【インタビュー】iri、今までと変わらずも、新たな自分を見つけたニューアルバム『Juice』

【インタビュー】iri、今までと変わらずも、新たな自分を見つけたニューアルバム『Juice』

【インタビュー】iri、今までと変わ
らずも、新たな自分を見つけたニュー
アルバム『Juice』

前作アルバムから約1年4ヶ月ぶりとなる『Juice』。言葉のチョイス、歌のメロディーとリズム感に定評のあるiriさんの歌は、このアルバムでもその個性を存分に発揮。さらにケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)さんをはじめ、WONK、Tokyo Recordings、高橋海(LUCKY TAPES)、yahyel、5lack、ESME MORI(Pistachio Studio)、TOSHIKI HAYASHI(%C)など、多彩なミュージシャン、トラックメーカーが制作に加わり、iriさん独自の世界観をカラフルに押し広げて、この作品をバラエティー豊かな作品に仕上げています。
今回UtaTenでは、このアルバム『Juice』にスポットを当て、iriさんに制作の経緯や曲に込めた想いなどをおうかがいしました。
“いろんな音楽性が混ざり合ってる"『Juice』
──今回、リリースされるセカンドアルバム『Juice』ですが、もともと2016年にアルバム『Groove it』をリリース、2017年にシングル「Watashi」、e.p.「life ep」をリリースされて、2018年にようやく2枚目のアルバムをリリースと、スローテンポで活動されている感じもあります。わりとゆっくり時間を掛けてモノを作っていきたいという感じもあるのでしょうか?
iri:そうですね。確かにずっと作ってきた感じはありますが、もともとそれほど曲を作り貯めるタイプではないですね。
──そうでしたか。今回のアルバムには、昨年リリースされたシングル曲も挿入されていますが、その意味では「アルバムを作ろう」と意識し始めたのは、やはり前回のシングル「Watashi」をリリースしたあたりからということでしょうか?
iri:確かにそのタイミングで「そろそろセカンドアルバムを出したいな」という話は、スタッフさんたちともお話をしていました。
──その時には、“こういうアルバムを作りたい"というイメージもありましたか?
iri:特にイメージがあったわけではないです。でも今自分が注目しているアーティストさんとやりたいとか、自分がまだチャレンジしたことが無いことに挑戦したいという気持ちはありました。例えば、今まではずっとトラックメーカーさんにトラックをいただいて、それに歌を乗せたり、ギターの弾き語りで歌っていた曲を、トラックメーカーさんに渡してトラックメイキングをしていただくという作り方でした。
でも今回はスタジオに入ってミュージシャンの方と一緒に制作をしたり、新たなチャレンジもしています。その意味では、今までと違うことをやりたいという思いで作りましたし、チャレンジという部分には力を注ぎました。
──では曲作りという面では、アルバムに向けて初めて作り始めたということですね。今回、アルバム制作に向けて、具体的には何曲を作られたのでしょうか?
iri:7曲ですね。あとは e.p. とか、今までの作品に入っているものをリアレンジした別バージョンのものですね。
──それは例えば“20曲から30曲を作って、収録曲を選ぶ"というよりは、先におぼろげながら描いたイメージがあって、それにぴったり当てはまるドンズバなもの7曲を、作りあげたという感じなのでしょうか?
iri:まさしく。そんな感じです。
──なるほど。一方でこの『Juice』というタイトルは、アルバムの中に描いているご自身のイメージの象徴かと思うのですが、具体的にはどんなものを表しているのでしょうか?
iri:“いろんな音楽性が混ざり合ってる"という意味で、ミックス・ジュースみたいなイメージがまず思い浮かびました。最初は今回、プロデューサーのケンモチさんとダンストラックというか、ハウスぽいトラックを作っていたんですけど、そこからちょっとジャズっぽいサウンド感や、ヒップホップのちょっとメロウなトラックとか、いろんなジャンル、音楽性のアーティストの方々と、いろんなテイストの曲を作ったということもあったので、このタイトルがいいかなと思いました。。それにプラスして『Juice』って、“エネルギー"とか“活力"、“力"という意味もあるので、聴いてくれた方のエネルギーになってほしいという気持ちも込めました。
──“力"という点には、自分に向けて何かを呼びかけるようなイメージも強いのでしょうか?
iri:歌詞を書いて、いろんな人に届けるということによって、自分も強い気持ちになれるということはありますけど、“こうじゃん!?"みたいな感じで押し付けるのは、違う気がしているんです。
実は私はそういう音楽は苦手なんです。だから自分が残しているもの、書き残していくものを、自由に聴いてもらいたいです。聴いた人が共感するのかどうかは個人の自由だと思いますし。。
──確かに、押し付けという強引な雰囲気はありませんね。でもリスナー側としては、これによって後押ししてもらえるようなイメージを抱く感じが印象としてあります。
また逆に後半にはバラードっぽい感じで、内向的な雰囲気がストーリーとして入ってるような感じがしますね。具体的に、何か詞の中でどういうことを表現したいと、考えるものがあるのでしょうか?
iri:表現したいことはありますが、それは曲によって全然違います。ただその曲を聴いた時に、聴いた人がその曲にしかない世界観に入り込めて、そのシーンを感じられるような、そういう楽しみ方をして欲しいと思っています。その意味では音色や歌詞も含めて、より曲の景色をイメージしやすいように表現したいと思っています。
「Corner」
今回は“ゼロからの出発" でも本当にかっこいい曲ばっかり
──例えばファーストアルバムを作った時から、アルバム作りや曲作りで何か変わったと、自分で感じたところはありますか?
iri:そうですね…ファーストアルバムの頃は、出来上がってきた曲をそのままトラックメーカーさんに投げた、という感じなんですけど、今回は“ゼロからの出発"でしたね。スタジオに一緒に入って、自分の好きな音色なんかを結構こだわったし、トラックメーカーさんやミュージシャンの方ともコミュニケーションをよく取って制作を進めました。
──それは最初から方針を決めて、何も問題なく進んだのでしょうか?“実は、こういうところには苦労しまして…"というところもあったのではないかと思いましたが。
iri:確かにそれはありましたね。例えばミュージシャンの方やバンドの方と一緒に曲を作ったのも初めてだったので、その点ではいい経験になりました。
「Dramatic Love」を一緒に作ったWONKとは、お互いに曲に対してこだわりがあったのでかなり話し合いましたね。レコーディング現場で歌詞を削ったり、変えたりもしました。そういう経験が初めてだったので、すごく大変だったけど新鮮でした。結果的にはお互いのいいところが混ざって、すごくいい感じのメロディーが生まれたし、満足いく作品になったので、いい経験になったなと思います。
──では総じて見ると、今の自分というものがうまく表現できたという感じですかね?前作はもともとあった曲がベースなので、そういう意味ではちょっとタイムラグがあった感じですが、でも今回はわりと今ありのままの自分の姿というものができたという雰囲気かと。
iri:どうでしょうかね(笑)。でも本当にかっこいい曲ばかりだし。リードトラックになっている「Corner」も、かなりインパクトのある曲に仕上がったなと思っています。
──曲自体はすごくシンプルだけど、やっぱり詞の部分にすごく伝えたいという思いが強いと感じました。言葉の積み方が巧みですし。こういった流れは、自然に出てきたりするものなのでしょうか?
iri:曲にもよりますね。トラックを聴いて、適当なワードを言って、それをあとでちゃんとした言葉をはめ直していく、というような作り方をしていて、その中で思いついた英語なんかも入れたりします。全体的には流れで思いついたものを、そのままという感じが多いですね
──流れだけでここまでできてしまうというのがすごいですね(笑)。また一方でラップ的なフレーズなどでは、一気に言葉が溢れる感じのところもありますが、これは詞を書く時に、一気に言葉が出てきちゃう感じなのでしょうか。
iri:そうですね。トラックを聴いて、思いついたワードをパッと書くことが多いです。見直したりも一応するんですけど、ラップの部分はあまり直したりしないです。
──それは、言葉が頭の中に降りてくる感じ?
iri:そうですね、それを曲にハメて、もうちょっと工夫したいと思うところは変えてみたりとか、そんな感じです。
──例えば自分で詞を書いている時に、いつもこういうものが出てくる、と自分で意識しているものはありますか?
iri:あるかもしれないですけど、あまり意識してないですね。結構音に左右されるところもあって、トラックの構成、音色で、自分の中で想像する世界観が全く変わってくるので、それによって出てくるワードも全然違うんです。 例えば5曲目の「Watashi」は結構ハウス調の曲で力強いイメージなので詞も、力強いワードが出てきました。
──受け取ったトラックにインスパイアされる感じですね。また英語のワードもスマートな感じ。ご自身のバックグラウンドから来るものかと思いますが、影響を受けた音楽、アーティストはいますか?
iri:影響という意味では、洋楽はよく聴いていましたね。影響を受けたのは R & Bとか、ヒップホップです。歌詞の中での英語の乗せかたの部分では大きな要素になっていると思います。最も影響を受けたアーティストは 私が音楽を始めるきっかけにもなったアリシア・キーズです。
Telephone feat. 5lack」

「Watashi」
新しい自分も見つけた今作
──やはり洋楽志向というところでしょうか。また、今作で自分的にすごく気に入ってるトラックはありますか?基本的には、どのトラックも大事だとは思いますが…
iri:どれも好きですけど…やっぱりWONKと作った「Dramatic Love」はすごく印象深いです。
──全楽曲の中で、唯一ギターが入っているし、サウンド的にもかなり攻めてる感じがしましたね。このトラックを聴かれた時に、何か思い浮かんだ情景はありましたか?
iri:情景というかラブソングなんです、これは。別れの歌なんだけど、すごく前向きというか、ポジティブな別れ。そう感じました。
──この6曲目くらいまでは結構ノリのいいテンポで進んできてるけど、いきなり7曲目で音色も雰囲気もガラッと変わる分、余計にインパクトがあります。自分で歌われている時に、これくらいのテンポがちょうどよかったりするのでしょうか?逆に「Keepin'」のように、テンポが速い曲の方が気分が盛り上がっていいというところもあるのか…
iri:いや、どちらかというと私は、ゆったりした曲の方が、聴くのも好きですね。だから今回はちょっと BPM を抑え目にした曲が多いですね。
──その意向は、確かにうかがえますね。今回のこの作品に関して、自分的な評価としてはいかがでしょう?
iri:実験的にいろんな方と作品を作ることができましたし、作品としてはいいものができたと思っています。これからも、 もっといい作品をたくさん作れる可能性を、スタジオに入って今回の作品を制作したことで、改めて感じました。
──その他にも、新しい試みのようなものはありますか?実はこういう初挑戦をした、みたいなものは?
iri:詞の表現は、どちらかというと、今までのままという感じです。ただ、よりヒップホップっぽくなっているかなという感じはあると思います。言葉の積み方もファーストアルバムに比べると、よりヒップホップ色が強くなっている気がします。
──曲を書いているうちに、“あれ?こういう自分がいるんだ"と気が付くような感じも?
iri:それはありますね。例えばケンモチさんと作った「Watashi」とか。 この曲を作る前までは“誰かの背中を押す曲"みたいなものを作ったことがなかったんです。だから、こういう力強い曲は歌詞も含めすごく新鮮なんです。
──それは、もともと自分は、どちらかというと実は内向的で、人見知りしちゃう、みたいな感じがあるということでしょうか?だからこそ、これを作った時に意外だと思ったりとか?
iri:そうですね、人見知りする方なので、歌詞が出来上がって聴いた時に自分でもそう感じました。
──なるほど、ではこれができたということで、自分的にも新しい可能性が見出せたのではないでしょうかね。
iri:そういう面もあると思います。自分の気になっているアーティストさんがまだたくさんいるので、そんな方とまた、ケンモチさんとのときのように新しい自分を発見していきたいな、という思いもあります。トラックも自分で作ってみたいし、そんな風に新しいことにチャレンジしながら「いつ聴いてもいい曲だよね」と言ってもらえる曲をたくさん作れたらと思っています。
──その意味では、今回いろんな方と曲作りをして化学反応というか、その経験のおかげで、新しい自分を見つけたり、成長できたということですね。
iri:はい。これからもいろんな方と良い作品が一緒に作れたらいいなと思います。
──ライブなどはいかがでしょう?どんどんやって行きたいというところもあるのでしょうか?
iri:そうですね。もうすぐツアーもありますし。初のツアーなので、すごくワクワクしています。今までは サポートでDJ とドラムをいれて、曲によっては私がギターを弾くという構成だったんですけど、今回はもうちょっとライブ感を出したかったので、楽器を増やしてみたりと新しい試みもあるので、その点ではまたちょっと違ったライブが観せられるかな、と思っています。
──それは、ツアーに対する意気込み、みたいなちょっと固い思いより、楽しみでしょうがないという感じということですね。では今後のご活動にも是非期待したいと思います。今日はありがとうございました!
iri:ありがとうございました!
TEXT:桂伸也

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