目の前に迫ったときの友情みたいなものを描いていて。最後の「FLOWER」はその真逆なんですよ。母から子への愛情。無償の愛っていうのをテーマにしていたり。これは新しいチャレンジであって。いままでやってこなかった歌詞を書いてみたいという、新しいトライですね。そういうものがこの2曲に限らず、みんなそれぞれやってるんじゃないかなと思うんですけど。
――それはKEYTALKのパブリックイメージに対する反発でもあるんですか?
首藤:それはまったくないと思います。やりたいことをやろうぜ、というだけなので。
八木優樹(Dr,Cho):自分たちがかっこいいと思うものをやっただけです。
――KEYTALKの、明るくて楽しくてパーティーチューンがたくさんあって、女子にも人気で、というパブリックイメージに対する反発なのかなと思いました。
首藤:ないです、そんなものは。むしろ、なくてすいません。
八木:じゃあ、ここでだけそういうことにしてもらっていいですか?(笑)
――ダメです(笑)。
首藤:だから、今回も“ガラッと変わりたい”というものもなかったですし、あったのは“もっとかっこいいものを作りたいな”ぐらいで。本当にそれぐらいですね。
――KEYTALKは、メジャーでの活動の仕方が、ライブバンドとして邁進しながらもコンスタントに作品をリリースして、そのなかで大きなタイアップを任されたり、派手な活動もバンバンやらているじゃないですか?
小野:そこは単純に“面白そう”とか“カッコイイ”って思えるか、そういう衝動。それでやってるだけですね。
――でも、怖くないですか? 表面的な活動だけを見て誤解されたらどうしよう、とか。
小野:上っ面なところは、普通に生きてるだけでも勘違いされることはいっぱいあるし。そういうところで活動を続けてないですからね。4人で楽しくやっていきたい。それだけなので。
KEYTALK 撮影=横井明彦
好きなものを歌にしてみんなで演奏すると、楽しいなと思って。今回はそれがたまたまうまくできた。(八木)
――分かりました。では、またアルバムの話に戻りますね。前作『PARADISE』がボリューミーな作品だっただけに、本作の曲数はどうしようかという話し合いもあったと思うんですが。
首藤:前作はいろいろなチャレンジもあって曲数が多かったんですね。シングル曲に合わせて新曲も負けない数を入れようってことで、ああなったんですけど。今回は、曲数を前回よりも減らして1曲1曲を大事に聴いてもらえるような曲数でやろうということで、12曲になりました。もう1曲増やそうかという話がでたとき、「いや、今回はこれで一つの作品として12曲でまとめてみようよ」という流れがあったと思います。
――あ! だから今作は一枚のアルバムとして作品性がすごく出たんでしょうね。
首藤:そうかもしれないです。
八木:ぎゅっと凝縮したものになったと思いますね。KEYTALKというもの、それぞれの楽曲たちが。
――「雨宿り」はどんなものが凝縮されたナンバーといえますか?
首藤:特徴でいうと、エレピの音とかシンセサイザーの音を全面に押し出した曲。そういうものを前々から作ってみたいなと思っていたんです。
――こういうオシャレなシティポップスみたいな曲もお好きなんですか?
首藤:聴くのは好きなので、そういうものが出た1曲で。いままでにないような雰囲気のものを作ってみたいなと思って作りました。
――これ、ボーカルは1オクターブ上の声を重ねてダブルにしてるんですよね。
首藤:そうですね。これはどっちを主旋(律)にするかというのは決めてなくて。2つで1セットという考えで録音してるんですけど。そこから生まれる浮遊感が表現できたらいいなと。
――歌詞のなかの、ちょっと距離ができてしまった2人の関係性がそのボーカルの重ねにマッチしててしびれましたね。
首藤:別れに徐々に向かっていってる2人組みをテーマにして。その物悲しい雰囲気を表現したくて、ああいう歌にしてみました。せつなさみたいなものが出せたと思います。
――ライブではどう再現する予定ですか?
首藤:まだ考えてないんですけど。うまくこの音源の世界をライブハウスでも再現できたらと思います。
――「テキーラキラー」は、タイトルを先に思いついて作った曲ですか?
八木:正確には曲のほうが先にあったんですけど。曲を組み立てている段階で、テキーラの曲にしようと決めた感じです。前々から酒にまつわる酒の曲を作りたいなと思っていたので。
――八木さんは日頃から言葉遊びができるフレーズとか考えてたりするんですか?
八木:あーそうですね。常に探してる感じではないんですけど、そういうものがあると気持ちがのるんですよ。好きなものを歌にしてみんなで演奏すると、楽しいなと思って。今回はそれがたまたまうまくできた。
――ちなみに、八木さんはテキーラがお好きなんですか?
八木:飲むんですけど、めちゃくちゃ弱いです。お酒自体。
小野:みんなお酒は好きですね。強い弱いはありますけど。

タイトルの意味はいつも後付けなんですけど、4人それぞれの色が重なって別の色が生まれていくことだったり。あと、色が出てくる歌詞が今回たくさんあるんです。(寺中)
――アルバムは「Rainbow Road」で明るく視界が開けていく印象でした。
寺中:そうですね。この曲のアレンジは、ちょうど曲を作ってる頃に、それこそハイスタ(Hi-STANDARD)を聴いてたんですよね。“あー、カッコいい!”って。完全にそれに引っ張られたかもしれないです(笑)。気づいたら、勝手にそういうアレンジになってましたから。曲は「ロトカ・ヴォルテラ」のC/Wの「アオイウタ」がANAのタイアップ(音楽と旅が大好きだ#KEYTALKとANA旅キャンペーンCFソング)になったんですけど。そこでもう1曲作って下さいという流れがありまして。それで作った曲なんです。飛行機をテーマに歌詞を作ろうと思って、白銀の世界に飛び立っていくときの真っ白い感じと、飛び立つときの放物線を虹として。そこから歌詞は広げていきました。
――アルバムタイトルはこの曲がヒントに?
寺中:そうですね。ヒントになったワードではあるんですけど。決めたのは、曲が出揃ったあとにみんなの話し合いで決めていったので。話し合ってるときは、いくつか候補があったんですけど。そのとき義勝が「Rainbow road」からRainbowを引っ張り出してくれて。タイトルの意味はいつも後付けなんですけど。4人それぞれの色が重なって別の色が生まれていくことだったり。あと、歌詞で色が出てくる歌詞が今回たくさんあるんですけど。
首藤:そうなんです。それが7色出てくる。
寺中:奇跡的に。
――うわー! 本当ですか? そこ気づかなかったです。
八木:そこは計算尽くで(笑)。
寺中:気づかなかったけど、計算尽くで(笑)。
首藤:どっちつかず(笑)。
寺中:だから、それを義勝が発見したときに。
八木:みんなで悲鳴をあげました(笑)。
寺中:「もう、グーの音もでねぇ!」って。
八木:「これは『Rainbow』だ!」って。
――すごいエピソードですね。ぞくっとしました。気づかないうちに自然と各曲が一つの作品のなかで、つながり合っていたってことですもんね。
寺中:毎回そういう風に作ってるんですけど。そこが今回は、より濃く出たなと思います。完成してみて思いました。
――アルバムリリース後には、4月からツアー『KEYTALK2018全国ワンマンツアー Rainbow road Tour 2018~おれ、熊本で2番目に速いから~』がスタートします。こちらはどんなものになりそうですか?
寺中:かなり熱いものになることは間違いないですね。
――アルバムの曲は全曲聴けますか?
寺中:来てのお楽しみです!!
――幕張メッセはなにか考えていることはあるんでしょうか?
寺中:それも来てのお楽しみです。最高の日になると思います。
――このツアーで初めてKEYTALKを観る人に何かアドバイスがあったらお願いします。
寺中:何も気にせず、自分の楽しみ方で楽しんでもらえたらいいなと思います。

取材・文=東條祥恵 撮影=横井明彦

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