【ライブレポート】Ken Yokoyama、<
PUNKROCKERS BOWL>で「これがKen B
andの景色」

Ken Yokoyamaをヘッドライナーに迎えた<PIZZA OF DEATH RECORDS presents「PUNKROCKERS BOWL」>が3月2日にマイナビBLITZ赤坂、3月23日に横浜BAY HALLで開催される。その初日となるマイナビBLITZ赤坂の模様をレポートしたい。
前回より1年のときを経て開催された由緒正しきパンクロックの遊び場が<PIZZA OF DEATH presents PUNKROCKERS BOWL>だ。通常のイベントやフェスなどと決定的に<PUNKROCKERS BOWL>が異なる点は、訪れるお客さんのパンクロックへの深度の深さにある。日頃からライブハウスを遊び場としている屈強なオーディエンスが大股で乗り込んでくるイベントであり、その始まりは2003年の下北沢シェルターにて。“こんな組み合わせのライブが観たいから自分たちで企画しちゃおうぜ」”というPIZZA OF DEATHらしいDIYかつストレートな考えで、現在に至るまで不定期開催され続けている。
前述したとおり、マイナビBLITZ赤坂と横浜BAY HALLの2会場のヘッドライナーはKen Yokoyama。マイナビBLITZ赤坂公演のゲストはOVER ORM THROWだ。この2バンドオンリーのイベントというのもどこか新鮮であり、フロアの阿鼻叫喚がたやすく予想できる組み合わせだ。戦々恐々としながらマイナビBLITZ赤坂の扉をくぐり抜け、フロアに向かった。
開演10分ほど前、当然ながらフロアは超満員なのだが、眼前に広がったのは、圧倒的な黒いTシャツ率の高さ。パンクロックシーンのスタンダードとして親しまれていた黒Tシャツは、昨今やや減少傾向にあり、白Tシャツやパステルカラーのボディのほうが人気があるが、この日は見渡す限り真っ黒。この景色が示すことはただひとつ。“トレンドなんざお構いなしのパンクロック狂ども”が、この場に集っているということだ。そして圧倒的な男性率、からの高年齢率の高さ。金曜日とはいえ平日なのになんともファビュラスな状況である。Ken Bandのライブのときは必ず散見されるコマさんキャップが可愛いガールズの姿は少なく、視認できた限りではわずか2匹であった。
開演時間の19:00を少し回ったところで、沸々としたフロアに登場したのは先攻のOVER ARM THROW。メンバーがステージに姿を現すや否や、一気にライブがスタート。「Thanks」「By yourself」と畳み掛け、3曲め「ZINNIA」では“ウォーオーオー”のシンガロングからクラウドサーフの波が溢れ出すも、間髪を入れずに5曲めまで突っ走ってからMCタイムへ。
「(僕らのことを)知らない人も含めて幸せにしに来たので!」──鈴野洋平(B&Cho)
というMCに会場も盛り上がり、ならばと言わんばかりに応戦するオーディエンスの勢いは6曲め以降も加速の一途をたどっていった。当然ながら<PUNKROCKERS BOWL>はライブバンドによるガチンコの闘技場であるがゆえ、先攻であろうと、そのライブには一切の緩さなし。いつものOVER ARM THROWらしいライブの光景が広がっていく。現在、バンドは3rdアルバム『Pressure』ツアーの真っ只中ということもあり、その仕上がりも相当なものであり、磨き抜かれたライブを披露、<PUNKROCKERS BOWL>の幕開けを飾ってみせた。
最後に鈴野は「バンドの先輩から受け継いで、ライブハウスで学んできたことを後輩に継ぐ順番がきています」とMCで語り「いつまでもライブハウスという場所を守って、次に伝えていこう」といった内容の話へ続けた。オーディエンスとともに、次の世代へライブハウスが楽しい遊び場であることを受け継いでいくこと、そのメッセージは<PUNKROCKERS BOWL>という場所であったからこそより説得力を増し、輝きを持って胸に響いた。
続いて後攻、Ken Bandが登場。この日はステージバックに<PUNKROCKERS BOWL>のフラッグが掲げられていたため、小ぶりなKen BandのフラッグはHidenori Minami(G)のギターアンプ側に吊られていた。こんなところからも<PUNKROCKERS BOWL>へ対する明確なリスペクトが感じられる。
Ken Bandとしては久しぶりのライブであるが、<PUNKROCKERS BOWL>は完全なるホーム。メンバー4人がステージに登場し、歓声や野次が投げられるなか、「久しぶり、Ken Bandです。いいかい、やるズラよ!」と横山健がホワイトファルコンを携え、「Go With The Flow」でライブが始まった瞬間には何か生き物が完全体に進化していくような一体感があった。同曲中盤のOi! Oi!の掛け声を80年代HCらしく煽るなど、この日のKen Bandはパンクロッカーモード全開だ。
「きっと歌えると思うぜ」と笑いかけ「Maybe Maybe、続く『Pressure』では、早速のクラウドサーフの波、いつも以上にパッションとエナジーを感じさせるアクトにフロアも歓喜。4曲目ではマイクスタンドを下手に移動させてから、ニヤリと笑いかけて「WALK」へ。“序盤に早くもWALKだと!?”と焦るオーディエンス。ヒートアップしていく速度が速すぎるほどに感じられる幕開けだ。そしてMCへ。
「ようこそ、<PUNKROCKERS BOWL>へ! いい景色だぜ。これがKen Bandの景色なんだよな。最高ズラよ!」と宣言する横山健。ハイスタで見られた笑顔とはまた異なる楽しそうな顔をフロアに向けながら話していた。その姿にはKen Bandと<PUNKROCKERS BOWL>というホームで、程よくリラックスしながら、パワーを開放しているように見受けられた。「まず、4曲やって疲れました」などと言って場を和ませつつ、「すごくみんなロックンロールが好きそうだなぁ」と「Dream Of You」。上手へマイクスタンドを移動して「Your Safe Rock」。早くもマイクをフロアに投げ入れるも、クラウドサーフの勢いが凄すぎて、マイクがまったくステージに帰ってこない。普段であればワンサビが終了すればスタッフが回収できるのだが、オーディエンスの気合はそれを許さない。バンドはそれに構うことなく「How Many More Times」へ。
ここで「なんとなく概算で(<PUNKROCKERS BOWL>)は37回目らしいぜ」と横山健が<PUNKROCKERS BOWL>についてのざっくりとした解説をする。フロアから「100回を目指せ!」と野次が飛ぶと「そうズラね! emberもやればいいじゃん?」とMinamiに話を振って、しばし歓談タイム。スタジオのリハでの会話のようなアットホームな雰囲気、まさしくKen Bandのライブだなぁと、肌で実感させられた。「最近は新曲を作ってレコーディングしていました」とバンドの近況報告。新作リリースのニュースも近く発表されそうであることを聞いたオーディエンスから再び大歓声が。
「ここ最近、滅多にやらなかった曲」と言って演奏されたのは「What It Means To Love」。横山健が日の丸国旗を取り出すと、待ってましたと言わんばかりにフロアからの日の丸と大量のリフトが上がり「We’re Fuckin’ One」が演奏された。止めることなく「The Cost Of Freedom」のイントロへ流れ込み、熱を帯びたフロアからの大歓声。バンドを照らすブルーライティングが、どこかエモーショナルな気持ちにさせる。曲の最後には「最高だぜ! ライブだぜ!」と叫んだ横山健。この日は、古いアルバムからの選曲も多く、1stアルバムからKen Bandのライブを見ていた人間にとっては、たまらないセットリストであった。
ケニーファルコンにギターを持ち替えると、これも恒例のフロアからのリクエストタイムへ。一斉に曲名がステージに投げかけられ「それはハイスタの曲ズラよ(笑)!」などとやりとりをしながら、「かろうじて聞きとれた曲をやります」と選ばれた曲は「Handsome Johnny」。同曲中盤ではギターソロ、ベースソロ、ドラムソロとメンバー間で即興を楽しみながらの演奏となり、フロアに投げられたマイクは、このときもなかなかステージに戻らず、あえなくマイクチェンジとなった。
次の曲は「Ten Years From Now」であったが、この日は横山健にとって、ちょっと違った意味がある選曲だったようだ。「次やる曲はオレ的には、ちょっと意味のある曲ズラ」と言ってメンバーも顔を見合わせる。「MinamiちゃんがKen Bandに入って、ちょうど10年なんだズラ」とMinamiへの、ちょっとしたサプライズに拍手喝采。「この先の10年がどうなっているか、楽しみだね」と愛のあるMCへ繋げるも、フロアからは曲のリクエストが止まらず「誰か今、“コマさんのテーマ聞きたい”って言わなかった? あ、子供の助けを呼ぶ声が聞こえたよ!」と、ライブから脱線し「コマさんのテーマ」の即興に。実に温かい空気がマイナビBLITZ赤坂に流れている。
さて、ライブも中盤を超えて、ここから再びKen Bandが場内を加速させる。「Last Train Home」「Mama,Let Me Come Home」、真っ赤な照明のもとでの「Kill For You」。「最高!」「めっちゃ楽しい!」と会場中から声が投げかけられるなか、Woodsticsのギターへチェンジ。ギターの名前をオーディエンスから問われると、その愛称と、自身の友人とスタートさせたギターとスケートボードのブランドについて語った。
「名前はCandy。できれば楽器に触れてほしいんだよな。1人でポロンと弾いて"オレってカッコいい…"と思ってくれればいいんだよ。Woodsticsのスケートボードなんて、まさにそうだ。生活にはそういうのが必要なんだよ」──横山健
このWoodsticsについての詳細は"横山健の別に危なくないコラム"で説明がされているので、是非チェックしていただきたい。そして演奏されたのは『A Beautiful Song』。スロウテンポな楽曲だがサビで大シンガロングし、それに応じるフロア。「このまま食らってくれ! 「Punk Rock Dream」!」となだれ込み、この日一番のクラウドサーフが発生した。楽曲のブレイクポイントにステージとフロアがピッタリと一致して蠢いている姿には実にシビれた。
ここで再びケニーファルコンへギターチェンジ。そのままザクザクとリフを刻みながら「Longing」を奏で、そのままギターをストロークしながらイントロで歓声が上がる。アルバム『Sentimental Trash』リリース以降、すっかりファンの中で名曲として定着した「I Won’t Turn Off My Radio」だ。沸き起こるシンガロングにクラウドサーフは言わずもがな。次々にステージ目掛けてオーディエンスが突進し続け、ライブ本編が幕を閉じた。メンバーが袖にはけていくなか、横山健は上手から下手まで、これまでより多めに数多くのピックをオーディエンスにプレゼントする。何かここにも、Woodsticsをスタートさせたことに繋がる意志があったように感じられた。
間髪入れずアンコールへ。まずは「今日一緒にやってくれたOVER ARM THROWに聞こえるように拍手してくれ!」と挨拶。ライブ本編から1人も欠けることのなかったであろう超満員のフロアは「Can’t Take My Eyes Off Of You」のイントロで蠢くようにステージへ向かっていく。<PUNKROCKERS BOWL>のお客さんはみんな疲れ知らず。生粋のパンクロック好きだけが集っているからこその光景だ。
「サンキュー、もう1曲やっていくよ! Ken Bandのテーマ曲をやって帰るから。色んなヤツがいると思うけど、今は何でも続けていくつもりで歌ってくれ!」──横山健
とのMCに煽られ、大量のリフトが持ち上がり、そこにマイクを投げ込む横山健。「ゆっくり始めてくれ!」と誘導され、オーディエンスの歌声から「Let The Beat Carry On」。待っていましたとばかりに、更なるクラウドサーフの応酬で対応するマイナビBLITZ赤坂。横山健は同曲の終盤にステージ下手に移動し、しゃがみ込んでお客さんの笑顔を受け、ギターの高速弾きで笑顔を向けていた。この日、最後の1曲に選ばれたのは「Ricky Punks III」だった。
「あと1週間もすると、3.11がやってくる。ここには強いヤツもいれば弱いヤツもいるだろうし、続けられるヤツもいれば、そうじゃないヤツもいるかもしれない。もうあれから7年も経ったけど、オレはこの曲をやるときだけは、あの日を思い出す」──横山健
この場にいる全員でパンクスの歌を大合唱した。そして<PUNKROCKERS BOWL>マイナビBLITZ赤坂編が終了。やはり"パンクロッカー"とイベントに冠がついているからであろうか、それを無意識のうちに脳裏で考えてしまっているせいだろうか、この日、久しぶりとなったKen Bandもライブは、生々しいパンクロックの荒々しさがあったように感じられた。エンターテイメントではなく、バンドとオーディエンス、1対1のぶつかり合いともいうべき、音楽を介したコミュニケーションという印象だ。特に300人キャパ以下のライブハウスで生じるような現象が、この日も確かに起こっていて、それが大きな渦を作り出し、この場にいた人間を1つにまとめあげていたように思う。2018年のKen Bandの方向を指し示すひとつとして、久しぶりの<PUNKROCKERS BOWL>を心に刻んでおきたい。
■<PIZZA OF DEATH RECORDS presents「PUNKROCKERS BOWL」> 2018年3月2日@マイナビ赤坂BLITZセットリスト


【KEN BAND】

01.Go With The Flow

02.Maybe Maybe

03.Pressure

04.WALK

05.Dream Of You

06.Your Safe Rock

07.How Many More Times

08.What It Means To Love

09.We’re Fuckin’ One

10.The Cost Of Freedom

11.Handsome Johnny

12.Ten Years From Now

13.Last Train Home

14.Mama,Let Me Come Home

15.Kill For You

16.A Beautiful Song

17.Punk Rock Dream

18.Longing

19.I Won’t Turn Off My Radio

encore

20.Can’t Take My Eyes Off Of You

21.Let The Beat Carry On

22.Ricky Punks III

■<PIZZA OF DEATH RECORDS presents「PUNKROCKERS BOWL」>

3月23日(金)横浜BAY HALL

Open 18:00 / Start 19:00

出演バンド:Ken Yokoyama / SHANK

▼チケット

マイナビBLITZ赤坂:前売り¥3,800 (D別・1階スタンディング/2階指定席)

横浜BAY HALL:前売り¥3,800 (D別・スタンディング)

一般発売:2月10日(土)〜

・ぴあ(P:105-630)

・ローソン(L:70607)

・e+(pre order: 2/6 12:00〜2/7 23:59)

(問)SMASH 03-3444-6751

■<Ken Yokoyama「Very Very Strawberry Tour」>


5月09日(水) 宮古 KLUB COUNTER ACTION

w/ LEXT

5月10日(木) 石巻 BLUE RESISTANCE

w/ LEXT

5月17日(木) 長崎 DRUM Be-7

w/ SHIMA

5月18日(金) 佐賀 GEILS

w/ SHIMA

6月02日(土) 帯広 MEGA STONE

6月03日(日) 旭川 CASINO DRIVE

6月05日(火) 苫小牧 ELLCUBE

6月06日(水) 札幌 PENNY LANE24

※北海道公演のゲストバンドは後日発表

※各公演共通:OPEN 18:00 / START 19:00

▼チケット

前売り ¥3,000- 餓鬼割先行 ¥1,000-

一般発売:4/7(土)

【Ken Yokoyama オフィシャルHP先行】

受付期間:3/8(木)12:00~3/18(日)23:59

受付URL:http://kenyokoyama.com

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