【インタビュー】KOЯN「ライヴでは
120%を約束するよ」

2月下旬のある日、国際電話を通じて、KOЯNのフロントマンであるジョナサン・デイヴィスと短時間ながら話をする機会を得た。彼らは4月下旬に来日し、大阪と名古屋での単独公演を行なう他、3月31日には幕張メッセで開催される<Vans Warped Tour Japan 2018 presented by XFLAG>にヘッドライナーとして登場することになっている(フェス自体は2日間にわたるもので、翌4月1日にはPROPHETS OF RAGEがヘッドライナーを務める)。また、双方の単独公演ではカナダの新鋭、DEADLY APPLESがサポート・アクトとして登場することも決まり、こちらも楽しみなところだ。現在、ジョナサン自身はソロ・プロジェクトに取り組んでいたりもするようだが、そんな多忙さのなかにいる彼に、近況なども含めて訊いてみた。
――取材に応じてくださり、ありがとうございます。しばらくスタジオワークを続けていてライヴからは遠ざかっているようですが、今現在はソロ・アルバムの作業に専念しているんでしょうか?
ジョナサン:いや、実はそれについてはもうほぼ完了しているんだ。ミックスもマスタリングも終えて、今はアートワークに関わることが進んでいる。
――つまり、ソロ作品から完全に手が離れた状態で日本に来られるわけですね?
ジョナサン:そういうことだよ。今回は<Warped Tour>に参加して、KOЯNとしての単独のライヴも行なう。ショウ自体はもちろんソロ・アルバムとは完全に切り離されたものになるけども(笑)、日本に戻れることについてはとてもエキサイトしているよ。
――前回日本にいらしたのは2015年11月<Ozzfest Japan 2015>の際のことでした。2016年に発売された現時点での最新アルバム『ザ・セレニティー・オブ・サファリング(THE SERENITY OF SUFFERING)』に伴うツアーでの来日は実現していないわけですが、今回の日本公演ではこの作品からの楽曲もたくさん披露してもらえるんでしょうか?
ジョナサン:もちろん。ただ、俺たちにはさまざまな選択肢があるからいろいろな時代の曲をやることになるだろうし、最新アルバムから(たくさん)プレイするとは約束しにくいかな(笑)。でも、まだこのアルバムの曲をライヴで聴いていない日本のファンのために、確実に何曲かはそこから披露することになるだろう。KOЯNはしばらくツアーをしていなくて、この1週間はある意味特例的なものになるけども(注:彼らは昨年11月下旬以降ライヴを行なっておらず、この3月24日にメルボルンで開催されるオーストラリア版の<Download Festival>出演が今年最初のライヴということになる。ジョナサンの言う1週間とは、そこから今回のジャパン・ツアー終了までの期間を指している)、それがフェスだろうと何だろうとKOЯNはKOЯNのステージ・プロダクションを用いながら、自分たちならではのショウをやる。つまり、いつものように楽しみとエネルギーに満ちたショウをね。それは当然ながら、今回も変わらないよ。
――<Warped Tour>では幅広いオーディエンスを相手に演奏することになるはずだし、これは単独公演についても同じことですけど、KOЯNのライヴを初めて体験するという若い世代のファンもたくさん集まるはずだと思うんです。
ジョナサン:それを期待しているよ。とても素晴らしいことだと思う。なにしろ俺たちは、いまだに「新しい音楽を作ってはツアーをする」ということを実践し続けているバンドだ。ほんの何枚かのアルバムだけで、ずっと同じようなツアーばかり繰り返しているようなバンドではなくてね。そういう活動をもうかれこれ23年、いや、24年にわたりハードに続けてきたんだ。そうした活動のあり方を俺たちは今も楽しんでいるし、そうやって自分たちの音楽を新しい世代の前で演奏し、彼らが興奮するさまを目にすることを日々の歓びとしているわけだからね。
――KOЯNの歴史について詳しくない人たちが今回のショウに向けて予習するうえでは、どのアルバムを聴き込んでいくことが望ましいでしょうか?
ジョナサン:それはとても難しい質問だな。俺たちのアルバムはそれぞれが性質の異なったものだ。たとえば『フォロー・ザ・リーダー(FOLLOW THE LEADER)』(1998年)は、MTVに影響力があったあの時代ならではの象徴的な1枚だったと言えるかもしれない。だけども俺たちのカタログに名を連ねるアルバムには、いずれにもそうやってその時代を象徴しているところがあるし、どれか1枚が自分たちのすべてを示しているというわけじゃない。そういう意味では、常にその時点での最新作を聴いてもらうのがいちばんいいと思う。つまり今ならば『セレニティー・オブ・サファリング』ということになるね。なにしろそれこそが、今現在の自分たちにいちばん近い作品ということになるわけだから。あのアルバム全体がそうだといえる。
――同作は、KOЯNの歴史のなかでもかなりヘヴィでダークな部類に入る作品ですよね。
ジョナサン:そうだね。過去の作品中いちばんヘヴィとは言えないかもしれないけども、相当にヘヴィだということは間違いない。アルバム作りを重ねていくなかで、ひとつ前の作品からの反動というものが少なからずある。ヘヴィなものを作れば次はそうじゃないものを作りたくなったり、その逆のケースがあったり。そういうことを俺たちも繰り返してきた。ただ、ヘヴィでダークといっても、それはネガティヴで閉鎖的な世界というわけじゃないんだ。俺たちはそういう音楽を作ることを楽しんでいるし、ショウ自体も当然のようにヘヴィでダークなものになるけども、それは同時に、ポジティヴな楽しみに満ちたものでもある。演奏する俺たちの側にとっても、その音楽を好きでいてくれるオーディエンスにとってもね。
――ええ、かならずしも「ヘヴィでダーク=ネガティヴで閉鎖的」というわけではない。ところで<Warped Tour>は長い歴史を持っていますけど、KOЯNはこれまで縁がありませんでしたよね?
ジョナサン:うん。基本的にはパンク・ロック・ツアーというか、インディ・バンドが大勢出るものだというイメージがある。俺はそんなふうに捉えてきたし、そこにKOЯNが出ないのも理解してもらえるだろうと思う(笑)。こうしてKOЯNがこのフェスに出るというのは、とても特例的なことだと言えるはずだよ。実際、今回にしても俺たちは、アメリカ版の<Warped Tour>に参加するわけではない。あくまで日本版のそれに出るというだけのことなんだ。つまりこれは、かなり特別なことなんだよ。ただ、フェスであろうと単独公演であろうと、KOЯNのアティテュードは変わらない。自分たちのすべてを、いや、120%を吐きだそうとすることに常に変わりはないよ。そうすることによって自分たち自身も楽しめることになるし、オーディエンスも素晴らしいひとときを過ごすことになる。
――さて、ソロ・アルバムの制作はほぼ終了しているとのことでしたけど、この日本公演終了後にはソロ名義でのアメリカ~ヨーロッパ・ツアーも始まるんですよね?
ジョナサン:そうだね。ツアーは4月上旬に始まり、アルバム自体は5月下旬にリリースされることになっている。だからその間はKOЯNの活動は止まることになる。もちろん曲は書いているけども、KOЯNの次のアルバムを出すまでには、あと1年はかかるだろうな。
――ソロ・アルバムから先行公開されている「What It Is」という曲のビデオを見ましたが、素晴らしい曲ですね。アルバム自体はどのようなものに仕上がっているんでしょうか?
ジョナサン:とても音楽的に多面性のあるものになっているよ。ワールド・ミュージック的な側面があると言ってもいいかもしれない。俺自身、どんな言葉でこの音楽を呼んだらいいのかわからないくらいなんだ。日本の音楽、インドの音楽からの影響がミックスされたものもある。俺は日本の伝統的な楽器、琵琶の音色が好きなんだ。そうした、ロックとすら言いにくいような要素も盛り込まれた、世界中のありとあらゆる音楽の要素が混ざり合ったものになっていると思う。
――いわば、世界規模のルーツ・ミュージックみたいな。
ジョナサン:そうだね。そんなふうに呼ぶことも的外れではないかもしれない。完成させるまでには長年を要したけども、とても興味深いものができたと思っている。
――その音が届く日を楽しみにしています。日本にはこれまで何度もやって来ているあなたですが、今回はどんなことを楽しみにしていますか?
ジョナサン:アニメやおもちゃの店に行くことかな(笑)。毎回そういうショップには足を運んでいるよ。あと、神戸ビーフも食べたいな。いつも食べるのを楽しみにしているんだ。日本に行くと、いつも驚きがある。あとは当然、琵琶をはじめとする日本の楽器にも興味がある。和楽器の音色というのはビューティフルで、ハートフルで、人の心に訴えかけるものがある。そしてもちろん、日本の素晴らしさといえばオーディエンスのことについても言わなくちゃいけないな。素晴らしいよ。確かに初めて日本に行った頃はみんな大人しくて、ライヴの時も曲と曲の間ではとても静かだった。だけどそれはすごく熱心に聴き入ってくれていることの証でもあったし、近年ではモッシュしながら騒ぐワイルドなファンも目につくようになった。素晴らしいカルチャーを持った国だし、俺は日本のファンを愛しているよ。今は、その大好きな日本で楽しい時間を過ごすのが待ちきれない気持ちだ。是非、俺たちのショウを観に来てくれ。
取材・文:増田勇一

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