日本語ラップの新たなる旗手が見せた
覚悟と矜持 Takuya IDE(井出卓也)
ワンマンライブ『DAY 1』をレポート

Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』

2018.3.3 SOUND MUSEUM VISION
俳優、タレントとしても幼少時より一線で走り続け、ラップ&作詞をするTakuya IDE。KREVAをはじめとするトップアーティストたちのDJとして活躍し、Takuya IDEと長年に渡り活動を続けている熊井吾郎(DJ&MPC)。その2人からなるTakuya IDEが、3月3日に渋谷SOUND MUSEUM VISION にて、6thワンマンライブ『DAY 1』を開催。IDE個人としては昨年末に25年間所属したマネジメント事務所から独立して以来、初のワンマンライブだったわけだが、“日本語ラップ”を世界に届けるアーティストとしての覚悟と矜持を、堂々と見せつけた。

Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』

Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』
IDEはステージに登場するなり、「たった一度の人生、誰も成し遂げられなかったことを自分で成し遂げたいと思わないか!?」と言い放ち、ゲストドラマーの楠瀬拓哉(元Hysteric Blue)を加えていきなりの新曲「DAY 1」へ。MPCのビートとどっしりした生ドラムのビートが交錯しながらダイナミックに躍動する中、これまで歩んできた中で感じてきた焦りや苛立ち、葛藤や自問自答、それらすべてを飲み込んで胸に強く刻んだ決意を、ハンドマイクを手に矢継ぎ早にラップでぶつけてくるIDE。<俺の人生は俺が決める><俺の未来をお前が決めんな>というリフレインには、鬼気迫るものがある。
Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』
続いて、IDEがギターを手にしたのは「Look at me!!!」。熊井、楠瀬としっかりアイコンタクトしつつ、歪んだギターをかき鳴らしながらスタンドマイクに向かうIDEは、途中でかぶっていたキャップを放り投げて、とても楽しそうな笑顔。そのままミクスチャーな「Dante」になだれ込むと、フロアからクラップが自然と巻き起こる中で、<俺のフロウと俺の言葉と俺のピッチで届ける それが音楽だろ>と力強くラップ。「AYAKASHI 03」の高速ラップにしても、はみ出すことなくきれいに整えられたポップさやキャッチーさの真逆をいくような攻めっぷりだ。

Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』

Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』
一転、オーディエンスとのやりとりも楽しむMCで見せるのは、穏やかな表情。「俺は日本語ラップをやっているわけですが、今日はみなさんにもやってもらおうと思っていて。俺が<カモナマイハウス>って言ったら、<行くよyour house>って言える?」といざなって、「カモナ」ではオーディエンスとコール&レスポンス。「Lucky Day」ではオーディエンスの“Lucky Day”コールもタイミングばっちりにきまって、気づけばとんでもない一体感が生まれているではないか。
「25年所属した事務所を離れて、すべての言葉に責任を持って世界に届けていこうと決めました。その1日目となるのが今日。俺ができないことのプロも呼んでいます、まずはタテ(ノリ)好きの俺ができない表現をする男!」
Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』
Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』
そんなIDEの言葉に導かれたのは、IDEとは5人組ユニット・龍雅 -Ryoga-で一緒に活動していたこともあり、KRUMPでダンス世界大会準優勝の実績を持つ後藤慶太郎(KTR)だ。KRUMPとは、自らの内にあるエナジーや感情を体で表現するダンス。その神がかった動きに、どよめきが起こる。後藤のパフォーマンス後、「おめぇ怖ぇよ、なんなんだよあの動き! もう職人だよね。間違いなく、『DAY 1』に出てほしかった」と言うIDEの、うれしそうなこと。「YOU-TRICK」ではなんと2人でラップをかけ合い、最後には息を合わせて高くジャンプ。お互いの信頼とリスペクトが滲んだ。
Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』

Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』

ゲスト達とのセッションが終わると、続けてメロウな「yesterday」「Silent」からの、日常感と脱力感漂う新曲「ホームステイ」。ゲストとのMCで飛び出したエピソードをアドリブで入れ込み、“ガスが止まってる”と連呼するIDEの遊び心に、フロアも沸く。
また、「フリースタイルはあまり好きじゃないけど……」と言いつつ、熊井の“悪夢”、楠瀬の“雛祭り”、オーディエンスの“渋谷”というお題を即興で見事に入れ込んだフリースタイルでも魅せて、圧倒したIDE。彼は間違いなく日本語ラップの新たなる旗手であり、優れたショウマン、エンターテイナーだ。
Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』
終盤、「このライブが、今の俺のすべて。それをよかったと感じてくれる人たちと、未来に歩いていきたい。ただ……過去も未来も今も、変わらないものがある!」というIDEの言葉から「Super star」へというところで、機材トラブルによって音が止まってしまったが、余裕で対処し、フロアの熱を冷まさせなかったIDE。「Super star」に<いつか死ぬならステージの上>というフレーズがあるが、覚悟を決めた本物はどんな状況でも心折れることがなく、すべての経験を自分の血肉にしていくのだなと、あらためて唸らされた。
アンコールに至るまでさんざん昂らせたおまけに、6月にはRiRiKAと、7月にはサカノウエヨースケとツーマンライブを開催することを発表。今年の夏は、だいぶ刺激的で楽しいことになりそうだ。

取材・文=杉江優花 撮影=阿部稔哉

Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』
Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』

Takuya IDE 6th LIVE 『DAY 1』
出演:Takuya IDE (井出卓也)、熊井吾郎
ゲスト:吉野晃一、後藤慶太郎、楠瀬拓哉

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